歴史 | cinemaxina https://cinemaxina.com 観たいが見つかる!お家シネマの総合情報サイト Thu, 04 Nov 2021 04:43:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.7.1 https://cinemaxina.com/wp-content/uploads/cropped-vf-32x32.png 歴史 | cinemaxina https://cinemaxina.com 32 32 180547246 ウエスト・サイド物語(ネタバレ・考察)ギャングが実在したニューヨークの時代背景を解説!引き裂かれた恋に込められた監督のメッセージとは? https://cinemaxina.com/west-side-story/ https://cinemaxina.com/west-side-story/#respond Wed, 21 Jul 2021 01:52:52 +0000 https://cinemaxina.com/?p=26828 「ウエスト・サイド物語」は1961年に公開されたアメリカのミュージカル映画です。 イギリスのウィリアム・シェイクスピア作の戯曲「ロミオとジュリエット」を現代(1950年代)のアメリカに置き換えたブロードウェイ・ミュージカルを映画化しました。 監督は「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズとダンス振付家のジェロ

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「ウエスト・サイド物語」は1961年に公開されたアメリカのミュージカル映画です。

イギリスのウィリアム・シェイクスピア作の戯曲「ロミオとジュリエット」を現代(1950年代)のアメリカに置き換えたブロードウェイ・ミュージカルを映画化しました。

監督は「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズとダンス振付家のジェローム・ロビンスです。

ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノなど、豪華キャストが出演しています。

非行少年グループの抗争の間で、引き裂かれた恋を描いた傑作です。

抗争の背景や曲の紹介など、本作の小話・ネタバレ・考察などをご紹介していきましょう。

ウエスト・サイド物語(1961年)

見どころ
対立するグループ同士の抗争、敵に恋をしてしまう男女の悲恋、移民が絡む社会問題。それらをパワフルなダンスと美しい音楽で表現し切った娯楽性は今でも色あせない。
出典 : video.unext.jp

あらすじ
ニューヨークのウエスト・サイドで対立する2つのグループ、ジェット団とシャーク団。一触即発の中で行われたダンスパーティーで、マリアとトニーは恋に落ちた。だが2人の思いに関係なく、それぞれが属するチームの衝突はより激しいものになっていく。
出典 : video.unext.jp

ウエスト・サイド物語(ネタバレ・考察)

1950年代、ニューヨークのウエスト・サイドでジェット団とシャーク団が縄張りを巡って争っていました。

その中で敵同士の男女が恋に落ちる映画「ウエスト・サイド物語」。

本作の背景についてご紹介しましょう。

元ネタは「ロミオとジュリエット」

「ロミオとジュリエット」は、敵同士の家に生まれたロミオとジュリエットの悲恋物語です。

本作では舞台をルネサンス期のイタリアから1950年代のアメリカに置き換え、家の対立を非行少年グループの対立に置き換えました。

「ロミオとジュリエット」のヒロイン・ジュリエットが本作のマリアに当たり、ロミオがトニーに当たります。

キャピュレット家の乱暴者・ティボルトは、シャーク団のリーダー・ベルナルドに当たり、ジュリエットの婚約者・パリスがチノに当たるのです。

シェイクスピアの古典はやはり普遍的な物語なんですね。
本作ではその物語がニューヨークのウエスト・サイドで繰り広げられます。

ウエスト・サイドとは?

アメリカの東海岸にあるニューヨーク市は5区からなっていて、中心部のマンハッタン島にあるマンハッタン区は商業地区です。

このマンハッタン区を東西に分割したときに、東のロングアイランド側を「イースト・サイド」と呼び、西のハドソン川の方を「ウエスト・サイド」と呼びます。

1950年代、高級住宅地のイースト・サイド地区に対し、ウエスト・サイドは貧民街で、ユダヤ系・ポーランド系・中国系・プエルトリコ系といった移民の多いスラム地域でした。

この映画は、そういった「人種のるつぼ」で展開したストーリーです。

憎しみの連鎖

二つの敵対する不良グループ、リフ率いる「ジェット団」とベルナルドがリーダーの「シャーク団」。

これらは、架空のグループですが、当時、実際にウエスト・サイドで二つの少年グループが抗争していたそうです。

それぞれの陣営はどういう人たちなのでしょうか。

ポーランド系移民

ジェット団は、ポーランド系移民の少年グループという設定になっています。

ポーランドは、18世紀~20世紀にかけて、列強国によって侵略され国が分割されるという憂き目にあいました。

そのため、20世紀初頭までに100万人以上のポーランド人が何世代にも渡ってアメリカに移住したといわれています。

故国から遠いアメリカで「英語を話せない白人」とバカにされながらも生活してきました。

彼らは「プア・ホワイト(貧しい白人)」と呼ばれ、社会の最底辺で力仕事に従事していたのです。

プエルトリコ系移民

シャーク団は、プエリトリコ系移民の少年グループという設定になっています。

1898年のアメリカとスペインの戦争でアメリカが勝ったため、スペイン領だったプエルトリコはアメリカの占領下に置かれました。

そして1917年からアメリカ市民権を得ることができるようになったプエルトリコ人の移民が大挙してアメリカに押し寄せます。

また、1929年、世界中に広がった大恐慌により失業率が上昇し、さらに多くのプエルトリコ人が仕事を求めてアメリカ本土に渡りました。

しかし、彼らはアメリカに渡っても、差別され狭く不潔な場所に住まわされ、就けるのも低賃金の仕事しかなかったのです。

少年たちの悲劇

ポーランド系移民も、プエルトリコ系移民も、長い間アメリカで頭を押さえつけられつらい思いをしてきたのですね。

両者ともアメリカの自由や豊かさを享受できない人たちでした。

そんな最下層の人々は、差別され怒りや不満がストレスとなり、他人を憎むことで自分たちのアイデンティティーを見いだしていくのです。

彼らは、自身の不幸な境遇を見て見ぬ振りをするために「自分より劣る存在」を外部に作り出して攻撃するしかなかったのでしょう。

少年たちは不条理を大人のせいにして、意固地になって不良となり抗争を重ねていました。

殴られたら殴り返すといったことが繰り返され、憎しみが憎しみを生み、分断が深刻化する…当時はそれが社会問題になっていたのです。

本作はそんな1950年代・ニューヨークの状況を反映したものでした。

監督の一人、ジェローム・ロビンスと脚本家のアーサー・ロレンツはユダヤ系だったので、当初はキリスト教カトリックのグループとユダヤ系のグループとの抗争を思い描いていたそうです。

しかし最終的に、ポーランド系とプエリトルコ系の対立構造の映画にしたのですね?
当時、実際にポーランド系移民とプエリトルコ系移民の対立がひどかったからだそうです。

分断は終わらない

その状況は実は21世紀の今も変わってはいません。

人種、民族、宗教、性的指向などに関わる犯罪行為が跡を絶たないのです。

分断がもたらす憎しみの連鎖を生む構造は、日々のニュースを見れば明らかでしょう。

いつの時代、どこの国でも起こりうる悲劇…。

だからこそ本作は時代を超えて観る価値がある映画なのかもしれません。

「ウエスト・サイド物語」の魅力:アカデミー賞10部門受賞の快挙!!

本作は、アカデミー賞ノミネート11部門中10部門を獲得しました。

第34回アカデミー賞受賞「ウエスト・サイド物語」

  • 作品賞
  • 監督賞
  • 助演男優賞 ジョージ・チャキリス
  • 助演女優賞 リタ・モレノ
  • ミュージカル映画音楽賞
  • 録音賞
  • 美術賞
  • 撮影賞
  • 衣裳デザイン賞
  • 編集賞

これほどたくさんの輝かしい賞を受けた本作はどんな映画なのでしょう?

本作の音楽、ダンス、衣装、美術セット、カメラワークについてご紹介しましょう。

バーンスタインの音楽の魅力

特筆すべきはパワフルでダイナミックでありながら、旋律が美しい奇跡の音楽です。

作曲を担当したレナード・バーンスタインは、20世紀の偉大な作曲家・指揮者の一人とされています。

クラシックの要素と、アメリカに根付いたジャズ、ロック、民族音楽、現代音楽など様々な要素を取り入れていて、現代の私たちが聴いても、古さを感じさせません。

バーンスタインは「アメリカらしさとは何か」を追求し、多民族国家における「民族主義」を音楽で表現することに成功しました。

空気を切り裂くパワフルなダンス

ダンスの振り付けは、監督の一人で振付家のジェローム・ロビンスが行ないました。

ロビンスは、ダンサーとして名声を得た後、1949年に名門ニューヨーク・シティ・バレエの芸術助監督に就任し、ダンス史におけるレジェンドとして現代でも称えられています。

撮影中、ロビンスの振り付け指導はとても厳しかったそうです。

ダンサーが怪我をしても複雑な振り付けを続け、リハーサルの時間は超過する…。

その結果、ロビンスは撮影の後半、解雇されることになるのですが、現在でも「ウエスト・サイド物語」のダンスに古臭さが感じられないのは、ロビンスの手腕によるものでしょう。

シャープで躍動感があって、大衆的でありながら、同時にクラシック・バレエの秩序あるステップも取り入れたダンスから目が離せません。

当時すでにこんなキレッキレのダンスが踊られていたとは驚かされます。

ベルナルド演じるジョージ・チャキリスらが片方の脚を横に上げてバランスをとるポーズは、この映画のシンボルになりましたね。

実はこのポーズは、十字架を意味しているというのです。

「十字架を背負う」という言葉には、イエス・キリストがゴルゴダの丘で十字架を背負ったことで苦難の象徴とされることから、「辛い苦しみを一生持ち続けること」という意味があります。

プエルトリコ系移民が「差別」という名の十字架を一生背負って生きなければならない重い現実を、このポーズは象徴しているのでしょう。

カラフルな衣装の魅力

衣装を担当したデザイナーのアイリーン・シャラフは、アカデミー賞衣装デザイン賞を5回も獲得した強者でした。

注目したいのは、ジョージ・チャキリス扮したベルナルドの黒のTシャツとパンツに、赤の襟付きシャツを上から重ねて前のボタンを開けるスタイルです。

このスタイルはオシャレでしたね。当時は新しかったのに違いありません。

劇中俳優たちが着用したTシャツ、ジーンズ、スニーカーはほとんどオリジナルだそうです。

ストレッチジーンズは当時は無かったので、どのパンツも伸縮性のある糸を使いデニム風に作られた特注品で、莫大な費用がかけられました。

今では当たり前ですが、ダメージ・デニムの質感を出すために素材を洗いざらし、また染め直して風に晒すという作成方法で、手間もお金もかかったといいます。

そして、特に素晴らしいのが、ダンスパーティーでの登場人物のカラフルな衣装です。

ジェット団はブルー、グリーン、紺、カーキなどクールで都会的な色で揃え、シャーク団は赤、オレンジ、紫、などビビットカラーで統一されていましたね。

ベルナルドは、黒いジャケットに紫のシャツ、黒い細身のネクタイといった、典型的なラテン系のスタイルでした。

女性たちのドレスのデザインも素敵なものばかりでしたね。
これらのカラフルでオシャレなファッションは映画「ラ・ラ・ランド」(2016年)などで引用されていますよ。

聖なる空間を生み出す美術セット

印象的なのは、トニーがマリアの家のバルコニーに偲んで行き、二人で「トゥナイト(Tonight)」を歌うシーンのセットでしょう。

無機質な裏階段と狭いバルコニーが建て込んでいるビル街のセットは、ニューヨークの裏町のイメージそのものです。

また、トニーがダンスパーティーの帰途、一目惚れしたマリアへの想いを込めて「マリア(Maria)」を歌うシーンの背景も印象的でした。

トニーの後ろ全面に塀の格子模様が広がり、それがまるで教会の窓ガラスのようで、ニューヨークの裏町でありながら神聖な雰囲気を醸し出していました。

さらに歌の終わりには、トニーの後ろから光が差し込んで、あたかも神の啓示のようです。

トニーにしてみれば、マリアとの出逢いは、神の啓示のように感じられたことでしょう。

「マリアという名前を言えばそれは祈りのようだ」という歌詞があるので、それを象徴しているセットでした。

革新的なカメラワーク

本作は、公開当時大胆なカメラワークが話題になりました。

冒頭のニューヨーク上空からマンハッタンの高層ビル群へ、そして徐々に貧しい人々が住むウエスト・サイドをとらえ、バスケットボール・コートにズームしていくシーン。

また、ジェット団のメンバーがフェンスに落書きをする場面での、2回に渡ってズームインするシーン。

速いカメラワークが、ピリピリとした緊迫感のある様子をよく表しています。

そして、シャーク団が「アメリカ(America)」を歌った後は、ベルナルドと恋人アニタのキスシーンを逆光でとらえシルエットで写していて、しっとりとした画面を作っていました。

これらのカメラワークは、当時は先進的だったのではないでしょうか。

最も輝いていた俳優は…

ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマーも素敵でしたが、俳優陣の中で最も光を放っていたのはベルナルドを演じたジョージ・チャキリスでした。

立っているだけでもオーラがあり、ダンスのキレも良く、観ている人もついチャキリスに注目してしまうでしょう。

敵陣営・ジェット団のメンバーたちへの激しい憎悪がその表情や一挙手一投足から感じられ、凄い迫力です。

そして妹のマリアには常に優しく微笑みかけ、妹を心から愛している様子がわかり、そのギャップが何ともいえず魅力的です。

また、リタ・モレノもベルナルドの恋人・アニタ役を生き生きと演じていました。

勝ち気でお転婆で威勢がよく、男気を感じさせるアニタを演じて素晴らしかったです。

仲間たちに対してアネゴ肌を発揮し皆を引っ張っていく様子は圧倒的な存在感を放っていました。

主演ではない二人ですが、ぜひ注目してみてください。

二人ともカッコよかったですね。
アカデミー助演男優賞・助演女優賞を受賞しただけのことはあります。

名曲の数々

ここでは、劇中に散りばめられたバーンスタインの素晴らしい音楽について解説します。

17曲のうち特に日本人に親しまれているおすすめの8曲をご紹介しましょう。

「プロローグ(Prologue)」

「プロローグ」は、ジェット団とシャーク団の少年たちの指を鳴らす音とダンスで始まります。

音楽は不協和音を巧みに使い両陣営の不和を暗示していました。

途中でサクソフォンやドラムの音が入ってくるところは、音楽でアメリカを表現したバーンスタインらしさが光っています。

最後に聞こえる警笛の音もまるで音楽の一部のようになっていました。なんてスタイリッシュな曲でしょう!!

ダンスシーンが終わると、ジェット団のリーダー・リフが、いさかいが絶えないシャーク団との決闘を決意するシーンになります。

そしてリフは、今はもうジェット団を辞めて酒屋に勤務している元リーダー、トニーをダンスパーティーに誘うのです。

「体育館でのダンス(The dance at the gym)」

町の体育館でダンスパーティーが行なわれ、ジェット団とシャーク団が二手に分かれてそれぞれ楽しそうに踊っていました。

曲はメキシコ民謡風の楽曲から一転して、活気ある「マンボ」に変わります。

ノリのいい曲なので、ここは演者と一緒に「マンボ!!」と掛け声を入れたくなりますね。

そして、音楽がスローな「チャチャチャ」になると、トニーとシャーク団リーダーの妹・マリアが出逢うのです。

このシーンは素敵なシーンになっていて、たくさんの少年少女が踊っている中、カメラが主演二人にフォーカスを合わせ、背景は次第にぼかされていきます。

彼らは見つめ合い、お互い敵同士とは知らず恋に落ちるのです。

主演二人の出逢いの場にふさわしいロマンティックなメロディーの音楽が続くのでした。

一方、パーティーでリフは、ベルナルドに決闘を申し込むのです。

「トゥナイト(Tonight)」

「トゥナイト」は、トニーとマリアがアパートのバルコニーで愛を語り合うシーンに歌われます。

このシーンは「ロミオとジュリエット」でのバルコニーのシーンに当たるのです。

「トゥナイト」は、数あるミュージカル・ナンバーの中でも最もよく知られている歌の一つでしょう。

流れるような爽やかなメロディが心地よく、繰り返す転調が高揚する二人の気持ちを表しています。

「トゥナイト」はほんとうに素敵な歌ですね。でも歌うとしたら音域が広くて難しそう…。
だからでしょうか。よくコンサートでオペラ歌手の人によって歌われますね。

「アメリカ(America)」

「アメリカ」はプエルトリコ系移民による歌の掛け合いです。

女性たちがアメリカの豊かさを、男性たちがアメリカでの待遇の悪さを歌って踊ります。

アップテンポで、ダンスのフォーメーションも楽しめるでしょう。

「お買い物はカードで買えるわ、アメリカじゃ工業が盛ん、アメリカだと人生が明るくなる」

「狭いアパートに12人が暮らしている、ロクな仕事がない、成功するのは白人だけだ」などと歌われます。

移民の国・アメリカの夢と希望、現実の厳しさがわかる歌です。

「すてきな気持ち(I feel pretty)」

「すてきな気持ち」では、マリアが勤務している花嫁衣装店で、素敵な人に愛される喜びを歌います。

ポップなラテン調のワルツで、同僚の女性たちもマリアに合わせてフラメンコ風の手拍子を入れるのでした。

「I feel pretty,I feel pretty」と同じメロディーが繰り返され、マリアの可愛らしさが満載のシーンです。

店の支配人の女性に「歌は止めて!ダンサーになるんじゃないんでしょ!!」と静止されるほど歌とダンスが盛り上がります。

古き良き時代、ミュージカル全盛期らしい魅力的な歌です。

「一つの手、一つの心(One hand, one heart)」

「一つの手、一つの心」は、花嫁衣装店で、マリアとトニーが結婚式を真似るシーンで歌われます。

ゆったりとしたテンポで二人の満ち足りた気持ちが感じられる歌になります。

「僕らの人生が今、始まるんだ」とマリアとトニーが歌い、彼らが純粋に愛を誓い合っているので、結末を知った上で観ると切なくなるシーンです。

二人の頭上に十字架に見立てた窓があるところは心憎い演出でした。

「トゥナイト・五重唱(Quintet)」

リフとベルナルドがそれぞれ決闘に懸ける意気込みを歌い、それにジェット団とシャーク団の合唱が加わり、さらにベルナルドの恋人・アニタの歌が入ります。

その後マリア、トニーによる「トゥナイト」が重なり、最後は全員の大合唱になるのです。

決闘に向けて気勢を上げる両陣営の少年たちと、恋に落ちたマリアとトニーそれぞれの思惑が浮き彫りになる歌になっています。

歌の掛け合いがこれぞミュージカルの醍醐味といったシーンです。

「クール(Cool)」

リーダーのリフを刺殺され殺気立つジェット団の皆に、メンバーの一人が落ち着けと呼びかける歌です。

「落ち着くんだ、熱くなるんじゃない、熱くなるべき時がこの先あるから」

暗い駐車場でジェット団の熱気を帯びたダンスが見事で、掛け声と手拍子が効果的に響きます。

ジェット団のメンバーたちの狂気に満ちた形相がとても不気味で、誰かに憎しみを抱く人間は、ここまでグロテスクな表情になるのですね。

決闘:縄張り争いが殺し合いに

高速道路の高架下で、ジェット団とシャーク団のメンバーが見守る中、リフとベルナルドの決闘が始まりました。

決闘シーンは迫力のある映像で恐ろしくなるほどです。

遅れてきたトニーが止めに入りますが、争いは終わりません。

もみ合っているうち、ベルナルドがナイフでリフを刺し殺します。

そして、それに怒ったトニーは激情に駆られて我を忘れ、ベルナルドを刺し殺してしまうのです。

警察が駆け付け、皆は逃げていきます。

憎しみによる殺害

決闘の一部始終を知ったマリアは、トニーに駆け落ちしようと持ち掛けます。

一方、恋人ベルナルドを殺され、ジェット団に乱暴されそうになったアニタは、憎しみを募らせ嘘の伝言をするのです。

それは「マリアは婚約者のチノに殺された」というものでした。

アニタの言葉を人づてに聞いたトニーは、マリアが死んだと思い込んでしまいます。

打ちひしがれ自暴自棄となったトニーは、自分も殺してくれと叫びながらチノを探して町をさまようのです。

トニーのもとへマリアがやって来て二人は抱き合いますが、チノが現れトニーを銃で撃ちました。

まさに憎しみの連鎖です。

トニーは、マリアの腕の中で亡くなります。

ジェット団とシャーク団の少年たちが見守る中、マリアが叫ぶのです。「みんながトニーを殺したのよ!私の兄もリフも。銃弾ではなく、憎しみで!!」

トニーやベルナルドやリフたちは、単に凶器によって殺されたのにとどまらず、両陣営一人一人の憎しみによって殺されたのだとマリアは言うのです。

そのようにマリアに言わせることで、本作の監督はじめスタッフたちは、メッセージを視聴者に伝えたかったのではないでしょうか。憎しみからは何も生まれないと…。

両陣営のメンバーたちは、トニーの亡き骸を共に担ぎ、和解を予感させる形で映画は終了します。

なぜ、マリアは自殺しなかったのか?

