
映画「GODZILLA ゴジラ」は、2014年にアメリカで上映されたSF怪獣映画です。
監督は「スター・ウォーズ」のスピンオフ映画「ローグ・ワン」を手掛けたギャレス・エドワーズ、主演はハリウッドで活躍する日本の俳優、渡辺謙とアーロン・テイラー=ジョンソンが務めています。
本映画は遥か昔から続く怪獣王ゴジラ、そして巨大生物ムートー(M.U.T.O.)の因縁の戦いを現代の地球で描いた作品です。
監督は実際に怪獣が現れた場合に起きるパニックを映画でリアルに描きたいと語っており、その言葉通りに描かれた本映画は高い完成度を誇っています。
そのクオリティの高さに多くの観客が劇場を訪れ、2014年の世界オープニング興行収入1位を記録!!
日本でも2014年7月の映画観客動員数ランキングで初登場1位を記録しました。
世界中の怪獣映画ファンから熱望されたゴジラが遂に復活を果たした映画「GODZILLA ゴジラ」についてを、ネタバレや考察を交えて紹介していきます。
GODZILLA ゴジラ(2014年)
アメリカ海軍所属のフォード・ブロディ大尉は母親の命を奪った15年前の原発事故の真相を知るために、研究者である父と共に日本の原発跡地を訪れた。
現場を調べていくと事故に関する重要な資料を見つけるが、跡地をパトロールしていた謎の武装勢力に拘束されてしまう。
拘束されたフォードらは、怪獣を研究する機関「モナーク」の代表である芹沢博士の元に連れていかれ、そこで彼らは博士に事故の真相は怪獣が起こした物と教えられる。
しかしその直後に巨大な繭から過去の原発事故を引き起こした元凶の怪獣ムートーが羽化し、施設を破壊しながらどこかへ飛び去ってしまう。
芹沢博士はフォードに「ムートーが目覚めた今、怪獣王ゴジラもそれを倒すために目覚めるだろう」と語り、フォードらは怪獣によってもたらされる被害を止めるために動き出す。
そして博士の言葉の通り、ゴジラも永い眠りから目を覚まし、ムートーを倒すために地上で活動を始める。
果たして人類とゴジラは、地球の脅威となるムートーを倒し、平和を取り戻すことができるのか…。
GODZILLA ゴジラ(ネタバレ・考察)
映画「GODZILLA ゴジラ」には、沢山の見どころや、制作の裏話が存在しています。
これらを知っておくことによって、より映画を楽しむことができるでしょう。
初のハリウッド版ゴジラは失敗?
ハリウッド製のゴジラは本映画で2作品目で、実は1998年にローランド・エメリッヒ監督によって制作された「GODZILLA」(1998年)が存在しています。
しかしエメリッヒ監督の「GODZILLA」は興行的には成功したものの、ファンからの評判はとても悪い映画です。
爬虫類を参考にした見た目や、放射熱線を吐かない、ミサイルで簡単に倒されるといった今までのゴジラには無かった要素等により、従来のゴジラから大きく外れた作品になってしまいました。
評判の悪さは2004年に上映されたゴジラの怪獣が一堂に会する映画「ゴジラ FINAL WARS」でも見られ、そこで登場したハリウッド産ゴジラは非常に扱いが悪かったです。
ハリウッド産のゴジラは日本のゴジラに秒殺されてしまう悲しい立ち位置で、彼をゴジラに差し向けた人物にも「やっぱりマグロを食べているような奴はダメだな」と酷評されています。
この様なことが映画で言われたのは、放射能を餌とする日本のゴジラとは違い、エメリッヒ版のゴジラは大量のマグロにおもわずつられてしまう描写があったことを皮肉っているためです。
結果として、記念すべき一作目のハリウッド製ゴジラはファンから駄作の烙印を押され、公式にも黒歴史の様に扱われてしまいました。


ゴジラ、復活
本映画以前でゴジラが最後に登場した映画は「ゴジラ FINAL WARS」(2004年)で、それ以降ゴジラの姿を劇場で見ることが出来ませんでした。
しかし上映から5年が経った2009年にハリウッドで新たなゴジラ映画が制作されるという情報が公開されます。
ゴジラは日本や海外でも人気の高い映画シリーズであるため、この情報が発表された際には、広い層から大きな注目を集めました。
ただし、以前作られたハリウッド製ゴジラの評判を知っている人の間では、本当にハリウッド製で大丈夫なのかと不安を覚える人も出てきます。
期待と不安が入り混じる中、2012年7月にアメリカで開催されたイベントで、新しいゴジラ映画の映像が一部分だけ公開されました。
ゴジラ映画について発表されることを知らなかった観客たちは、最新の技術を駆使して作られたハイクオリティなゴジラの映像に大興奮し、イベントは大きな盛り上がりを見せます。
