
「コンスタンティン」は2005年に制作されたキアヌ・リーブス主演のオカルトアクション映画です。
悪魔祓いとして活躍する探偵ジョン・コンスタンティンをキアヌがかっこよく演じ、多くのファンを作りました。
宗教的な要素が強く、悪魔が登場することからアメリカではR15+指定を受けましたが、独特のスタイリッシュな武器や設定は大人でなくても楽しめるものになっています。
DCコミックスから誕生したアメコミヒーロー「コンスタンティン」の考察やトリビアを交えておすすめしていきましょう。
コンスタンティン(2005)
世界は天国、人間界、地獄の3つに分けられ、それぞれの住人は他のエリアに自由にいくことはできない。
だが実際には天使と人間、悪魔と人間の中間的存在である「ハーフブリード」が人間界を訪れ、勢力争いを進めていた。
ヘビースモーカーで末期の肺がんに侵されているコンスタンティンはハーフブリードを見分けることができ、人間界で悪事を働く悪魔のハーフブリードを始末する悪魔祓い。
彼は良心で悪魔祓いをしているわけでなく、過去に自殺を図り一時的に死んでしまったため死後に地獄行きになるのを覆し、天国へ行く恩赦を神から取り付けるためだった。
ある日、人間に取り付いた悪魔が人間界に侵入しようとする事件に遭遇し、世界の均衡が崩れかけていることをコンスタンティンは察知する。
女刑事アンジェラは敬虔なカトリックの妹イザベルが、禁忌である自殺をしたことを不審に思い、コンスタンティンを頼るが、悪魔の群れが集まりアンジェラを襲う。
悪魔の群れを撃退したコンスタンティンはアンジェラの願いを聞き、地獄を覗く秘術を使うと、自殺したことによって地獄へ落とされたイザベラと遭遇する。
双子であったアンジェラとイザベラに霊力があり、悪魔が何らかの目的でアンジェラを狙っていると理解したコンスタンティンだが、周囲で仲間たちが謎の死を遂げていく…。
コンスタンティン(ネタバレ・考察)
アメコミ出身ヒーローでありながら、スーパーパワーではなく知識と道具で悪魔たちに対抗するコンスタンティンの活躍に惹き込まれた人も多かった本作。
ネタバレ要素を含むトリビアを紹介していきますので、できれば先に映画をご覧になってからお楽しみください。
「ヘルボーイ」に似すぎていて名前変更
「コンスタンティン」はもともと「ヘルブレイザー」というタイトルのコミックでした。
映画化する際にタイトルをどうするかの会議が行われたのですが、似たタイトルでジャンルも近い「ヘルボーイ」が先に制作されていたのです。
オカルトとアクションを合わせた舞台設定などの共通点があることと名前が酷似していたことから、売上に関わると判断され、タイトルは「コンスタンティン」になりました。
ちなみに「コンスタンティン」に登場する運命の槍(ロンギヌスの槍)の模型は「ヘルボーイ」にも同じものが登場しているという共通項もあります。
運命の槍はナチスが持っていた
運命の槍はキリストが処刑されたときにその死を確認するために使われ、キリストの血がついている聖遺物として扱われてきました。
運命の槍はいくつかあり、「コンスタンティン」に登場するのは神聖ローマ帝国にルーツを持つものです。
映画の中ではメキシコの某所で発見されるのですが、実際にこの聖遺物を所持していたナチス・ドイツの旗にくるまれていたのです。
フランシス・ローレンス監督は運命の槍に伝わるオカルティズムの観点からこのギミックを仕掛ましたが、ネオナチの手に渡らないように旗は入念に処分されました。
聖なるショットガンを監督にプレゼントしたキアヌ
コンスタンティンがクライマックスで使用する、十字架の形をしたリボルバー式ショットガンは、その見た目に加えて威力や活躍シーンの多さからファンアイテムとして人気です。
このショットガンを作った小道具係に、キアヌは自腹を切ってブロンズ製のレプリカを作ってもらい、監督のフランシスにプレゼントしました。
フランシスはいたく感激し、「映画に関わってきた中で一番の贈り物」として聖なるショットガンを大事にしていることをインタビューで告白しています。
地獄と天国は人間界と同じ構造になっている?
水を介して地獄へと通じる道をつなぐシーンが登場しますが、地獄の描写はロサンゼルスのフリーウェイを忠実に再現したセットに特殊効果をつけて撮影しています。
監督のイメージとして、地獄と天国は人間界と同じ構造になっており、地獄では核爆弾が爆発した直後のように熱風が吹きすさぶ世界だと解釈し、表現しているのです。
壊れた自動車が溶解し、その周囲を悪魔たちが這い回っているさまは美術チームと特殊効果チームの努力で、まさに地獄としか言いようがないインパクトを与えてくれます。


