ネオンをバックにこちらを見つめる探偵帽のピカチュウ

映画「名探偵ピカチュウ」は2019年5月に全世界で上映されたアクション・ミステリー映画です。

世界的に有名なゲームである「ポケットモンスター」(ポケモン)を、ハリウッドが題材として扱った初の実写映画となっています。

監督はロブ・レターマン、主演はジャスティス・スミスとライアン・レイノルズが務めました。

ポケモンという大きなコンテンツにハリウッドの最新技術が合わさり、大きな話題を呼んだ「名探偵ピカチュウ」。

そんな「名探偵ピカチュウ」について、探偵ピカチュウがしゃべる理由や、彼が持つ魅力についてなどを紹介していきます。

名探偵ピカチュウ(2019年)

主人公のティム(ジャスティス・スミス)はかつてポケモンが大好きな少年だった。

しかし、父のハリーがポケモンに関わる事件へ没頭して家に帰らなくなったことが原因でポケモンを嫌いになってしまう。

それから長い年月が経ち大人になったティムの元に、ハリーが事故で死亡したという連絡が届く。

音信不通だったハリーの訃報に複雑な思いを胸に残したまま、ティムはハリーの家があるライムシティへと向かった。

残されたハリーの部屋を片付けるティムの前に探偵帽を身につけ、人の言葉をしゃべるピカチュウ(ライアン・レイノルズ)が現れる。

更にピカチュウが「ハリーはまだ生きている」とティムに告げて、彼らはハリーを探すためにコンビを結成することに。

ハリーはどうして姿を消したのか? ライムシティで起きた事件の真相とは?

彼らは街にうごめく陰謀を解き明かして、ハリーを見つけられるのか…?

名探偵ピカチュウ(ネタバレ・考察)

映画「名探偵ピカチュウ」はポケモンたちが生み出すさまざまな魅力にあふれている作品です。

そんな本映画に秘められた、制作の裏話や映画の見どころなどを紹介していきます。

魅力あふれるハリウッド版ピカチュウ!!

本映画で特に注目されているキャラクターは、やはり探偵帽をかぶったおじさん声のピカチュウでしょう。

このピカチュウは、原作を強くリスペクトするスタッフたちがあえて普通のピカチュウからかけ離れた声や性格にしたのです。

ピカチュウの声はアニメなどでピカチュウを演じる声優、大谷育江の「ピカピカ!」という声ではなく俳優のライアン・レイノルズによるかっこいいなおじさん声となっています。

他にもコーヒーを美味しそうに飲んでいたり女性をナンパしようとするなど、あまりにもピカチュウとは思えない行動の数々に思わず驚かされることでしょう。

ただ、ピカチュウという大人気のポケモンをこのような声や性格にして大丈夫なのかという声が一部であがりました。

しかし、そんな前評判とは異なり探偵ピカチュウは非常に好評で、世界中で高い人気を集めたのです。

探偵ピカチュウはそれほど大きな話題を呼んだキャラクターなのですね!
特にしわしわ顔をしたピカチュウは、公開時にSNSで一大ブームになりましたよ。

ポケモンをリスペクトする制作陣

「名探偵ピカチュウ」に携わるスタッフたちはポケモンというコンテンツについてよく理解し、深い愛情を持って映画を制作していました。

彼らは原作アニメやゲームのオマージュを丁寧に描写し、映画に上手く取り入れることに成功しています。

例えば主人公がピカチュウ、ヒロインがコダックをパートナーにしているのは、初代ポケモンアニメの主人公、サトシとヒロインのカスミを意識した組み合わせです。

また、映画冒頭でティムはカラカラというポケモンに出会いますが、その何気ない一場面にもそのポケモンを選んだ理由が込められていました。

カラカラは亡くなった母の頭蓋骨を被って暮らす生態から「こどくポケモン」といわれています。

ティムの前にカラカラを登場させたのは、親を亡くした孤独になったティムの境遇と似ていたためでしょう。

ポケモンの生態をよく理解していないと、このようなキャスティングはできません。

本作はスタッフたちのポケモンに対する強い思いが伝わってくる映画だといえます。

映画の原作になったゲームがある?