「ゴジラ FINAL WARS」の上映から約8年、ゴジラはここに復活の産声をあげました。
本気を出したハリウッド版ゴジラ
ギャレス・エドワーズ監督によって制作が進められたハリウッド版のゴジラは、黒歴史となってしまった前作の反省からか制作陣を一新しています。
また、監督や俳優もゴジラ映画への理解を持っている人を多く集めたため、前のハリウッド版ゴジラと比べても多くの日本ゴジラの要素が含まれていました。
ゴジラのフォルムや独特な鳴き声、人類では太刀打ち出来ない強大な怪獣という日本ゴジラにあったさまざまな要素をハリウッドの高い映像技術で再現しています。
そんなゴジラ映画に深い理解や愛情を持っている人たちによって作られた本映画は、世界が求めてきたゴジラにとても近い作品に仕上がっていきました。
そして2014年に遂に完成した映画「GODZILLA ゴジラ」は、上映された劇場が連日満員になる等、興行的にも大成功を収めます。
ファンからの評価も非常に高く、この映画の成功によって、モンスターバースと言われる世界観でつながる続編や前日譚といった映画の製作が続けられることになりました。
正当な続編としても2019年に「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が公開されており、ゴジラ人気は今だに衰えることを知りません。
モンスターバースとは
モンスターバースとはワーナー・ブラザース、レジェンダリー・エンターテインメントといった海外の会社と、日本の東宝株式会社が連携して制作した作品群です。
これらの作品では東宝に登場した怪獣たちや、海外で活躍した怪獣が一堂に集まり、同じ世界観の中で物語が繰り広げられます。
現時点で公開された作品は、2014年の「GODZILLA ゴジラ」「キングコング: 髑髏島の巨神」(2017年)、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019年)の3作品です。
また、2021年の3月には最新作となる「ゴジラVSコング」が上映を控えています。
伏線の様に繋がりが示唆されている作品もあれば、キング・オブ・モンスターズの様に正当な続編になっていることもあるため、これからも楽しみ方が広がってくる作品群です。
怪獣映画が好きという人は、モンスターバースについては是非抑えておくと良いでしょう。
敵怪獣、ムートー
「未確認巨大陸生生命体(Massive Unidentified Terrestrial Organism)」の頭文字を取ってムートー(M.U.T.O.)と呼ばれる雄と雌からなる二匹の怪獣です。
本映画で人類やゴジラと敵対する怪獣として登場し、ゴジラとの激戦を繰り広げます。
ムートーについて
ムートーは3億年前の地球でゴジラとしのぎを削っていた、異様な見た目を持つ怪獣です。
ゴジラに卵を植え付け、寄生するという生態を持っているため、ゴジラとは昔から敵対する関係になっています。
彼らは放射能を餌に生きる怪獣で、約2億年前に起きた隕石の衝突以降は地下で眠っていましたが、核実験の影響で地球の放射能濃度が上昇したことにより覚醒しました。
また、ムートーは繭になって休息している際に人々から攻撃を受けていたため、人類に対しても強い敵意を持っています。
非常に高い身体能力や重火器の攻撃も意に介さない頑丈さを持つ怪獣ムートーは、人類が世界中の軍を総動員しても倒すことは不可能です。
それは人類史で最も凶悪な兵器である核を使っても同じであり、放射能を餌とするムートーを核で倒すことは難しいでしょう。
ムートーの雄と雌について
ムートーは雄と雌で大きく異なる生態を持つ怪獣です。
雄の個体は体長が約60mであり、約110mの体長を持つゴジラと比べるとかなり小柄ですが、その代わりに翼のように進化した腕を駆使して空を自由に飛ぶことが出来ます。
一方雌の個体は飛行能力を持たないですが、約90mというゴジラにも迫る体長を持ち、翼の代わりに発達した4本の足を駆使した肉弾戦が得意です。
彼らはゴジラに対して雄が空から翻弄し、雌は雄が作った隙に強烈な一撃を叩き込むという、非常に息の合った連携を見せました。
ちなみにムートーたちは出会った直後に巣でイチャイチャしだすなど、非常に仲睦まじい姿を見せてくれます。
一部では卵を守ろうと奮闘するムートーや、巣を焼かれたことでゴジラよりも人類を攻撃し始める様子から、ムートーたちによる家族愛を描いた映画と言われることもありました。
ムートーは最後まで大暴れ!