「ロミオとジュリエット」では、仮死状態から目覚めたジュリエットはロミオの後を追って自殺しましたが、本作では、最後にマリアは自殺しませんでした。

どうしてマリアは自殺しなかったのでしょうか。

名家の箱入り娘として育てられたジュリエットは、ロミオが死んだとき、どうしていいかわからず自分の人生を諦めてしまったのでしょう。

しかし「ウエスト・サイド物語」のマリアは移民の子で、ジュリエットに比べたくましく精神的に大人で、強い意志を持った女性として描かれています。

彼女は命の大切さをよくわかっていたのです。

恐らくマリアはどんなに辛くても自ら命を捨てることなく生き続けるでしょう。

そして、ウエスト・サイドに平和が訪れるのを見届けるに違いありません。

スピルバーグ監督がリメイク

スティーブン・スピルバーグ監督が本作「ウエスト・サイド物語」のリメイク版を制作しているというニュースがありました。

母親がクラシックのピアニストだったスピルバーグ監督にとって本作は、子どもの頃「初めて耳にしたクラシック以外の音楽」だったそうで、その素晴らしさに衝撃を受けたといいます。

監督はずっと本作のリメイク版を制作したいと熱望してきました。

リメイク版公開は、2021年12月に予定されています。

本作・1961年版では、ベルナルド役のジョージ・チャキリスはギリシャ系で、マリア役のナタリー・ウッドはロシア系の俳優でした。

当時は、ラテン系の俳優があまり活躍していなかったため、メイクでラテン系に見せていたのです。

しかし、スピルバーグ監督のリメイク版では、ラテン系の役にはラテン系の俳優が演じることになるそうで、1961年版でアニタを演じたプエルトリコ出身のリタ・モレノも出演します。

ぜひ、本作と観くらべてみてください。

まとめ

いつの時代にも、どこの国でも起こりうる悲劇を描いた「ウエスト・サイド物語」。

時代を超えて観る価値がある映画です。

奇跡の音楽や洗練されたダンスが楽しめるのでぜひご覧ください!!

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サウンド・オブ・ミュージック(ネタバレ・考察)史実との違いも解説!オーストリア・アルプスの雄大な映像と素敵な歌の数々が楽しめる!! https://cinemaxina.com/the-sound-of-music/ https://cinemaxina.com/the-sound-of-music/#respond Tue, 01 Jun 2021 01:53:32 +0000 https://cinemaxina.com/?p=25194 「サウンド・オブ・ミュージック」は、1965年に公開されたアメリカのミュージカル映画です。 リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世による1959年初演のブロードウェイミュージカルを、「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズ監督が映画化しました。 ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマー、エリノ

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「サウンド・オブ・ミュージック」は、1965年に公開されたアメリカのミュージカル映画です。

リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世による1959年初演のブロードウェイミュージカルを、「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズ監督が映画化しました。

ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマー、エリノア・パーカーと、古き良きハリウッドの大御所俳優たちが出演した楽しいミュージカルで、映画史に残る名作です。

第二次世界大戦前から戦後、ヨーロッパ・アメリカで活躍した「トラップ・ファミリー合唱団」の実話を基にした物語になります。

この映画のロケ地、実際にトラップ一家が辿った旅のルートなど、ネタバレにまつわる小話、考察をご紹介していきましょう。

サウンド・オブ・ミュージック(1965年)

見どころ
長年にわたり愛され続けている名作ミュージカル。「ドレミの歌」、「私のお気に入り」、「エーデルワイス」など劇中で歌われる名曲の数々が作品を盛り上げる。
出典 : video.unext.jp

あらすじ
1938年、オーストリアにある古風で厳格なトラップ家に家庭教師としてやって来た修道女・マリア。彼女は7人の子供たちに音楽や歌うことの素晴らしさを伝えようとするが、大佐とは事あるごとに衝突してしまう。やがてマリアは大佐に惹かれていき…。
出典 : video.unext.jp

サウンド・オブ・ミュージック(ネタバレ・考察)

7人の子役たちの可愛らしい演技と素敵な歌の数々が楽しめる「サウンド・オブ・ミュージック」。

元軍人の大佐・トラップ氏に家庭教師として雇われたお転婆な修道女だったマリアが、子どもたちやトラップ氏に受け入れられ、家族の一員となる物語です。

この映画の小話をご紹介します。

NG映像がそのまま使用される

マリアがトラップ家に初めて向かうシーンで、中庭を駆け抜けていたジュリー・アンドリュースはつまずいて転びます。これはアクシデントでした。

しかし、監督のロバート・ワイズはこれを気に入って、その映像をそのまま採用しました。

7人の子どもたちの家庭教師になるマリアの緊張をよく表していると感じたからだそうです。

本物のマリアとトラップ家の子どもたちがカメオ出演

この映画は実話を基にしていて、登場人物はほぼ全員実在しました。

実は本物のマリアとトラップ家の子どもたちが、この映画に出演しています。

アンドリュース演じるマリアがトラップ家に初めて向かう途中、建物のアーチをくぐった後ろに、画面向かって左から右に横切る人々がそれです。

ぜひ画面でチェックしてみてください。

今でも映画のままのロケ地

この映画は、風光明媚なオーストリアのザルツブルクやザルツカンマーグートで撮影されました。

撮影されたのは1964年ですが、それらのロケ地では今でも映画そのままの美しい風景を見ることができるのです。

機会があったら、ぜひロケ地めぐりをおすすめします。

現地へ行くと、劇中マリアと子どもたちが歩いたのは、あの通りだ!!とか、ナチスの追っ手がかかったのはあの家の門だ!!など、様々な楽しい発見があることでしょう。

  • マリア所属の修道院:ザルツブルク、ノンベルク修道院外観
  • 「ドレミの歌」を歌った庭園:ザルツブルク、ミラベル庭園
  • トラップ家邸宅:ザルツブルク、レオポルドスクロン宮殿、フローンブルク宮殿
  • 結婚式場:ザルツカンマーグート、モントゼー教会
  • 音楽祭会場:ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ(岩窟乗馬学校劇場)

結婚式シーンには実際の大司教が出演した

マリアとトラップ氏はお互いを愛するようになります。

二人の結婚式のシーンのリハーサル中、スタッフたちは、結婚式を執り行う聖職者役の俳優を手配することを忘れていたことに気が付きました。

これから聖職者役の俳優を手配していたのでは、撮影が滞ってしまいます。

そういうわけで映画の中で結婚式を執り行っている聖職者は、俳優が演じているのではなく、ロケ地の地元・ザルツブルク大聖堂の当時の本物の大司教(アンドレアス・ローラッハー)でした。

大司教といえば、カトリック教会の位の高い人ですね!!
そんな権威ある人が快く映画に出演してくれたのです!!

末っ子が溺死!?

劇中で、当初7人の子どもたちは、全員揃いの服を着せられ、父であるトラップ氏が吹く笛に合わせて一糸乱れず行動することを強要されていました。

そんなトラップ家の子どもたちも、マリアが家庭教師になってから、すっかり子どもらしくはしゃぐようになりました。

楽しいボート遊びで大騒ぎしたマリアと7人の子どもたちがボートから湖の浅瀬に落ちてしまい、子どもたちのあまりの暴れん坊ぶりに生真面目なトラップ氏が驚くシーンがあります。

撮影にあたって、末っ子のグレーテルを演じていた子役のキム・カラスは泳げなかったので、湖に落ちたときにアンドリュースがキムを抱っこすることになっていました。

しかし、撮影中アンドリュースは、うっかりキムと反対側に落ちてしまいます。

結局次女ルイーザを演じる13歳のヘザー・メンジーズが代わりにキムを助けなければなりませんでした。

アンドリュースは、これについて何年も罪悪感を感じていたとインタビューで語っています。

映画では、ヘザーがキムを抱きとめる様子が映っています。
そのシーンもぜひチェックしてみてください。

オーストリア・アルプスの美しい映像

オープニングやフィナーレで、空撮からの壮大なカメラワークが見られるアルプスの山々も印象的です。

これらのシーンは、ザルツブルクから車で40分ほどのヴェルフェン村の山中にある草原で撮影されました。

青い空に、雪を戴いた山並みの360度のパノラマが広がります。

遠くに見えるホーエンヴェルフェン城の絶景も素晴らしく、まるで自分がオーストリア・アルプスに来たかのような感動を味わうことができるのです。

同じロバート・ワイズ監督の「ウエスト・サイド物語」(1961年)でオープニングにニューヨークのマンハッタンを俯瞰で映していった手法を思い出しました。

スケールが大きく、素晴らしい映像美です。

現代のディジタルを駆使した映像と違って、1960年代だからこそ撮影できたその場の澄み切った空気までをも映し出すかのような温かみのある画面作りが、この映画の魅力となっています。

歌に紡がれる珠玉のストーリー!!

この映画には、誰もが耳にしたことがあるような歌が満載です。

ミュージカル音楽の伝説的なコンビ、リチャード・ロジャース(作曲)とオスカー・ハマースタイン2世(作詞)による珠玉の歌の数々を聴くことができます。

12曲のうち日本人に愛されているおすすめの6曲をご紹介しましょう。

「私のお気に入り(My Favorite Things)」

聴いていると思わず楽しくなってくるような歌です。

これはJR東海の「そうだ京都、行こう」のCMで流れている曲と言えばおわかりでしょう。

あの曲は本作品が元ネタだったのです。

この歌は、劇中で、夜間に雷を恐がる子どもたちに、マリアが「辛い時は楽しいことを考えましょう」と言って教える歌でした。

マリアは着任した早々、カエルをポケットに入れられるなど、子どもたちに嫌がらせをされていましたが、この出来事で子どもたちとすっかり仲良くなりました。

「ドレミの歌”Do-Re-Mi”」

「ドレミの歌」は、小学校の音楽の授業で習った人も多いでしょう。

「ドはドーナツのド」で始まる日本語版の歌詞は、ペギー葉山さんの作詞だそうです。

オリジナルの歌詞は「ドはメス鹿のド(Doe, a deer, a female deer)」で始まります。

劇中で、マリアは子どもたちに音楽を教えようと決心しました。

音楽ならば、彼らに子どもらしい心を取り戻させてくれるだろうと思ったからです。

マリアは、子どもたちにマリアお手製のお揃いの服を7人に着せて、山やザルツブルクの街に出かけます。

そしてドレミファソラシドの「ド」から音楽を教えていくのです。

「ドレミの歌」のシーンは、子どもたちのダンスとオーストリアの風景が見どころになっています。

「もうすぐ17才(Sixteen Going on Seventeen)」

トラップ家の長女・リーズルが、初恋の相手・ロルフと、庭のガラスの小屋(ガゼボ)の中でこの歌を歌って踊ります。

「私はお年頃」「あなたについていきたい」と、これからの人生への期待と不安に心震わせるリーズルの心情がよく表れた歌でした。

夜、雨が降る中、ガラスの小屋にきらきらと二人の踊る影が浮かび上がり、美しいシーンです。

心が浮き立つような歌で、二人が初々しく観ていてほっこりする名曲になっています。

「エーデルワイス(Edelweiss)」

この歌はオーストリアの民謡と思っている人も多いようですが、実はこのミュージカルのために作曲された歌なのです。

美しいメロディーで日本でも人気の歌となっています。

劇中、厳格なトラップ家では音楽は禁止でした。亡き妻が好きだった音楽を聴くと辛いので、トラップ氏が子どもたちに禁じたのです。

しかし、子どもたちが父の婚約者の男爵夫人を歓迎して歌を歌っている時、あまりにもそのハーモニーが美しいので、思わずトラップ氏がギターを弾きながら歌い出します。

その歌が「エーデルワイス」でした。

トラップ氏が実は音楽好きだったことがわかる大切なシーンです。

子どもたちが楽しそうに伸びやかに歌っているのを見て、音楽を禁じていたトラップ氏は自分の教育方針は間違っていたと悟るのでした。

「さようなら、ごきげんよう(So Long, Farewell)」

トラップ氏と男爵夫人の婚約披露パーティーで、子どもたちが寝る時間になったのでパーティー客に別れの挨拶をする時の歌です。

「太陽が寝たのでお別れしなければなりません」と名残惜しそうに歌われました。

「クックー」とカッコウの鳴き声が歌い込まれます。

お茶目なダンスが踊られ、子どもたち一人一人の見せ場があって、なんとも可愛らしい歌です。

「何かいいこと(Something Good)」

男爵夫人がいるのにもかかわらず、ダンスパーティーで見つめ合って踊ったマリアとトラップ氏は、お互い惹かれ合っていることに気付いてしまいます。

それを見た男爵夫人はマリアに嫉妬して修道院に帰らせるのです。

修道院に帰ったマリアは、修道院長に「男女の愛も神への愛と同じく神聖です。トラップ氏を愛しているなら、自分の気持ちを大事にすべきです」と諭され、トラップ邸に戻ります。

トラップ氏は男爵夫人に婚約解消を申し出て、彼女はトラップ邸から出て行きました。

庭のガラスの小屋で、マリアとトラップ氏は愛を打ち明け合います。

「何かいいこと」は、マリアのトラップ氏への愛がこもったしっとりとした歌です。

祖国オーストリアへの愛国心

トラップ一家は、音楽祭の合唱コンクールに参加し「トラップ・ファミリー合唱団」として歌いました。

歌ったのは、「ドレミの歌」「エーデルワイス」「さようなら、ごきげんよう」です。

特に「エーデルワイス」の合唱では、観客を巻き込んでの大合唱となりました。

会場の人々が全員、希望に溢れた眼差しで「エーデルワイス」を歌ったのです。

「エーデルワイス」の歌詞には「エーデルワイスの花よ、祖国を永遠に祝福してほしいのだ」という部分があります。

白いエーデルワイスの花が高い山に咲き続ける様を、気高いオーストリアの魂の象徴として歌っているのです。

大合唱は、祖国・オーストリアへの思いが込もったものとなりました。

映画で、観客の中に「エーデルワイス」の大合唱を快く思わない人たちがいたようですが、あれは誰ですか?
あれは、オーストリアを併合したナチス党の高官です。オーストリア国民の祖国を想う結束力を警戒したのです。

ナチスからの逃亡

この物語は家庭教師マリアとトラップ氏・子どもたちとの交流が描かれているのですが、物語の終盤になって、彼らに不穏な世界情勢が関わってきます。

どんな事件が起こるのでしょうか。映画は突然スリリングな展開となるのです。

ナチス・ドイツの軍隊がオーストリアに侵攻します。

ナチス海軍からトラップ氏に軍艦への出頭命令が下るのです。

ナチス・ドイツのために働くことを潔しとしないトラップ氏は、出頭には応じないことにします。

兵役を拒否したトラップ氏は、ナチスに逮捕される恐れがあるため、家族とこの国を出ていくことに決めました。

音楽祭の合唱コンクールに出場して、自宅に帰ったと見せかけ密かにオーストリア脱出を図るのです。

トラップ一家は、合唱コンクールの帰りに武装したナチス党員らにより追い詰められ、修道院に隠れます。

追っ手の中にリーズルのボーイフレンド・ロルフもいました。

リーズルと恋を語り合った彼は、ナチス党員になってトラップ一家を反逆者として取り締まる立場になってしまったのです。

リーズルにとっては、これが悲しい別れとなります。

映画の最後に流れる曲が、「すべての山に登れ(Climb Ev’ry Mountain)」です。

マリアとトラップ氏・子どもたちは、無事追っ手を逃れて、アルプスの山々を登り国境を超えるのでした。

時代背景・史実は?

「トラップ・ファミリー合唱団」の実際は映画と少し違うようです。

彼らが祖国を出たその後についてもご紹介しましょう。

ナチス・ドイツがオーストリアを併合したのは1938年のことです。

マリアが修道院から家庭教師としてトラップ一家に派遣されたのは、そんな出来事があった頃でした。

当時オーストリアでは、併合は歓呼の声に迎えられました。

その時はまだ、ナチスの残酷さはあまり知られていなかったのです。

しかしトラップ氏は、オーストリアのナチス・ドイツによる支配には反対でした。

史実では、すでにこの頃トラップ一家は合唱団として活躍していました。

トラップ一家はナチス総統・ヒトラーの誕生日パーティーで歌うよう呼び出されます。

トラップ氏がそれを拒否したため、ナチスに逮捕される心配がありました。

トラップ一家は国境を越えて逃亡せざるを得なくなるのです。

実際にはアルプスを徒歩で越えたのではなく、列車でイタリアに入り、イギリスへ渡って船で自由の国・アメリカへ亡命しました。

アメリカでも「トラップ・ファミリー合唱団」として活動し、現在でも子孫がバーモント州に住んでいます。

この物語は、第二次世界大戦前後の激動の時代の記憶のもとに描かれているのです。

「サウンド・オブ・ミュージック」をオーストリア人は知らない!?

この映画にはオーストリアの美しい風景が描かれています。

日本では、オーストリアと言えばモーツァルト生誕の地であることと本作「サウンド・オブ・ミュージック」の二つを思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、オーストリアの人に聞いたのですが、映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、オーストリアでは観られていません。

オーストリアにいてもテレビで放映されず、ドレミの歌など日本やアメリカでは誰でも知っている曲も、オーストリアではほとんどの人が知らないそうです。

この映画の存在を知っているオーストリア人でも、描写が史実と少し違うので、わざわざ観ることはないと言います。

そういうわけで、ザルツブルクに行ってミラベル庭園で「サウンド・オブ・ミュージックのロケ地だ~!!」と興奮するのは、映画を製作したアメリカの人々と日本のファンなのだそうです。

まとめ

舞台となったオーストリアではあまり観られていないようですが、こんな素敵な映画を観ないなんてもったいない!!