実は映画「名探偵ピカチュウ」には原作となったゲームがありました。

ポケットモンスターシリーズの外伝作品「名探偵ピカチュウ~新コンビ誕生~」(2016年)と、完全版として販売された「名探偵ピカチュウ」(2018年)の2つがあります。

主人公と探偵ピカチュウのコンビが、街で起きた事件を協力して解決する謎解きアドベンチャーゲームです。

このゲームでは探偵ピカチュウの映画でみられなかった姿を見られたり、映画の舞台となったライムシティをピカチュウと共に冒険をしたりできます。

また、映画で語りきれなかった世界観なども細かく描かれており、より「名探偵ピカチュウ」への理解が深まることでしょう。

映画を観る前に遊んでみるのも非常におすすめです。

主人公がポケモン嫌い…?

従来のアニメ・映画のポケモン作品の主人公はサトシという、ポケモンがとても大好きな少年です。

しかし本映画の主人公ティムはポケモンが嫌いになってしまった青年であり、従来のポケモン映画とは大きく異なる雰囲気を持っています。

ティムは元々ポケモントレーナーになるのが夢だと語るほどにポケモンが大好きな少年でした。

ただ、父のハリーがポケモンに関わる事件で家に帰ってこなくなり、父を取られたと思ったティムはポケモンを遠ざけるようになるのです。

この映画はそんなティムが、ポケモンが好きな心をいかに取り戻していくかも重要な要素となっています。

現実でポケモンを描くために…

ポケモンを実写化するにあたって、一つの大きな問題がありました。

その問題とはポケモンたちを実写映画に落とし込む時に、違和感が出ないようにすることです。

アニメのような質感で描写すると、どうしても実写映像の中でポケモンたちの存在が浮いたものになってしまいます。

そこでスタッフたちは動物や植物、鉱石などが持つ自然な質感に注目しました。

素材が持つそれぞれの質感を登場ポケモンたちに一つずつ当てはめていき、どれが一番合うかを細かく検証していくことで解決します。

例えばトカゲがモチーフのリザードンは爬虫類に近い質感に、ネズミポケモンであるピカチュウはふわふわな毛が生えて、たねポケモンのフシギダネは植物を元にした感触など…

このような作業をすべてのポケモンに行い、それぞれが特徴的な姿へと仕上げられていきます。

そして現実によく馴染んだポケモンたちは、作中で多種多様な活躍を見せてくれました。

ただしバリヤードというポケモンだけは、この法則から外れたキャラ作りをされていますよ。

探偵ピカチュウの持つ秘密について考察!

このピカチュウは探偵帽をかぶりティムと会話ができる、とても不思議なピカチュウです。

そんな探偵ピカチュウが誕生した経緯やティムと話せる訳、最後はどうなったのかについてを考察していきます。

ハリーとピカチュウが巻き込まれた事件?

映画で活躍するピカチュウは元々探偵姿でもおじさん声でもない、普通のピカチュウでした。

そんなピカチュウが映画のようになった理由はティムの父、ハリーがミュウツーというポケモンを探す依頼を受けたことがきっかけです。

ハリーはミュウツーについて調べていきますが、依頼主がミュウツーを悪用しようとしていることに気づき、施設で捕まっていたミュウツーを救出します。

その施設から逃げ出す際にハリーは施設の追手に攻撃され瀕死の重傷を負ってしまいますが、そこをミュウツーによって助けられました。

ミュウツーはそんなハリーに対して自分の持つ魂をポケモンに移す能力によってピカチュウの体に魂を移動させます。

そして一連の事件を解決してもらうために、ハリーに息子であるティムを連れてくるように伝え、ミュウツーは追手から逃げるために姿を消しました。

こうしてハリーの魂が入ったピカチュウが誕生し、ピカチュウがティムと出会ったことで物語が始まります。

ピカチュウがティムとだけ話せる訳とは?

