「タイタニック」は、1997年に公開されたラブロマンス・パニック映画です。
公開当時、世界での興行収入が25億ドル(2,625億円)で、「アバター」(2009年)に抜かれるまで世界歴代映画興行収入が12年間第1位を記録しました。
1912年に実際に起きた英国客船タイタニック号沈没事故を基に、貧しい青年と上流階級の娘の悲恋を描いて世界中の人々の涙を誘い、不朽の名作として長く語り継がれる作品です。
監督はジェームズ・キャメロンで、当時まだ世界に知られていなかった主演レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの二人を一気にスターダムへと押し上げました。
そんな「タイタニック」についての魅力を様々なトリビアや考察・ネタバレと併せて紹介していきます。
タイタニック(1997年)
1912年、若き画家ジャック・ドーソンは幸運にもポーカーで勝利し、超豪華客船タイタニック号のチケットを手に入れる。
売れない画家としてその日暮らしの生活をしていたジャックは、タイタニック号と共に夢と希望を抱きアメリカへと向かうのであった。
上流階級の美しい女性ローズは政略結婚を苦にし自殺を図るが、偶然にもジャックによって命を救われる。
次第に惹かれ合う二人、しかしローズには婚約者が、そして二人には身分の差という大きな障害があった。
ひとときのスリリングな恋を楽しむ二人であったが、氷山へと衝突したタイタニック号は海へと沈み始め、船内はパニックと化す。
沈みゆくタイタニック号の中、二人の命運は、そして恋の行方とは…。
タイタニック(ネタバレ・考察)
映画「タイタニック」は様々なトリビアが存在する映画です。
これらを知る事で、もっとこの映画を楽しむ事ができます。
ジャック役は当初マシュー・マコノヒーだった!!
ジャック役として製作会社が推薦したのが、実はマシュー・マコノヒー。
他にもクリスチャン・ベール、ジョニー・デップ、ブラッド・ピット、マコーレー・カルキンらの名前が挙がっていたそうです。
しかし、キャメロン監督はディカプリオを主役にしたいと主張し続けたといいます。
映画の冒頭で、ディカプリオ演じるジャックが、ポーカーに勝ってタイタニック号のチケットを入手し、船首で「世界は俺のものだ!!」と叫ぶシーンがありました。
その時のディカプリオのなんと初々しく希望に満ちている事か!!
当時のディカプリオほど美しく光り輝く俳優が他にいたでしょうか?
キャメロン監督の選択は正しかったといえます。
ローズ役はグウィネス・パルトロウになるはずだった?
ローズ役にも複数の女優が候補に挙がっていて、その中の1人はグウィネス・パルトロウでした。
それ以外にもジェニファー・アニストン、ドリュー・バリモア、クレア・デインズ、アンジェリーナ・ジョリー、ニコール・キッドマンなど、美人女優が候補にひしめいていたそうです。
なぜ、ローズ役はケイト・ウィンスレットだったのでしょうか。
監督が、ローズ役の人物設定をインタビューでこう説明していました。
「陶器のように美しいが、上流階級に属し自由に生きられない」
監督は、手を触れてはいけない陶器のような高貴さをローズ役の女優に表現して欲しかったと思われます。
だからこそ身分違いの恋が際立ち悲劇となるのです。
確かにスクリーンの中のケイト・ウィンスレットは美しく、白い陶器のようでした。
監督の選択はここでも間違っていなかったという事ですね。
ラストシーンの時計が指す2時20分は?
映画の最後、年老いたローズが目を閉じた後、タイタニックの大階段でローズがジャックと再会するシーンで、時計が2時20分を指しています。
これはタイタニックが沈没した時刻だそうです。
また、この映画の上映時間は、2時間40分間です。
この上映時間は、タイタニックが氷山にぶつかってから沈没するまでの時間と同じといわれています。
そして、映画では、見張りの船員が氷山に気付いてから船がぶつかるまでに37秒かかっていますが、実際の秒数も37秒だったそうです。
スタッフのこだわりが感じられますね。
ジョセフィーンとは誰?
ローズが船首でジャックに支えられて手を開き「私、飛んでるわ!!」と言う有名なシーンで、ジャックが「ジョセフィーン」の歌をささやくように歌います。
ジョセフィーンって誰?と思われた方が多いのではないでしょうか。
この歌は、1910年にアメリカで大ヒットした歌「カム・ジョセフィーン・イン・マイ・フライングマシーン」で、「おいでジョセフィーン、僕の空飛ぶマシーンに乗って」とジャックが歌うのです。
この歌はタイタニック沈没後、二人が海に投げ出され、ローズが浮いた板切れに乗って救命船を待っていた時、彼女によってもう一度歌われます。
これは、ローズがタイタニックから救出された後、ジャックとの約束により「貴族の身分を捨て思いのままに広い世界に飛んで行く」事を象徴しているのです。
主題歌を作らない予定だった!!
