サスペンス・ミステリー

独特の緊張感や張り巡らされた謎や犯人考察を楽しむミステリーと、ハラハラしながら映画に没入していくサスペンスは似て非なるものです。

ですがどちらも脚本や映像に仕掛けられたトリックで観客を揺さぶるという意味では共通しています。

ここでは歴史的名作から最近話題になった作品まで10本を取り上げて紹介していきますので、お気に入りが見つかれば幸いです。

ちょっと頭を使った映画を見てみたいと思ったら、こちらの記事を参考にしてください。

なお核心に触れる可能性がある場合は【ややネタバレあり】と記しますので、注意してご一読をお願いします。

羊たちの沈黙(1991年)【ややネタバレあり】

あらすじ

女性を誘拐し皮膚をはぐ連続殺人鬼バッファロー・ビルを逮捕するため、FBI捜査官見習いのクラリスは刑務所に収監されているレクター博士から意見を聞くために会いに行く。レクター博士は食人癖を持つ異常者だが、その天才的な知能と教養の前に、クラリスは段々と心を開いていく…。

おすすめポイント

アカデミー賞主要5部門を受賞した、ホラー・ミステリーの名作です。ちなみにアカデミー賞を獲得したホラーは本作だけとなっています。

班員であるバッファロー・ビルを追い詰めるべく異常者であるレクター博士の知恵を借りるのですが、レクター博士の怪物ぶりがとにかく印象的です。

2時間の映画でわずか20分弱しか登場シーンがないのに、圧倒的な存在感のせいで観た人はハンニバル・レクターの映画だと思い知らされます。

2つの事件が並行して動いていき、犯人を見つけるまでの流れは本作でしか楽しめない高揚感と恐ろしさを持つのです。

レクター博士は尊敬するものを愛し、それ以外の人間は食料としかみなしていないのがわかるエンディングは恐怖を覚えずにいられません。

今観てもさすがと思わせるカメラワークや演技、脚本などキャラクターの魅力だけではない奥深さを持った作品です。

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おすすめVOD 作品有無 無料体験期間 月額料金
U-NEXT 31日間 2,189円(税込)
Hulu × 14日間 1,026円(税込)
Netflix × 880円(税込)
amazon Prime Video × 30日間 500円(税込)
※一部有料作品の場合がございます。

真実の行方(1996年)

あらすじ

シカゴで大司教が殺され、侍者だったアーロンが現場から逃走し逮捕され、名声を求める弁護士マーティンが売名と知りながら無償でアーロンの弁護を引き受ける。だがアーロンの精神分析結果から驚きの事実が明かされる…。

おすすめポイント

リチャード・ギア主演のミステリー大作ですが、登場人物がみな善悪の顔を持っているのが特徴的な作品になります。

名声欲しさに悪人相手でも弁護を引き受ける汚れ弁護士と思いきや心に純なものを持っているリチャード・ギアと、善なる心に悪を潜ませるエドワード・ノートンの対比がすばらしいです。

特にエドワード・ノートンの心理変化による演技の幅は鬼気迫るものがあり、彼の出世作といわれるのも納得の仕上がりになっています。

また映画のほとんどを占める法廷シーンの緊迫感はリアリティがあり、新たな証拠が登場するたびに変化するバトルも見ものです。

最後までオチを読ませない脚本の妙と、俳優たちの熱演でミステリ物としての代表作になりました。

謎が明らかになる瞬間、「騙された!」と膝を打つであろう本作は切ないエンディングも含めて一度観てほしい作品なのです。

シックス・センス(1999年)

あらすじ

過去に担当していた患者に撃たれた小児精神科医のマルコムはリハビリを果たした後、救えなかった患者と同じ症例をもつ少年の治療に当たる。少年は死者の魂を見ることができる”シックス・センス”を持っていると告白するのだが…。

おすすめポイント

どんでん返しといえばこの作品が挙がるほどの名作ホラー・ミステリーです。

叙述トリックをカメラワークで作り上げるという至難の業をナイト・シャマランは本作で成功させました。

上映当時は口コミで凄さが伝わり、リピーターも増えましたが秘密は守られたまま観客が増えるという非常にリテラシーの高い映画だったのです。

単純に驚かせるだけでなく、マルコムと少年コールとの心の交流、幽霊とコールの交流など相互補完があり、ホラーなのに泣けます。

ぜひネタバレ無しで観ていただきたいので、”ネタバレ”というキーワードは避けて映画をご確認ください。

最初に観たときと、2回目以降に見たときで印象がガラッと変わる映画として、ぜひ2回は観ていただきたい作品です。

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メメント(2000年)

