星守る犬(ネタバレ・考察)ただの動物映画ではない!作品から見えるテーマとは?“おとうさん”とハッピーは幸せだったのか?

「星守る犬」は2011年6月11日に公開されました。

漫画家・村上たかし原作の同名映画で、主演は日本が誇る名優・西田敏行、監督は「犯人に告ぐ」「グラスホッパー」「去年の冬、きみと別れ」などの代表作を持つ、瀧本智行が務めました。

失業から一家離散、後にホームレスとなった一人の中年男性と、その飼い犬である秋田犬の心の触れ合いを描いた、涙なしでは観られない感動作です。

映画「星守る犬」から作品のネタバレ・考察、あらすじや映画にまつわる小話をご紹介していきたいと思います!!

星守る犬(2011年)

ある夏の日、北海道の小さな町で死後半年を経過したと思われる男性(西田敏行)の遺体と、死後ひと月の犬の亡骸が発見される。

市役所の福祉課で働く奥津京介(玉山鉄二)は遺棄された車の近くで、男性のものと思われる、数枚のレシートを見つけるのであった。

興味を持った奥津は、そのレシートを痕跡に、ひょんな事から知り合った家出少女の川村有希(川島海荷)と、亡くなった男性、そしてその愛犬が辿った道のりを旅する事になる。

様々な人との出会いを経て、徐々に明らかになっていく一人の人間と一匹の人生。

そこにはあまりにも切な過ぎる出来事と秘密があった…。

星守る犬(ネタバレ・考察)

ここでは「星守る犬」の裏話やトリビアを紹介していきます。

映画「星守る犬」にはどんな隠れたエピソードがあるのでしょう?

原作は売上部数50万部を突破した泣ける漫画!!

「星守る犬」の原作は平成20年度第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品に選ばれた漫画です。

その他にも「ダ・ヴィンチ ブック・オブ・ザ・イヤー2009」の泣ける本ランキング、読者が選ぶプラチナ本の2部門で堂々の1位に輝きました。

また、「このマンガがすごい!2010」オトコ編第4位、「THE BEST MANGA 2010 このマンガを読め!」第5位に選出された漫画でもあります。

そして2013年には英訳版である「Stargazing Dog」が、米国図書館協会の若者向けサービス部門が選出する「12歳から18歳向けの優秀なグラフィック・ノベル2013年」のベスト10にも選ばれたのです。

こうやって見ていくと、「星守る犬」がいかに素晴らしい作品であるかが目に見えてわかります。

実写映画の興行収入も、9億2千万という数字を記録し、たくさんの人に感動を与え、愛される作品となりました。

ハッピーの石像がある!!

西田敏行演じる“おとうさん”と旅を続ける愛犬のハッピー。

何と、ロケ地の一つである北海道・名寄市にハッピーの石像とメモリアル石碑があるのだとか。

なよろ市立天文台きたすばるの正面玄関に設置されていて、メモリアル石碑には出演者である西田敏行と玉山鉄二の手形まで!!

そして、西田敏行と玉山鉄二は名寄ふるさと大使にも任命されました。

ハッピーの石像の除幕式には原作者である村上たかしも参加したとの事で、「星守る犬」のファンなら一度は行ってみたい観光名所となっています。

作品中に登場するひまわり畑の場所はどこ?

映画の中に出てくる何とも美しいひまわり畑は、名寄市の北海道立サンピラーパークというところにあります。

サンピラーパークには、パークゴルフ場、天文台、子どもの遊び場、室内遊技場、キャンプ場などがあり、子供だけでなく、大人も楽しめるテーマパークです。

まるで黄色い絨毯のようなひまわり畑は「星守る犬」を語るうえで、外せない場所となっています。

映画を観て、「行ってみたい!」と思われた方も多いのではないでしょうか?

その年によっても異なりますが、毎年8月上旬〜中旬頃が大体のひまわりの見頃時期となっています。

玉山鉄二演じる奥津の愛車も展示されているとの事で、「星守る犬」のロケ地巡りには欠かせないスポットです!!

震災前の東北の姿が描かれている貴重な映画

今作品は、“おとうさん”と愛犬ハッピーが東京から北海道まで車に乗って北上する形で物語が描かれています。

「星守る犬」というこの映画は、東日本大震災前の東北の様子が記された貴重な映画ともなっているのです。

被災地である福島県郡山市は“おとうさん”役である西田敏行の故郷でもあり、映画の完成記者会見の時には時折声を詰まらせる西田さんの姿もあったとの事。

日本だけでなく海外でも数々の痛ましい自然災害がありますが、東日本大震災も決して風化させてはいけない日本という国の事実です。

「星守る犬」というこの作品の大きな要素は“命”なので、まだまだ復興が完全ではない東北の背景に想いを寄せながら、この映画を観てみるのは如何でしょうか。

今作品から見えるテーマとは?