こうして生まれたハリーの魂が入ったピカチュウですが、普通のピカチュウと違いとてもおじさん臭い性格です。

また、どういう訳かティムとだけはおじさんの声で会話ができて、他の人には「ピカピカ!」というかわいらしい声にしか聞こえません。

このピカチュウがティムとだけ会話ができるのは物語の鍵を握るポケモン、ミュウツーが関係しています。

ピカチュウに起きた不思議な現象は、ミュウツーの持つ特別な能力の影響を受けたことが影響しているのです。

ミュウツーは魂を移す能力の他に、テレパシーや念力などの超能力を使えます。

そこでミュウツーの持つテレパシー能力が、ハリーの魂をピカチュウに移す際に少しだけ渡ってしまったのではないでしょうか。

ただし、魂を移されたピカチュウはティムを除いた人と話ができませんでした。

これはテレパシー能力が不完全な状態でピカチュウに渡ったためであり、家族という強いつながりを持つティムとだけは会話ができたと考察できます。

ハリーとピカチュウのその後は?

ところで魂を移されたハリーの体と、ピカチュウに元から入っていた魂はどうなったのでしょうか。

ハリーの体は瀕死の重傷を負っていたため、ミュウツーが魂をピカチュウに移した後は、安全な場所で傷を癒やしていました。

そして黒幕の野望を打ち破り事件がすべて解決した時に、ハリーはミュウツーの能力で元の体に戻してもらいます

一方ピカチュウの魂は、映画中に表に出てくることはありませんでした。

ただしハリーの言動から彼は普段コーヒーを飲まないことが判明するため、コーヒーが好きな性格はピカチュウが持つ元々の性格だと考えられます。

そのためピカチュウの魂は、ハリーが入っている時は表にほとんど出てきていなかっただけでしょう。

また、事件解決後はティムに対して「ピカピカ!」という声をあげていたため、ピカチュウはミュウツーによって元に戻されていることが分かりました。

「名探偵ピカチュウ」本編流出事件!?

実は本作の上映前に映画の全編がYouTubeに投稿されたという騒動が起きます。

ハリウッドが大金と時間をかけて作った映画がもしネットに流出してしまったのであれば、今までにない規模の大事件です。

ただこの事件は公式が仕組んだプロモーションであり、実際に公開されていた映像は本編と全く異なるものでした。

2時間近い映像の冒頭1分は映画序盤を思わせる作りになっていますが、それ以降の映像はずっとピカチュウがひたすら踊っているだけです。

2021年4月の時点で約3,500万再生もされ、SNSで大きな話題を呼んだこの騒動は、本映画に対する期待がとても大きかったことを示しています。

名作映画のオマージュがあった!?

実は「名探偵ピカチュウ」の中にいくつかの名作映画をオマージュしたネタが含まれていました。

そんな本映画が作品に取り込んだネタについてを紹介していきます。

「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」(1998年)

冒頭でミュウツーが実験設備を破壊して逃亡する場面は、映画「ミュウツーの逆襲」のオマージュになっています。

監督は参考にした「ミュウツーの逆襲」の作画を忠実に再現したと語るほど、手間をかけて作られた一場面です。

「ホーム・アローン」(1990年)

ハリーの部屋でテレビに映っているギャングの映像は、映画「ホーム・アローン」の劇中で使われていたドラマと同一の映像です。

「ホーム・アローン」で使われていた劇中ドラマは映画「汚れた顔の天使」(1938年)のパロディであり、「名探偵ピカチュウ」は2重のパロディになっています。

「エイリアン」(1979年)

天井から液体が垂れてきて、上を向くとゲッコウガというポケモンが襲ってくるという場面は、映画「エイリアン」を始めとしたモンスター系ホラーの定番演出です。

まとめ

映画「名探偵ピカチュウ」は、もし現実にポケモンがいたらどのようになるかを描いた作品です。

リアルでありながらもかわいい・かっこいいポケモンたちの姿に、思わずとりこになってしまうでしょう。

また、ティムとピカチュウのコンビが活躍する推理パートや、ポケモンによって繰り広げられるバトルやアクションも見どころです。

そして物語が分かりやすく描かれているため、元からポケモンが好きな人も興味を持っていなかった人も、この映画は楽しんで観ることのできる作品になっています。

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