「白夜行」は人気小説家・東野圭吾の同名小説を実写映画化したもので、主演を堀北真希と高良健吾、監督を深川栄洋が務めました。
不遇な殺人事件に運命を翻弄される二人の男女の姿を描いた、サスペンスタッチの映画で、韓国でも映画化されるなど、話題を集めた作品です。
2006年にテレビドラマ化、そして2011年に映画化され、テレビドラマ版と映画版ではストーリーが大きく異なる部分もあります。
第61回ベルリン国際映画祭・パノラマ部門正式出品されるなど、世界的にも注目を集めたこの作品。
今回は映画「白夜行」から映画のネタバレ・考察、あらすじや映画の裏話を、作品の魅力たっぷりにご紹介していきたいと思います!!
白夜行(2011年)
密室の廃ビルで質屋の店主が殺される事件が起きる。
決定的な証拠がないまま、事件は被疑者死亡により解決を見るのだった。
しかし、刑事の笹垣(船越英一郎)だけは何か腑に落ちないものを感じていた。
加害者の娘・西村雪穂(福本史織)と被害者の息子・桐原亮司(今井悠貴)の存在が頭から離れないのだ。
時は経ち、美しく成長した唐沢雪穂(堀北真希)は学園のマドンナ的存在になっていた。
一方、桐原亮司(高良健吾)は事件後実家を離れ、細々と自活をしていた。
独自に、質屋店主の事件を捜査していた笹垣。
19年という歳月をかけて事件は思わぬ方向へと動いていくのであった…。
白夜行(ネタバレ・考察)
ここでは「白夜行」の裏話や小話をご紹介していきたいと思います。
「白夜行」にはどんな隠された裏話があるのでしょうか?
いくつかご紹介していきます。
「幻夜」は「白夜行」の続編!?
「幻夜」は「白夜行」と同じく東野圭吾の代表作である小説です。
2010年から2011年にかけてWOWOWにてテレビドラマにもなりました。
はっきりとは明言されていませんが、この「幻夜」という小説は「白夜行」の続編ではないかと東野圭吾ファンの間で囁かれています。
「幻夜」の登場人物である新海美冬が、雪穂にそっくりであるとの事から生まれたこの噂。
話自体は全く異なったものとなっていますが、「白夜行」に合わせて「幻夜」を読み、東野圭吾ワールドを堪能してみるのもありでしょう。
ドラマ版と映画版の違い
ドラマ版では亮司を山田孝之、雪穂を綾瀬はるかが演じています。
一方映画版は亮司を高良健吾、雪穂を堀北真希が演じました。
ドラマ版は原作と比較してオリジナル感が強く、亮司の視点で作品が進行していきます。
映画版は原作により忠実に作られており、刑事の笹垣の視点で物語が進行していく部分が大きいです。
登場人物や時代設定も異なるところがあるので、ドラマ版を観て、映画を楽しむというのも一つの手法としてありといえます。
主題歌を歌う謎の女性とは!?
映画「白夜行」の主題歌“夜想曲”を歌うのは“珠妃(たまき)”という女性アーティストです。
彼女は当時、デビュー曲が映画の主題歌に大抜擢されるという華々しい経歴を持ちます。
しかしその素顔は謎のベールに包まれていました。
そのベールが段々と解き明かされるにつれて、何とその正体は2011年当時まだ中学生の少女である事が判明したのです。
その美しい歌声は映画のエンディングで堪能できますので、映画の本編と合わせて楽しんでみて下さい。
主演俳優ならではの悩み
「白夜行」の撮影時期、高良健吾は他の映画のキャンペーンで地方を回っていました。
そして堀北真希も他の映画の撮影が重なっており、「白夜行」は内容が重たいテーマの映画だけに、気持ちの切り替えが大変だったそうです。
売れっ子俳優さんならではの悩みですね!!
堀北真希は2017年、俳優の山本耕史との結婚を機に芸能界を引退しました。
しかし、演技力も高く本当に美しい女優さんなので、いつの日かまた芸能界にカムバックしてほしいです!!
雪穂が亮司の事を知らないと言った理由とは?
ラストシーンで雪穂は飛び降り自殺した亮司を知らないと言い張ります。
何故、雪穂は亮司との関係性を隠したのでしょう?
そこを様々な視点から考察していきます!
亮司との約束を守る為
雪穂は亮司の気持ちを誰よりもわかっていました。
亮司の幸せは雪穂が幸せになる事です。
雪穂が感情的になって亮司との関係性を暴露してしまう事があったとします。
そんな事をしても亮司は喜ばないと雪穂はわかっていたのです。
全ては自分が幸せになって亮司との約束を守ろうとして始まった事なのです。
「知らない」というこの言葉は雪穂の亮司への最大限の感謝と最後の亮司への雪穂なりの愛情表現といえるでしょう。
自分自身を守ろうとした
亮司が死んで、自分が「知らない」と言い放つ限り、雪穂は自由の身です。
これからの未来は雪穂にとって、順風満帆といえます。
富と名声を得た今、雪穂にとって怖いものはありません。
亮司の存在を知らないと言い放つ事で、雪穂は自分自身を守り、自分の未来を安泰なものにしていくのでしょう。
そして権力者を味方につけ、益々の富と名声を得ていくのです。
心を殺した
この映画のキャッチコピーは、「殺したのは、心」というものです。
このキャッチコピーの通り、雪穂は心を殺し、人間の心を捨て、“仮面を被った鬼”のようになったのでしょう。
なので亮司の事を「知らない」という台詞を口にできた可能性も考えられます。
小さな頃から背負った十字架は重すぎて、雪穂は人間の心をなくしたのです。
「知らない」という台詞を言い放った雪穂はまさに“悪女”だったのかもしれません。
雪穂と亮司の間に愛情はあったのか?