映画「星守る犬」はただの泣ける動物映画、というイメージを持つ方も少なくはないかもしれません。

確かに、この映画は泣ける要素も含んでいます。しかし、この作品が掲げるテーマはそれだけではないのです。

そこを見ていきましょう。

リストラ・熟年離婚・病気・虐待

長年、勤めてきた会社から、突然の解雇を言い渡された“おとうさん”。

家の事、大事な一人娘の事、奥さんの実家の介護の事を全て任せきりにしていた“おとうさん”は、長年連れ添ってきた奥さんから突然の三行半を突きつけられます。

しかも“おとうさん”は病気を患っていました。

非正規雇用が増えている今、リストラは日本が抱える深刻な問題です。

熟年離婚は夫婦間の事ですが、“孤独死”などにつながる、重大な問題ともいえます。

そして、今、低所得であるが故に、病気でも病院などの医療に繋がれない、という人が増えているのが現実です。

映画では明確に描かれていませんが、“おとうさん”は恐らく心臓の病気を抱えていました。

しかし、お金がない為に、病院を受診する事ができなかったのです。

“おとうさん”はハッピーと旅を続ける中で、コンビニでパンを万引きしようとする少年と出会います。

その少年は身体にあざがあり、恐らく親から虐待を受けていたのでしょう。

少年の味方となって、優しく少年に接する“おとうさん”でしたが、その優しさが仇となり、車の中で寝ている間に少年にお財布を盗まれてしまいます。

「星守る犬」というこの映画は、リストラ・熟年離婚・病気・虐待という現代の日本が抱える問題を丸ごと、わずかな時間の中で描いているのです。

そこがこの映画のすごい部分であり、ただの泣ける動物映画ではない、という事を示しています。

ペットブームにも言及している映画

近年、ペットブームにより犬や猫などの生き物を飼う人は増加傾向にあります。

しかし、ペット達の命を最後まで見届ける人は果たしてその中にどれくらいいるのでしょうか。

「引越しをするから」「大きくなりすぎたから」「上手く躾けられないから」などの人間の勝手な理由で、たくさんのペット達の尊い命が奪われてきました。

昨今、“保護犬・保護猫”などの活動の普及で、ペットショップで買うよりも譲渡会で、という考えを持つ人も増えてきたといえます。

しかし、上記のような理由でペットを手放す人がゼロになったわけではありません。

「星守る犬」の中でもそういった描写があります。

“おとうさん”の娘がハッピーの存在を「大きくなったら全然可愛くないんだもん」とぴしゃりと言い放つ場面があるのです。

何とも無責任な発言といえます。

ペットは家族の一員です。世話が出来ないのなら、最初から飼うべきではありません。

「星守る犬」というこの作品は近年のペットブームに疑問を投げかけているような作品でもあるのです。

ペットの殺処分数は年々減少傾向にあると聞きましたが…?
そうですね。テレビなどのマスメディアの影響力もあるのか、殺処分ゼロの県もあるのですよ。
しかし、我儘な理由でペットを手放す人がいなくなったわけではありません。難しい問題ですね。

“おとうさん”とハッピーが残したもの

市役所勤めの奥津と、家出少女の有希は“おとうさん”とハッピーが辿った道を追いかけ、その中で様々な人と出会います。

奥津も昔、クロという犬を飼っていました。

しかし、愛し方がわからず、奥津はそのまま死んでしまったクロに対してずっと後悔と罪悪感を持っていたのです。

奥津の台詞で「もっと恐れず愛すればよかった。」という言葉があります。

これは“おとうさん”とハッピーが奥津に教えてくれた大事な教訓なのです。

この「星守る犬」という映画は“おとうさん”とハッピーの人生を描いているだけではなく、奥津や有希の成長を描いた物語でもあります。

そして、無縁仏になってしまった“おとうさん”とハッピーの人生は決して不幸なものではなかったという事を記した作品でもあるのです。

よく、世間では「孤独死は可哀相」というような意見を度々耳にする事があります。

しかし、“おとうさん”とハッピーの場合は決して可哀相ではない人生だったといえます。

相思相愛の飼い主と一匹の犬。映画の終盤の奥津の台詞にもあるように、不幸か幸せかというのは、亡くなった当人達が決めるものなのです。

「星守る犬」おすすめポイント

この映画のおすすめポイントは、最後まで“おとうさん”に忠実であった、ハッピーの名演技がまず一つの要素としてあります。

ハッピーが“おとうさん”の死後も近くのキャンプ場で、食べ物を持ってきて車に戻ってくる姿は、非常に心打たれる名シーンです。

そしてハッピーの死因は、キャンプ場で野犬と勘違いされ、薪を投げられ怪我をした事による失血死でした。

大怪我をして、“おとうさん”の乗っている車に戻ったハッピーは、最後まで飼い主への忠誠心を忘れず息絶えたのです。

この作品は、動物の映画=泣けるというイメージだけを詰め込んだ映画ではありません。

動物の無償の愛、そういったものを超えた人とペットの固い絆を描いた作品なのです。

因みに「星守る犬」というタイトルは、“犬がもの欲しそうに星を見続けている姿から、手に入らないものを求める人を指す”という意味なのだとか。

慣用句で、高望みをしている人の事を指すのだそうです。

西田敏行のさすが!といえる安定の演技と、ハッピーの名演技が混ざり合わさって、いい相乗効果をもたらしています。

まとめ

以上、映画「星守る犬」からネタバレ・考察、あらすじや、作品の小話を紹介してきましたが、如何でしたでしょうか!?

この「星守る犬」という作品は原作の漫画もとても素晴らしいので、映画と合わせて楽しんでみて下さい!

“おとうさん”とハッピーの絆を強く感じられるおすすめの1本です!!

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