「アナと雪の女王」は、ディズニーによる2013年公開の3Dアニメーション・ミュージカル映画です。
心を閉ざした姉と優しい妹の姉妹愛を描いた作品で、ディズニー作品初のダブルヒロインの設定となっています。
かっこいい王子がプリンセスを救うのではなく、姉と妹が2人で試練を乗り越えていくストーリーが感動を呼びました。
主題歌の 「レット・イット・ゴー(Let It Go)」も大人気で、世界中で興行収入が12.8億ドル(1,357億円)と大ヒットしました。
映画のあらすじや作品の小話、ネタバレ・考察を一気に紹介していきたいと思います!!
アナと雪の女王(2013年)
アレンデール王国。触れたものを凍らせる魔法の力を持った王女エルサは、その力で妹アナを傷つけてしまうことを恐れ、宮殿の部屋に閉じ籠って暮らしてきた。
やがて成長したエルサは女王の座につくこととなり、戴冠式のために久しぶりに人々の前に姿を現すが、魔法の力が暴走し、夏の王国を雪と氷の世界に変えてしまう。
自分の力が人々に不幸をもたらすと嘆いて逃げ出したエルサは、雪山の奥で自らの力を存分に解放し、ありのままの自分でいられることに生きる喜びを見出す。
一方、アナは姉と王国を救うため、山男のクリストフとトナカイのスヴェン、夏に憧れる雪だるまのオラフとともに、雪山の奥へと旅に出る。
アナはエルサを見つけ、王国を夏に戻してほしいと頼むが、再びエルサの魔法の力が暴走し、アナの胸が氷の矢に射抜かれて身体が凍り付き始めてしまう。
アナを救うには真実の愛が必要という妖精トロールの長老の言葉を聞いたクリストフは、雪山を疾駆しアナを婚約者のハンス王子の元へ連れて行く…。
アナと雪の女王(ネタバレ・考察)
「アナと雪の女王」は日本でも興行収入が255億円となり、興行収入ランキングが「タイタニック」に次ぐ歴代4位をマークしました。
ディズニー制作の映画では、ランキング歴代1位となります。
そんな圧倒的な人気を誇る「アナと雪の女王」にまつわる小話をご紹介しましょう。
ハンスとアナの名前の由来は?
原作は、ハンス・クリスチャン・アンデルセン作の「雪の女王」で、「自己犠牲と純粋な愛が救いになる」というテーマが貫かれている童話です。
この映画のメインキャストの名前はアンデルセンの名前にちなんで付けられたといいます。
それぞれ、ハンス王子(=ハンス)、クリストフ(=クリスチャン)、アナ(=アンデルセン)と、名前の頭文字からとっているという事です。
ラプンツェルがカメオ出演していた
映画の冒頭、「生まれて初めて」が歌われる時、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」のラプンツェルとユージーンがカメオ出演しています。
ラプンツェルは映画のラストシーンで着ていたピンクのドレス姿で登場。ユージーンは濃いパープル色のベストを着ています。
チョコレートの山はあの映画のカーレース会場?
戴冠式の朝、彼女が食べる積み上げられたチョコレートは、同じディズニーの「シュガー・ラッシュ」のカーレースのシーンにあったチョコレートの山です。
実は監督の一人ジェニファー・リーは「シュガー・ラッシュ」の脚本を担当していました。
こんなところにクリエーターの遊び心が発揮されていますね。
映画「タイタニック」へのオマージュ
トナカイのスヴェンと雪だるまのオラフの名前は、なんと映画「タイタニック」のキャラクターからとったそうです。
レオナルド・ディカプリオ演じるジャックがポーカーをしている相手がスヴェンとオラフになります。
ポーカーで負けてジャックにタイタニックのチケットを取られてしまう、というちょっと間抜けなところもそっくりですね。
イディナ・メンゼル、エルサ役でリベンジ!
