「ブリジット・ジョーンズの日記」は2000年代を代表するイギリスのラブコメ映画です。
ちょっと太め、大酒飲み、喫煙者でモテないアラサー女子の恋愛事情を面白おかしく描いています。
役のために体重を6kg増やして挑んだレネー・ゼルウィガーがヒロインを、コリン・ファースとヒュー・グラントが恋人を演じ、豪華な布陣です。
監督のシャロン・マグワイアは本作が監督デビュー作で、いきなり成功を収めました。
数々の映画賞を獲得し、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされ、興行的にも成功した「ブリジット・ジョーンズの日記」の気になるポイントを考察していきましょう。
ブリジット・ジョーンズの日記(2001年)
ロンドンの出版社に勤める32歳のブリジットは、ちょっと太めのシングル・ウーマン。
幼馴染のマークとパーティーで出会うものの、第一印象は最悪で終わる。
彼氏ができないまま年を越してしまい、新年の意気込みとして日記をつけ、お酒と煙草を控えて体重を減らそうと誓うのだった。
だがハンサムな上司ダニエルが近づいてきて、彼女に気のある素振りを見せたことでブリジットは舞い上がってしまう…。
ブリジット・ジョーンズの日記(ネタバレ・考察)
「ブリジット・ジョーンズの日記」は細かいトリビアを多く含んでいる作品です。
その中でも注目したい情報をピックアップしてお届けしていきます。
レネー・ゼルウィガーは第一候補ではなかった
今となってはレネー以外のブリジットは想像できませんが、彼女はセカンドチョイスとして選ばれた女優でした。
当初はヘレナ・ボナム=カーター、ケイト・ブランシェット、エミリー・ワトソン、レイチェル・ワイズ、キャメロン・ディアスらが候補だったそうです。
この役が決まったレネー・ゼルウィガーはクイーンズ・イングリッシュの習得、体重の増加など役作りに打ち込み、絶賛されることになりました。
ダニエルとマークは縁が深い
ヒュー・グラント(ダニエル)の生年月日が1960年9月9日、コリン・ファース(マーク)の生年月日が1960年9月10日で、2人は1日違いでこの世に誕生していました。
「ブリジット・ジョーンズの日記」の原作ではブリジットがコリン・ファースの大ファンで、興奮しながらインタビューするシーンもあります。
同じく原作でヒュー・グラントに言及するシーンもあるので、2人はかなり深い縁を持っているのではないでしょうか。
ケンカのシーンはアドリブ
ダニエルとマークが街で喧嘩するシーンがありますが、殺陣などは一切用意されていなかったので、ケンカのシーンはアドリブだそうです。
やたらと画面映えせず地味な格闘シーンだなあと思っていましたが、こういう理由があったのですね。
普段読んでいる新聞が違うなど、二人が対立構造になっていることが、随所に示されています。
ダサいセーターがブームになった
序盤でマークが着ているトナカイのセーターは「アグリー・クリスマス・セーター」と呼ばれ、いわゆる「ダサい服」ですが、一周回ってダサ可愛いとブームになりました。
2010年頃にはAmazonなどで売上が数倍に伸び、アメリカでは12月12日がアグリー・クリスマス・セーターの日として制定されるなど、市民権を得たのです。
エンディング近くでつけている雪だるま柄のネクタイといい、マークのお母さんの選ぶファッションはハイセンス過ぎてやばいですね!
ブリジットが愛される理由
ブリジットは皆に愛されますが、欠点も多く持っています。どのようにして愛されるキャラとして転換しているのでしょうか。
ありのままが良いと言われるブリジットの秘密を考察していきます。
ブリジットの欠点
ブリジットは自分に素直すぎて、嫌いなものに嫌いと言ってしまうところが欠点ですが、自分の意志をきちんと伝えられるとも言い換えられます。
日記をきちんと書き続けられる継続力は評価できますが、内容がメチャクチャですし酒もタバコも減っている様子がありません。
自分で好きになってはいけない、と釘を差している上司ダニエルにおだてられて恋仲になってしまうところは純情なわけでもないのに騙されやすくお人好しです。
友達たちやマークは、そんな彼女は見ていて放っておけない気持ちにさせるのでしょう。
自立した女性としての強さ
30代を超えて恋人募集中ということで頼りなく見えるかもしれないブリジットですが、実は正真正銘のビジネスウーマンです。
家族とのシーンが多いようにみえるため、スネをかじっているようで、大酒飲みでヘビースモーカーなだけで自立しています。
単純に私生活がだらしないだけで、干物女子と思わせておいてガッツはあるし仕事は結構できるタイプなのです。
自分に素直にならないとうまくいかない
出版社からTV業界に転職しようとしたときも、上辺の感想で入ろうとしたときは採用されず、正直に上司との関係を告げたら採用される流れは、素直な自分が一番ということです。
慣れないテレビ業界で大失敗しても、めげずにチャレンジし、マークと良い関係を結んだことで独占スクープも手に入れます。
