
「となりのトトロ」は1988年に上映されたアニメーション映画です。
監督はアニメ映画界の巨匠である宮崎駿、主演声優は日髙のり子、坂本千夏らが担当しています。
初上映から長い年月の経つ本作ですが、いまだに根強い人気を誇る映画です。
家族間の絆や思いやりの大切さを教えてくれて、心が温まる映画である「となりのトトロ」。
そんな「となりのトトロ」について、サツキとメイの誕生秘話といった裏話や、トトロたちが持つ魅力についてなどを交えながら紹介していきます。
となりのトトロ(1988年)
サツキとメイと父の一家は病弱な母に療養してもらうため、空気のきれいな田舎に引っ越しをする。
引っ越し先の家でサツキとメイは、小さく真っ黒な生き物「まっくろくろすけ」を発見。
また、メイは「トトロ」という大きな生き物に出会い、これから始まる不思議な生活に胸をふくらませていく。
それから夏休みも始まったある日、退院間近だった母が体調を崩してしまい、家に帰ってくる予定が延期になってしまった。
メイはこのことに納得できずにサツキと大喧嘩。メイはひとりで母が入院する病院へ向かい迷子になってしまう。
サツキは行方不明になったメイを探すため、さまざまな人の助けも借りながら村を奔走する。
そんな思いに応えてくれたのかサツキの前にトトロが姿を見せ…。
となりのトトロ(ネタバレ・考察)
映画「となりのトトロ」は登場人物たちの魅力や裏話といったさまざまな要素に彩られている作品です。
そんな本映画の中にあるトトロという名前が付けられた経緯や、公開当初の裏話などを紹介していきます。
最初は不人気な作品だった!?
「となりのトトロ」は映画自体の評価は高かったものの、スタジオジブリが持つブランド力は近年ほど高くなく、宮崎駿が監督した作品であっても世間からあまり注目されていませんでした。
そのため公開当初は観客が思うように集まらず、興行収入は2021年までの全ジブリ映画中ワースト3位という赤字収益に終わってしまいます。
実は映画「魔女の宅急便」(1989年)は「となりのトトロ」が興行的に失敗したことで生まれた赤字を回収するために作られた作品です。
そんな注目されなかった映画「となりのトトロ」ですが、上映から2年後の1990年に大きな転機が訪れました。
キャラクターグッズとしてぬいぐるみを販売したところ非常に好評で、なんと約70万個という異例の売り上げを達成します。
もともと高い評価であった「となりのトトロ」はぬいぐるみが好評だったため幅広く知られていき、上映から2年越しに大人気作品へとなったのです。
1997年に発売されたビデオ版「となりのトトロ」は上映から10年近く経っていたにもかかわらず約1ヶ月で100万本を越える売り上げを達成しました。
そこから多くのグッズが販売される人気キャラクターとなっていき、トトロはスタジオジブリの顔といえる存在になります。
トトロたちには別の名前があった?
本作には大、中、小の違った大きさである3種類のトトロが登場していますが、初期段階ではそれぞれに別の名前がありました。
それぞれ大きい個体はミミンズク、中くらいの個体がズク、一番小さな個体がミンという名前です。
ただし初期設定の名前は監督が新たにトトロという名前を思いついたため、使われなくなってしまいました。
実は新しい名前を監督が思いついたのは、知人の娘が関わっているという噂があります。
その少女が監督の住んでいた地名である「所沢」を「ととろざわ」と発音したことが元となって「トトロ」という名前が生まれたそうです。
メイが大トトロの発した鳴き声を「トトロ」と解釈する場面があるのはこういった経緯がきっかけだといわれています。


不思議な生き物たちが持つ魅力について
映画「となりのトトロ」にはトトロを始めとする不思議な生き物たちが多数登場しています。
この映画が人気になった理由には、登場する不思議な生き物たちの魅力があったためでしょう。
そんなかわいさにあふれる彼らの活躍について紹介していきます。
トトロ
映画のタイトルにもあるように「となりのトトロ」のメインキャラクターであり、スタジオジブリの顔ともいえる存在です。
大トトロの他にも中、小の個体が登場しており、それぞれがかわいらしい見た目や性格をした生き物だといえます。
大トトロは非常にのんびり屋さんで、いつもクスノキのふもとで気持ちよさそうに寝ている生き物です。
メイがお腹に落ちてきても全く気にしないほどのマイペースな性格でもあります。
中くらいのトトロは彼らの中で一番働きものです。
ただ、トトロたちの中で一番食いしん坊なのか、好物の木の実を持ち運ぶために袋を持ち歩いています。
一番小さなトトロはまるで子供のような、どこか落ち着きのない性格です。
透明になれる能力を持っていますが、消える直前の姿をうっかりメイに見られてしまい追いかけられてしまいました。
他にも3匹のトトロが集まってクスノキの上で楽しそうにオカリナを演奏する場面や、サツキやメイの夢に登場したりとさまざまな場所で活躍を見せます。
まっくろくろすけ
作中ではまっくろくろすけと呼ばれる黒いイガグリのような見た目の生き物です。
そして人が住まなくなった家などに住み着く一種の妖怪といわれています。