エルサの声を担当したイディナ・メンゼルは、実は「塔の上のラプンツェル」のラプンツェル役の声のオーディションを受けていたそうです。
しかし残念ながら不合格になってしまいました。
ディズニーのキャスティングディレクターはこの時の彼女を覚えていて、2年後にイディナに連絡を取ったそうです。
エルサの髪の秘密
2010年に公開されたディズニー映画「塔の上のラプンツェル」のヒロイン・ラプンツェルは約21メートルもの光り輝く魔法の髪が魅力的でした。
そんな彼女の美しい魔法の髪は、CG技術を駆使して約14万本の髪の毛で表現されています。
今作のヒロインであるエルサの三編みにはなんとラプンツェルの3倍!約42万本の髪の毛が最新のCG技術によって作られています。
彼女の髪を表現するためにアニメーターたちは「トニック」という新しいソフトウェアまで開発したそうです。
制作陣がいかにエルサの髪の毛にこだわりを持っていたのかがわかるエピソードとなっています。
「強い」ヒロインの生き方
過去のディズニー・プリンセス・アニメーションは「白雪姫(1937年)」にしても「シンデレラ(1950年)」にしても、「最終的にヒロイン(お姫様)がヒーロー(王子様)に愛されてハッピーエンド」という展開がお約束でした。
しかし近年は、「リトル・マーメイド(1989年)」「塔の上のラプンツェル(2010年)」など、女性が男性に頼らずに冒険の旅に出るというストーリーになっています。
この「アナと雪の女王」も、最近の作品の「強いヒロインの法則」を踏襲しています。
助けは要らない。自分の力で
姉・エルサは、自分の魔法でアレンデール王国を雪と氷の世界にしてしまい、魔法を解く方法もわかりません。
エルサは、これ以上人々に迷惑をかけまいと王国の宮殿を出ていきます。
妹・アナはエルサに、王国を夏に戻してほしいと頼むため、婚約者となったハンス王子に王国を託して出かけます。
冒険に出るのはヒロインで、王子は宮殿で待っているという、「強いヒロインの法則」がよりパワーアップしている感があります。
アナは誰の助けも借りずに、自分で雪の山に一歩一歩足を踏みしめて歩こうとします。
途中で山男クリストフとトナカイのスヴェンに道案内を頼みますが、全て自分で物事を決めていくのです。
もはや今の時代、王子は不要なのでしょうか。
この映画は、「女性の力だけでも幸せを獲得することは可能だ」と謳い上げています。
ありのままに生きる素晴らしさ
エルサは、山奥の雪山に「氷の城」を築きそこで生きていく覚悟をします。
その時に歌われたのが「レット・イット・ゴー(ありのままで)」です。
エルサは今まで、アナや他の人々に迷惑をかけないように、部屋に籠って自分の力を抑えて生きてきました。
しかし、今はもうそんなことをしなくてもいいのだと、思いのままに生きて構わないのだと自分に言い聞かせます。
「だってもう自由よ、何でもできる、どこまでやれるか自分を試したいの、そうよ変わるのよ私」
この歌は、ありのままに生きる事への賛歌です。
これは、そのままの自分でいいという多様性を認める世界の在り方を示す、現代社会へのメッセージとなっています。
驚きのラストシーン!ヴィランは王子だった!!
クライマックスのシーンでは、これまでのディズニー・プリンセス・アニメーションに無かった新しい現象が起きています。
そのいくつかをみてみましょう。
王子の手のひら返し!!
魔法を制御できないエルサから放たれた氷の矢によって胸を射抜かれ、次第に弱っていくアナ。
妖精トロールの長老パビーにアナを治す方法を聞くと「真実の愛」により魔法は解けると言うので、クリストフはアナの婚約者・ハンス王子の元へ連れていきます。
アレンデール王国宮殿に戻ったアナはハンス王子と再会しますが、彼から思いもよらない真実を聞かされることになるのです。
ハンス王子には12人の兄がいて、このままでは彼が国王になれる可能性はほぼありません。
そこで他国の跡継ぎの女性と結婚する事を考え、初めのうちはエルサと結婚しようと思っていました。
しかしエルサに近付く方法がなく、アナに近付いたというのです。
ハンス王子はアナと結婚してからエルサを殺害し、夏の気候を取り戻して英雄となり、アレンデール王国を乗っ取るつもりだと、この期に及んで手のひらを返して言うのです。
これまでのディズニー・プリンセス・アニメーションをみても、「王子が悪役」といった展開はこれが初めての事で、この手のひら返しには衝撃を受けました。
アナを蘇らせる「真実の愛」とは?