美しい映像で家族愛が描かれ、楽しくて心が元気になる映画です。

一般市民であるトラップ一家がナチス・ドイツを手玉に取って成功したストーリーでもあります。

すべての年代の人々に観ていただきたい映画です。

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グレイテスト・ショーマン(ネタバレ・考察)全ての人種に送る人間賛歌!ミュージカル映画だからこそ描けたショービズの光とは https://cinemaxina.com/greatestshowman/ https://cinemaxina.com/greatestshowman/#comments Fri, 07 May 2021 05:33:25 +0000 https://cinemaxina.com/?p=21492 「グレイテスト・ショーマン」(2017年)は19世紀に活躍した実在の興行師であるP・T・バーナムの半生を描いたミュージカル映画になります。 貧しい生まれのバーナムがたどる成功と変化、そしてバーナムに集められたマイノリティの演者たちが自分自身のアイデンティティーを獲得していくドラマは見応え充分です。 トニー賞俳優であるヒ

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「グレイテスト・ショーマン」(2017年)は19世紀に活躍した実在の興行師であるP・T・バーナムの半生を描いたミュージカル映画になります。

貧しい生まれのバーナムがたどる成功と変化、そしてバーナムに集められたマイノリティの演者たちが自分自身のアイデンティティーを獲得していくドラマは見応え充分です。

トニー賞俳優であるヒュー・ジャックマンや、ミュージカルに多く出演し評価の高いキアラ・セトルらが出演し、美声を披露してくれます。

さらにディズニー・ミュージカルで人気を博したザック・エフロンが久々にミュージカルに出演し、助演男優として登場人物たちとのアンサンブルで魅了してくれるのです。

夢追い人であるバーナム関係のエピソードをかなり美化して描いているためか、映画批評家からは不評でしたが、観客の心を掴みヒット作となりました。

ヒュー・ジャックマンが長年温めてきたミュージカル映画の企画がどのような経緯で実現したかの歴史を紐解きつつ、本作の魅力とトリビアも併せてお伝えしていきます。

グレイテスト・ショーマン(2017年)

仕立て屋の息子で貧しい暮らしをしつつも夢をみることを諦めないバーナム(ヒュー・ジャックマン)は、出入りしていた屋敷の令嬢と結婚し、ニューヨークで妻子と暮らしていた。

務めていた会社が倒産したバーナムは、沈没した船の登録証を持ち出して銀行から金を借りることに成功し、世界中の珍品を集めた博物館を開いたが、評判は芳しくなかった。

娘の「動いているものがいい」という言葉にヒントを得た彼は、一般人とは違う特徴を持ったフリークスをスカウトし見世物小屋のようなサーカスを開き、大盛況になる。

ショービジネスで成功したがバーナムだが批評家たちに酷評され、市民からも抗議活動を受け、上流階級からは成り上がりと蔑まれ、決して満足とはいえない状況だった。

蔑視を打破したいバーナムは、上流階級の劇作家であるフィリップ(ザック・エフロン)を演出家として雇い、彼のコネクションでショーの仲間とヴィクトリア女王に拝謁する。

そこで欧州随一の歌手であるジェニーと出会い、彼女のアメリカ公演を成功させれば上流階級の仲間入りができると考えた彼はフィリップに運営を一任しサーカスから離れる。

ジェニーのアメリカ公演は大成功を収め、批評家からも絶賛されバーナムは名声を手に入れるが、一方でサーカスのキャストたちを疎むようになる…。

グレイテスト・ショーマン(ネタバレ・考察)

観客の口コミでロングランヒットとなった「グレイテスト・ショーマン」は、ドラマチックなトリビアに溢れています。

実在の人物をモデルにしながらも、本作は史実から変更されているところもあるため、違いを知っているとより楽しめるでしょう。

気になって、思わず本作を観たくなってしまうような豆知識をお伝えしていきます。

バーナム博物館を現代で観る方法がある?

映画ではほとんどの人が興味を持たなかったバーナム博物館ですが、実際は行列ができるほどの人気を誇っていました。

ですが館内に展示されている人魚のミイラなど、珍品に夢中になるあまり来場者は館内からなかなか出ようとせず、次の来場者を案内できないトラブルが発生します。

この問題を解決するためにバーナムは、室内の順路案内に「こっちの方にすごいものがありますよ」と思わせる一文を添えて、来場者を誘導したのです。

物見高いお客たちはつられて移動するのですがそこは出口になっており、好奇心でいっぱいの人々はあえなく退場するしかありませんでした。

なおアメリカのコネチカット州にバーナムが所有していた6万点を超える展示物を集めた博物館があり、2021年の夏に改修工事が始まるとのこと。

2021年春ではコロナウィルスの影響で閉館していますが、いつかバーナム博物館を体験できるかもしれません。

過去の名作がタイトルのモチーフに

バーナムのサーカスをモチーフに作られた映画が、1952年のアメリカで公開されました。そのタイトルが「地上最大のショウ」(The Greatest Show on Earth)です。

このタイトルはバーナムが興行をするときの宣伝文句から採用されており、アメリカで高い知名度を誇るバーナムにちなんだ作品であるということが歴然となります。

サーカスを舞台に人間関係のドラマを描いた作品でしたが、数多の名作を押しのけて1952年のアカデミー作品賞と原案賞を獲得し、世界中でヒットしました。

「地上最大のショウ」というフレーズがあまりに有名な映画タイトルになったため、制作陣は他のタイトルを模索しなければいけません。

そこでバーナム自身を描いた作品として、彼を指す「グレイテスト・ショーマン」というタイトルになったのです。

「スター・ウォーズ」を下して大ヒット

従来の映画は公開から4週間以内にピークを迎え8週目には落ち始めて横ばいになるというのがモデルケースでした。

加えて「グレイテスト・ショーマン」は人気フランチャイズ作品である「スターウォーズ:エピソード8-最後のジェダイ」(2017年)と同じ公開日になってしまいます。

競合するタイトルが強力なため、興行的に失敗するのではないかと予想されたのですが、「最後のジェダイ」は初週こそ1位を獲得したものの急激に順位が下がり続けました。

反比例するように口コミでの高評価と、リピーターとして劇場で再度鑑賞する人が多かった「グレイテスト・ショーマン」がジリジリと順位を上げていくのです。

公開前は映画館の関係者から「何週我慢しなくちゃいけないのか」と言われていた作品が、結果的に大ヒットロングランを達成することになりました。

特にイギリスでは2018年に入ってからぐんぐんと興行成績を伸ばし、日本円にして59億円の興行成績を収めたのです。

世界一売れた音楽アルバム!

「グレイテスト・ショーマン」は19世紀をモデルに作られた作品ですが、バーナムの先進性を表現するためにポップやヒップホップの要素を楽曲に組み込むことにしていました。

音楽を担当したベンジ・パセック&ジャスティン・ポールは数々の映画に参加してきたコンビで、「ラ・ラ・ランド」(2016年)の活躍が特に有名です。

「ラ・ラ・ランド」もミュージカルですが、本作ではキャラクターたちの心情をはっきりと表現する楽曲を提供し、出演者もそれに応える熱唱を披露しています。

シングルカットされた代表曲「This Is Me」は特に素晴らしく、ゴールデングローブ賞の主題歌賞を獲得しました。

数々の名曲を含めたオリジナルサウンドトラックは多くの国で売上1位を獲得し、65カ国でitunesランキング1位になるなど、大いに評価されたのです。

多くの人の心をつかむバーナムのテクニック

”バーナム効果”という言葉をご存知でしょうか。不特定多数の人間に適合する内容なのに、言われた人が「自分のことを言い当てている」と感じてしまう心理学用語です。

これはバーナムが語った「誰にでも当てはまる要点というものがある」という言葉が元になっています。

映画ではペテン師呼ばわりされているバーナムですが、多くの大衆の心をつかむコツが分かっていたからこそ、興行を成功させられたのではないでしょうか。

どういう状況でバーナム効果という言葉が出てくるのですか?
たとえば「占い師の中にはバーナム効果を使ってよく当たると思わせる人もいる」といった具合です。

キャストたちは存分に歌声を披露していますが、レベッカ・ファーガソン演ずるジェニー・リンドのパートはアメリカの歌手であるローレン・オルレッドが代役で歌っています。

レベッカも充分に実力のある俳優ですが、本作での立ち位置や史実としての「世界一の歌姫」という観点から、より実力のあるローレンが歌うことになったのです。

ローレンが起用された経緯は、ジェニーの曲を作る際の仮歌(イメージを掴むために本人以外が歌うこと)を担当していたところ、クオリティが非常に高かったことにあります。

もともと彼女はクラシックの教育を受ける環境で育ちながらポップスに目覚め歌手としてデビュー、オーディション番組でも好成績を収めて高く評価されていました。

歌を担当することに決まってからはレベッカ・ファーガソンからスウェーデン訛りのアクセントを直接教わり、レベッカはローレンの歌に合わせて口を動かす練習を続けます。

この交流があったことで、ジェニーが自分の心情を歌い上げる歌唱シーンは大きな見どころとしてファンの心を捉えることに成功しました。

「グレイテスト・ショーマン」公開までのミュージカル映画の変遷

ヒュー・ジャックマンの中で「グレイテスト・ショーマン」の企画が温められていたのに、すぐに制作されなかったのはミュージカル映画が不遇の時期があったためでしょう。

1960年代~2010年代のハリウッドにおけるミュージカル映画の流れを見ることで、本作がいかにして生まれたか理解できます。

制作側と観客側のタイミングがマッチしたように思われる「グレイテスト・ショーマン」が、どうやって世に出て観客から評価されたかについて考察していきましょう。

ミュージカル映画の衰退と復活

ミュージカル映画の歴史は長いですが、1960年代ごろに商業的な失敗が相次ぎ、造り手や演者などが避けるようになってからは不遇の時代が続きました。

1991年にディズニーの「美女と野獣」が公開され、これが評判となってミュージカル映画再起の土壌ができていきます。

2000年代初頭で注目されたのは「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000年)「ムーラン・ルージュ」(2001年)といった作品でしたが、大ヒットとまではいきませんでした。

2002年にようやく「シカゴ」が映画化され、34年ぶりにミュージカル映画がアカデミー作品賞を獲るなどして”ミュージカル映画は売れない”というジンクスを吹き飛ばしたのです。

この流れに乗ってブロードウェイミュージカルの映画化がいくつも行われるなど、ジャンルとして盛り返していきます。

そしてTV映画から劇場映画へとバージョンアップした「ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー」(2008年)がディズニーによって公開されました。

この作品が大当たりし、アメリカでミュージカル映画の記録を更新するヒットを飛ばします。

「ハイスクール・ミュージカル」の主演はザック・エフロンですよね!
ザックはシリーズ初期に歌のシーンを差し替えられたことが悔しくて、猛練習の末にミュージカル俳優としての地位を掴んでいます。

古典の映像化から誰も観たことがない世界の構築へ

タイミングを伺うように、ヒュー・ジャックマンは2009年の時点で制作を開始、撮影準備を進めながら自ら道を切り開くように「レ・ミゼラブル」(2012年)に出演します。

主人公であるジャン・バルジャンを見事に演じてみせた彼は、実力を発揮した共演者たちとミュージカル映画の素晴らしさを証明したのです。

アカデミー賞をいくつか獲得した「レ・ミゼラブル」に続くように、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」が評価され、アカデミー賞レースで大活躍しました。

「ラ・ラ・ランド」で音楽を担当したベンジ・パセック&ジャスティン・ポールを起用する先見の明を発揮するなど、ヒューは自身の才能だけでなくスタッフ選びも完璧です。

彼の情熱がベストのタイミングを作ったかのように、ミュージカル映画が受け入れられる環境が整い、「グレイテスト・ショーマン」は世界中で評価されました。

ヒュー・ジャックマンは医者から歌うことを止められていたらしいですね!
鼻の手術直後で傷がふさがってないのに歌ってしまい、医者にメチャメチャ怒られたそうです。

この映画が観客の心を揺さぶる理由

「グレイテスト・ショーマン」はシーンごとのドラマに起伏はあるものの、徹底的にポジティブな表現で締めてからシーンが移るので、ネガティブにならず鑑賞できます。

制作陣が描きたかったものはマイノリティへの理解、愛の形、1つの目的に向かって進む人たちが生み出す絆といったプラスのメッセージです。

観客には高く評価され、批評家たちからは受け入れられなかった理由も含めて、この映画が名作となった理由となる描写について読み解いていきましょう。

偏見と差別に対しての反逆

時代背景として、当時のアメリカは奴隷制がなくなったばかりで、アメリカ南部に比べれば穏やかなものの、ニューヨークでも黒人はまだ差別の目で見られていました。

バーナムは黒人以外にも、ユニークな人を集めて見世物小屋のようなサーカスを展開します。

バーナムは彼らを差別するのではなく個性として褒め称えますが、周囲からはフリークスと呼ばれる奇形の人を利用して金儲けしようとする極悪人というイメージがありました。

「グレイテスト・ショーマン」を観た映画評論家たちも、バーナムを美化しすぎていて陰の部分が描かれていないと指摘しているのです。

ですが制作陣が描きたかったのは、社会的に排除されているマイノリティが脚光を浴び、自分の特徴を恥じることなく胸を張って行きていく、偏見なき世界の肯定になります。

バーナムが上流階級のパーティーで、サーカスの仲間たちが参加するのを拒否するシーンでは、ユニークな人は結局排除されるのかと悲しみと怒りを覚えるでしょう。

ですが彼らはそのことに負けず、「私は私である、恥じることはなにもない」と高らかに歌う「This Is Me」のシーンは力強い自己肯定を観客に与えます。

そもそもフリークスの人々を扱う作品で、ここまで大規模な予算を投じて描いた映画は今までありませんでした。

バーナムのサーカスを酷評していた批評家が、最終的に彼のショーを認め「人類の祭典」と呼ぶなど、多様性を重視する現代でもかなり挑戦的な内容になっています。

観客はそのメッセージを受け取った上で支持し、観るべき作品であるということを口コミで広げたことで、大ヒットすることになりました。

届く愛、届かない愛

バーナムと妻チャリティは身分の差を乗り越えて結婚し、貧しくも幸せな家庭を築きますが、バーナムが成功したことで周囲から成金と蔑まれ、家族も迫害されます。

上流階級に認められるために劇作家のフィリップを迎え入れたことにより、サーカスのスターである有色人種のアンとフィリップはお互いを見初め、恋に落ちるのです。

アンとフィリップは差別や偏見を持たれるという障害を乗り越えて愛し合い、未来を塗り替えていこうというメッセージを「Rewrite The Stars」として歌います。

このシーンはザック・エフロンとゼンデイヤがスタント無しで宙吊りになって演じており、ロマンティックかつアクロバティックな画面に引き込まれるシーンです。

一方、イギリス女王に謁見するまでになったバーナムは、オペラ歌手であるジェニー・リンドと知り合い、才能のあるジェニーをアメリカツアーに誘います。

お互いを知ることでジェニーはバーナムに対してビジネスパートナー以上の感情を持ちますが、バーナムはその好意に応えることはありません。

バーナムがステージの裾に立ち、バーナムの家族が客席にいる状況で、ジェニーが届かない愛を歌う「Never Enough」は感情に訴えかけてくるものを感じるのです。

仲間との絆

ツアーが中止となり、サーカスの会場も火事で失ったバーナムは自宅を借金の抵当として押さえられ、ジェニーとのスキャンダルを知った妻と娘たちは実家に帰ってしまいます。

すべてを失った時にバーナムを支えてくれたのは、上流階級にいるときにバーナムが忌避したフリークスの団員たちでした。

彼らは金儲けのために集められた面があると分かった上で、自分の存在を日陰者ではなく、光の当たる存在として認めてくれたバーナムに感謝の気持ちを持っていたのです。

笑いものにするのではなく、誇るべき個性として彼らを肯定してくれて、仲間たちと家族のように過ごしたサーカスは団員たちにとってもかけがえのないものになっていました。

バーナムはそこで自分がなんのためにサーカスを始めたのかを再確認し、絆を取り戻すのです。

アンと団員たちのために、自分の資産でサーカスを再建すると決めたフィリップは、50/50の条件で契約しようと伝え、サーカスは再び動き出します。

バーナムはその信頼に感謝しつつ、フィリップこそが新しい団長にふさわしいとシルクハットを渡すのです。

他人を幸せにすることは芸術である

二人の間で交わされた友情が継承され、フィリップはサーカスとアンを、バーナムは家族を愛していくことを示唆するエンディングを迎えます。

娘のバレエ発表会を満足そうに見つめるバーナムが最後に残したメッセージは、「最も崇高な芸術は、他人を幸せにすることである」です。

サーカスもオペラも娘の発表会も、観客を幸せにしている崇高な芸術であることを噛み締めながら、他人を幸せにしたいと願うこの映画で幸せを噛み締めながら幕を閉じます。

「グレイテスト・ショーマン」が観客に評価されたのは、単純なサクセスストーリーや多様化の肯定だけではなく、エンタメに対しての姿勢が提示されたからではないでしょうか。

まとめ

観客が「グレイテスト・ショーマン」を鑑賞して得る感情は、見方によって非常に多彩な結果になるでしょう。

実在の人物を描くのであれば、もっとモデルに忠実なキャラクターメイキングが必要だと思う人もいれば、きっかけさえ解るならドラマに脚色は必要と言う人もいます。

ですがミュージカル映画として、圧倒的な音楽のクオリティと演者のパフォーマンスが高レベルで融合している本作は、名作であると断言できるのです。

心に響く映画を観てみたい、という方には是非おすすめしますので、おうちシネマで堪能してください。

ヒュー・ジャックマンの才能を掘り下げて観たい方はこちら

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レ・ミゼラブル(ネタバレ・考察)タイトルの意味とは?スリリングな逃亡劇の末にぶつかる二つの魂!! https://cinemaxina.com/les-miserables/ https://cinemaxina.com/les-miserables/#comments Tue, 27 Apr 2021 05:42:24 +0000 https://cinemaxina.com/?p=22147 レ・ミゼラブルは、文豪ヴィクトル・ユゴー作の同名小説を原作に、2012年に公開されたイギリス・アメリカ合作のミュージカル映画です。 世界43カ国で上演されて大ヒットを記録した名作ミュージカルを、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイら豪華キャストで映画化しました。 監督は「英国王のスピーチ」のトム・フ

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レ・ミゼラブルは、文豪ヴィクトル・ユゴー作の同名小説を原作に、2012年に公開されたイギリス・アメリカ合作のミュージカル映画です。

世界43カ国で上演されて大ヒットを記録した名作ミュージカルを、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイら豪華キャストで映画化しました。

監督は「英国王のスピーチ」のトム・フーパーです。

この作品は、アカデミー賞3部門(助演女優賞、録音賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞)を受賞、ゴールデングローブ賞3部門(作品賞、主演男優賞、助演女優賞)を受賞しました。

19世紀のフランスを舞台にし、「愛」「許し」「運命の変転」をミュージカルで表現した壮大なドラマです。

逃亡劇の顛末や、珠玉の歌の数々など、この作品の小話、ネタバレ・考察をご紹介していきたいと思います!!

