
「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」は2011年に公開されたアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ合作の歴史アクション映画です。
「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソンがメガホンをとり、名作を新しい視点でよみがえらせたと話題になりました。
ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルームといった豪華キャストが集結し、アクションあり、恋あり、陰謀ありの冒険活劇となっています。
3D映画としても公開された「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」の解説や小話をご紹介していきましょう。
三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(2011年)
17世紀、ヴェネツィア。フランス国王の部隊の精鋭「三銃士」と、陰の権力者であるリシュリュー枢機卿のスパイ・ミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)がダ・ヴィンチ設計の飛行船の設計図を盗み出す。
ミレディは三銃士を裏切って敵国イギリスのバッキンガム公爵(オーランド・ブルーム)に設計図を渡してしまう。
一年後、フランス。銃士に憧れ、パリにやって来た青年ダルタニアン(ローガン・ラーマン)はひょんな事から高名な三銃士と出会い、彼らの仲間となる。
4人は、リシュリュー枢機卿の命令でミレディに奪われた王妃の首飾りを取り戻すため、イギリスへ向かう。
銃士たちは、バッキンガム公爵の飛行船を奪い、ミレディから首飾りを奪還する。
しかし、リシュリュー枢機卿の手下・ロシュフォールが首飾りを狙い砲弾を撃ち込んできて、飛行船同士の空中戦となる。
三銃士とダルタニアンは見事首飾りを守ってフランスに平和をもたらす事はできるのか…。
三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(ネタバレ・考察)
この映画では俳優たちがその魅力を余すことなく発揮しています。
俳優陣の活躍をご紹介しましょう。
美男美女が大渋滞!!
主役・ダルタニアンを演じた俳優ローガン・ラーマンが、思わず応援したくなるカッコ良さです。
剣闘シーンの合間に女の子を口説くという、お茶目なダルタニアンでした。
ダルタニアンに口説かれる王妃の侍女・コンスタンス役のガブリエラ・ワイルドは超美人。
ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルームの美しさは言うに及びません。
また、アトスは堂々と、ポルトスはワイルドに、アラミスは端正に、バッタバッタと敵を斬り倒しシブさをふりまいて爽快です。
この映画では美男美女の俳優陣を満喫できます!!
ミラ・ジョヴォヴィッチ、峰不二子ばりの大活躍!!
ミラ・ジョヴォヴィッチがスパイ・ミレディとして、アクションシーンをキレキレに演じています。
例えば、ヴェネツィアでダ・ヴィンチの飛行船の設計図を盗む場面では、仕掛けの銃弾を掻いくぐってダイブし、お宝に辿り着くのです。
ミッション完了後、銃士たちを裏切って設計図を敵国イギリスの大臣・バッキンガム公爵に渡してしまうというおまけ付きでした。
また、王妃の首飾りを盗む場面でも、盗難防止用のピアノ線をセクシーに一本ずつ避けて、映画「エントラップメント」ばりのシチュエーションを次々とこなしていきます。
まるで「バイオハザード」のアリスか「ルパン三世」の峰不二子のようで、ミラ・ジョヴォヴィッチのアクションシーンは必見です。


オーリー初の悪役
オーランド・ブルームはいつも爽やかな青年役を演じていますが、オーリー・ファンはこの映画を観て悲鳴を上げたくなったのではないでしょうか。
髭を着けて、傲慢なバッキンガム公爵を皮肉たっぷりに演じています。
初めての悪役との事でしたが、「演じていてとても楽しかった」と後のインタビューで語っています。
映画では公爵らしく洗練された身のこなしをしながらも、しっかり主役の銃士たちに嫌味を言っていました。
そんなオーランド・ブルームの悪役ぶりをぜひチェックしてください。


監督の飛行船愛が炸裂!!