幼い頃の罪を共有する事で、近しい存在となった雪穂と亮司。
二人の間に“愛情”というものは存在したのでしょうか?
そこを考察していきます。
亮司の事を愛せなかった雪穂
雪穂は幼い頃に受けた経験から、男性を本気では愛せないような印象を受けます。
同じ罪を背負う亮司の事まで、愛してはおらず、むしろ利用する為の手段とも感じ取れるのです。
雪穂の人生を滅茶苦茶にした発端が亮司の父親であった事もあり、憎むとまではいかずとも、雪穂は亮司に対して無関心です。
しかし、小さな頃は自分を大人の魔の手から救ってくれた亮司の事を慕っていたような描写も見受けられます。
幼い頃は淡い感情を抱いていたのかもしれませんが、大人になるにつれ雪穂の亮司への感情は形を変えていくのです。
亮司は雪穂を愛していた
歪んだ愛情ではありますが、亮司は雪穂の事を愛しています。
自分の父親が雪穂に対して行っていた事から罪の意識もあるのでしょうが、雪穂は亮司の初恋の相手でもあるのです。
雪穂の手は汚させず、自分の手を段々と悪事に深く染めていく亮司。
それが亮司の雪穂に対しての歪んだ献身的な愛情なのです。
そして精一杯の罪償いでもあるのでしょう。
不思議な絆で結ばれた二人
小さな頃から同じ罪を共有する事で、まるで家族のような絆で雪穂と亮司は結ばれています。
しかし決してその人生は交わることなく、本当の家族にはなれません。
依存関係のような絆で結ばれた雪穂と亮司。
それはどんな愛情にも形容しがたい不思議な感情なのです。
他人には理解や共感の範疇を超えている不思議な絆で二人は繋がっています。
雪穂と亮司にとっての白夜とは
白夜とは一日中太陽が沈まないか、真夜中になっても薄明になっている状態の事をさします。
二人にとっての白夜は、真夜中になっても薄明かりの状態が続いている事を表しているといえるでしょう。
しかし、雪穂は亮司の死により白夜の状態を抜け出す事がこれからできるともとれます。
亮司は雪穂に太陽の下を歩いてほしかったのです。
自分は太陽の下を最後まで歩けず、薄暗いダクトの中をずっと這いずり回っているような人生でも亮司はそれで良かったと思っています。
雪穂にとって亮司は一筋の光であり、亮司にとっても雪穂は自分を支えてくれる希望の光だったのです。
子役にも注目
この作品では大人パートが大部分を占めていますが、雪穂と亮司の幼い頃を演じる今井悠貴と福本史織の演技にも注目して観てほしいです。
この二人の名演技があるからこそ、大人になった雪穂と亮司の関係性などが非常に丁寧に繊細に描かれている、といっても過言ではないでしょう。
二人のまとったどこか暗く儚げな印象と、目の演技は一度観ると忘れられないものがあります。
この年齢にして、このような非常に重たい内容のテーマを演じるのは難しかったところもあったでしょう。
しかし人の感情に特に敏感な子供だからこそ、感じ取れる部分もあったのかもしれません。
特に亮司が自分の父親を殺害してしまった後、叫びながら凶器のハサミを川で洗うシーンは胸打たれるものがあります。
今井悠貴と福本史織の名演技があったからこそ、この作品は生きて息をしているのです。
ドラマ版もおすすめ
前にも記述したように、ドラマ版と映画版ではキャストも内容自体も大きく変わっている部分があります。
まだ映画版しか観た事のないという方にはドラマ版もおすすめです。
登場人物の心理状態が細かく描かれているのが、ドラマ版の特徴となっています。
また刑事の笹垣を武田鉄也が演じていますが、映画版の船越英一郎とはまた一味違った良さがあるので、そこも見逃せないポイントです。
映画では2時間という枠に収めなければならない事もあり、ぎゅっと物語が濃縮されている感じがあります。
ドラマ版ではそこを、ゆったりと描いているところがあるので、ドラマ未見の方はぜひ視聴してみて下さい。
まとめ
「白夜行」のネタバレ・考察、あらすじや映画の裏話と、一気に紹介してきましたが、如何でしたでしょうか?
テーマが暗く重たいので、観た後に爽快感のようなものは感じませんが、東野圭吾原作の名作中の名作と呼べる映画です。
幼い頃の過酷な経験はこんなにも人の心を壊してしまうのか、と痛烈に考えさせられる映画となっています。
児童虐待などまさに、現代の闇に焦点をあてた映画です。
一度といわず、繰り返し観てほしい作品となっています。