ハンス王子はエルサに剣を振り下ろそうとしますが、寸前のところで瀕死のアナが間に入り、アナはそのまま完全に凍って動けなくなってしまうのでした。
エルサは凍ったアナを抱きしめて涙を流します。
すると、奇跡が起き、アナを取り巻いた氷が解け始めました。
エルサとアナの相手を思い合う心、それこそが「真実の愛」だったのです。
原作の「自己犠牲と純粋な愛が救いになる」というテーマが見事に生かされています。
これまでのディズニー・プリンセス・アニメーションでは、ヒーローの男性の愛こそが「真実の愛」で、男性のキスで魔法が解けました。
しかし今回の「真実の愛」は「姉妹の愛」です。
男性の出る幕はありません。
ここでも新しい概念ができあがっています。
ともあれエルサは、愛の力を信じれば、雪と氷に埋もれた王国を救う事ができると悟ります。
エルサは魔法を解き、王国は夏の気候を取り戻すのでした。
オラフは「姉妹の愛」の象徴
雪だるまのオラフは、無邪気でハグが大好き。雪だるまなのに温かい日差しの下で過ごすことを夢見ています。
オラフはエルサの魔法から生まれたキャラクターです。
エルサとアナが子供の時、二人でオラフという名前の雪だるまを作って遊んでいた温かい思い出により、彼が生まれたと思われます。
つまり、オラフは、アナとエルサが一緒に作っていた雪だるまそのものなのです。
「姉妹の愛」の象徴だったのですね。
「雪だるまつくろう」という歌にも「姉妹の愛」が投影されています。
徹底した価値観の逆転
さらにもう一つ、これまでのお約束を無視しているのがラストシーンの描き方です。
エルサは、生まれつき周囲を凍らせる魔力を持っています。
今までのフェアリー・テールだったら「万事解決してハッピーエンド」でした。
しかし、この映画では最後になってもエルサの魔力が無くなりません。
エルサは、ラストシーンでスケートリンクを作って人々に娯楽を提供したり、雪だるまのオラフが溶けないように彼専用の雪雲を作ってあげます。
つまり「完ぺきではないヒロインを周囲が受け入れ、魔力を有効活用する」という終わり方になっていますね。
ここでも、この映画は、ありのままに生きてもいいのだと私たちに言ってくれます。完ぺきでなくてもいいのです。
「価値観の多様性」や「マイノリティを肯定する」という近年の社会概念を表しているのではないでしょうか。
だからこそ、生き方の多様性を求める現代女性から多くの共感を得ることができたのでしょう。
クリストフの告白
ハンス王子は、元気を回復したアナにパンチを食らって本国へ強制送還になりました。
アナはオラフの言葉でクリストフが自分を愛している事に気付きます。
そしてアナもクリストフへの愛を自覚します。
クリストフは、王国の雪と氷が溶けていくのを見て、「最高だよ。君にキスしたいくらいさ!!」と言います。
しかしすぐにキスはしません。「つまり、してもいいかなって。つまり…したらどうだろう?」
男性から一方的にキスを押し付けるのではなく、女性の気持ちを確認してからキスをするという、女性優先の今の時代に合ったラブ・シーンで映画は幕となります。
まとめ
若き女王エルサが、雪と氷をあやつる魔法の力で真夏の王国を凍りつく冬の世界に変え、氷の宮殿にとじこもってしまい、妹が助けに行くストーリー。
「姉妹の愛」が描かれた映画です。
ありままに生きていいのだと、何度も肯定してくれるこの映画に、元気づけられる事請け合いです!
ぜひご覧になってください!!