前向きに生きていれば道は開けるという、監督と脚本家からのメッセージといえるでしょう。
だらしないことに親近感を覚える
ブリジット・ジョーンズの魅力には、美人すぎないため共感しやすいという点が挙げられるかもしれません。
ダイエットしようとしても痩せないし、酒と煙草がやめられず、結婚相手を探しているのに目の前のプレイボーイに釣られてしまいます。
こういうダメ人間具合が鼻につかない程度に散りばめられているので、応援したくなるのです。
うまく行かない人もダメな自分を理解して頑張ればハッピーなエンディングが待っています。
なぜダニエルとの一夜を目前にデカパンを選んだのか
ダニエル対策として、友人からいろいろアドバイスを受けた後、勝負下着としてセクシーなパンツではなく、下腹を補正するデカパンを選ぶブリジット。
なぜセクシーなパンツを選ばなかったのか、ブリジットの思惑を紐解いてみます。
射止められるか自信がなかったので補正下着に頼った
ダニエルを落とそうと思うブリジットですが、あらゆるモーションをかけられても自分に自信が持てないのです。
それはダイエットを遂行できない精神力の弱さで生まれた体型によるコンプレックスから来ているのでしょう。
最大限魅力的な自分を演出するためには、いざというときの下着ではなく、その前の段階の補正下着であるデカパンで自分の魅力をアップさせようとしたのです。
電気を消して服を脱げばバレないと思った
いざ勝負というときに電気を消してしまい、こっそり脱げば大丈夫と思っていたフシがあります。
クソダサいデカパンではダニエルのやる気も萎えてしまうのでは…という心配があったのではないでしょうか。
結果的にデカパンを見られましたが、ダニエルはそれを気に入ってくれたので無事にコトは進んだのです。
マークが言い訳をしなかった理由
マークは若かりし頃にダニエルに妻を寝取られていますが、ダニエルは自分の妻をマークが寝取ったとブリジットに吹き込みます。
この嘘を信じ込んだブリジットは、マークを最低の男として見るようになりますが、何を言われてもマークはそのことについて説明しません。
なぜマークはブリジットに対し自己弁護をしなかったのでしょうか。
いつか真実が明らかになると信じていた
マークとダニエルが大喧嘩したときに、決定的な認識の違いが明らかになります。
マークは誤解されていたことを怒りますが、自己弁護はしませんでした。
これは情報の出どころが明確でないことに対して弁護しても意味がないという判断からではないでしょうか。
ダーシー夫婦のルビー婚式(40周年記念)でマークと再会し、誤解が解け、絆が深まりました。
ナターシャがいたせいで心を決められなかった
強力なライバルであるナターシャが常に寄り添っていましたが、マークの気持ちはブリジットを常に見ていました。
ですがマークの両親であるダーシー夫婦はナターシャを好ましく思っており、またニューヨークへの栄転も決まっていたことでマークは悩みます。
このままナターシャと結ばれるべきなのか?それともブリジットを選ぶべきなのか?マークの心は揺れていたと思います。
最終的にルビー婚式でのアプローチが決め手となり、マークはブリジットを選ぶのです。
新しい日記を買ったわけ
マークはブリジットの日記を見てしまい、彼女の家を出てしまいます。
すぐに追いかけるブリジットでしたが、マークは街にあった文房具屋で、新しい日記を買っていたのです。
なぜ怒らずにブリジットとやり直そうと思ったのかについて考察していきます。
自分の悪い点を見つめ直した
普通の男性であれば自分の悪口を見たら怒ると思います。
ですがマークは、自分について書かれていることを真摯に受け止めたのでしょう。
また日記のシーンには悪口だけしか登場しませんが、それ以外のマークの良かった思い出も記されていたはずです。
マークは人格者である
マークは全編通して怒るシーンが1回しかなく、感情の起伏が少ないように見えます。その分、誠実さを感じさせるシーンも多いです。
マークからしてみればブリジットが過去に自分をどう思っていたかなどは些細なことで、これからの二人の未来をどうしていくかが重要なのだと感じました。
普通の男性だったら怒ってお別れかもしれませんが、マークは人格者として”ありのまま”のブリジットを好きになったのです。
それゆえにブリジットに新しい日記を渡し、これからの未来は良いことで埋め尽くしてほしいと思ったのでしょう。
まとめ
23カ国で大ヒットした原作小説を原作者が脚本に起こし、中のいい人物に監督されるという縁故人事にも程がある作品ですが、結果的に最高の出来になりました。
後にアカデミー主演男優賞を「英国王のスピーチ」で獲得することになるコリン・ファースの抑えめな演技が誠実な人柄のマークを浮き出させており、見ものです。
また2019年の主演女優賞をレネー・ゼルウィガーが獲るなど、アカデミー賞に縁の深い作品となった作品でもあります。
続編をリリースするたびに評価が落ちてしまいますが、本作は本当に名作なので、ぜひ観ていただきたい1本です。
アラサー、アラフォーの女子に刺さる音楽とがんばるブリジットの姿勢に元気がもらえるでしょう。