17歳のカルテ

「17歳のカルテ」は2000年に公開されたアメリカ映画です。

原作は1994年に出版されたスザンナ・ケイセンの自伝「思春期病棟の少女たち」で、ウィノナ・ライダーアンジェリーナ・ジョリーなどが出演、監督はジェームズ・マンゴールドが務めました。

スザンナ・ケイセンの自伝に惚れ込んだウィノナ・ライダーが自ら製作総指揮を務めた作品で、精神科病棟を舞台に、10代の少女達の心の葛藤や揺れを描いたヒューマンドラマです。

そんな彼女が世に送り出した映画「17歳のカルテ」より作品の考察やネタバレ、あらすじ、映画のトリビアなどを紹介していきたいと思います!!

17歳のカルテ(2000年)

物語は、17歳のスザンナ(ウィノナ・ライダー)がアスピリンとウオッカの大量摂取で病院へと救急搬送されるところから始まる。

死ぬつもりはなかったと主張するスザンナであったが、彼女の身を心配した両親はスザンナを“クレイムア精神病院”へと入院させる事を決める。

その病院には様々な事情を抱えた患者達がおり、スザンナは医師の診察で“境界性人格障害”と診断を受けるのであった。

なかなか病院や他の患者に馴染めないスザンナであったが、患者の中でもリーダー格であり、エキセントリックな一面を持つリサ(アンジェリーナ・ジョリー)に惹かれ次第に仲良くなっていく。

しかし、そんなリサの破天荒な態度や言葉がある日、一つの悲劇を生むのであった…。

17歳のカルテ(ネタバレ・考察)

映画17歳のカルテのタイトルと主人公2人出典 : hulu.com

「17歳のカルテ」はシリアスなシーンが続きますが、思春期特有の少女達の心がとても丁寧に描かれている作品です。

今作品からこの映画の小話を紹介していきたいと思います。

なぜ17歳なのか?

「17歳のカルテ」の原題は「Girl, Interrupted」です。

しかし、邦題では「17歳のカルテ」という風になっています。

何故、邦題では「Girl, Interrupted」が「17歳のカルテ」となったのでしょうか

「17歳のカルテ」ではスザンナの年齢は17歳です。

これは原作者のスザンナ・ケイセンが17歳の時に自殺を図り、精神科に入院しているところからタイトルの由来がきているように思われます。

しかし、実は17歳である理由はそれだけではないように考える事ができるのです。

“Interrupted”とは中断などという意味があります。精神科病棟というところが舞台なので、それをわかりやすく伝える為、邦題では“カルテ”として訳したのでしょう