レ・ミゼラブル(2012年)

1815年、パンを盗んだ罪で19年間服役したジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、仮釈放中に再び盗みを働いてしまうが、司教の慈悲に感銘を受けて改心する。

1823年、執念深いジャベール警部(ラッセル・クロウ)の追跡を逃れ、過去を捨て、モントルイユの有力者となったバルジャンだったが、ジャベール警部に正体を見破られてしまう。

工場で働いていた女性ファンティーヌから7歳の愛娘コゼットを託されたバルジャンは迫るジャベール警部から逃げるようにしてパリへ向かう。

1832年、バルジャンとコゼットは親子として暮らすが、美しい女性に育ったコゼットは革命運動に身を投じる青年マリウスと恋に落ちる。

バルジャンはコゼットのために革命軍に参加し、政府軍との戦闘中に重傷を負ったマリウスを担いで地下の下水道を通って逃げようとする。

そこに立ちはだかったのがジャベール警部だった。バルジャンは過酷なこの世界を生き抜いていけるのか…。

レ・ミゼラブル(ネタバレ・考察)

この映画が公開された2012年は、ユゴーの原作発表からちょうど150年に当たる記念すべき年でした。

ほとんど全てのセリフが歌になっている「レ・ミゼラブル」。

吹き替え無しで演者が歌を担当し、その素晴らしさで観客を魅了しました。

この作品にまつわる小話をご紹介しましょう。

全員が最高のキャストだった

既に舞台公演で絶賛されているミュージカル「レ・ミゼラブル」をあえて映画化する意味はあるのかと思っていました。

監督のトム・フーパーと製作のキャメロン・マッキントッシュは、この作品が成功したことについて、次のように述べています。

「全員が最高のキャストだった。この上ないほどのキャスティングだったからこそ、映画史上に残る作品になった」

「レ・ミゼラブル」最高の俳優陣

  • ヒュー・ジャックマン
  • ラッセル・クロウ
  • アン・ハサウェイ
  • ヘレナ・ボナム=カーター
  • エディ・レッドメイン
  • アマンダ・サイフリッド
  • ダニエル・ハトルストーン

「レ・ミゼラブル」はこういった名だたる俳優陣の演技が光る作品になっています。

また、雨に打たれながらの歌唱シーン、巨大な船を囚人たちが引いている場面、激しい戦闘シーンなど、舞台公演ではできない演出にも惹きつけられました。

この作品を観ると、キャスティング、登場人物の描写、迫力ある映像において、トム・フーパー監督の力量が活かされていることがわかります。

キャストたちの努力が不朽の名作を作り上げた

ジャン・バルジャンに扮したヒュー・ジャックマンは、19年間強制労働をさせられた囚人を演じるために、一日3時間の筋トレを続け、身体を絞り撮影に臨みました。

彼は結局、この作品のために15kgも体重を増減したそうです。

また、彼は1990年代後半からミュージカルに多数出演し、2004年と2005年に演劇界で最も権威のある賞・トニー賞を受賞していて、歌唱力・演技については定評があります。

バルジャンの苦悩、悲しみ、喜びの感情を余すところなく表現した熱いパフォーマンスに胸を揺さぶられるのです。

ジャベール警部役のラッセル・クロウは、感情を抑えながらもにじみ出る凄みを感じさせる演技でヒュー・ジャックマンとの対決シーンを際立たせました。

ファンティーヌ役のアン・ハサウェイは、死の淵に立たされている女性を表現するために、2週間で7キロの減量を実現します。

ファンティーヌがお金がなくて髪の毛を売ってしまうシーンも、カツラを用いるのではなく撮影中実際に髪を切って文字通り体当たりの演技を披露していました。

その結果アカデミー助演女優賞を獲得しますが、苦しむ登場人物を演じた自分が、高価な衣装を身に纏う場で表彰されることに違和感を感じたそうです。

子役までも振り絞るような演技を見せる

子役のダニエル・ハトルストーンが、貧民街で強くしたたかに生きるガブローシュ少年を演じていて秀逸です。

舞台公演「レ・ミゼラブル」でガブローシュ役を演じていたダニエルは、映画でも美声を遺憾なく発揮し、革命軍の前に出て撃たれてしまうシーンで迫真の演技をしています。

このシーンでガブローシュが見せる気高さ、勇気は他のキャラクターと比較しても引けを取りません。

映画の中で、冷徹なはずのジャベール警部が、自分が付けていた勲章を亡きガブローシュの胸に付ける印象的なシーンがあります。

潜入捜査をしていたジャベール警部ですら胸を打たれ、ガブローシュに勲章という名誉を与えるべきと感じさせる場面です。ダニエルの演技はまさに勲章モノでした。

それぞれのシーンがすごい臨場感でしたね。
舞台公演とはまた違った迫力で、感動しましたね。

演技と歌を同時に撮影

通常、ミュージカル映画の撮影では、先に歌とオーケストラの伴奏を録音して、それに合わせて演技をすることが多いようです。

しかしこの作品では、演技と同時に現場で俳優が歌って、後からオーケストラ演奏を載せるという手法を取りました。

俳優陣は、本番中小さなイヤホンを耳に付けて、イヤホンにピアノ演奏が流れるのでそれに合わせて歌いました。

当初マイクを衣装の裏に付けて歌を録音していましたが、服が擦れる音までもマイクが拾ってしまうので、マイクは衣装の表側に付け、衣装と同色の布をかぶせて隠したといいます。

また、足音が録音されないようカーペットを敷いたそうです。

オーケストラは、現場で歌われた歌に後から完璧にテンポを合わせて演奏しなければなりませんでした。オーケストラ・メンバーの実力には驚かされます。

ヒュー・ジャックマンは「生で歌いながら演技するというのは、キャラクターがその時に感じた気持ちをそのまま表現できるので楽しかった」と語りました。

こんな録音の苦労のお陰で、映画では演者のリアルで感情豊かな歌を聴くことができるのですね。
アカデミー録音賞を受賞して苦労が報われましたね。

「愛とは、生きる力」

この映画のキャッチコピーは「愛とは、生きる力」です。

キャッチコピーが表すように、「レ・ミゼラブル」は様々な愛が交錯するストーリーとなっています。

主人公であるバルジャンの変化と成長からうかがえる愛を考察してみましょう。

神の愛・慈悲とは

映画の冒頭でバルジャンは、仮釈放され街へと戻りますが、身分証明書に前科ありと記載されているので、誰も彼を雇ってくれる者はいません。

そんな彼を司教が教会へと招き入れ、食事と寝床を提供しました。

しかしバルジャンは、教会の銀食器を盗み逃げてしまいます。

翌日、警官に捕まったバルジャンが司教の元へと連れてこられますが、なんと司教は、銀食器は自分があげた物だと告げ解放させるのです。

そして「この一番高価な物をお忘れですよ」と彼に銀の燭台を渡して「この燭台を使って善き人になるのです」と諭します。

この時に神に仕える司教の優しさと、司教が信じる神の愛に触れ、バルジャンが「善き人」になるシーンは魂が揺さぶられるでしょう。

愛を知るバルジャン

自分の所有する工場に勤務していたファンティーヌの最期を看取り、バルジャンは彼女の最愛の娘・コゼットを引き取ります。

バルジャンはコゼットを宝物のように大切に育てました。

彼は、初めて無償の愛を人に注ぐ喜びを知るのです。

コゼットとマリウスが恋に落ちたとわかった時は、宝物を盗られたような気持ちになりますが、二人を祝福します。

改心してからのバルジャンの全ての行動が「愛ゆえに」突き動かされるのですね。
だから、バルジャンは戦場に行ってコゼットの想い人・マリウスを助けに行くのですね。

逃亡劇の顛末

「レ・ミゼラブル」はスリリングな逃亡劇としても有名で、様々な映画やテレビドラマにリメイクされています。

注目すべきは、やはり仮釈放後、出頭せずに逃亡したバルジャンと、彼を追い続けるジャベール警部の物語でしょう。

バルジャンの変化がジャベール警部にどのような影響を及ぼしたのか、見ていきましょう。

ジャベール警部の追跡

ジャベール警部はバルジャンを捜索し続けますが、バルジャンは改心してから「マドレーヌ」と改名し、モントルイユで新しい人生を歩み始めました。

工場を経営し、市の経済を支えた功績により人々に信頼される市長となったのです。

しかし、ジャベール警部は、「どこかでお会いしたことがありますか」とマドレーヌ市長がバルジャンではないかと疑います。

バルジャンはその時はごまかしますが、ジャベール警部からの言葉に耳を疑うのです。

それは「ジャン・バルジャンという名前の男が窃盗で捕まりました。明日の裁判でその男が有罪となれば終身刑となります」という内容でした。

バルジャンは苦悩の末自分と間違えられて逮捕された男を救うことを決意し、裁判所で自身の正体を明かしたのです。

ジャベール警部の執念

正体を表したバルジャンを逮捕しようとするジャベール警部ですが、バルジャンは振り切って川に飛び込み逃亡します。

バルジャンをもう少しのところで逃してしまったジャベール警部は「鉄格子の中の彼を見るまで私は休むことはない。必ず捕まえてみせる」と神に誓うのです。

川から這い出たバルジャンは、コゼットを連れてパリへ逃亡し、屋敷に落ち着きます。しかし、その屋敷にもジャベール警部が追ってきました。

バルジャンは、昔助けた男の尽力で、男性が立ち入りできない修道院にコゼットと逃げ込むことができます。

修道院に立ち入ることができないジャベール警部は悔しさを募らせつつも、逮捕を諦めることはないのです。

この妄執のような信念が、後にジャベール本人へ大きな影響を与えることになります。

運命の変転

バルジャンはコゼットの恋人・マリウスを助けるため、革命軍に参加して一緒に戦うこととなりますが、そこで身柄を拘束されていたジャベール警部に遭遇します。

ジャベール警部はバルジャンを逮捕するために革命軍に潜入していましたが、国家警察の人間だとバレてしまい、縄で繋がれていたのです。

「立場は逆転した。私を殺すがいい」とジャベール警部はバルジャンを挑発します。

これまでは、追いかけるジャベール警部がバルジャンの運命を握っていたのに、今はバルジャンが捕縛されたジャベール警部の運命を握っているのです。

立場が逆になる、すなわち「運命の変転」がこの作品のテーマとなっています。

しかしバルジャンはナイフでジャベール警部を切りつけると思いきや、縄を切ってジャベール警部を逃がすのです。

そしてなおも戦闘で重傷を負ったマリウスを助けようと必死にパリの地下下水道を行くバルジャンの姿にジャベール警部は茫然となります。

「善」を知ったジャベール警部

バルジャンに救われたジャベール警部は、川に身を投げて自殺します。それは彼が生きている意味を見失ったからです。

ジャベール警部は神と法に忠実に生きてきた男でした。神の教えと法にのっとり「善」として生き、悪を許さないという信念を持って生きていました。

一方バルジャンは犯罪者、つまり法に背いた男です。ジャベール警部は、バルジャンは法に裁かれるべき「悪」だと執拗に追っていました。

しかしバルジャンはジャベール自身の命を救い、さらに他の人々の命も救う、紛れもなく「善き人」でした。

「悪」と思っていたバルジャンを「善」と認めてしまったジャベール警部は、自分の信念が覆され何を信じて生きていけばいいのかわからなくなってしまい、自殺したのです。

タイトルの意味

「レ・ミゼラブル」というタイトルは、原作小説のタイトルにもなっていて、フランス語で「惨めな人々」「悲惨な人々」という意味です。

小説が日本語に翻訳された際には「ああ無情」というタイトルで出版されました。

この物語は19世紀のパリを舞台に描かれていますが、原作者のユゴーはパリの街を貧困・悲惨・不潔・不気味というイメージで語っています。

当時は貧富の差が開き、コレラで次々と人命が失われ、天候不順による食料不足で民衆は皆飢えていました。

しかし同時に、ユゴーは、鉄道やアスファルトの道が敷設されるなど近代的な文明が入り込み、古くて汚い街が新しい街へと生まれ変わっていく様子も描いています。

そして貧困や不平等をなくしたいと願う民衆の反乱が描かれるのです。

ユゴーは、この小説で、民衆を苦しめる制度や慣習を打破しようと、戦うことを表明しています。

「レ・ミゼラブル」というタイトルには、まさに「惨めな」登場人物たちが、逆境の中「ああ無情」と嘆くのではなく勇気を持って強く生きようとしている姿が込められているのです。

そして、現在もなお貧困や不平等は存在します。

だからこそ、出版から約150年経っているこの物語に、現代を生きる私たちは共感し、感動するのです。

珠玉の歌の数々

この映画には、1980年以来舞台公演で歌い継がれてきた珠玉の歌が満載です。

どれも聴いたらその場で覚えてしまうようなメロディーになっています。

特に素晴らしい4曲をご紹介しましょう。

「独白」

バルジャン扮するヒュー・ジャックマンが歌う歌「独白」は凄い迫力でした。

この歌は、司教が銀の燭台をバルジャンに渡してくれた時の歌です。

「俺は何ていうことをしたのだ、泥棒とは。それなのに司教様は俺を優しく迎えてくれた。俺を兄弟と呼んでくれたのだ」

司教の慈悲に心打たれ、自分を恥じ入り人生の岐路に立つ男の決意が込められた、ヒュー・ジャックマンの緩急をつけた圧倒的な歌唱力に驚かされます。

雷を打たれたかのように歌い上げる様子は、観ているあなたの心を鷲づかみにすることでしょう。

「夢やぶれて」

「夢やぶれて」は、幸せだった時を思い出して「こんな地獄を生きるはずじゃなかった」とファンティーヌが歌う歌です。

アン・ハサウェイが瀕死のファンティーヌの辛い心情を見事に歌っています。

「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイがこんなに感情を込めて歌えるとは知りませんでした。

これはスーザン・ボイルがオーディション番組で歌って世界中に衝撃を与えた曲としても有名で、今では誰もが知る歌になっています。

「星よ」

「星よ」はバルジャンを必ず逮捕するのだと誓うジャベール警部が歌う歌です。

「神よ、あなたを証人にして私は誓う。彼を必ず捕まえると」

高い塔の際に立ち、星を見上げてジャベール警部は歌うのです。

頑なまでにバルジャンを追い続けるジャベール警部の揺るぎない信念が歌で表現されました。

冷徹なジャベール警部を演じたラッセル・クロウの真骨頂です。

「オン・マイ・オウン」

エポニーヌは、コゼットをこき使っていたテナルディエ夫妻の娘で、コゼットと同い年です。

彼女は革命の闘士・マリウスを愛していましたが、マリウスはコゼットと恋に落ちます。

子どもの頃は両親に甘やかされて育ちコゼットを見下していたエポニーヌですが、立場は逆になり、今度はエポニーヌの方が報われない愛に苦しむのです。

「運命の変転」がここでも行われます。

「彼を愛している。でも私は独りぼっち」と雨に打たれ泣きながらエポニーヌが歌う歌が「オン・マイ・オウン」です。

エポニーヌを演じたサマンサ・バークスの切ない歌唱に胸を打たれることでしょう。

「民衆の歌」

「民衆の歌」は、革命に命を懸ける若者たちの決起の歌になります。

フランスの国家「ラ・マルセイエーズ」をモチーフに作詞・作曲されました。

「民衆の歌が聞こえるか?鼓動がドラムと響き合えば、明日、生命が始まる」

力強く希望に溢れたこの歌を聴くと感動のあまり震えてくる程です。

世界中で歌われていて、スタンダード・ナンバーになっています。

2014年「雨傘革命」といわれた香港反政府デモや2019年のイラクの反政府デモで歌われました。

日本では、横浜F・マリノスのサポーターがスタジアムで応援歌として歌っています。
コロナ対策の第一回緊急事態宣言期間中、城田優、山崎育三郎、平原綾香らミュージカル俳優36名が、医療従事者のためにテレワークで歌った動画が公開され、日本中を感動の渦に巻き込みました。

まとめ

バルジャンはマリウスにコゼットを託して、二人が年老いたバルジャンを看取ったところで映画は終わります。

それぞれの愛が交錯する「レ・ミゼラブル」。

上映時間は158分ですが展開が速いので一気に観られます。

映画を観たあなたの心の中には「民衆の歌」があなたを励ますように流れることでしょう。

至上の愛のストーリーにどうぞ浸ってください!!

ヒュー・ジャックマンの奇跡の歌声が聴ける意欲作はこちら

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エリザベス(ネタバレ・考察)劇中の事件について解説!女王の奇抜なドレスの意味を考察!! https://cinemaxina.com/elizabeth/ https://cinemaxina.com/elizabeth/#respond Tue, 16 Feb 2021 01:45:05 +0000 https://cinemaxina.com/?p=20027 「エリザベス」は1998年に公開されたイギリス・アメリカ合作の歴史映画です。 絶対君主としてイングランドに君臨したエリザベス1世(1533年~1603年)の前半生を重厚に描いて各方面から絶賛されました。 「サハラに舞う羽根」のシェーカル・カプールが監督し、女優ケイト・ブランシェットの出世作となりました。 ジョセフ・ファ

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「エリザベス」は1998年に公開されたイギリス・アメリカ合作の歴史映画です。

絶対君主としてイングランドに君臨したエリザベス1世(1533年~1603年)の前半生を重厚に描いて各方面から絶賛されました。

「サハラに舞う羽根」のシェーカル・カプールが監督し、女優ケイト・ブランシェットの出世作となりました。

ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ、リチャード・アッテンボロー、ヴァンサン・カッセルといった大物俳優の対決も魅力的な本作について、小話や考察を交えながらご紹介していきましょう。

エリザベス(1998年)

ヨーロッパ列強国に翻弄される16世紀のイングランド。国王ヘンリー8世がカトリックを棄て、プロテスタントを打ち立てた事で国内外に新旧の宗教抗争がくすぶる。

父王ヘンリー8世の遺志を汲みプロテスタント信者だったエリザベス(ケイト・ブランシェット)は、カトリックの異母姉メアリー女王にロンドン塔に投獄される。

エリザベスは、メアリーの病死の後を受けて25歳でイングランド女王に即位する。

重臣ウィリアム・セシルは、ロバート・ダドリー(ジョセフ・ファインズ)と恋愛関係にあったエリザベスに、政略結婚を進言する。

ローマ教皇やカトリック列強国が介入してきて、イングランドを取り巻く状況はより一層緊迫し、エリザベスの暗殺未遂事件が起こる…。

エリザベス(ネタバレ・考察)

感動の歴史大作「エリザベス」。

この映画にはどんな小話があるのでしょうか。作品にまつわるエピソードを幾つかご紹介していきたいと思います!

