「僕だけがいない街」は2016年3月19日に公開されました。
漫画家・三部けい原作の同名映画で、主人公に藤原竜也、ヒロインを有村架澄が演じ、監督は「陰日向に咲く」「ROOKIES-卒業-」などの代表作を持つ平川雄一朗が務めました。
“リバイバル”という過去の同じ場面が何度も繰り返される特殊能力を持つ一人の青年が、周りで起こる悲劇から大切な人を守る為に奔走するサスペンス映画です。
今回は「僕だけがいない街」から映画のネタバレ・考察、あらすじや作品にまつわる小話をご紹介していきたいと思います!!
僕だけがいない街(2016年)
ピザ屋でアルバイトをする、売れない漫画家の藤沼悟(藤原竜也)。
彼は、周囲で悪い事が起きる気配を察知すると自動的に時間が戻り、事故や事件の原因を回避するまで何度もその現象を繰り返す“リバイバル”という特殊な現象に見舞われていた。
ある日、悟はピザの宅配中にリバイバルを体験し大事故を防ぐものの、自らが車に轢かれ大怪我を負ってしまう。
バイト仲間の片桐愛梨(有村架純)や母親の佐知子(石田ゆり子)の看病で悟は徐々に回復に向かうのであった。
そんな中、悟の住むアパートで佐知子が何者かに殺害され、リバイバルが起きる。
しかし、戻った世界は数分前ではなく、何と18年前の小学生時代であった。
そこは悟の同級生が被害者となった、児童連続誘拐殺人事件の起きる直前の世界だった。
小学生の姿になった悟は母親の命を助ける為、リバイバルの力を借り奮闘する。
果たして悟は母の命を救えるのか?そして、児童連続誘拐殺人事件の犯人とは…!?
僕だけがいない街(ネタバレ・考察)
映画には、その作品ならではの裏話やトリビア、小話が付き物です。
「僕だけがいない街」にはどんな小話があるのでしょう?
原作は累計部数400万部を超える人気漫画!!
漫画「僕だけがいない街」は深いテーマとその発想の面白さから、多くのファンを獲得した作品です。
「この漫画がすごい!2014」ではオトコ編15位、「マンガ大賞2014」では2位に輝いた実績を持ちます。
また、フランスのSF専門出版社「ActuSF」が選ぶ「歴史改変SF大賞」でグラフィック賞に選出され、これは日本の漫画においては初となる快挙を成し遂げました。
実写映画版の興行収入も14億円を突破し、これは如何にこの作品が熱烈な支持を受けているかという事を証明した数字でもあります。
子役の演技に脱帽!!
この映画のポイントとして、子役の演技が上手すぎる!という良点が挙げられます。
悟の同級生である雛月加代を演じる鈴木梨央や、悟の子供時代を演じる中川翼の演技が本当に素晴らしいのです。
特に親から虐待を受けている、という難しい役を見事こなした鈴木梨央の演技力には脱帽!としか言いようがありません。
涙するシーンなど、大人顔負けの確かな演技力で作品の世界観を盛り上げています。
「僕だけがいない街」というこの作品は、子供時代のエピソードが非常に重要な意味を持っているので、鈴木梨央と中川翼の起用は大成功といえる重要ポイントです。
それぞれの違う結末に注目!!
「僕だけがいない街」は原作の漫画、アニメ、ドラマ、映画と4つの違うジャンルで制作が行われました。
アニメとドラマは比較的原作である漫画に忠実に作られています。
しかし映画では原作とは正反対と呼べるラストが用意されているのです。
この改変に原作ファン達の間では賛否両論意見が分かれました。
しかし、主役を演じた藤原竜也の確かな演技力、有村架澄の透明感溢れる存在、そして子役達の素晴らしい演技がこの物語を一つのエンターテインメントとして立派に仕上げています。
映画と原作は別物として、切り離して観てみるのも、一つの策です。
それぞれの異なるラストの意味を、楽しんでみるのも一つの手といえます。
作品の中での印象的な名言に注目!!
「僕だけがいない街」というこの作品を語る上で、外せないのはやはり数々の名言です。
映画版でも、原作で用いられた多くの名言が台詞の中に出てきます。
特に今作品の中で印象的なのは、有村架純演じる愛梨の名言です。
「言葉って、口に出して言ってるうちに、本当になる気がする」という言葉なのですが、この台詞は悟に大きな影響を与えます。
逆境の中でも負けない自信を悟に与えてくれたのです。
悟自身も周囲の人達に勇気を与える為、この言葉を大切な人達に伝えていきます。
言葉に宿る不思議な力、いわゆる“言霊”の大切さを悟は愛梨から学ぶのです。
今作品から見える犯人の心の闇
この映画から見える犯人の八代の闇は、相当に深いものがあります。
八代は何故、冷徹な殺人鬼へとなってしまったのでしょう?