あらすじ

10分間しか記憶を保持できないレナードは、その原因となった妻を殺害し自分に障害を負わせた一人の男を殺す。だがその真相は果たしてどうだったのか?10分ごとの記憶を巻き戻しながら、レナードを取り巻く人間たちの思惑が明らかになっていく…。

おすすめポイント

10分間しか記憶を保持出来ない男が、妻を殺した犯人を探すために奔走する時系列ミステリーになっています。

最初に回答が出ていると思っていたことが、記憶を巻き戻すことによって欠けていたピースが埋まっていき、最後に真相が明らかになるという仕組みが複雑ですが新鮮です。

記憶障害の男がいかにして復習を成してきたのかの仕組みとともに、登場人物たちがレナードをどうやって利用してきたかが分かるプロットを作った脚本がすごすぎます。

監督のクリストファー・ノーランは弟のジョナサンが書いた短編から本作を思いついたそうですが、撮影しているスタッフたちは脚本を理解せずに撮影していたそうです。

これを頭の中で完成させて撮影し、編集した監督の脳の構造が知りたくなる難解さですが、情報を整理すると全く無駄がなく完璧な出来栄えになっています。

この凄さは文章だけでは絶対に伝わりきらないので、ぜひ実際に観ていただいて本作だけの魅力を感じてください。

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ダ・ヴィンチ・コード(2006年)

あらすじ

ルーブル美術館のソニエール館長が何者かに殺害され、現場に残されたメッセージからハーバード大学のラングドン教授に協力要請が届くが、実は殺人容疑をかけられていた。暗号解読の専門家で、ソニエール館長の孫娘であるソフィーとラングドン教授は、様々な追手から逃亡しながら謎を解いていく…。

おすすめポイント

キリスト教に秘められた謎を、暗号を解き明かしながら追っていく、歴史と美術をテーマにしたミステリーです。

ルーブル美術館から始まり、ヨーロッパを股にかけるロケ地の美しさと、壮大な謎の深遠さが圧倒的で、観るものを惹きつけてやみません。

レオナルド・ダ・ヴィンチの謎と宗教の歴史が絡み合ったシナリオは、歴史好きはもちろん興味がない人も引き込まれます。

幾重にも張られている謎は、ミステリー好きにはたまらない重厚さを持っているのです。

単行本が発行されたとき、キリスト教会から激しい非難を受けた先進的な内容と歴史をめぐる謎の楽しさは、それだけで美術品のような完成度を持ちます。

原作小説も面白いですが、しっかり映像化で成功している本作もぜひチェックしておきたい作品なのです。

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シャッター・アイランド(2009年)

あらすじ

連邦保安官のテディは、相棒のチャックと精神病院患者の監獄であるシャッター・アイランドで女性患者が逃走したという報告を受けて調査に乗り込む。医師、職員、患者の全てから違和感を感じたテディは、この島に隠された秘密を暴くべく行動を開始する…。

おすすめポイント

マーティン・スコセッシ監督のミステリー映画で、映画のラストについて語ってはいけないタイプの作品です。

レオナルド・ディカプリオ演じるテディは孤島の病棟で聞き込みをしていくのですが、全員が何かを隠しているように見えます。

このことが気になり、相棒のチャックと共に病棟を探りますが、嵐の中で混乱が発生し、物語は急速に動き始めるのです。

画面の効果や演出にクライマックスのヒントが隠されている映画なので、登場人物の目線やアイテムの配置などに気をつけて観賞しましょう。

エンディング前までに謎が分かった人は、自慢していいでしょう。筆者は騙されました。

ラストを理解した上でもう一回観て、演出の妙を楽しめる作品になっていますので、複数回の観賞をおすすめします。

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ミッション:8ミニッツ(2011年)【ややネタバレあり】

あらすじ

多くの乗客の命を奪ったシカゴ行き列車の爆破テロ事件を阻止するべく、乗客の1人の意識に入り込み、テロ犯と爆弾の行方を追い続けるミッションを課されたコルター。何度も入り込むうちに、意識の中にいる交際相手が気になるようになり、なんとか彼女を救おうとするのだが…。