俳優陣の演技の素晴らしさ

まだ当時無名だった女優ケイト・ブランシェットが、女王としての誇りに満ちた鬼気迫る演技で演じているのにまず驚きます。

少女の頃は清純なお姫様で城の庭園で侍女と楽しく遊んでいたのが、異母姉に投獄され女王として次第にカリスマ的存在になっていく様子をよく表現しているのです。

また、ジョセフ・ファインズが、エリザベスの恋人ロバート・ダドリーをセクシーに演じています。

既婚者なのにエリザベスとの愛に溺れ、次第にエリザベスに突き放され、自ら彼女を裏切ってしまう情けない男を愁いを帯びた眼で演じて印象的です。

「恋に落ちたシェイクスピア」や「ヴェニスの商人」でも見られたように、恋に一途で右往左往するイケメン男を演じさせたらジョセフ・ファインズの右に出る者はいないでしょう。

他にも、ジェフリー・ラッシュ、ジョン・ギールグッド、リチャード・アッテンボローと、イギリス演劇界の大御所が出演していて、歴史大作にふさわしい映画になっています。

血まみれのメアリー

映画は、女性たちが火あぶりの刑になる場面で始まります。

火あぶりになったのは、プロテスタント教徒の女性たちです。エリザベスの異母姉・メアリー女王の命令で行なわれたのでしょう。

史実では、メアリー女王はカトリック教徒で、対立するプロテスタント教徒約300人を処刑しました。

そのため、現代のお酒でウォッカをベースとするトマト・ジュースのカクテル「ブラッディ・メアリー(血まみれのメアリー)」はこのメアリー女王が由来になっているという事です。

現代日本人の私たちにはなかなか理解しにくい時代ですね。
当時は宗教の違いで殺し合いが起きる陰惨な時代だったのです。

裏切り者の門

エリザベスが、メアリー女王に妾の子と罵られ、ロンドン塔に投獄されるシーンがあります。

その際川から船で門をくぐって連行されます。

史実でもその門は反逆者が通る、一度入ったら二度と生きて出て来られない「裏切り者の門」と呼ばれていました。

歴代の数多の斬首刑となった人物がこの門からロンドン塔に投獄されたのです。

今でもロンドン塔に観光に行くと、その門を見る事ができます。

イギリスへ行く機会があれば、ぜひ行ってみてください。

エリザベスの母アン・ブーリンの幽霊が出るという噂があります。

エリザベス暗殺未遂事件

メアリー女王の死後に即位したエリザベスは、カトリックではなく、プロテスタントを国の精神的支柱とすることを宣言します。

それは、国内外での激しい宗教対立の始まりでもありました。

実際にエリザベスは20回以上も暗殺未遂事件に遭っています。作中に登場したわかりにくい2つの事件について解説しましょう。

リドルフィ陰謀事件

映画で、エリザベスの重臣ウォルシンガムが反逆者を次々と逮捕・処刑する事件が起きました。

史実ではリドルフィ陰謀事件といいます。

1571年にイングランドで起こった女王エリザベス殺害を目論んだ陰謀事件です。

カトリック教国スペインの軍がイングランドを占領し、カトリック教徒の反乱を起こそうという計画でした。

映画にもあった通り、カトリックの総本山・ヴァチカンのローマ教皇、スペイン国王、カトリック教徒のノーフォーク公が関わる大掛かりな陰謀です。

しかし、密使が逮捕された事から陰謀は露見し、多くの逮捕者・処刑者が出ました。

怖い事件だったのですね。
血なまぐさいこの事件を経験した事で、反対派と戦っていかなければならないと悟るのです。

毒のドレス

映画の中で、エリザベスの女官の一人が毒を塗られたドレスを着て殺されるシーンがありますが、本当にこんな殺人の手口があったの?と思われたのではないでしょうか。

エリザベス1世が生きた時代に、フランスに君臨していた王妃カトリーヌ・メディチがメディチ家伝来の毒を手袋に仕込んで政敵を殺害したといわれています。

毒を塗られたドレスで殺害する手口は十分あり得たという事でしょう。

毒薬は当時、証拠を残しにくい殺人の手口としてよく使われました。

映画の中でエリザベスがこの毒殺事件を知って驚き「フランスの絹!!」と口走るのは、何を意味しているのでしょうか。

毒入りドレスの布地はフランス製でした。

フランスもカトリック教徒とプロテスタント教徒の間で激しい争いがあった国です。

殺された女官が着たのは、元々エリザベスに贈られたドレスでした。

つまり、毒薬入りのドレスは、フランスのカトリック勢力からエリザベスを暗殺するために贈られたものと推察できます。

ドレスに仕込まれた毒によってエリザベスが暗殺されかけたという記録はないのですが、映画ではこの事件も、多くのエリザベス暗殺未遂事件の一つだったという事になっています。

エリザベスと恋人ロバート・ダドリー

映画の中で、エリザベスとロバート・ダドリーが愛憎入り混じる複雑な関係を展開しています。

なぜこの二人は結婚しなかったのでしょうか。

ロバート・ダドリー

史実ではエリザベスとロバート・ダドリーは幼馴染でした。

ダドリーは1559年には枢密顧問官に任じられ、ガーター勲章も与えられ、宮廷内に住居を与えられて常に女王の側近くに仕えます。

エリザベスはダドリーを伴って毎日のように乗馬に興じ、二人はやがて恋人関係となりました。

1560年、ダドリーの妻エイミーが階段の下で首の骨を折って死んでいるのが発見されます。

この件は事故死とされましたが、女王がダドリーとの結婚のために邪魔なダドリーの妻を殺害させたのではないかと噂されました。

二人が結婚するとその噂を肯定する事になるので、とうとう結婚はしませんでした。

しかし、ダドリーは以後も何人もの女性と浮名を流し、1578年春に別の女性と再婚しています。

エリザベスとダドリーはいつも想い合いながら、ヤキモチをやき合う微妙な関係でした。

愛のダンス

映画で、エリザベスが夢中になったダンスが「ラ・ヴォルタ(la volta)」と呼ばれる踊りです。

女性を高く持ち上げたりする激しい動きが特徴の典型的なルネサンス期のダンスでした。

映画の中では、エリザベスはロバート・ダドリーとこの踊りを二回踊っています。

一度目は、ダドリーとの愛の絶頂期に、二度目はダドリーが既婚者である事がわかった後に踊られました。

二度目のダンスではエリザベスが踊りながらダドリーに「奥さんを愛してる?」と嫌味を言っていましたね。

映画ではこのダンスにエリザベスの愛の変遷が示されていて興味深い設定となっています。

だから、二度目の「ラ・ヴォルタ」のダンスではエリザベスはダドリーに嫌味を言っていたのですね。
愛は人を鬼にもするのですね。

ラストシーンの奇抜なドレスの謎

ラストシーンで、エリザベスは、顔を白塗りにしカツラをかぶり、大きく広がっている白いレースの襟(えり)が付いた宝石だらけのドレスを着ていましたね。

世界史の教科書にもそんなエリザベスの肖像画が載っています。

なぜエリザベスはそんな奇抜な恰好をしたのでしょうか。そして、ラストシーンのセリフ「私はイングランドと結婚する」とはどういう意味なのでしょうか。

ここで、エリザベスが女王になるまでの経緯を史実から見ておきましょう。

父王と政争に翻弄された少女時代

エリザベスの父・イングランド国王ヘンリー8世は、なかなか男子の子どもに恵まれなかったので、6人の女性と次々に結婚しました。

1533年、エリザベスは2番目の王妃・アン・ブーリンの娘として生まれましたが、王妃である母が父王の命令で斬首刑に処せられ亡くなります。

1547年、父王ヘンリー8世が死去すると、3番目の王妃の息子・エドワード6世が9歳で国王に即位、その6年後病死します。

そして、王家の血筋である公爵令嬢ジェーン・グレイが女王として即位し、9日間で退位させられ、処刑されます。

ジェーン・グレイを処刑した最初の王妃の娘・メアリーがクーデターを起こして女王となります。

5年後、1558年にメアリー女王が病死し、ようやく、王位継承権3位のエリザベスが女王になりました。

殺されないために

父に母を殺され、異母姉に投獄されたエリザベス。

エリザベスが女王になるまでに何人の人間が命を落としたでしょうか。

暗殺事件も後を絶ちません。

エリザベスは考えました。やっと得た王位です。うかうかしていると、王位を奪われます。

それどころか、殺されかねません。

国家と結婚したエリザベス

一方、海外では、植民地を求めて制海権を我が物にしようとスペイン、オランダ、フランスなどの列強国が虎視眈々とイングランドを併合しようと狙っていました。

政治上・宗教上の対抗勢力に倒されないために、またイングランドが外国から軽く見られないためには、カリスマ性が必要です。

恋人ロバート・ダドリーに裏切られ、自分の恋も叶わない。列強国の王族と結婚しても、国を乗っ取られるだけ…。

「ならば、個人としての幸せは求めない」と決意したのでしょう。

映画の中でエリザベスはマリア像の前で女性の象徴である長い髪を切ります。

いわゆる「女を捨てた」という事でしょう。エリザベスが言った「私はイングランド国家と結婚します」はそういう意味があると思われます。

エリザベスは、他の人がしない装い、白塗りの顔、宝石だらけの奇抜なドレスで、自分が人間を超えた存在であるという事を、世界の人々に知らしめたのです。

聖母マリアのような聖なる女性と崇められる効果を狙ったのでしょう。

エリザベスが厳かに歩くにつれ、重臣たちが次々にお辞儀をしていく印象的なシーンで映画は終わります。

エリザベスは絶対的な女王として国の内外に自分を誇示したのです。

まとめ

エリザベスは、自分が権力があり、強い意志を持ち、血統的にも由緒正しい王である事を人々に印象付けるために自分を神格化しました。

足をすくわれて政敵に殺されるのを、また、外国からイングランドが侵略されるのを防ぐためです。

まさに命がけの生涯でした。

劇中のエリザベスの「イングランドと結婚する」という壮絶な決意に、観ているあなたの魂が揺さぶられるでしょう。

16世紀ヨーロッパの世界に思いっきり浸れる本作をどうぞご覧ください!!

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テルマエ・ロマエ(ネタバレ・考察)濃い顔選手権が開催されていた!?ルシウスが感銘を受けた奥深き日本の風呂文化とは https://cinemaxina.com/thermae-romae/ https://cinemaxina.com/thermae-romae/#respond Tue, 16 Feb 2021 01:44:38 +0000 https://cinemaxina.com/?p=20329 「テルマエ・ロマエ」は、ヤマザキマリによる同名漫画作品が原作で、2012年に公開されました。 古代ローマ帝国の浴場設計師が現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化を学んでいく姿を描いたコメディ映画です。 監督は「のだめカンタービレ」の武内英樹で、阿部寛が仕事中毒の浴場設計師ルシウスを演じて好評でした。 市村正親、北村

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「テルマエ・ロマエ」は、ヤマザキマリによる同名漫画作品が原作で、2012年に公開されました。

古代ローマ帝国の浴場設計師が現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化を学んでいく姿を描いたコメディ映画です。

監督は「のだめカンタービレ」の武内英樹で、阿部寛が仕事中毒の浴場設計師ルシウスを演じて好評でした。

市村正親、北村一輝ら日本が誇る「濃い顔の俳優たち」の名演でも話題になりました。

考察やトリビアを交えながらご紹介していきましょう。

テルマエ・ロマエ(2012年)

紀元128年、ローマ帝国。ハドリアヌス帝は、巨大なテルマエ(公衆浴場)を建設することで民衆の支持を集めていた。

生真面目な性格で古き良きローマの風呂文化を重んじる浴場設計師のルシウス(阿部寛)は、テルマエで溺れ現代日本にタイムスリップしてしまう。

そこで出会った風呂をこよなく愛する老人たちや漫画家志望の真実(上戸彩)ら「平たい顔族(=日本人)」の進んだ風呂文化に衝撃を受ける。

古代ローマに戻りそのアイデアを用いた斬新な浴場作りで話題となったルシウスは、帝からも絶大な信頼を寄せられるようになる。

そんな時、帝の側近アントニヌスが失脚。ルシウスは、日本からタイムスリップして来た真実から、このままでは歴史の記述が変わってしまうと聞く。

ルシウスはプロの浴場設計師としてアントニヌスの失脚を阻止する事はできるのか…。

テルマエ・ロマエ(ネタバレ・考察)

「テルマエ・ロマエ」は、公開されたとたん日本中で大ヒット!観客動員数500万人、興行収入60億円という凄まじい記録を叩き出しました。

鑑賞する上で知っておくと楽しめる笑えるポイントをお伝えしていきます。

抱腹絶倒のルシウスの微妙な勘違い

この映画の笑えるポイントは、何と言ってもルシウスのキャラクターです。

ルシウスは当初自分がタイムスリップしたとはわからずに、平板な顔の日本人をローマの奴隷たちと思い込み勝手に「平たい顔族」と呼びます。

現代のシャワーを「動物の腸のような物が繋がれている」と形容します。

ジャグジーの風呂を「地下で奴隷が息を吹きかけて泡を作っている」と誤解します。

彼の認識は事実とちょっとズレているのですが、そのズレ具合・微妙な勘違いが笑えるのです。

映画のジャンルとしては、全く異なる文化圏にやってきた主人公のトンチンカンな言動を面白おかしく描いた「カルチャーギャップ・コメディ」といえるでしょう。

阿部寛の演技

阿部寛が、思い詰め過ぎるルシウスを演じて秀逸です。

自分の浴場設計の斬新さの無さに悩んでいたルシウスの、現代日本の文明の高さに恐れをなす様子があまりにも大げさ過ぎて笑えます。

阿部寛が真剣に悩めば悩むほど大げさになり面白くなっていくのです。

阿部寛は見た目もローマ時代の男性彫像にそっくりで、ローマ人そのものに見えます。

古代ローマ人を日本人が演じる

もう一つの笑えるポイントはやはり「古代ローマ人を日本人が演じている」というところでしょう。

本来なら古代ローマ人には本物の有名外国人俳優をキャスティングするのが普通です。

しかし、そんなことは予算の関係もあって不可能なので、なんと「顔の濃い俳優を揃える」という荒技で、この難局を乗り切ってしまいました。

「これなら登場人物が外国人でも全部日本人俳優で撮れる!!」この発想は素晴らしいと思います。

そういうわけで、この映画のために主演の阿部寛を始め、市村正親、北村一輝、宍戸開ら顔の濃い俳優が集結しました。

「誰の顔が一番濃いか?」選手権

阿部寛によると現地では「誰の顔が一番濃いか?」という話題で議論が白熱したといいます。

「お前の方が…」とか「お前に言われたくないよ」と言い合っていましたが、そんな男たちの様子にヒロイン・真実役の上戸彩は「みんな一緒だよ」と心の中で思っていたそうです。

そして、「濃い顔の日本人俳優たち」は、素晴らしい重厚な演技を見せるではありませんか!

映画を観ているうちに、彼らが本当のローマ人であるかのように思えてきます。

ルシウスの成功

ルシウスの認識はちょっとズレているのですが、事実を的確に捉えていて、上手にローマの公衆浴場に応用します。

驚愕した日本の風呂文化を古代ローマの風呂に取り入れて成功していくのです。

日本の銭湯にあった壁画の巨大な富士山をイタリアのヴェスヴィオ火山に変えて描き、脱衣かごやフルーツ牛乳を作りました。

また、狭い所にバスタブを執念で設けた現代日本の「家風呂」に感動したルシウスは、公衆浴場に行きづらい老人の家に家風呂を、一人で洗髪できるようシャンプーハットを作って喜ばれます。

ルシウスとハドリアヌス帝の絆

さらに、ルシウスはハドリアヌス帝のために人力によるジャグジー風呂・ウォシュレットを作り、日本で取得した種で栽培したバナナを食べさせるなどして、帝の信頼を得ます。

なぜそんなにルシウスは帝に尽くすのでしょうか。

それはローマ帝国を誇りに思うルシウスが、民衆からは暴君だと思われているハドリアヌス帝の「ローマを愛する心」に気付いたからです。

その二人の絆、男と男の友情には感動します。

時間と空間を超えた心のふれあい

しかし、それらの成功は、単なる「平たい顔族」の真似で、自分の実力によるものではないとルシウスはまた悩みます。

自信をなくし、卑屈になったままです。

そして日本からタイムスリップしてきた真実にその気持ちを打ち明けます。

しかし、真実に、「あんたがタイムスリップしたのは悩んであがいた結果でしょう?ならばそれがあんたの導き出した答え」と言われ救われるのです。

もっと自分のしてきた仕事を誇っていいのだという境地に辿り着きます。

奥さんとはうまくいかなかったけれど、自分の事を分かってくれる真実に癒されるルシウス。

そんな時間と空間と人種を超えた魂のふれあいのシーンに心を打たれます。

真実って天才?

真実は漫画家志望で、アシスタントをしている漫画家に自分の作品を見てもらいますが才能がないと言われ、派遣の仕事もクビになり、実家の温泉宿にスゴスゴと帰ってしまいます。

しかし、ルシウスに出逢って恋してから、その実力をどんどん発揮していくのです。

まず図書館からローマ史の本を大量に借りてきて猛烈に勉強します。

勉強で得た知識から、自分のタイムスリップにより歴史が変わってしまう事に気が付いてルシウスに伝えるのです。

また、ルシウスが作った風呂場に、言葉を使わずにイラストだけで「入浴の心得」を描いて掲示し、漫画家としての腕を見せます。

そして、ルシウスと話すためにラテン語を寝ないで勉強してマスターするのです。

ラテン語は英語のbe動詞に相当する動詞だけで67種類もあります。

名詞だけでも単数形、複数形で10個の活用があり、形容詞は単数形、複数形で10個、性によって3パターンがあるので合計で30パターンの活用があるそうです。

真実はそんな難しい言語をマスターしてしまったのです。

すごい!ラテン語で古代ローマ人と会話ができるようになったのですね!!
実は真実は天才なのかもしれませんね。

あの名門の撮影所でロケ

この映画では、背景の古代ローマの建物群を壮大な規模で観る事ができます。

これらの建物はCGではなく、美術セットだというのです。どこでロケされたのでしょうか。

日本の温泉施設のロケ地もご紹介しましょう。

チネチッタ(イタリア)

チネチッタはイタリア・ローマ郊外にある映画撮影場所です。

1930年代に建設され、「ベン・ハー」や「クレオパトラ」などの超大作映画が製作された由緒正しい撮影所なのだそうです。

イタリアテレビ局が撮影したローマ時代のドラマのオープンセットをそのまま使うことができて幸運だったと、監督は言っています。

「テルマエ・ロマエ」では、1,000人のイタリア人をエキストラとして投入し、1週間かけて撮影に挑みました。

「バカバカしい映画を豪華に撮る」からこそ面白い、という監督の心意気が感じられますね。

銭湯・稲荷湯(東京都神田)

壁面には富士山が描かれ昔ながらの温泉という風情が漂っています。

皇居ランをするランナー達が多く利用するそうです。

劇中で、ルシウスが初めてタイムスリップした場所になります。

昭和の時代を感じさせる古き良き銭湯で、タイムスリップ先として打って付けですね。

TOTO 東京センターショールーム(東京都代々木)

最新のバス・トイレ商品を見て体験できるショールーム。

劇中で、真実が派遣社員として勤務していたショールームです。

ショールームのバスタブにルシウスが突然タイムスリップして来たので、真実が職場に男を引き入れていると誤解されクビになります。

ルシウスがウォシュレットを初体験する記念すべきショールームです。

熱川バナナワニ園(静岡県)

東伊豆にある施設でワニと熱帯性植物を扱った動植物園です。

劇中で、ルシウスが、見合い中の真実をお姫様抱っこしたシーンで使われています。

ルシウスを演じた阿部寛によると「お姫様抱っこしていた時、周りでワニが口を開けて待っていた」とのこと。
バナナワニ園のスタッフは撮影時ワニに口を開けさせるために1ヶ月間も餌をやらずに撮影に臨んだのだそうです。

那須温泉郷・北温泉(栃木県)

真実の実家として使われた場所です。

古い建物は江戸時代から存在する歴史あるもので、多くの湯治客が訪れる有名な温泉郷になります。

風情のある内装が日本のホスピタリティを感じさせ、この映画にピッタリですね。

伊香保温泉(群馬県)

群馬県渋川市伊香保町にある温泉で、群馬県を代表する温泉の1つとなっています。

温泉と共にその周辺の町と石段も有名で、劇中ではルシウスが猿にバナナを盗られて追いかけるシーンで使われていました。

俳優の阿部寛が伊香保温泉で、猿を追いかけたと思うと、笑ってしまいますね。

海外の評価

この作品は海外でも公開されました。

2012年4月にイタリアで開催された第14回ウディネ・ファーイースト映画祭では、ネット投票による「マイ・ムービーズ賞」を受賞。

それにより、イタリア全土で公開されました。

2012年9月、カナダ・トロント国際映画祭のメイン部門、ガラ・プレゼンテーションに正式招待され、阿部寛、上戸彩らがレッドカーペットを歩いたのです。

他にも、フランス、スイス、モナコ、韓国、香港、マカオで公開されました。

好評だったようで「笑わずにはいられない作品」という評価の声が聞かれたという事です。

中には、「日本人も自分で自分の事を平たい顔って言っちゃうんだね(笑)」という感想もあったようです。
阿部寛は撮影中、イタリアの女性たちにモテモテだったそうですよ。

震災とテルマエ・ロマエ

イタリアでのクランクインは2011年の3月14日の予定だったそうです。東日本大震災の3日後でした。

多くのスタッフは1週間前に現地入りしていたそうですが、俳優陣と一部のスタッフは前日に入る予定だったので、地震の直後で成田から飛行機は飛ばず、日本に足止めされてしまったのです。

チネチッタ・スタジオにかなりの金額を払って契約したのに、俳優陣が行けず撮影ができないので、絶体絶命のピンチに陥ったといいます。

スタッフが2日間徹夜をして関空からの飛行機を手配し、彼らは何とかイタリアに行く事ができました。

監督によると、現地で毎日のように報道される日本の様子に、イタリア人たちが心配してくれたといいます。

「平たい顔族」の老人たちが、自分達には何のメリットもないのに一生懸命オンドル小屋を作るシーンは、震災で懸命にボランティア活動が行なわれているのを重ね合わせて撮ったそうです。

「この映画を観た日本のお客さんが、日本人としての誇りと自信を持って生きていけるようになってくれればいいなと思った」と語っています。

ハドリアヌス帝の別荘は実在した?!