思春期真っ只中の、大人への階段を徐々に登っていく最初の段階である17歳という年齢。

非常に繊細で接するのが難しい年齢ともとれます。

そんな17歳の揺れ動く気持ちを丁寧に描いたのがこの「17歳のカルテ」という映画なのです。

17歳とはやはり難しい年齢という事でしょうか…?
大人に近付いている微妙な年頃といえますね。

出演者も病気であった過去を持っている

自らも境界性人格障害で精神科入院歴のあるウィノナ・ライダー。

そして共演したアンジェリーナ・ジョリーも10代の頃は鬱状態が続く事が多く、死ぬ事ばかりを考えていたという話があります。

彼女達が病気を経験していたからこそ、この映画ではより“精神的な病”というもののリアルさが引き立っているのではないでしょうか。

そして精神の病というものは、誰もがかかる可能性のある病気といえます。

“私は大丈夫”なんていう保障はどこにもないのです。

精神的な病の一つとして統合失調症という病気がありますが、日本では100人に一人、ガンと同じ確率で発症している人がいるという事例があります。

他にも様々な病気がありますが、近年、心の病を患う人は芸能界などでも多く見られるというのが事実です。

この映画は決して他人事の話ではないのです。

辛い過去を乗り越えてきた、ウィノナ・ライダーやアンジェリーナ・ジョリー。

彼女達の迫真の演技に要注目です

彼女達が心の病を患っていたとは知りませんでした!
辛い経験があったからこそ、役にも入り込めたという事もあるのでしょうね。

アンジェリーナ・ジョリーの出世作

この映画はまだ当時無名に近かった、アンジェリーナ・ジョリーを一躍有名にした作品といわれています。

その証拠に彼女は今作品で、1999年度のアカデミー賞やゴールデングローブ賞の助演女優賞を受賞するなど輝かしい功績を収めました。

今作品はウィノナ・ライダーが映画化権を買い取って、製作総指揮も兼任した作品ですが、主役の彼女にはあまり注目が集まらないという結果となりました。

しかし彼女の瞳の演技は素晴らしく、アンジェリーナ・ジョリーに負けず劣らずの魅力を放っています

「17歳のカルテ」が公開されて以降、ウィノナ・ライダーとアンジェリーナ・ジョリー、二人の共演は叶っていませんが、再共演を切に願いたいものです

スザンナが快復できた理由

金網から外を見つめるスザンナ出典 : fictionmachine.com

スザンナはクレイムア精神病院に来て、様々な出来事を経験し、“快復”への道を歩き始めます。

スザンナが快復できた理由とは一体何だったのでしょう?

そこを考察していきます。

きっかけはデイジーの死

デイジーは拒食症を患う少女でした。

そんなデイジーの死のきっかけを作ったのは、リサです。

リサはおそらく皆より早く退院が決まったデイジーに嫉妬していたのでしょう。

父親と近親相姦の関係にある事などを暴露し、その事が原因でデイジーは首を吊って自殺を図ってしまうのでした

スザンナはおそらく、この時初めて身近な人の“死”というものに、遭遇したのです。

そして、死というものは決して綺麗な事ではない事実を再確認したのでした。

自分が永らく執着してきた“死”というもの。

その現実が実際に自分の目の前で起きた事で、ショックと同時にデイジーを助けられなかった罪悪感に襲われました。

そして、自分は絶対にこうならないとスザンナは決意したのです

ここのシーンは実に衝撃的でした!!
泣いているスザンナを置き去りにする、リサの心の闇も見えましたね。

リサに幻滅した

デイジーの死に戸惑うスザンナを置いて、リサは動揺もせずに捨て台詞を吐いて部屋を出ていきます。

その事実があって、スザンナはリサに幻滅したのです。

リサの人間性を疑い、リサと距離を置こうと決意したのでした。

リサがいる限り、自分の病気は良くならない、もしかしたら自分もデイジーと同じ運命を辿ってしまうかもしれないと思ったのです。

スザンナは改めてリサの凶暴性とその内に秘めた狂気を見ました

そして、自分は快復しようと心に決めたのです。

ここがスザンナの転換期となったのですね!
ここからのスザンナの変わっていく様子は素晴らしいです。

看護師の言葉によって救われた

一人でクレイムア精神病院に戻り、デイジーの死に茫然自失となるスザンナ。

しかし看護師であるヴァレリーの、長い間ここにいるリサのようになってはダメだという主旨の言葉を聞いて、快復への希望の道のりを見出していくのです

カウンセリングや医師との診察を真面目に受け、ヴァレリーと約束した日記を書くという習慣を身につけ、徐々に退院へと向かっていきます

問題行動を起こしてばかりいるリサと距離を置き、自分は絶対に立ち直るという固い意志を身につけていくスザンナなのでした。

この病院に長居してはいけないというヴァレリーの言葉にスザンナは勇気を貰ったのです。

スザンナの退院後、リサはどうなったのか?

笑顔を見せるリサ出典 : quotesgram.com

スザンナの退院が決まり、リサはまた問題行動を起こします。スザンナの日記を奪い、それを皆の前で朗読したのです。

スザンナはリサに「あなたはここでしか生きられない!あなたはもう死んでいるのよ!!」との言葉を涙ながらに放つのでした

スザンナの退院後、リサはどうなったのでしょうか?