この映画では、レオナルド・ダ・ヴィンチが設計したとされる「銃火器付き飛行船」が空中戦を展開します。
初めてこの映画の飛行船を見た時は、遊園地のアトラクションのような可愛らしいデザインの飛行船に驚きました。
ここでは、飛行船について紹介しましょう。
飛行船は日本のアニメがモデル
実は原作の小説には飛行船は登場しません。
親日家である監督は、日本のアニメ「宇宙戦艦ヤマト」「キャプテン・ハーロック」「オーディーン 光子帆船スターライト」が好きで、兼ねてからぜひ空飛ぶ船を映画に登場させたかったのだそうです。
監督は、飛行船が好き過ぎて実物大の2隻の「銃火器付き飛行船」を映画セットとして作ってしまいます。
飛行船がCGによるものではないので、俳優たちのよりリアルなアクションが実現しました。
17世紀に飛び交う飛行船
歴史上、飛行船の完成は1852年で、この映画の舞台となった17世紀にはまだ飛行船は発明されていません。
しかし、この映画のキャッチコピーは「伝説よりも、ハデにいこうぜ!」です。
時代考証がなってないとか、細かい事を気にする必要はありません!
ハデな空中戦をどうぞ楽しんで下さい!!
充実の殺陣シーン
ダルタニアンと三銃士の4人が40人を相手に闘うシーンや、ダルタニアンとロシュフォールとの一騎打ちのシーンにワクワクします。
監督は、よりリアルな画面を追求して、殺陣シーンにCGやスタントマンをあまり使いたくなかったそうです。
そのため、殺陣の基礎となるフェンシングは、競技フェンシング女子のヨーロッパ・チャンピオン、イムケ・デュプリッツァーが俳優たちに3週間みっちり指導しました。
また、作品全体のアクションについては、「グラディエーター」のアクションを監修したニック・パウエルが担当し、徹底的に俳優たちを半年間きたえたそうです。
ニック・パウエルは、殺陣の振付を考えるにあたって、猪突猛進なダルタニアンはテンポ良く、怪力のポルトスは力業で、洗練されたアラミスは細かい技を駆使してと、役柄によって細かく設定しました。
俳優たちは、それぞれの役の個性に合った流れるような殺陣が覚えやすかったと語っています。
監督によると、どの俳優もあまりにも殺陣の出来が良かったため、アクションシーンはほとんどスタント無しで撮影できたとの事でした。
映画で、剣と剣とが当たって見える火花はCGではなく実際の火花だという事です。
「三銃士」とは
この映画の原作は、フランスの文豪デュマ親子のうち、父である大デュマが史実を基に1844年に執筆した小説です。
三銃士とは、フランス国王直属の部隊「銃士隊」の中でも特に優秀なアトス、アラミス、ポルトスの3人の銃士の事。
この小説は、三銃士と、ガスコーニュの田舎からパリに出て来たダルタニアンの4人の物語になっています。
第一部~第三部で構成されていて、この映画の舞台となっているのは、第一部の部分です。
- 第一部:ルイ13世の治世下、盗まれた王妃の首飾りの奪還を巡る話
- 第二部:ダルタニアンがポルトスと組んで、脱獄したボーフォール公爵を追う話
- 第三部:ルイ14世治世下、アトスの息子ラウルの三角関係と鉄仮面伝説を描いた話
当時のヨーロッパの騎士道が描かれ、銃士たち4人が「一人は皆のために、皆は一人のために」と剣先を合わせる場面がお約束です。
欧米で過去に何度も映画化・テレビドラマ化されていて、記録に残っているだけで41作品もあります。
「三銃士」は、日本の大河ドラマみたいなもので、今回はどのような設定で、どの俳優が出るんだろう?と、欧米の人たちが楽しみにするような作品なのです。
謎解き「三銃士」
史実を基にした小説が原作なので、登場人物はほとんど実在の人物となっています。
ここでは、史実や原作を知らない日本人には、わかりにくかった劇中のシーンについて解説していきましょう。
アトスとミレディの関係は?