バイアエのハドリアヌス帝の別荘は実在しました。

ルシウスは架空の人物ですが、劇中でルシウスが建築したとされる風呂がある場所です。

しかし残念な事に、その別荘は4世紀に火山の噴火により海底に沈みました。

ティボリにあるもう一つのハドリアヌス帝の別荘には、「大浴場」の建物も廃墟ながら残っています。

冷浴室・熱浴室などに分かれていて、体育場や休憩室もあったそうです。

まるで現代日本のリゾートスパや温泉施設のようですね。
劇中での帝のテルマエの描写は、この大浴場がモデルになったと思われます。

お約束のオペラ歌唱

タイムスリップする時は、オペラのアリアが歌われるのがお約束です。

タイムスリップも回を重ねるにつれ、アリアを歌う男性歌手がうっかり休憩していたりと、だんだんタイムスリップ時の演出が凝っていくのが面白いですね。

また、タイムスリップ時のみでなく、ストーリーの山場でもオペラのアリアがBGMとして流れます。

トゥーランドット「誰も寝てはならぬ」、リゴレット「女心の歌」、トスカ「星は光りぬ」と格調高く名曲揃いです。

「バカバカしい映画を豪華に撮る」というこの映画にぴったりのBGMとなっています。

ハドリアヌス帝の神格化を実現せよ

戦場にいるハドリアヌス帝に会いにきたルシウスは、アントニヌスからの伝令だと偽り、ある提案をします。

それは、疲労困憊している兵士たちを温泉で癒し、ローマ軍を勝利に導くため、戦場にテルマエを設置するという提案でした。

この作戦が成功すれば、アントニヌスが評価され、彼の左遷を防ぐことができます。

神格化とは

ハドリアヌス帝の神格化は、帝亡き後、後を継いだアントニヌスが、元老院に提案して実現するという歴史的事実があるのです。

神格化されないと、元老院に嫌われているハドリアヌス帝の功績は抹消され、「愚かな皇帝」という烙印を押されてしまいます。

もし、アントニヌスが失脚したら、後世まで帝の功績が伝わらず歴史の記述が変わってしまう事になるのです。

帝を敬愛するルシウスは、何としてもアントニヌスの失脚は阻止すると心に決めます。

オンドル小屋を作る

そんな折、なぜか真実の父・修造と仲間の老人たちが古代ローマにタイムスリップして来ました。

テルマエを建設していると真実から聞いた修造は、オンドル小屋を作ったらいいのではないかと提案します。

オンドル小屋とは、地熱を用いて床下暖房を用いた小屋で、テルマエを建設するよりも遥かに早く完成できるのです。

帝によって称えられる

ルシウスや修造たちは、オンドル小屋を何軒も建設していきます。

そして、ローマ軍の兵士たちの疲労や怪我も回復し次々と兵士が戦場へ戻り、戦争はローマ帝国の勝利に終わりました。

帝は、広場で戦勝をアントニヌスによるものだとローマ市民たちの前で褒め称え、彼の左遷は回避されます。

そして、帝がルシウスも勝利に貢献したとしてその功績を称えました。

ルシウスは、卑屈にならず遠慮なくその栄誉を受け、帝の前にひざまずきます。

すべての道はローマに通じる

タイムスリップの仕組みとして涙を見せると元いた時代に戻れるようで、泣きだした真実が「また会えるかな?」とルシウスに聞きます。

「もちろん。すべての道はローマに通じているのだから」とルシウスが答えるのです。

ここで世界史の授業で憶えたアッピア街道についての文言が出てくるとは思いませんでした。

現代日本に戻った真実は、もう一度漫画家への道を目指す決心をします。

やりたい仕事に邁進するルシウスに逢って刺激されたのでしょう。

そんな真実の前に現れたのが、6回目の日本へのタイムスリップをして来たルシウスだった…というところで映画は終わりとなります。

ラストのBGMはやはりオペラの曲で、ヴェルディのアイーダ「祖国に栄光あれ・凱旋行進曲」でした。

まとめ

以上、「テルマエ・ロマエ」のネタバレ・考察、トリビアを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか!?

微妙な勘違いが笑える本作は、バカバカしさ満載で、歴史あり、友情あり、恋ありの充実した内容になっています。

ぜひ、ローマと日本の風呂文化に浸って思う存分笑ってください!!

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三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(ネタバレ・考察)史実も解説!飛行船はCGではなく実物大のセットだった!! https://cinemaxina.com/the-three-musketeers/ https://cinemaxina.com/the-three-musketeers/#respond Mon, 01 Feb 2021 04:01:54 +0000 https://cinemaxina.com/?p=18823 「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」は2011年に公開されたアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ合作の歴史アクション映画です。 「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソンがメガホンをとり、名作を新しい視点でよみがえらせたと話題になりました。 ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルームといった豪

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「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」は2011年に公開されたアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ合作の歴史アクション映画です。

「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソンがメガホンをとり、名作を新しい視点でよみがえらせたと話題になりました。

ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルームといった豪華キャストが集結し、アクションあり、恋あり、陰謀ありの冒険活劇となっています。

3D映画としても公開された「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」の解説や小話をご紹介していきましょう。

三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(2011年)

17世紀、ヴェネツィア。フランス国王の部隊の精鋭「三銃士」と、陰の権力者であるリシュリュー枢機卿のスパイ・ミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)がダ・ヴィンチ設計の飛行船の設計図を盗み出す。

ミレディは三銃士を裏切って敵国イギリスのバッキンガム公爵(オーランド・ブルーム)に設計図を渡してしまう。

一年後、フランス。銃士に憧れ、パリにやって来た青年ダルタニアン(ローガン・ラーマン)はひょんな事から高名な三銃士と出会い、彼らの仲間となる。

4人は、リシュリュー枢機卿の命令でミレディに奪われた王妃の首飾りを取り戻すため、イギリスへ向かう。

銃士たちは、バッキンガム公爵の飛行船を奪い、ミレディから首飾りを奪還する。

しかし、リシュリュー枢機卿の手下・ロシュフォールが首飾りを狙い砲弾を撃ち込んできて、飛行船同士の空中戦となる。

三銃士とダルタニアンは見事首飾りを守ってフランスに平和をもたらす事はできるのか…。

三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(ネタバレ・考察)

この映画では俳優たちがその魅力を余すことなく発揮しています。

俳優陣の活躍をご紹介しましょう。

美男美女が大渋滞!!

主役・ダルタニアンを演じた俳優ローガン・ラーマンが、思わず応援したくなるカッコ良さです。

剣闘シーンの合間に女の子を口説くという、お茶目なダルタニアンでした。

ダルタニアンに口説かれる王妃の侍女・コンスタンス役のガブリエラ・ワイルドは超美人。

ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルームの美しさは言うに及びません。

また、アトスは堂々と、ポルトスはワイルドに、アラミスは端正に、バッタバッタと敵を斬り倒しシブさをふりまいて爽快です。

この映画では美男美女の俳優陣を満喫できます!!

ミラ・ジョヴォヴィッチ、峰不二子ばりの大活躍!!

ミラ・ジョヴォヴィッチがスパイ・ミレディとして、アクションシーンをキレキレに演じています。

例えば、ヴェネツィアでダ・ヴィンチの飛行船の設計図を盗む場面では、仕掛けの銃弾を掻いくぐってダイブし、お宝に辿り着くのです。

ミッション完了後、銃士たちを裏切って設計図を敵国イギリスの大臣・バッキンガム公爵に渡してしまうというおまけ付きでした。

また、王妃の首飾りを盗む場面でも、盗難防止用のピアノ線をセクシーに一本ずつ避けて、映画「エントラップメント」ばりのシチュエーションを次々とこなしていきます。

まるで「バイオハザード」のアリスか「ルパン三世」の峰不二子のようで、ミラ・ジョヴォヴィッチのアクションシーンは必見です。

監督のポール・W・S・アンダーソンは、「バイオハザード」で妻・ジョヴォヴィッチをヒロインにしましたが、この作品でもタッグを組んでいるのですね。
さすが監督。この映画でも奥さんを美しくスタイリッシュに撮っていますね。

オーリー初の悪役

オーランド・ブルームはいつも爽やかな青年役を演じていますが、オーリー・ファンはこの映画を観て悲鳴を上げたくなったのではないでしょうか。

髭を着けて、傲慢なバッキンガム公爵を皮肉たっぷりに演じています。

初めての悪役との事でしたが、「演じていてとても楽しかった」と後のインタビューで語っています。

映画では公爵らしく洗練された身のこなしをしながらも、しっかり主役の銃士たちに嫌味を言っていました。

そんなオーランド・ブルームの悪役ぶりをぜひチェックしてください。

オシャレと女と権力が大好きなイヤーな男を演じていましたね。
オーランド・ブルームは、王子様キャラだけでなく、憎々しい悪役を演じても見応えがありますね。

監督の飛行船愛が炸裂!!

この映画では、レオナルド・ダ・ヴィンチが設計したとされる「銃火器付き飛行船」が空中戦を展開します。

初めてこの映画の飛行船を見た時は、遊園地のアトラクションのような可愛らしいデザインの飛行船に驚きました。

ここでは、飛行船について紹介しましょう。

飛行船は日本のアニメがモデル

実は原作の小説には飛行船は登場しません。

親日家である監督は、日本のアニメ「宇宙戦艦ヤマト」「キャプテン・ハーロック」「オーディーン 光子帆船スターライト」が好きで、兼ねてからぜひ空飛ぶ船を映画に登場させたかったのだそうです。

監督は、飛行船が好き過ぎて実物大の2隻の「銃火器付き飛行船」を映画セットとして作ってしまいます。

飛行船がCGによるものではないので、俳優たちのよりリアルなアクションが実現しました。

17世紀に飛び交う飛行船

歴史上、飛行船の完成は1852年で、この映画の舞台となった17世紀にはまだ飛行船は発明されていません。

しかし、この映画のキャッチコピーは「伝説よりも、ハデにいこうぜ!」です。

時代考証がなってないとか、細かい事を気にする必要はありません!

ハデな空中戦をどうぞ楽しんで下さい!!

充実の殺陣シーン

ダルタニアンと三銃士の4人が40人を相手に闘うシーンや、ダルタニアンとロシュフォールとの一騎打ちのシーンにワクワクします。

監督は、よりリアルな画面を追求して、殺陣シーンにCGやスタントマンをあまり使いたくなかったそうです。

そのため、殺陣の基礎となるフェンシングは、競技フェンシング女子のヨーロッパ・チャンピオン、イムケ・デュプリッツァーが俳優たちに3週間みっちり指導しました。

また、作品全体のアクションについては、「グラディエーター」のアクションを監修したニック・パウエルが担当し、徹底的に俳優たちを半年間きたえたそうです。

ニック・パウエルは、殺陣の振付を考えるにあたって、猪突猛進なダルタニアンはテンポ良く、怪力のポルトスは力業で、洗練されたアラミスは細かい技を駆使してと、役柄によって細かく設定しました。

俳優たちは、それぞれの役の個性に合った流れるような殺陣が覚えやすかったと語っています。

監督によると、どの俳優もあまりにも殺陣の出来が良かったため、アクションシーンはほとんどスタント無しで撮影できたとの事でした。

映画で、剣と剣とが当たって見える火花はCGではなく実際の火花だという事です。

「三銃士」とは

この映画の原作は、フランスの文豪デュマ親子のうち、父である大デュマが史実を基に1844年に執筆した小説です。

三銃士とは、フランス国王直属の部隊「銃士隊」の中でも特に優秀なアトス、アラミス、ポルトスの3人の銃士の事。

この小説は、三銃士と、ガスコーニュの田舎からパリに出て来たダルタニアンの4人の物語になっています。

第一部~第三部で構成されていて、この映画の舞台となっているのは、第一部の部分です。

  • 第一部:ルイ13世の治世下、盗まれた王妃の首飾りの奪還を巡る話
  • 第二部:ダルタニアンがポルトスと組んで、脱獄したボーフォール公爵を追う話
  • 第三部:ルイ14世治世下、アトスの息子ラウルの三角関係と鉄仮面伝説を描いた話

当時のヨーロッパの騎士道が描かれ、銃士たち4人が「一人は皆のために、皆は一人のために」と剣先を合わせる場面がお約束です。

欧米で過去に何度も映画化・テレビドラマ化されていて、記録に残っているだけで41作品もあります。

「三銃士」は、日本の大河ドラマみたいなもので、今回はどのような設定で、どの俳優が出るんだろう?と、欧米の人たちが楽しみにするような作品なのです。

謎解き「三銃士」

史実を基にした小説が原作なので、登場人物はほとんど実在の人物となっています。

ここでは、史実や原作を知らない日本人には、わかりにくかった劇中のシーンについて解説していきましょう。

アトスとミレディの関係は?

主人公・ダルタニアンや三銃士は実在の人物で、銃士隊長・トレヴィルの親類縁者がモデルでした。

三銃士のリーダー・アトスが、映画の中で、ミレディと「愛してる」「知ってる」という会話が交わされるのはなぜだろうと思った方もいるのではないでしょうか。

アトスは原作ではミレディと夫婦だった時期があるという設定になっています。

だから、アトスとミレディがいわくありげな会話をしていたのですね。
また、この会話は「スターウォーズ・エピソード5・帝国の逆襲」 からの引用となっています。

バッキンガム公爵とリシュリューの微妙な会話

バッキンガム公爵は、実在したイギリス国王の重臣でした。

国政を主導し、数々の戦争を行ないました。フランスとは同盟したり敵対したりと微妙な関係を保ちました。

フランスとイギリスは友好国でありながら永遠のライバルです。

映画でもリシュリューとバッキンガム公爵で「フランスにスパイを送り込んでいるのか?」「お互い様」と微妙な会話が交わされていますね。

悪女ミレディの暗躍

ミレディは、イギリスのカーライル伯爵夫人ルーシー・ヘイがモデルです。

ルーシー・ヘイは、イギリス王妃ヘンリエッタ・マリアの側近で、バッキンガム公爵の愛人でした。

当時のイギリス宮廷で、女でありながら政治的に策を弄した戦略家だったという事です。

そのため映画では、その戦略家ぶりをより膨らませてバッキンガム公爵とリシュリューの間を行き来して、裏切りも厭わない女として描かれていますね。

ルイ13世とアンヌ王妃

ルイ13世とアンヌ王妃は実在の人物です。

史実ではこの二人はあまり仲の良い夫婦ではありませんでした。

ルイ13世は女性よりも男性の方に興味があったとされ、アンヌ王妃にやさしく接してくれる夫ではなかったようです。

しかし映画では、ルイ13世が恋心をなかなか王妃に伝えられずダルタニアンに恋愛相談をするなど、ルイ13世は王妃にゾッコンという設定になっていましたね。

映画の中で、バッキンガム公爵が飛行船でフランスに来た時、王妃に「ますますお美しい」と言うシーンがありました。

実際に、アンヌ王妃がバッキンガム公爵と不倫したという記録が残っています。

映画でのバッキンガム公爵と王妃との会話「あの夜の事は私の宝」は、それを反映しているのです。

リシュリューと王妃の不仲

映画では、リシュリュー枢機卿はアンヌ王妃の首飾りを奪わせて王妃とバッキンガム公爵の不倫を世間に公表し、戦争を起こして王位を我が物にしようとたくらみます。

映画の中で、リシュリュー枢機卿と王妃がなぜあんなに仲が悪いのだろうと思った方もいるのではないでしょうか。

史実では、リシュリューはルイ13世の側近として実際に政治の世界で敏腕を振るいました。

彼は、敵国ハプスブルク帝国から嫁いできたアンヌ王妃と対立し、激しい政治抗争を繰り広げたのです。

だから映画の中でも王妃と対立していたのですね。

ヨーロッパの有名建築が楽しめる

実際にルイ13世が執務を行なった宮殿は、ルーブル宮殿でした。

しかし、ルーブル宮殿は現在、観光地・ルーブル美術館になっているので、ロケができません。

そこで、宮殿の撮影には、世界遺産で豪華な装飾を施したドイツのヴュルツブルク司教館やフランスのベルサイユ宮殿が使われました。

そのため、この映画では華麗なバロック様式の宮殿の装飾が楽しめます。

また、飛行船が不時着して突き刺さったのはなんとパリのノートルダム大聖堂の尖塔でした。

フランスの、というよりヨーロッパの象徴である超有名な建築があんな事になってしまい、大笑いしました。
スタッフの遊び心が分かりますね。

フランス人のコンプレックス

ルイ13世が、イギリス人のバッキンガム公爵の服の色を真似しようとしている場面が何度も出てきます。

現在では「ファッションと言えばフランス」ですが、当時フランスはまだファッション先進国ではなかったようです。

ルイ13世の時代には、ヨーロッパではオランダ、イギリスのファッションがおしゃれとされていました。

当時のフランス人のファッションにおけるコンプレックスが、ルイ13世のセリフ「バッキンガム公爵の服は何色だった?」に象徴されているのではないでしょうか。

続編は?

紆余曲折を経て王妃の首飾りを取り戻したダルタニアンたち4人は、ボロボロの飛行船でフランス宮廷に戻って来ます。

リシュリューは、計画が失敗し首飾りを盗めなかったので、自分の悪事をばらされないよう銃士たちを逮捕しようとしました。

しかし、アトスが機転を利かせてルイ13世に、悪事は全てロシュフォールの裏切りによるものと報告してリシュリューに貸しを作り、万事めでたしめでたしとなります。

海に身を投げたはずのミレディがバッキンガム公爵に助けられ、イギリス艦隊がドーバー海峡をフランスに向かいますが、果たして、この映画の続編は作られるのでしょうか?