「タイタニック」製作時、キャメロン監督の構想では主題歌は作らない方針でした。
しかし、音楽担当のジェームズ・ホーナーと作詞家のウィル・ジェニングスは秘密裏に歌姫セリーヌ・ディオンに接触し「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」の曲を完成させたのです。
デモテープを聴いたキャメロン監督が絶賛し、主題歌として正式採用される事になりました。
上流階級マナー指導を徹底されたエキストラたち
通常エキストラは重要な役どころではありません。
しかし、キャメロン監督はエキストラ150人以上と話し、彼らに役名とその役の生い立ちを伝え徹底した演技指導をしました。
さらに一等客や船員を演じるエキストラたちには「上流階級マナー指導」を受けさせました。
どんな小さな役にも妥協を許さない姿勢がうかがえます。
そして、あの優雅な雰囲気作りに成功したのです。
コルセットに象徴される上流階級の縛り
ローズが船内の部屋で、母にコルセットの紐を締めてもらう場面がありました。
母はローズに言います。「もううちにはお金が無いのはわかっているわよね?家名を残すにはあなたがお金持ちのキャルドンさんと結婚するしかないのよ。私を路頭に迷わせたいの?」
この母親のセリフで、ローズの婚約はお金のためでローズの意思によるものではない事がわかります。
彼女は家名のために好きでもない人と結婚しなくてはならなかったのです。
文字通りコルセットで腰を縛り付けられているかのように家名に縛られ、ローズに自由はありませんでした。
「碧洋のハート」青いダイヤのペンダントは実在した?
ローズの婚約者・キャルドンは、青いダイヤモンドのペンダント「碧洋のハート(ハート・オブ・ジ・オーシャン)」をローズに贈りました。
ローズが「このペンダントのみ」を身に着けてジャックに絵を描いてもらうドキドキするシーンがありましたが、このペンダントは、実在するジュエリーではないようです。
ただし、アイディアの基になったのは、生存者の一人ケイト・フローレンス・フィリップスが所有していた青いサファイアのペンダントだといわれています。
このサファイアは彼女と一緒にタイタニック号に乗船していた恋人からプレゼントされたもので、二人は不倫の末にフランスからアメリカへ向かう途中であの事故に遭遇したとの事。
女性は一命をとりとめたものの、相手の男性はその時死んでしまったそうです。
ジャックとローズは架空の人物ですが、モデルはこの二人だといわれています。
緊迫感あふれる映像の秘密
この作品は、アカデミー賞11部門(作品賞、監督賞、視覚効果賞、撮影賞など)を受賞し「ベン・ハー(1959年)」「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003年)」に並ぶ偉業を達成しました。
特に、船内に水が入ってきてから沈没するまでの映像は迫力がありましたね。
当時は、まだCGの技術が発達していなかったので、かなりの部分がセットやミニチュアでの実写で撮影されたといいます。
撮影時の苦労をみてみましょう。
1日で約5,400万円の費用を費やした撮影
本作品の撮影のために、300mのプールにタイタニック号のほぼ実物大の大きさのレプリカが浮かべられました。
このレプリカは、経費削減ために船の右側だけしか建造されていませんでした。
史実では船が左側を接岸したためにサウサンプトン港を出航する時のシーンは、出演者の衣装や看板の文字を左右逆にして撮影し、フィルムを反転したそうです。
このシーンは1日で約5,400万円の費用を費やしたといいます。
ケイト・ウィンスレットは体当たりの演技で肺炎に
船全体を上から撮っているシーンでは、船のミニチュアを撮影して乗船客のCGを入れ込んでいきました。
CGの技術が進んだ現在なら、全てCGで10分の1以下の経費で作れるといいます。
そして、船内の廊下に、どっと海水が入っていく様子は、船内の廊下のミニチュアを作りポンプで水を注入しました。
また、主役二人が船内を逃げ惑うシーンでは、プールにセットを沈めての撮影です。
ケイト・ウィンスレットは、ドレスを着ていたので服の下にウェットスーツが着られず、あまりの水の冷たさに肺炎になりました。
沈没シーンは史実通り
人々が海に投げ出されるシーンでは、船のミニチュアとほぼ実物大のレプリカを使いプールで撮影しました。
監督は水の勢いが十分ではないとして何度も撮り直したそうです。
撮った後、水中に沈んだ船体のセットを油圧ジャッキで浮上させ、濡れた甲板をスタッフがガスバーナーで乾かして再度撮影をし直しました。
また、沈没のため振り落とされる人影はCGでした。
しかし、海面に対してほぼ垂直になった船の甲板を人が滑り落ちる様子は実写で、スタントマンたちがキャスターの付いたソリを身体に括りつけて落下しました。
さらに、晩冬の北大西洋の真夜中の冷気を表現するために、人々の白い吐息をCGで追加したそうです。
これらは、歴史家の立会いの下、ほぼ史実通りに再現されました。
莫大な製作費のために監督は家を売却
映像に徹底的にこだわったため、製作費は膨れ上がり、2億9千万ドル(303億円)までになりました。
製作費としては2009年まで映画製作費歴代1位でした。
監督は自分の給料を返上し、さらに自宅を売却して製作費に当てたという事です。
ドアにジャックも乗れた?