主人公・ダルタニアンや三銃士は実在の人物で、銃士隊長・トレヴィルの親類縁者がモデルでした。
三銃士のリーダー・アトスが、映画の中で、ミレディと「愛してる」「知ってる」という会話が交わされるのはなぜだろうと思った方もいるのではないでしょうか。
アトスは原作ではミレディと夫婦だった時期があるという設定になっています。


バッキンガム公爵とリシュリューの微妙な会話
バッキンガム公爵は、実在したイギリス国王の重臣でした。
国政を主導し、数々の戦争を行ないました。フランスとは同盟したり敵対したりと微妙な関係を保ちました。
フランスとイギリスは友好国でありながら永遠のライバルです。
映画でもリシュリューとバッキンガム公爵で「フランスにスパイを送り込んでいるのか?」「お互い様」と微妙な会話が交わされていますね。
悪女ミレディの暗躍
ミレディは、イギリスのカーライル伯爵夫人ルーシー・ヘイがモデルです。
ルーシー・ヘイは、イギリス王妃ヘンリエッタ・マリアの側近で、バッキンガム公爵の愛人でした。
当時のイギリス宮廷で、女でありながら政治的に策を弄した戦略家だったという事です。
そのため映画では、その戦略家ぶりをより膨らませてバッキンガム公爵とリシュリューの間を行き来して、裏切りも厭わない女として描かれていますね。
ルイ13世とアンヌ王妃
ルイ13世とアンヌ王妃は実在の人物です。
史実ではこの二人はあまり仲の良い夫婦ではありませんでした。
ルイ13世は女性よりも男性の方に興味があったとされ、アンヌ王妃にやさしく接してくれる夫ではなかったようです。
しかし映画では、ルイ13世が恋心をなかなか王妃に伝えられずダルタニアンに恋愛相談をするなど、ルイ13世は王妃にゾッコンという設定になっていましたね。
映画の中で、バッキンガム公爵が飛行船でフランスに来た時、王妃に「ますますお美しい」と言うシーンがありました。
実際に、アンヌ王妃がバッキンガム公爵と不倫したという記録が残っています。
映画でのバッキンガム公爵と王妃との会話「あの夜の事は私の宝」は、それを反映しているのです。
リシュリューと王妃の不仲
映画では、リシュリュー枢機卿はアンヌ王妃の首飾りを奪わせて王妃とバッキンガム公爵の不倫を世間に公表し、戦争を起こして王位を我が物にしようとたくらみます。
映画の中で、リシュリュー枢機卿と王妃がなぜあんなに仲が悪いのだろうと思った方もいるのではないでしょうか。
史実では、リシュリューはルイ13世の側近として実際に政治の世界で敏腕を振るいました。
彼は、敵国ハプスブルク帝国から嫁いできたアンヌ王妃と対立し、激しい政治抗争を繰り広げたのです。
だから映画の中でも王妃と対立していたのですね。
ヨーロッパの有名建築が楽しめる
実際にルイ13世が執務を行なった宮殿は、ルーブル宮殿でした。
しかし、ルーブル宮殿は現在、観光地・ルーブル美術館になっているので、ロケができません。
そこで、宮殿の撮影には、世界遺産で豪華な装飾を施したドイツのヴュルツブルク司教館やフランスのベルサイユ宮殿が使われました。
そのため、この映画では華麗なバロック様式の宮殿の装飾が楽しめます。
また、飛行船が不時着して突き刺さったのはなんとパリのノートルダム大聖堂の尖塔でした。


フランス人のコンプレックス
ルイ13世が、イギリス人のバッキンガム公爵の服の色を真似しようとしている場面が何度も出てきます。
現在では「ファッションと言えばフランス」ですが、当時フランスはまだファッション先進国ではなかったようです。
ルイ13世の時代には、ヨーロッパではオランダ、イギリスのファッションがおしゃれとされていました。
当時のフランス人のファッションにおけるコンプレックスが、ルイ13世のセリフ「バッキンガム公爵の服は何色だった?」に象徴されているのではないでしょうか。
続編は?
紆余曲折を経て王妃の首飾りを取り戻したダルタニアンたち4人は、ボロボロの飛行船でフランス宮廷に戻って来ます。
リシュリューは、計画が失敗し首飾りを盗めなかったので、自分の悪事をばらされないよう銃士たちを逮捕しようとしました。
しかし、アトスが機転を利かせてルイ13世に、悪事は全てロシュフォールの裏切りによるものと報告してリシュリューに貸しを作り、万事めでたしめでたしとなります。
海に身を投げたはずのミレディがバッキンガム公爵に助けられ、イギリス艦隊がドーバー海峡をフランスに向かいますが、果たして、この映画の続編は作られるのでしょうか?
同じキャストでの続編が待たれます。
まとめ
楽しければ何でもありの「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」。
アクションはもちろん、飛行船のデザインの可愛らしさもさることながら、登場人物の細かい「大人の事情」が絡む軽快な会話を楽しめる映画です。
ジャンルとしては歴史映画ですが、歴史の事を知らなくても楽しめます。
この映画を観れば、鬱々とした気分も吹き飛ぶでしょう。
気軽に観られて笑える映画なので、ぜひご覧になってください!!