八代の悲しい幼少時代
八代は悟の小学生時代の担任の先生であり、いつも悟の心の支えになってくれる存在でした。
親から虐待を受けているクラスメイトの加代を救う為、悟に協力的な姿勢を見せますが、その裏の顔は児童連続誘拐殺人事件の犯人であり、サイコパス的な要素を持つ恐ろしい人間だったのです。
八代は、子供の頃に実の兄から暴力を受けていました。
この事は映画では描かれていませんが、子供時代の悲惨な経験が、八代という外面はいいものの中身は非常に暴力的な人間を作り出してしまったのです。
八代の過去の心の傷や、サイコパスな人間になるまでを映画では描ききれてない面が、この映画の非常に惜しい点といえます。
しかし八代役の及川光博は恐ろしい殺人鬼を見事に演じ切っていて、顔色一つ変えず悟を橋から川に転落させるシーンなどは八代の心の闇をとても深く体現していました。
元ネタと噂される事件
この作品は東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件を元に作られたのではないか、という噂があります。
どんな闇があろうとも、自分より弱いものに手をかけた八代の罪は決して許されるものではありません。
東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人である宮崎勤のように、身勝手で幼稚な犯罪は決して繰り返されてはいけない悲劇です。
宮崎勤は死刑になりましたが、だからといって、被害者の女の子が戻ってくるわけではありません。
「僕だけがいない街」というこの作品には、恐ろしいシリアルキラーをもうこの世に誕生させてはいけない、そういった事を世に訴えかけている作品ともいえるのです。
現代社会への強い問題提起
この作品から見えるもう一つの社会への問題提起は、児童虐待です。
昨今、ひどい虐待の末、命を落とす子供達のニュースを見ない日はないのではないかというくらい、児童虐待は現代における社会問題といえます。
「僕だけがいない街」でも悟の同級生である雛月加代は、母親とその恋人からひどい虐待を受けている当事者でした。
加代は悟達の動きによって、虐待を逃れる事ができましたが、こういったケースは氷山の一角とも呼べるのではないでしょうか。
悟が病院で目を覚ますシーンで、加代に「大人になれたんだね…」という言葉をかけるシーンがありますが、この台詞は非常に胸に刺さる台詞です。
ニュースで観るような悲しい事件も、周りの大人達がもっと動けば、救える命はたくさんあったといえます。
大人が法律云々に囚われすぎず、もっと踏み込むことで、無事大人になれる子は、たくさんいたはずなのです。
難しい問題ですが、子供達が健やかに育てる未来を作っていくのが大人の役割といえます。
「僕だけがいない街」にはそういったメッセージも込められているのです。
タイトルの意味
「僕だけがいない街」というこの気になるタイトル。このタイトルはどういう意味を持つのか、考察していきます。
悟のリバイバルの成功により、未来は変わりました。
しかし、主人公の悟は八代の手によって、殺されてしまいます。
原作では誰も死ぬ事はありませんが、映画では悟は八代にナイフで首を傷つけられた事により、亡くなってしまうのです。
原作ファンの間では、これをバッドエンドだという意見が多く見られ物議を呼びました。
しかしこれは、本当にただのバッドエンドなのでしょうか?
「正義の味方に…なりたい人!」と小学生時代の悟の台詞にあるように、悟は自分の身を呈して周囲の人物を守ったのです。
八代の犯行で失われる命が多くなってしまったのが、バッドエンドと呼ばれる一つの要因といえます。
しかし最終的には八代は逮捕され、悟は絶命しますが、街に平和が訪れるところで映画は幕を閉じるのです。
悟の死後、悟が描いた漫画は多くの人に読まれ、彼のいない街であっても悟の存在は語り継がれていくといえます。
そこに悟の姿はありませんが、漫画を通じて彼が確かにこの世にいた事は人々の胸の中に残されていくのです。
「僕だけがいない街」おすすめポイント
映画「僕だけがいない街」の魅力は、物語が未来に向かって進行している、というところにあります。
“リバイバル”は過去への進行ですが、悟はいなくても常に時間は未来に向かって針を進めているのです。
“過去に生きるよりも、未来に向かって生きよう。”
そんなメッセージが込められている部分がこの映画の最大の魅力なのです。
そして、何といっても主演の藤原竜也の抜群とも呼べる演技の安定感。
子役やその他の俳優さんの演技も、もちろん素晴らしいですが、さすがカメレオン俳優と呼ばれるだけあって彼の演技力には引き込まれる事間違いなしです。
まるで“藤原竜也”というブランドがあるかのように、彼の醸し出す存在感は素晴らしいとしか言いようがありません。
そして、母親役を演じた石田ゆり子の何年経っても変わらない美しさ。そこにも注目してみて下さい。
まとめ
以上、映画「僕だけがいない街」のネタバレ・考察、あらすじ・作品にまつわる小話を紹介してきましたが、如何でしたでしょうか!?
この映画の良し悪しは多々意見の分かれる作りとなっていますが、漫画、アニメ、ドラマ、映画と4つのジャンルを楽しめる素敵な作品となっています。
“違いを楽しむ”という事を味わいながら、それぞれの良さを追求していくとより一層作品の中に引き込まれる事間違いなしです!
あなたのお気に入りの一本にぜひ加えてみてください!!