自分自身を改めて見つめ直した

スザンナは退院の日、リサの元を訪れ手にマニキュアを塗ってあげるのでした。

そしてリサはスザンナに「私は死んでいない」という言葉を、泣きそうなか弱い声で伝えます。

このシーンは二人が仲直りをしたという証のシーンなのです。

リサもリサなりにスザンナの言葉を聞いて、自分が今までにおこしてきた問題行動や、周りの人への態度を改めようと自分自身を見つめ直したといえます

リサが問題行動をおこしてきたのは、周りの人に自分をもっと見てほしい、かまってほしい、そういう欲求の表れだったのではないでしょうか

このままではダメだと認識していたのは誰よりもリサだったのです。

リサはずっと誰かに助けを求めていたのでしょうか…?
そうですね。リサは問題行動を起こす事で自分に注目してほしかったのですね。

時間はかかっても無事退院した

スザンナがタクシーに乗って、クレイムア精神病院を去る時、外の世界で再会できた人もいれば、できなかった人もいた、というナレーションが流れます。

再会できた人の中にはおそらくリサも含まれているといえます

リサは8年という長い歳月をクレイムア精神病院で過ごしてきました。

その為、退院にも長い歳月を要したと考えられます。

しかし、たとえおばあさんになっても、スザンナとリサは再会したのではないでしょうか

そして、もうクレイムア精神病院にいた頃とは違う、気の合う唯一無二の親友になったのでは、と考えられます。

デイジーを自殺に追い込んだり、数々の問題を起こしてきた事を一生抱えて、リサは贖罪の気持ちを持ちながら生きていくのです

それが彼女の運命であり、一生をかけて償っていく事といえます。

映画では描かれていない少女達のその後

この映画は、スザンナが無事病院を退院するところで終幕です。

そして、1970年代にはスザンナと交流のあったほとんどの患者達が、退院という形を迎えた事が映画内で明示されています。

更に!原作ではクレイムア精神病院で一番の問題児であったリサがシングルマザーになっている事が明らかにされているのです!

スザンナとの再会時「私に子供がいるなんて狂っていると思わない?」という冗談交じりの言葉が飛び交うエピソードもあります。

スザンナのルームメイトであったジョージーナも退院後、結婚して素敵な家庭を築いているという描写もあるのです。

映画内でスザンナやリサのその後を描かなかったのは、この先の展開は観客である私達に判断を委ねるという意図があるのではないでしょうか。

観客に発想を委ねる事で、映画内に良い含みを持たせているのです。

原作で明らかにされるスザンナ達のその後がハッピーエンドという事で、この映画の1ファンとして非常に嬉しく感じます。

映画だけでなくスザンナ・ケイセンの書いた実話本も読んでみたい!という方はぜひ両方楽しんでみて下さい。

この映画の世界観を一層楽しめる事間違いなしです!!

「17歳のカルテ」から見えるメッセージ

パジャマ姿で歌うリサとスザンナ出典 : pinterest.jp

「17歳のカルテ」というこの作品は、人はどんな困難に直面しても“何度でも生まれ変われる”という事を伝えたい作品だといえます。

人生は選択の連続です

人は生活していく中で、様々な事を自分で選んで生きていきます

それはごく当たり前の事です。

しかし、その当たり前の事が、当然のようにできなくて苦しんでいる人もたくさんいます

そう考えると、自分の行動を自分で決められるという事はとても幸せな事なのではないでしょうか。

スザンナはクレイムア精神病院に来て、様々な出来事に遭遇し、また一つ大人になりました

心の振り幅が大きかっただけ、人の心が生まれ変われるチャンスやきっかけは、その人が人生の匙を投げない限り無限大にあるという事を、この映画は語っているのです。

まとめ

以上、「17歳のカルテ」から作品の考察やネタバレ、あらすじ、映画にまつわるトリビアなどを紹介してきましたが如何でしたでしょうか!?

ウィノナ・ライダーの吸い込まれるような瞳と、アンジェリーナ・ジョリーの演技の幅広さに釘付けになる事間違いなしの作品です。

心の病気という非常に繊細なテーマを扱った作品ですが、ラストはとてもすっきりした気持ちになれる映画となっています。

そして劇中で使われている音楽、ペトゥラ・クラークの“Downtown(邦題:恋のダウンタウン)”もこの作品に瑞々しさを与えている要注目ポイントです。

それぞれの楽しみ方で、ぜひお家シネマを堪能してみて下さい!!

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