やがてタイタニックは沈没し、ジャックとローズは極寒の海へ投げ出されます。
当時、海へ投げ出された乗船客たちは、10分~20分程度で低体温症により命を落としました。
ジャックは、浮いているドアの板切れにローズを乗せて、自身は板切れに手を掛けて海水に身を晒します。そしてローズを励ますのです。
「約束してくれ。こんなところで君は死ぬんじゃない。この先、子供をたくさん産んで、最後は温かいベッドで死ぬんだ。いいね」
そう言ってジャックは、ついに力尽きるのです。
ここで、ローズが乗っているドアに、ジャックも乗れたのではないか?彼も助かったのではないか?という声があるようですが、ドアに二人も乗ったら重みで二人とも沈んでしまったかもしれないのです。
ジャックはそんなことしません。愛する人を死なせるかもしれないような危険は冒さないでしょう。
彼は、ローズを生かすため自分の死を顧みず愛を貫いたのです。
ローズは泣きながら震える手でジャックの手をドアの板切れから引き剥がし、海中に沈めます。
海中に沈めたというより、「海底を墓に見立てて彼のなきがらを埋葬した」というのが彼女の本当の気持ちに近いのではないでしょうか。
そしてそれはジャックとの約束通り自分の力で強く生きていくと決意した証なのです。
ローズは、ホイッスルを吹いて救命ボートに助けを求め、救助されるのでした。
ジャックの苗字を名乗った理由
ローズは救助されて客船カルパチア号に乗ります。船員に名前を聞かれた時、こう名乗ります。
「私はローズ・ドーソンよ」
「ドーソン」はジャックの苗字です。
ローズがこう名乗ったのは、もう二度と貴族のような自由の無い身分にはならず自分の意思で生きる決意をした事を意味しています。
本当の家名を言ってしまうと、生き残った母親や婚約者に探されて見つかってしまい、また家へと戻されてしまうからです。
そして、「自分をあらゆる意味で救ってくれたジャックとの約束を胸に生きていく」という強い思いが、「ドーソン」と名乗った事に表れています。
折しもカルパチア号は「自由の女神像」を通り過ぎます。
ジャックが目指していた自由を象徴する新天地ニューヨークに着いたのです。
ローズは彼の分まで生きていくと決意したのでしょう。
84年越しの結婚式
1996年、タイタニックの思い出を語り終えた年老いたローズは、ペンダント「碧洋のハート」を海へ投げ入れます。
なぜ思い出のジュエリーを沈めたのでしょうか。
海底がジャックの墓とするならば、ローズが“思い出のジュエリーを供えた”と言えるのではないでしょうか。
そしてジャックとの約束通りに過ごした、充実した自分の人生を写した写真に囲まれて、静かに目を閉じます。
すると、映像は、突然タイタニックの大階段になるのです。
時計の前でジャックが振り向くと、ローズがやって来て二人はキスをします。
乗船客たちが祝福の拍手をして映画は幕となります。
この時、ローズが着ていたドレスが白いドレスだったのがいいですね。
つまり、彼女が着ているのはウェディングドレスなのです。
実現しなかったジャックとローズの結婚式は、この時ローズの心の中で実現しました。
まとめ
ジャックとローズのドラマだけでなく、登場人物の様々な人生のドラマが紡がれる「タイタニック」。
ラブロマンスとパニック要素、歴史的背景が観られる一級のエンターテインメント作品となっています。
アカデミー賞11冠を達成するだけの事はあるこの映画をぜひご覧ください!!