同じキャストでの続編が待たれます。

まとめ

楽しければ何でもありの「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」。

アクションはもちろん、飛行船のデザインの可愛らしさもさることながら、登場人物の細かい「大人の事情」が絡む軽快な会話を楽しめる映画です。

ジャンルとしては歴史映画ですが、歴史の事を知らなくても楽しめます。

この映画を観れば、鬱々とした気分も吹き飛ぶでしょう。

気軽に観られて笑える映画なので、ぜひご覧になってください!!

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ハート・ロッカー(ネタバレ・解説)爆弾解除の緊張感に耐えられるか?戦争におぼれてしまう男の心理とは https://cinemaxina.com/hurtlocker/ https://cinemaxina.com/hurtlocker/#respond Fri, 25 Dec 2020 01:49:36 +0000 https://cinemaxina.com/?p=17998 ハート・ロッカーはキャスリン・ビグロー監督による2008年の戦争映画です。 イラク戦争で多発した爆弾テロに対しての爆弾処理班の活躍を描いた作品で、低予算で作られながらも緊張感のある画作りでアカデミー作品賞や監督賞を獲得しました。 これによってキャスリン・ビグローは歴史上初めて監督賞を受賞した女性になったのです。 鑑賞し

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ハート・ロッカーはキャスリン・ビグロー監督による2008年の戦争映画です。

イラク戦争で多発した爆弾テロに対しての爆弾処理班の活躍を描いた作品で、低予算で作られながらも緊張感のある画作りでアカデミー作品賞や監督賞を獲得しました。

これによってキャスリン・ビグローは歴史上初めて監督賞を受賞した女性になったのです。

鑑賞した人からは賛否両論が噴出しましたが、映像作品として見ごたえがある「ハート・ロッカー」について、考察を交えながらご紹介していきます。

ハート・ロッカー(2008年)

イラク戦争中の2004年、バグダッド郊外でアメリカ軍の危険物処理班は路上に仕掛けられた即席爆破装置と呼ばれる無差別テロ向けの爆弾を除去すべく作業にあたっていた。

爆弾はその場で爆破して処理する決まりだったが、処理用の爆発物を取り付けた隊員が近寄るのを見計らって何者かが遠隔爆破し、隊員は殉職してしまう。

罠にかかり殉職した隊員の代わりに上級曹長であるジェームズがやってくるが、スタンドプレーが目立つ彼の行動に補佐するサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は不安を覚える。

爆弾解除のプロフェッショナルであるジェームズたちは、炎天下の中で見えない爆弾魔との戦いを繰り広げていく…。

ハート・ロッカー(ネタバレ・解説)

「ハート・ロッカー」は女性監督に初めて監督賞をもたらしただけでなく、数々の記録を残した映画として名を知られることになりました。

アカデミー賞で大いに評価された本作のトリビアをお届けします。

ジェームズ・キャメロンとキャスリン・ビグローは元夫婦

「ハート・ロッカー」を監督したキャスリン・ビグローは、映画監督のジェームズ・キャメロンと結婚していた時期がありました。

「ハート・ロッカー」もキャメロン監督に勧められて脚本を読み、監督を引き受けた経緯があるのです。

そんな二人ですが82回アカデミー賞で、キャメロン監督の「アバター」とビグロー監督の「ハート・ロッカー」が作品賞、監督賞などで候補に上がり、元夫婦対決となりました。

結果は興行収入などで当時の記録を塗り替えるなどした「アバター」を抑え、作品賞と監督賞などの主要部門ををビグロー監督が獲得することになったのです。

録画されたフッテージは上映時間の100倍

この映画はスーパー16mmカメラ複数台を用いて撮影されましたが、撮影にかかった時間が長く、2時間の映画に対して撮影されたフィルムは200時間にも及びました。

このため編集作業はとても困難だったそうですが、その甲斐あってかアカデミー賞で編集賞を獲ることができたのです。

ジェレミー・レナーは本物の防護服を着ている

ジェームズを演じたジェレミー・レナーは、爆弾処理の際に着る防護服を実際に身につけて撮影しています。

熱波が厳しいヨルダンでの撮影だったので、熱中症になる可能性を考えてボディ・ダブルを用意するアイデアもあったそうですが、ジェームズの歩き方に特徴があるため代えが聞かず、すべてのシーンでジェレミー・レナーが演じています。

撮影時期とラマダンがかぶってしまった

イスラム教徒が9月に行う断食の行、ラマダンが撮影中に始まってしまい、イスラム教徒であるエキストラたちは日の出から日の入りまで飲食ができませんでした。

イスラム教徒でないクルーはテントやホテルで飲食をしていましたが、イスラム教徒に敬意を表して窓をカーペットなどで覆い、外から見えないようにして過ごしたそうです。

戦争映画として高く評価された「ハート・ロッカー」

「ハート・ロッカー」はフィクションとしてイラク戦争を描き、初めてアカデミー賞を獲得した作品です。

それまでに第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争などを描いた作品はあったのですが、現代戦を描いた映画はありませんでした。

戦争をテーマにした映画として、作品賞は「イングリッシュ・ペイシェント」(1996年)、監督賞としては「戦場のピアニスト」(2002年)以来の受賞となります。

最低興行収入のアカデミー賞作品だった

最初は全米で4館しか上映せず、興行収入は50億円と非常に低い成績でした。制作費は16億円だったので、かなり少ないと言えます。

アカデミー賞を受賞したことで知名度が伸び、ある程度は伸びたと思いますが、歴代アカデミー賞受賞作の中でも際立って興行収入が低いのです。

ちなみにアカデミー賞を争った「アバター」は254億円かけて作られ、約3000億円稼いでいるよ。

監督が求めた画面づくりについて考察

ハート・ロッカーは友情や努力といった人間ドラマはほとんど無く、ある意味淡々と戦場で起きている日常を描いています。

キャラクターによるアクセントや変化で映画として成立させていますが、視点は非常にドライです。

キャスリン・ビグロー監督が描きたかったものについて考察していきましょう。

過酷な環境にいる兵士の現実を知らせるため

迫害されている市民を開放するためのイラク戦争が、結果的にイラク国民同士の内乱を生む結果になってしまいましたが、作品では戦争が起きたことについての是非は問いません。

あくまで戦場で危険な任務に付いている兵士がいて、置かれている環境や現状について観客に理解してもらい、それぞれの意見を持ってほしいと思っているのです。

イラクでは日常的に起きている爆弾テロに対して危険な任務についている兵士がいて、彼らがどのように戦争と向き合っているのかが3人のキャラクターから描かれます。

赴任期間で彼らが体験している事実を、エンタテインメント性を抑えつつも見応えがあるように編集して見せているのが「ハート・ロッカー」なのです。

イラク人の描き方が曖昧

市民に紛れているテロリストは正体を見せず、倒すべき敵として描かれてはいません。彼らは簡単に作れる爆破装置で事件を起こし、多くの人を死傷させています。

敵対する人間の顔が見えないというのは、明確な敵が見えていないアメリカ軍の葛藤を描いているように思えます。

米兵と仲良くしているDVD売りのベッカムのようなイラク人もいますが、彼らの目的は友好ではなく米兵が持っている金です。

ジェームズはベッカムと親しくなり、優しさをみせます。ですが人間爆弾にされた少年をベッカムと見間違えてしまったように、イラク人の区別はあまりついていません。

監督はイラク人は敵なのか、守るべき市民なのか、あえて曖昧に表現しています。これは米軍兵士が抱えている不安を表しているのではないでしょうか。

イラク人はアメリカが嫌いなんですか?
 親米派も反米派もいて、国内でテロを仕掛けているのは反米派だけど、潜伏している反米イラク人は見分けがつかないのが問題だね。

戦争による人間性の変化

エルドリッジは前任のトンプソン曹長が戦死したことに恐怖と責任を感じており、軍医のケンブリッジによるカウンセリングでも反抗的な態度を示すのです。

これは戦争時におけるストレスに対応できていないことを表し、戦場にいることに不安を抱えています。

エルドリッジは戦争を体験していない観客が自分を投影できるキャラクターであると同時に、戦場では容赦なく選択を迫られるというメッセージを伝える役目を持っているのです。

実際にはあり得なかった米軍の描写

イラク戦争の従軍者からは、この映画に対して「事実と異なる点が多く、米兵への尊敬が欠けている」と不満が噴出しました。

ですがイラク戦争のなかで米兵や民間軍事会社が起こした問題は少なからずあり、それをビグロー監督はあえて盛り込むことで問題提起をしているのです。

「ハート・ロッカー」のなかで問題と思われた行動と、それを描いた理由を考察していきます。

兵舎での飲酒

ジェームズたちが狙撃戦から生き残り、基地に帰還して打ち解ける3人が酔っ払うシーンがありますが、イラクの兵舎では飲酒厳禁で命令違反になります。

3人が死線を越えて絆で結ばれたシーンを描くために、酔っ払ってふざけているところを入れたかったのでしょう。

実際の駐留軍でも無断で酒を飲んで問題を起こし厳罰に処された兵士もいるので、ありえないシーンではないのですが、不満に感じる人がいそうな描写です。

階級が下なのに上官に対して反抗的

階級的にはジェームズの部下にあたるサンボーンがジェームズを殴るシーンがありますが、これも本来ならありえないことです。

新任であるジェームズが上司とはいえスタンドプレーに走るため、サンボーンがたしなめるために殴ったのでしょうが、上官を殴ったうえに叱責するところに違和感があります。

またエルドリッジ技術兵がカウンセラーのケンブリッジ大佐に命令口調で話しているシーンは明らかに反抗的な態度です。

佐官に対して下士官がぶつけていい言葉ではありませんでしたが、ケンブリッジは怒らず受け止めます。

どちらも戦場におけるストレスによる軋轢のシーンですが、あえて反抗的に描いているとしたら駐留軍の上下関係に疑問を感じざるをえません。

軍基地からの無断外出と不法侵入

ベッカムとテロリストとの関係を疑ったジェームズは基地に出入りしていたDVD売りの業者を使い、ベッカムの家まで行くように告げます。

ですがそこはベッカムの家ではなく、イラク人教授の自宅でした。英語がわからなかった業者は英語のわかるイラク人教授の家にジェームズを送り、逃亡するのです。

不法侵入したジェームズはベッカムについて訪ねますが話が噛み合わず、結局教授の妻に追い出されたジェームズは途方に暮れ1人基地へと帰ります。

つまりジェームズは無断で基地を離れた上に許可無しでの家宅捜索という二重の軍規違反を起こしていますが、大事になっていません。

仲良くなったイラク人がテロリストと繋がっていたのではないかという思い込みで動いていますが、軍人らしからぬ行動に違和感を感じます。

ここはドラマを優先しすぎてリアリティが薄くなってしまったと感じる、残念な部分です。

ジェームズにとって戦場とは

爆弾の解体に夢中になるあまり、チームのことも考えずスタンドプレーに走り、仲間を危険に晒すことも多いジェームズは危険に身を置くことでしか生きがいを感じられません。

そんなジェームズの描写を中心に、作品が描いている戦争の恐ろしさをピックアップしていきます。

本来の爆弾処理は爆破するのが基本

オープニングで町中にある爆弾にトンプソンがロボットで起爆装置を運び、爆発させて処理しようとしています。

イラクで行なわれている爆弾処理はこの方法が一般的で、信管を抜いて解除するジェームズの方法は異端です。

爆破処理は町中で爆弾を破裂させるので危険ですが、隊員が死亡するリスクは減らせます。

このことからジェームズの存在はフィクションですよ、と監督が前置きしているようにも思えます。

なぜジェームズは爆弾を解除するのか

ジェームズは爆弾を解除しているときに何を考えているのかと問われ、「何も考えていない」と答えます。これは解体中、無我の境地にいるのだと思われます。

極限まで集中して爆弾を処理し、それが終わったときの開放感が彼の生きがいになってしまっているのです。

大量の爆弾を前にして防護服を脱ぐのは作業の邪魔になるからということと、万が一爆発して中途半端に手足だけ吹き飛ばされて生き延びたくない気持ちの表れでしょう。

死の瞬間が訪れることよりも、爆弾を解除する任務を継続できないことのほうがジェームズにとっては重要に感じます。

ジェームズが 爆弾の部品を集めているのはなぜですか?
自分が達成したことを実感できる勲章として集めているけど、そういうものでしか満足できないのは心の病気じゃないかな。

戦争は麻薬である

映画の冒頭に表示される一文「戦争は麻薬である」というのは、戦場で得られる高揚感は中毒的に人間の精神を蝕んでしまうというメッセージです。

任務が終わって母国に帰った時、ジェームズは妻子といるときも爆弾の話をし、日常会話に溶け込めません。

それどころかスーパーでシリアルを1つ買うのにも、何を選んで良いのかわからず立ちすくんでしまします。

ジェームズはおそらく、死ぬまで戦場を回り続けるのではないでしょうか。現代のアメリカにジェームズを満足させるものはないのです。

その悲しい事実を「ハート・ロッカー」は虚実を織り交ぜながら雄弁に語っています。

まとめ

戦争はなぜ起きるのか、そしてなぜ戦争はやめられないのか、といったイデオロギーにはあまり触れず、兵士と彼を取り巻く環境で戦争やテロの恐ろしさを伝えた本作。

いち兵士の生き様から戦争の弊害や恐怖といった問題点をあぶりだし、観客の心を揺さぶります。

観るものの精神力を確実に削りますが、観る価値のある戦争映画として改めておすすめしたいです。

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英国王のスピーチ(ネタバレ・考察)スクーンの石とは?史実との違いを解説! https://cinemaxina.com/the-kings-speech/ https://cinemaxina.com/the-kings-speech/#comments Fri, 18 Dec 2020 04:39:13 +0000 https://cinemaxina.com/?p=16317 「英国王のスピーチ」は2010年に公開されたイギリス・オーストラリア・アメリカ合作の歴史映画です。 英国王ジョージ6世の吃音(きつおん・どもり)を克服していく姿が感動を呼び、アカデミー賞4部門を獲得しました。 登場人物はほぼ全員、実在の人物で、国王と言語療法士との友情を、史実を絡めて描いた本作。 作品に含まれている情報

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「英国王のスピーチ」は2010年に公開されたイギリス・オーストラリア・アメリカ合作の歴史映画です。

英国王ジョージ6世の吃音(きつおん・どもり)を克服していく姿が感動を呼び、アカデミー賞4部門を獲得しました。

登場人物はほぼ全員、実在の人物で、国王と言語療法士との友情を、史実を絡めて描いた本作。

作品に含まれている情報を紐解きながら、この作品の魅力について考察していきましょう。

英国王のスピーチ(2010年)

1930年代、英国のジョージ6世(コリン・ファース)は、あらゆる治療を試しても吃音の症状が改善せず、スピーチが苦手だった。

妻エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)の勧めで、オーストラリア人の言語療法士ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)の診察を受ける事になる。

王族を王族とも思わないような遠慮のないローグの斬新な療法で、徐々に効果が上がっていく。

1939年9月、イギリスは、ポーランドに侵攻したヒトラーに宣戦を布告。

ジョージ6世は、動揺する国民に向かって苦手なスピーチをせざるをえなくなる…。

英国王のスピーチ(ネタバレ・考察)

吃音を克服していく国王と言語療法士の交流が感動的な映画「英国王のスピーチ」。

ここでは、映画にまつわる小話をお伝えしていきましょう。

「英国王のスピーチ」が2010年になって公開された理由

この映画の脚本家デヴィッド・サイドラーは、自らも吃音症でした。

彼は、ジョージ6世の言語療法士であった故ライオネル・ローグの治療記録を2001年に孫が発見した事を知って、この映画の企画を思いつきました。

サイドラーは映画制作のために治療記録を利用しようとしましたが、それには英国王室の許可を取らなければならなかったのです。

ジョージ6世の妻だったエリザベス妃は、治療記録使用について、亡き夫の事を思い出すと辛いからと、自分の存命中には内容を開示しない事を条件としました。

エリザベス妃が亡くなった2002年以降、やっと治療記録の内容が公表されました。

この映画は、こうして得られた新資料を元にようやく完成したんですね。
デヴィッド・サイドラーは史実を丹念に掘り下げて脚本を執筆し、アカデミー賞脚本賞を受賞しました。

ジョージ6世役は当初コリン・ファースではなかった

ジョージ6世役を演じる俳優として、当初イギリス人俳優のポール・ベタニーを想定して脚本が制作されていました。

しかし、ポール・ベタニーは家族と過ごす時間を優先するためにこの役を辞退。

後にポール・ベタニーはこの判断を後悔していると語っています。

「英国王のスピーチ」のロケ地は?

ウエストミンスター寺院での戴冠式のシーンは、イングランド東部、ケンブリッジシャーのイーリー大聖堂で行なわれました。

またバッキンガム宮殿内のシーンは、実際にはジョージ6世が建てた邸宅ランカスター・ハウスを用いて撮影されたそうです。

これらの建物を映画撮影のため1日レンタルしただけで、2万ポンド(約260万円)かかったといわれています。

スピーチ中のBGMは特別録音

ジョージ6世の開戦時のスピーチ中に流れた曲は、ベートーベンの第7交響曲・第2楽章アレグレットで、テリー・デイビス指揮によりロンドン交響楽団が演奏しました。

この曲は実は、わざと速度を変更して演奏されています。

国王のゆっくりしていて時々つっかえる話し方に合わせ、通常の第7交響曲よりテンポが遅く、所々リズムがランダムに変えられたのです。

音楽スタッフの遊び心がそうさせたのでしょう!
音楽担当のアレクサンドル・デプラは、ゴールデングローブ賞・アカデミー賞の作曲賞にノミネートされました。

ジョージ6世はタバコの吸い過ぎで死去

映画の中で、ジョージ6世が、スピーチの練習の最中にタバコを吸っていると、「そうやって肺にタバコの煙を送っていては死んでしまう」とローグに忠告されるシーンがありました。

実際ジョージ6世は1日に20~25本のタバコを吸う事もあったそうで、肺がんの手術による合併症のために1952年2月6日、56歳の時に亡くなっているのです。

その歴史的事実を踏まえて挿入されたシーンだと思われます。

チャーチルも言語障害だった

ウィンストン・チャーチル首相が、国王に「実は私も発音障害だったのですよ」と打ち明けるシーンがあります。

実際チャーチルも、子供のとき言語障害で、それを克服し、1940年に国民へ向けたスピーチを成功させました。

これは、言語障害で悩んでいた二人の実在の人物を描いている作品という事になります。

二人とも、努力して障害を克服したのですね。
努力すれば希望が見えてくるというメッセージをこの映画は発信しているのです。

エリザベス女王も映画を視聴

「英国王のスピーチ」の評判が良かったため、エリザベス現英国女王は映画を視聴しました。

通例として、英国王室の人たちは、エンターテイメント作品に感想を述べることはありませんが、エリザベス女王は「英国王のスピーチ」に対して「感動しました。制作者を称賛します」と好意的なコメントを発表しています。

ジョージ6世やその家族(自分)の姿が、穏やかで温かな家族として描かれていたのが、ポイントになったのだと言われています。

エリザベス女王にとっては、幼い時の自分と両親を描いた映画なのですね。
ジョージ6世の治世が、確かに歴史の1ページだった事を改めて思い知らされます。

謎のワードを解説!

この映画は20世紀の英国を舞台にした作品です。

作中に登場した現代日本人にわかりにくいワードを解説していきたいと思います。

スクーンの石とは?