この映画は「ゴジラ」と銘打たれた映画ですが、本作の悪役であるムートーもゴジラに負けない程の活躍を見せています。
実は本映画で最初に登場した怪獣はゴジラでは無くムートーであり、映画に出ている時間もムートーの方が長いのでは無いかと言われるほどです。
また、人類と敵対する理由を特に持っていないゴジラに対して、ムートーは明確に人類に敵意を持つ理由があったため、人類に積極的に攻撃を仕掛けてきます。
そのため今までゴジラが担ってきた人類の敵としての役割を、今回はムートーたちが担っていました。
そしてゴジラとの戦いでも二匹が協力することで、有利に戦いを進めていため、人類の介入が無ければ、ゴジラはもっと苦戦をしていたでしょう。
その様な健闘を見せたムートーたちですが、やはりゴジラには敵わずに2匹ともゴジラに倒されました。
怪獣王、ゴジラ
ゴジラは、この映画の主人公といえる存在の怪獣です。
怪獣王(King of Monsters)という名前を持つにふさわしい、最強の怪獣として描かれています。
ゴジラについて
ゴジラは約110mもの体長を持ち、3億年前の地球で生態系の頂点に立っていた、言わば地球の支配者とも言える怪獣です。
そんなゴジラも放射能を餌とする怪獣で、ムートーと同じ様に地下で眠りについていましたが、度重なる核実験の影響でゴジラも目を覚まします。
地上に出てきてすぐに軍から攻撃を受けますがゴジラは全くの無傷で、さらに攻撃を意識することなく去っていき、その強さを人々の目に焼き付けていきました。
人類史で最も凶悪な兵器である核でさえ、ゴジラにはまるで効果が無くむしろ逆効果であり、人類に対抗する手段は無いと言える怪獣です。
また、歴代のゴジラの得意技に「放射熱線」がありますが、本映画のゴジラは僅か二回しか放射熱線を使いません。
今までのゴジラシリーズとは異なり、放射熱線を撃つためには莫大なエネルギーを消費するので、肝心な場面でしか撃てない必殺技と言える扱いになっています。
ゴジラは人類に殆ど関わらない?
今までのゴジラ映画では、ゴジラは人類と敵対する役割か、新たに現れた怪獣と対峙する際に一時的な共闘関係を結ぶということが一般的でした。
しかし本映画のゴジラは人類と敵対をしておらず、人類に対して無関心であると言えます。
それは人類がゴジラに対して攻撃をしかけても変化せず、人々を無視してムートーを倒しに行ってしまいました。
ゴジラは人間が自身の害にならないと分かっていたため、人類を全く気にかけてないと言えるでしょう。
本作では多くの設定が今までのゴジラに寄せて作られていますが、この点に関しては今までと対照的に描かれているポイントとなっています。
ゴジラはムートーと何故戦うのか?
ゴジラは人類には無関心な一方、ムートーのことを強く敵視していると思われる描写をいくつか見ることが出来ます。
同じく目覚めたムートーたちを追うかの様に永い眠りから目を覚まし、彼らを執拗に追い続け、最後には二匹とも仕留めることに成功しました。
ここまで強く敵視する理由としては、ゴジラがムートーを脅威と認識しているためと考えることができます。
ゴジラはムートーとは3億年前の地球でも敵対しており、彼らの連携にも苦しめられたため、強さを十分に理解しているでしょう。
また、ムートーは眠っているゴジラに卵を植え付け、宿主となったゴジラを殺してしまう、ゴジラにとって恐ろしい生態を持っていました。
この生態のことをゴジラは今までの経験から知っていたため、ムートーに対して強い敵意を持っていたと考えられます。
ゴジラは救世主なのか?