おすすめポイント

起こってしまった爆発を時間を巻き戻って止めるというSF要素の強いサスペンスです。

パラレルワールドがどんどん発生していき、何度も失敗を繰り返しながらも最後の8分間を繰り返すという過酷な任務に挑む男をジェイク・ギレンホールが熱演。

シカゴで発生している連続テロを阻止するためには爆弾の解除と犯人の発見が必須になるのですが、繰り返しダイブして少しずつ真実に近づく様は手に汗握ります。

一方でコルターの正体に気がついたときに、観る人全員があっと驚くことになるでしょう。

人間の尊厳というテーマに加えて画面の構成と緊張感を楽しめれば深く染み入る作品になっています。

エンディングは温かい未来を感じさせるものになっているので、ハッピーなサスペンスを見たいなら本作がおすすめです。

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アルゴ(2012年)

あらすじ

1979年、イラン革命のさなかで過激派がアメリカ大使館を襲撃し、大使館員を人質に取るが、6名は裏口から脱出していた。カナダ大使の家に身を隠すが、見つかるのは時間の問題。人質奪還のプロであるトニーはウソの映画をでっち上げイランに入国し、6名を映画スタッフとして出国させるというものだが…。

おすすめポイント

2013年度のアカデミー作品賞を受賞したサスペンスで、実話を元に作られているのが特徴です。

ウソのような本当の話で、現在も根強く残るアメリカとイランのしこりを感じさせる作風になっています。

カナダの協力を得てウソの映画会見を演出し、そのために脚本や絵コンテまで用意して潜入するのですが、失敗すれば死を免れないという緊迫感が随所にあるのです。

危機に次ぐ危機に、手に汗握ること間違いなし。アカデミー賞を獲るだけのことはあり、最後までテンションが維持されダレずに見続けられます。

映画として脚色されており、イランを一方的に悪者にしてるため批判されることも多い本作ですが、映画としては一級品です。

イラン革命の情報を勉強した上で観られればより深く楽しめるのではないでしょうか。

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ブリッジ・オブ・スパイ(2015年)【ややネタバレあり】

あらすじ

冷戦時代、米国に潜入していたロシア人スパイの弁護を担当することになったジェームズは、アメリカ人スパイに万が一があったときのために交換人員として生かすべきと強硬派を退け、スパイの命を守る。そしてアメリカ人パイロットがロシアで撃墜され、人質交換が始まるのだが…。

おすすめポイント

スティーブン・スピルバーグ監督が送るスパイ・サスペンス(スリラー)です。

ソビエトのスパイであるアベルを演じたマーク・ライランスは本作でアカデミー助演男優賞を獲得しており、納得の演技を見せます。

ジェームズとアベルが交流する中で培っていく友情は国境を超え、最終的に国をも救います。

アベルが友情の証に絵を送るとき、ジェームズはプレゼントを考えてなかったといいますが、「もうもらっているよ」と応えるアベルの表情は素晴らしい味わいです。

スパイを救う友情が、結果的に味方を救うことになり、味方を救ったことで周囲から迫害されず認められるようになるジェームズの変化も見逃せません。

謎解きはないですが、ハラハラ感を持って進むストーリーは最後のシーンに余韻を残して終わり「これぞ映画」という醍醐味です。

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パラサイト 半地下の家族(2019年)

あらすじ

キム家の4人は全員が失業中。ある日長男の友人が訪ねてきて、お金持ちの家の家庭教師を依頼され、引き受けたことで金持ち家族の信頼を得る。長男はお金持ち一家を騙しながら妹や父を美術の先生や運転手として雇わせ、金持ち一家に”寄生”していくのだが…。

おすすめポイント

初めて英語ではない作品がアカデミー作品賞とカンヌ映画祭のパルム・ドールを同時に獲得した歴史的なサスペンス映画です。

前半はブラックコメディで始まり、笑えるのですが、後半に行くにつれて”格差”をテーマにした作品の本性があらわになっていきます。

貧困層は下に降りていき、上流階級のものは上がっていく、という格差の比喩がなされている階段の表現など、観るべき部分は多いです。

インディアンにハマッている金持ちの息子と、アメリカかぶれの母親というシニカルな関係性もメッセージを多分に含んでいます。

数多に張られている伏線が終盤に向けて見事に回収されていく様は、評価されるだけのことがあるのです。

1回だけでは伏線を観きれないかもしれないので、複数回チェックして構造の巧みさを堪能してください。

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まとめ

どの作品も深い考察が可能で、観終わったあとに感想会が捗る作品ばかりです。

友人と併せて観て語るのはもちろん、観終わったあとにシネマキナの記事などをチェックしていただければより深く楽しめるでしょう。

真相などには触れていませんが、【ややネタバレあり】の項目では推測できるヒントになりうる単語が入っています。

ヒント程度なら平気、という気にならない方は戻って一読いただければ幸いです。

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