ジョージ6世とローグが戴冠式のスピーチの練習をする時、スクーンの石についてのセリフがあります。

スクーンの石とは、旧約聖書に登場するユダヤ人の祖・ヤコブが枕にして神の啓示を受けたとされる石の事です。

1296年、エドワード1世が、スコットランドのスクーンにあったその石を、ロンドンのウェストミンスター寺院に運び、石に合わせて国王の椅子を造りました。

その事から、スコットランド王を兼ねる歴代のイギリス国王は、ウェストミンスター寺院でこの椅子に座って即位するようになりました。

映画では、ローグがジョージ6世に対し、王位継承者として自信を持ってほしいと励ますために、わざと「ただの石の椅子だ」と王を挑発します。

シルバートーンとは?

ローグは、最初の診察の際に、シルバートーンという家庭用蓄音機レコーダーで、ジョージ6世の声を録音します。

シルバートーンは、アメリカ・シカゴの「シアーズ・ローバック・デパート」の音響製品で、1930年代に発売されました。

当時、最新鋭の蓄音機レコーダーだった事がわかります。

この作品の見どころポイント

この作品は、ジョージ6世を演じたコリン・ファースと、言語療法士ローグを演じたジェフリー・ラッシュ、エリザベス妃のヘレナ・ボナム=カーターの三人の演技が存分に堪能できます。

「英国王のスピーチ」の見どころをご紹介しましょう。

コリン・ファースの役作り

この映画では、何といってもコリン・ファースの吃音症の演技が見どころです。

ジョージ6世の実際のスピーチの録音を聞いてみるとソックリなので、コリン・ファースは丹念に過去の録音を研究したと思われます。

コリン・ファースの妹が女優であり応用言語学の専門家でもあるので、彼は妹にも取材し、吃音や国王としてのプレッシャーに苦悩するジョージ6世の人生を見事に体現してみせました。

映画が完成した後、コリンファースは、映画のために覚えた吃音のクセがなかなか抜けず、それを直すのにプライベートで言語療法士の訓練が必要だったそうですよ。
苦労の甲斐あって、コリン・ファースは、この映画でアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。

ローグの治療シーン

映画の中で、当初ジョージ6世が受けた吃音症の治療は、ビー玉を口中に入れて発声させたり、タバコを喫わせたりと、現代人からみるとどんな効果があるかわからないようなものでした。

しかし新たに国王専任の言語療法士に就任したローグの治療は、これまでジョージ6世が受けた治療とは全く違っていました。

ジョージ6世に、子どもの頃辛かった事を言わせて精神的療法を施したり、身体をリラックスさせて発声させたりと、現代の吃音症の治療法から考えてみると、当時の最新の治療法が行なわれたと思われます。

大人の男が二人してジャンプしながら、真剣に早口言葉を唱える様子に思わず笑ってしまいます!

個性の強い二人は、治療中、何度もケンカして、その度に仲直りしながら、二人三脚で吃音に取り組んでいきます。

そしてついにエンディングで、視聴者は、ジョージ6世が国民を鼓舞するスピーチを見事にやり遂げる姿に心打たれるのですね!!
二人の名優の息の合った演技から目が離せませんね。

オーストラリアから来た言語療法士

ローグがオーストラリア人だったという事実が、この映画では重要です。

かつては、オーストラリアは英国の植民地で、犯罪者の流刑地だったので、英国民は、オーストラリアについて下層民の掃き溜めのようなイメージを抱いていました。

映画の中で、コスモ・ラング大主教が、国王専任の言語療法士であるローグを解任しようとしたのは、そうした差別感情があったからだと思われます。

しかしジョージ6世は、ローグを信頼していたので解任はさせませんでした。

この映画は、国王という最高位の人物と、元植民地出身の人物の、生まれも身分も越えた友情物語となっているのです。

妻役のヘレナ・ボナム=カーターの演技は見どころ

ジョージ6世の妻エリザベス妃は、嫌がる夫の尻をたたいて吃音の治療を受けさせ、どんな時でも肝が据わっている女性として描かれています。

史実では、エリザベス妃は、戦時中に宮殿が爆撃されてもロンドンに留まり、英国民を奮い立たせました。

ヘレナ・ボナム=カーターは、そんな実在の女性を丁寧に演じています。

史実との相違点

この映画は、歴史映画なので、ほぼ史実に沿ってストーリーが進んでいきますが、事実とは違う点もみられます。

吃音を克服したのは開戦時のスピーチではなかった

映画では、吃音を克服できたスピーチは、1939年の開戦時に行なわれたスピーチであるとしていますが、史実では、国王はもっと前の時点で完璧なスピーチを成功させていました。

ジョージ6世は、1927年のオーストラリア連邦議会でのスピーチで、吃音を克服していたのです。

吃音を克服したのが、国家的な危機となった開戦時のスピーチという設定にしたほうが、視聴者の感動が増すと判断したのでしょう。

ローグのこだわり

映画では、ローグは、ジョージ6世の最初の診察の際、お互いファーストネーム(またはニックネーム)で呼び合うように提案しますが、実際、ローグが国王を「バーティ」という愛称で呼んだという事実はないそうです。

よりローグの変人ぶりを強調するために、呼び名にこだわったという設定にしたと思われます。

兄とその恋人の性格描写

この映画で、ジョージ6世の兄エドワード8世とその恋人・ウォリスが、いかにも悪役であるかのように描写されています。

兄エドワード8世がジョージ6世に対して吃音を真似してバカにしたり、ウォリスが高価なシャンパンを飲みまくって享楽的に振る舞っていたりしたので驚きました。

兄弟の仲が悪かったという記録はありません。

ジョージ6世が国王に即位しなければならなかったのは、エドワード8世がウォリスと結婚して王位から離脱したためだったので、映画では彼らが悪役として描かれたのでしょう。

まとめ

「英国王のスピーチ」から考察・ネタバレ、作品のトリビアをご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?!

ジョージ6世とローグが、吃音を克服しようと様々な努力をし、国民を励まし導くスピーチを成功させるラストシーンには、爽やかな気分になる事請け合いです。

脚本と俳優陣が素晴らしいので、ぜひご鑑賞ください。

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グラディエーター(ネタバレ・考察)歴史と創作の絶妙なバランス?初の皇帝剣闘士となったコモドゥスの実力とは?マキシマスとコモドゥスの心情を読み解く https://cinemaxina.com/gladiator/ https://cinemaxina.com/gladiator/#respond Fri, 30 Oct 2020 04:23:03 +0000 https://cinemaxina.com/?p=15396 「グラディエーター」は2000年に公開されたローマ帝政時代をテーマにした歴史映画です。 華やかなローマを写しながら落ち着いた色合いで表現し、観客がローマ市民の一人であるかのように感じさせる没入感が光る演出を見せ、アカデミー作品賞を獲得しました。 歴史とイマジネーションの絶妙なバランス感覚をみせる脚本、物語に説得力をもた

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「グラディエーター」は2000年に公開されたローマ帝政時代をテーマにした歴史映画です。

華やかなローマを写しながら落ち着いた色合いで表現し、観客がローマ市民の一人であるかのように感じさせる没入感が光る演出を見せ、アカデミー作品賞を獲得しました。

歴史とイマジネーションの絶妙なバランス感覚をみせる脚本、物語に説得力をもたせる俳優たちの熱演、リアルな戦闘シーンと見どころが多い本作。

作品に含まれている情報を紐解きながら、この作品の魅力について考察していきましょう。

グラディエーター(2000年)

舞台は帝政ローマ中期。平民出身の将軍マキシマスは誠実で無欲、また常人ならざる指揮能力で絶大な信頼を寄せられ、老齢の皇帝のアウレリウスから次期皇帝に指名される。

だがそれを知った皇太子コモドゥスは父を暗殺し、皇帝に即位する。暗殺に気づいて忠誠を誓わなかったマキシマスは処刑されかけるものの逃亡、家族のもとに駆けつけるが皆殺しにされていた。

力尽きて倒れていたところを奴隷商人に拾われ、剣闘士(グラディエーター)として売り出されたマキシマスはその強さを発揮し、観客の人気と剣闘士たちの尊敬を得る。

一方、新たに皇帝の座についたコモドゥスはアウレリウスが禁止した武闘大会を再開し、民の人気を得るために娯楽を与えて心をつかもうとしていた。

それによってローマ全土にいる名うての剣闘士たちが呼び寄せられ、マキシマスもローマのコロッセウムに登場することになった。

民衆の人気を得れば皇帝に謁見できるという話を聞き、マキシマスは復讐心を静かに燃え上がらせるのだった…。

グラディエーター(ネタバレ・考察)

アカデミー作品賞と主演男優賞などいくつもの賞を獲得した名作「グラディエーター」ですが、完成するまでに様々な苦労があったようです。

そんな気になるトリビアをいくつか用意しましたので、ご覧になってください。

ラッセル・クロウは脚本が気に入らなかった

マキシマスを演じたラッセル・クロウは脚本にあったマキシマスの死生観が気に入らなかったらしく、脚本を「ゴミだ」と罵倒しています。

その上で、「自分は世界一の俳優だから、ゴミみたいなセリフでも良くしてみせる」と言い切ったという逸話があるのです。

プライベートではその素行の悪さからハリウッドでも指折りの問題児として名指しされるほど、性格に難のあるラッセル・クロウ。

ですがその演技力は本物で、アカデミー男優賞を獲るほどの演技をみせました。

現在も数々の作品で活躍しており、まさに世界一の演技レベルに達しているのです。

ホアキンのアドリブで緊張感が増した

コモドゥス帝が実の姉であるルシッラに対し、自分の子を産めと命じているシーンで、突如コモドゥスが感情を爆発させ怒鳴るシーンがあります。

このシーンはホアキン・フェニックスのアドリブで、画面にも緊張が走りますが、撮影現場も緊張に包まれたとのこと。

暗殺されそうになり愛するもの、信じるものも無く情緒が不安定になっている皇帝の心理描写としてこれ以上ない演技となりました。

アカデミー助演男優賞にノミネートされた結果、惜しくも受賞を逃してしまいますが、ラッセル・クロウに引けを取らない演技をみせています。

実際の剣闘士はムキムキではなかったらしい

歴史家の研究によると、ラッセル・クロウのようなムキムキの剣闘士はいなかったらしいです。

その理由とは当時の剣闘士の食生活が炭水化物中心のため、割れた腹筋が目立つことなく、腹部も胸部も皮下脂肪に覆われていたとのこと。

メタボ体型のほうが傷ついたときのダメージが低く、身を守る意味でも剣闘士は率先して炭水化物、特に大麦を摂取していたようです。

歴史画に筋骨隆々とした戦士が描かれているのは、現代でいうと画像加工のような意向が含まれているらしく、昔も今も”画像を盛る”のは変わらないと思うと人間の本質は変わっていないのかもしれません。

マキシマスの鎧は重さ半分

マキシマス役のラッセル・クロウはスタントを使いながらも見事なアクションをみせました。特に鉄製の武器は殺陣の手順を一歩間違えれば大怪我に繋がります。

そこでクロウは他のメンバーよりも4週間早く現場に入り、入念にトレーニングを積んだそうです。

そんな彼の軽やかなアクションを支えたのが、美術チームの制作した鎧!

実は他のキャストが装備している鎧の半分くらいの重さで出来ているとのことで、動きやすく作られているのです。

撮影中は怪我の痛みや痺れなど、常に痛みを感じていたというクロウの熱演を支える要因になりました。

登場する鎧などはすべてオーダーメイドで作られたそうですね!
この時代に合うレプリカが存在せず、衣装だけでなく建物なども1から作ったということで、作品のスケールが伺えます。

実在する人物とフィクションの融合

「グラディエーター」は歴史上の人物にアレンジを加えてスペクタクル作品として構成されています。

歴史の情報を紐解きながらキャラクターを掘り下げてチェックしていきましょう。

マキシマスのモデルは数人いる

最初は歴史上でコモドゥス皇帝を暗殺したナルキッソスという剣闘士がモデルに選ばれましたが、彼に関しての逸話が少なく、ドラマとして盛り上がりに欠けるため再構築されることになりました。

そこで経歴はマルクス・ウァレリウス・コルウスという将軍のものから引用されたようです。

彼は若くして執政官に任命され、皇帝の右腕として戦場で大いに活躍しました。

マキシマスと違い、100歳まで生きて大往生を迎えたのですが、遍歴はコルウスがモデルと考えて間違いないでしょう。

軍を率いて圧政に反逆したスパルタクスなど著名な剣闘士の要素も含んでいるようで、キャラクター設定に関しての苦労の跡が伺えます。

アウレリウスとコモドゥス、ルシッラは実在した

アウレリウスはローマ中期の皇帝で、五賢帝に加えられるほどの良い政治を治めた皇帝として知られています。

アウレリウスには一説によると7男7女の子供が生まれたそうですが、多くが若くして死亡してしまいます。この頃のローマではよくあることでした。

コモドゥスの姉ルシッラは次女として生まれたことが確認されており、史実でもコモドゥスの暗殺を図り流刑の憂き目にあっているのです。

アウレリウスの男子の中では唯一生き延びたコモドゥスは若い頃から次期皇帝への指名を受けており、暗殺せずとも即位出来ていたことが確認できます。

またアウレリウスが戦場で崩御したのは事実のようで、そのあたりを上手くアレンジして物語に組み込んでいるのです。

初の皇帝グラディエーターだったコモドゥス

作中でコモドゥスは奸計と策略を巡らせ、マキシマスの存在が自身の人気を損ねることに悩む神経質な皇帝として描かれていましたが、史実のコモドゥスは史上初の皇帝剣闘士でした。

自身をヘラクレスの化身と呼ばせ、狼の皮をかぶり、メイスを使って何人もの剣闘士や猛獣の頭を砕いてきたそうです。

また槍や弓矢の腕にも優れ、走り回る動物たちの頭や目を外すことはなかったと言われています。

コモドゥスはだいぶ控えめな強さになっているのか、それともマキシマスが強すぎるのか、想像するとまた楽しめる要素ですね。

リドリー・スコットの思惑

監督に指名されたリドリー・スコットは本作を史実に沿ったドキュメンタリーにするのではなく、スペクタクルとエンタテインメントの詰まった歴史モノとして作ると定めたのです。

スコット監督は本作を”歴史の本から引き抜いた1ページ”にしたいとは思わず、またローマ帝国についての様々な文献があるがどれが正確なのかもわからないと判断しました。

そこから、一番重要なのは”ローマ時代の精神に忠実であること”であり、事実に固執する必要はないと考えたのです。

結果的に2000年という節目の年に記念すべき作品ができあがり、多くのフォロワーを生み出し、古代ローマやギリシャをモチーフにした作品群が誕生しました。

ローマ時代の文献が本作のヒット後に飛ぶように売れたり、歴史映画が多く作られるようになったことを”グラディエーター効果”と呼びます。

マキシマスとコモドゥスの心情を考察

マキシマスは周囲を熱狂させる存在でありながら、本人は感情をあまり表に出さず、実直な性格が表情に現れるという難しい演技をラッセル・クロウはやってのけます。

一方でコモドゥスは皇帝の器でないことが随所で露呈していき、窮地に陥ってしまう状況に怒りを隠さない狂気をホアキン・フェニックスが見事に演じているのです。

対象的な存在であるこの二人の心情の変化やスクリーンから読み取れる情報を元に考察していきます。

皇帝を移譲されるマキシマス

マキシマスは、本人の中ではあくまでローマに仕える戦士(将軍)でしかなかったと思っていたはずです。

部下と家族を思い、戦でローマへ貢献し帰郷することがマキシマスの原動力になっているように見えます。

特に家族はかけがえのない存在ですから、アウレリウスから皇帝の座を渡されるときは真っ先に家族の事を考えて断ろうとしている、心のゆらぎが表情から読み取れるのです。

ですがコモドゥスに皇帝が殺されたことでアウエリウスの遺志を継ぎローマを守らねば、という感情が生まれたのでしょう。

その結果として処刑されそうになり、最愛の家族を失ってしまうマキシマスの悲しみは計り知れません。

基本的に忠誠心が高く、無欲で部下思いの朴訥な軍人ですよね!
そのぶん、戦争に行き過ぎてローマの現状を知らなかったりというところがコロッセウムを観たシーンでの表情に現れています。

帝位を簒奪したコモドゥス

コモドゥスは自分が皇帝になると思っていますが、自信がありません。それは、アウエリエスから愛されていないという自覚があったからです。

ですが心のどこかで、偉大なる父アウエリエスに理解してもらえているという思いもあったのでしょう。

実際は、マキシマスを皇帝に指名すると宣言され、「お前を正しく導けなかった」と愛されていないことを告げられてしまうのです。

どこまでも愛されていないという事実と、育て方を間違えたと告げる偉大な父の弱々しい姿を見て耐えられなくなり、コモドゥスは父を殺すのです。

このときのコモドゥスには深い絶望があったことでしょう。愛されていればコモドゥスにも違う未来があったのかもしれません。

マキシマスの変化を伝える表情の機微

マキシマスは奴隷商人に拾われ、初試合を生き延びてから次々と相手を殺していき、その強さに観衆は夢中になります。

この時点でのマキシマスは言われたから殺す、という虚無の精神しかなかったと思います。

プロモーターであるプロキシモに「ローマに行けば皇帝に会える」と言われ、復讐の念を燃やしたところから少しずつ変化が訪れます。

数多の危機を乗り越えるたびに人間らしさを取り戻し、個人的な恨みだけではなくローマを取り戻すための戦いを選ぶようになるのです。

その一方で、仇を討てれば早く家族の元へ行きたいと思っているフシもあり、コモドゥスを倒しても喜びはなく、仲間の開放と共和制の復活を指示し息を引き取ります。

そこに苦悶の表情はなく、安らかな死に顔でした。やるべきことをやった男の顔と言えるでしょう。

復讐に生きただけではなく、仲間の剣闘士とローマを救い、一人死んでいくマキシマスの機微を含んだ表情が、物語に深みを与えています。

ラッセル・クロウの演技は本当にすごいのですが、本作は一分のスキもないほど完璧です!

コモドゥスはただの悪ではない

コモドゥスは元老院を無視し、国民に愛される皇帝になるべく闘技大会を開催しますが、そこに殺したはずのマキシマスが現れたことで思惑が狂います。

人気者のマキシマスを処刑すれば国民に反感を買ってしまい皇帝としての立場が危うくなりますし、マキシマスを生かしておけばいつ自分に牙をむくかわかりません。

どんな強敵を差し向けても打ち破り、何をしても民衆から支持されるマキシマスは、コモドゥスにとって除外しなければいけない目の上のたんこぶです。

国民の人気を得るため、自分の手でマキシマスを殺すために一対一の決闘をコロッセウムで行なうのですが、致命傷を与えていてもなおマキシマスには勝てませんでした。

どこまでもマキシマスに敵わなかったコモドゥスは愛を知らず、性格も悪かったですが、単純悪ではなく人間の悲哀を感じさせるキャラクターでもありました。

まとめ

独特の色調で統一され、映画らしい華々しさだけではなく静かな演技もふんだんに盛り込みエンターテインメント性とメッセージ性を両立した「グラディエーター」。

ラッセル・クロウの鬼気迫る熱演と、ホアキン・フェニックスの狂気、そしてそれを取りまとめたリドリー・スコット監督の技量によって不朽の名作となりました。

ちょっとした仕草や視線、セリフ回しに注目することで隠されたメッセージに気がつける味わい深い作品なので、何度でもおうちシネマで見返してみてください。

観るたびに新たな発見があることでしょう。

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