この映画でゴジラは、人類を敵視して地球で暴れ回るムートーを打ち倒す救世主の様に描かれています。
そのため作中でもゴジラは人類の救世主だった?と述べられているほど、人類にとって都合の良い存在でした。
しかし、ゴジラは決して人類の救世主では無いと考えられます。
その理由として考えられるのは、人類に対して関心を持たないことや、ムートーは放置すると自身が危険であるといった点です。
まずゴジラは人間に敵意こそ見せませんが、街を戦場にすることに対しては全く躊躇が無く、ゴジラによる犠牲者も多く存在していました。
ゴジラにとっては人類はアリの様な存在でしかなく、居ても居なくても対して変わらない存在であると考えられます。
これらの要素からゴジラは結果的に人類にとっての救世主になっただけであり、彼は救世主になるという意思は一切持っていなかったと言えるでしょう。
ゴジラの強さの理由
ゴジラはムートーたちの息のあった連携に苦戦を強いられましたが、最終的に勝利を収めました。
最後には圧倒的な勝利を飾ったゴジラの強さの要因を考察していきます。
怪獣単体としてのスペック差
まず挙げられるのが、ゴジラとムートーというそれぞれの種族の持つスペック差です。
ゴジラはムートーよりも優れたパワーや能力を持つ、正に怪獣王の名前がふさわしい存在になっています。
そのためゴジラは単体であればムートーに負けることがまずない強さです。
もしそのような強さを持っていなければ、怪獣王と称されることはないでしょう。
人類の介入
しかしゴジラはムートーたちの息の合った連携によって思わぬ苦戦を強いられてしまいます。
戦況はムートー側が有利になりますが、その戦いに人類が介入したことで戦況に変化が訪れました。
人類がムートーの巣に忍び込んで餌となる核弾頭を回収、更に巣にあった卵を焼き払った時に雌は人類に怒りの矛先を向け、ゴジラとの戦いを放棄して人類に攻撃を始めます。
ゴジラは雌が人類への攻撃をしている隙に、雄を尻尾の一撃でなぎ倒しました。
雄がゴジラに倒された後に戻ってきた雌はゴジラに戦いを挑みますが、一匹ではゴジラに到底敵いません。
最終的にゴジラはムートーの首を掴み、相手の口内に放射熱線を撃ちこむことでムートーを焼き殺しまます。
敵を倒すことへの執念
ゴジラが持っており、ムートーが持っていなかった物、それは敵を倒すことへの強い意志だと考えられます。
ゴジラはムートーが自身に害を成す存在、逆に人類は取るに足らない存在だと分かっているため、最後まで彼らとの戦いに意識を向けていました。
ムートー自体が油断したら負けかねない強力な怪獣であり、もしここで彼らを仕留めることが出来なければ、休眠中に卵を身体に産まれてしまい、餌にされる可能性があるためです。
一方ムートーはゴジラを敵視していますが、それ以上に卵を大事に思い、ゴジラとの戦いの最中にも関わらずそちらに気を取られてしまいました。
それによりムートーたちの連携は崩れてしまい、その時に出来た隙をついてゴジラは雄のムートーを戦闘不能にします。
そしてゴジラに完全にペースを握られたムートーは、ゴジラに成す術なく倒されるのです。
こういった敵に対する意識の差も、最終的にゴジラが勝利する要因の一つになったと考えられます。
ハリウッド映画で見せる渡辺謙の名演
映画「GODZILLA ゴジラ」はハリウッド製の映画であるため、俳優の殆どが海外の人です。
ただ、日本のゴジラをリスペクトしている本作は、日本が重要な役割を持つ場所として登場させていたり、主要人物の一人である芹沢博士を日本人俳優の渡辺謙が演じています。
さまざまなハリウッド映画に出演し、海外でも通用する名演を披露してきた彼の姿を、2014年に蘇ったゴジラ映画でも見ることが出来ました。
余談ですが、ゴジラは英語で発音すると「ガッズィーラ」と言いますが、渡辺謙だけは頑なに「ゴジラ」と呼び続けたそうです。
渡辺謙は「ガッズィーラ」ではなく日本らしく「ゴジラ」と呼ぶべきであると考え、監督らとぶつかりながらも最後まで呼び方を変えることなく撮影に臨みます。
そんな彼の拘った発音は海外でも非常に好評で、世界でも「ガッズィーラ」ではなく、「ゴジラ」という名前で親しまれていることが分かりました。
まとめ
映画「GODZILLA ゴジラ」はゴジラやムートーといった巨大な怪獣によって繰り広げられる、大迫力の戦いが大きな見どころの映画となっています。
ただし、彼らの戦いだけがこの作品の全てではなく、人類の活躍や家族愛なども描かれているためさまざまな楽しみ方ができる映画です。
当時の最新技術を使い、日本のゴジラに限りなく近いゴジラをハイクオリティな映像で表現することに成功した映画「GODZILLA ゴジラ」。
怪獣たちによって繰り広げられる、大迫力な戦い等が好きな人などにすすめができる映画です。