コンスタンティンとタバコ
コンスタンティンは15歳から一日30本吸うほどのヘビースモーカーで、そのせいで末期の肺ガンになっていますが構わず吸っています。
序盤で悪魔祓いをするために吸っているタバコを家具の上に置くシーンがありますが、細かいピントを合わせるレンズがなかったため、監督は葉巻サイズのタバコを制作しました。
それを遠くから撮影することで、実際のタバコのサイズに見えるように調整したのです。
また劇中でコンスタンティンが吸うタバコの本数は13本ですが、これは海外で広く忌み数として知られる不吉な数字で、コンスタンティンの苦難を表しています。
マモンの復活とガブリエルの思惑
サタンの息子であるマモンは父の束縛から逃れ、人間界を支配するためにルールを破って地獄を離れますが、手引きしたのはガブリエルとバルサザールでした。
天界側のハーフブリードであるガブリエルが神の恩寵を受ける人間に嫉妬し、試練を与えるために画策した一連の事件はコンスタンティンの活躍で阻止されるのです。
なぜ天界と地獄のハーフブリードが手を組んで人間界を荒らそうとしたのかについて、映画の文脈から考察していきましょう。


ガブリエルは人間界が地獄になることを望んでいた
ガブリエルは人間界を監視していますが、どんな極悪人でも神の許しを得れば天国に行けるという現状に不満をいだいていました。
人類は甘やかされすぎていると感じていたのです。そこでガブリエルは地獄側のハーフブリードであるバルサザールと手を組み、悪魔マモンを復活させようとします。
バルサザールとしては人間界が地獄になることは喜ばしく、ガブリエルにとっては地獄という試練を乗り越えた人間こそが天界にふさわしいと考えているため、利害が一致するのです。
神とサタンは今のバランスを望んでいた
マモンの復活を阻止するためにアンジェラ救出に向かうコンスタンティンですが、相棒のチャズが見えない敵に殺されてしまいます。
コンスタンティンの魔力で姿を表したのはガブリエルでした。ガブリエルはコンスタンティンを倒し、霊感の強いアンジェラを媒体にしてマモンを呼び出そうとするのです。
とっさにガラスで自分の血管を切り、死亡することで自分の魂を欲しがっているサタン(ルシファー)を呼び出すことに成功したコンスタンティンは、マモンの悪行を伝えます。
息子の行動に激怒したルシファーはマモンを地獄に送り、マモンを召喚しようとしたガブリエルは神の恩寵を失い人間になってしまいました。
天界も地獄も、今のバランスが崩れることを良しとしていなかった事がわかります。
なぜコンスタンティンは地獄にも天国にも行かなかった?
サタンはコンスタンティンの最後の願いである、地獄に落ちてしまったイザベラの魂を天界に送ってくれという頼みを聞き、意気揚々と彼を地獄に連れていくのです。
ですがコンスタンティンの魂は動きません。自分の命と引換えに、イザベラを救った「自己犠牲」により神に認められ、彼の魂は天国行きになりました。
自己犠牲はキリスト教に伝わる善行のなかでも最も尊いとされる行いなのです。
コンスタンティンの手を使い、神はルシファーに向かって中指を立てます。
執着している魂が天界に行くことが許せないルシファーは、コンスタンティンの傷や病気をすべて治して生き返らせ、改めて地獄に来る日を待つことにします。
それほどまでにコンスタンティンの魂は貴重なのでしょう。結果として天国行きには失敗したものの、現世での寿命を伸ばして復活したのです。
肺ガンが治ったコンスタンティンは、ラストシーンでタバコを吸うと見せかけてガムを噛み始め、禁煙を始めることを示唆して終わります。
チャズがハーフブリードになって復活した理由
チャズはコンスタンティンの弟子として認められることを夢見て、常に悪魔祓いの知識や神秘学を学び、クライマックスではアイデアを認められ共に戦います。
ガブリエルによって殺されてしまうものの、映画のスタッフロールのあとで天界側のハーフブリードとして復活するシーンが描かれているのです。
苦笑いするコンスタンティンの表情が印象的なラストですが、なぜチャズが天界側のハーフブリードになったかのヒントが映画の序盤に隠されています。
コンスタンティンが最初の悪魔祓いにいくシーンでチャズのタクシーが写りますが、タクシーに「3333」と書いてあるのです。
キリスト教において3という数字は父なる神、息子であるキリスト、そして精霊を表すもので、この3つが1つとして信仰の対象になっています。
これが4つ並んでいるのは、キリスト教における4つの法則にしたがい神が計画を持って救うということを表しているのです。
つまりチャズは本人が知らないうちにコンスタンティンの助けとなるべく働くことを神に運命づけられていたというメッセージになります。
人間としての寿命が終わり、ハーフブリードとして復活したチャズは、これからもコンスタンティンを助けていくでしょう。
これだけ神に気にされているコンスタンティンですから、もしかしたら死後天界に行くことができるかもしれませんね。


まとめ
神と悪魔の勢力争いに巻き込まれる人間界、という宗教的には大きなスケールの物語と、やつれたスーツ姿の男がオカルトで戦う内容ですが、キリスト教に詳しくなくても十分楽しめます。
独特の表現、スタイリッシュなアクション、そして登場人物の魅力で惹き込まれる本作は、映画ファンであれば是非見てほしい1本です。
キアヌ・リーブスが「マトリックス」の後に選んだ主役がこの作品、ということを考えても、映画史に重要な意味を持つ作品だと思います。