実はまっくろくろすけという名前はメイによって名付けられたものであり、本当の名前は「ススワタリ」です。
見た目はとてもかわいらしいですが、臆病な性格で人を見るだけでくもの子を散らすように逃げてしまいます。
また、彼らは特に悪さを働いたりはしませんが、触るとすすまみれになってしまうので注意が必要です。
ネコバス
ネコバスはこの地域に住み続けている、とても長生きで大きな化けネコです。
胴体はバスのような形をしており、中は大勢がゆったりと座れるほどの広々とした空間があります。
外側も内側もふわふわと気持ちよさそうな質感であり、思わずなでたり触ったりしたくなるでしょう。
作中ではトトロに呼ばれて迷子になったメイの所へサツキを運んでくれたり、二人の合流後に母がいる病院まで送ってくれました。
元々ネコバスはカゴ屋のカゴに化けていたネコでしたが、バスをみた時その凄さに憧れ、バスの姿を真似するようになったといわれています。
サツキとメイの誕生秘話
映画「となりのトトロ」の主人公は、サツキとメイの姉妹です。
しかし初期設定の段階ではサツキとメイは存在しておらず、彼女たちとは違う別の主人公が存在していました。
元の主人公に代わって生まれた彼女たちの誕生秘話についてを紹介します。
サツキとメイが生まれた理由 その1
映画「となりのトトロ」の主人公は初期設定の段階では一人の少女だったのです。
本来はサツキとメイの要素を合わせた見た目の別の少女が主人公として活躍する予定でした。
実際に公開前に作られたポスターには、トトロの横でサツキでもメイでもない少女がバスを待っています。
しかし、幼稚園児ほどの少女が父を一人でバス停に迎えに行くという設定に無理があったため、その役割をこなせる姉を登場させたのです。
それから主人公のデザインや脚本の調整が行われ、広く知られているサツキとメイの姉妹が誕生しました。
サツキとメイが生まれた理由 その2
また、「火垂るの墓」(1988年)と同時上映であったことも、サツキとメイが誕生した理由の一つだとされています。
もともと「火垂るの墓」と「となりのトトロ」の2作品は60分の中編映画として上映される予定でした。
しかし60分という短い時間では作品を描写しきれないと監督が考えたため、「火垂るの墓」は60分から90分へと延長されることに。
この2作品は同時上映作品であるため、どちらの作品も同じ上映時間の映画にする必要があります。
そのため映画「となりのトトロ」も約30分の尺延長が必要になりました。
そこで「となりのトトロ」の監督が取った手法が、「主人公を姉妹にすること」だったのです。
姉妹を主人公にしたことによって話の展開が広げやすくなり、90分という尺に合った作品を完成させることに成功します。
サツキとメイの誕生によって…。
これら2つの理由によって主人公がサツキとメイの姉妹になりました。
主役を1人の少女から2人の姉妹に変更したことで物語は大きく広がり、より深みのある作品になります。
例えばメイが昼間にトトロたちを見つけて追いかける一連の流れは、主人公がメイとサツキになったからこそ生まれた場面です。
メイのように好奇心が旺盛な子供が登場人物に居なければ、この場面は生まれなかったでしょう。
また、迷子になったメイを探すサツキという構図も、一人っこのままでは描くことはできませんでした。
このように映画の名場面の多くは、サツキとメイだったからこそ誕生したのです。
もし「となりのトトロ」の主人公が姉妹ではなかった場合、ここまでの人気は出なかったかもしれません。


「となりのトトロ」の都市伝説について
映画「となりのトトロ」は子供や大人問わずに高い人気を誇る作品です。
しかし人気になった本作は深く考察され、その中でさまざまな都市伝説が生まれてきました。
そんな「となりのトトロ」の都市伝説の中でも、特に有名な説について触れていきます。
サツキとメイは幽霊だった!?
映画の終盤で、母がサツキとメイが居たような気がすると父に伝える場面がありますが、どうしてそう感じたのでしょうか。
そこで出てくるのがサツキとメイは幽霊であったという都市伝説です。
その内容はメイが村にある池で溺れ死んでしまい、サツキはそんなメイを探して森で死んでしまうというものでした。
そして2人の姿が母に見えなかったのは、既に死んでいたためなのではないかというものです。
さらにメイの物らしきサンダルが池に浮かんでいたり、途中でサツキとメイの影が消えていたことも合わさって、意味深な描写が続きます。
妙に信憑性のある理由がいくつもあげられており、思わず信じてしまう人も出てくるほどの都市伝説です。
この説は本作の人気が出始めた1990年以降に日本各地でささやかれるようになり、多くの人に知られる都市伝説になりました。
都市伝説の真相は…?
そんな都市伝説ですが、この説はあくまで噂であり本当ではないといえます。
1つ目の理由である池に浮かんでいたサンダルは比較するとメイの物と明らかに異なることが分かり、更にメイはサンダルを両方とも履いていました。
なぜ池にサンダルが浮かんでいたのかは謎ですが、メイと池のサンダルは関係なく、池で溺れたという事実はないといえます。
また、二人の影が途中で消えた理由は、途中から影を描く必要がないとスタッフたちが考えたためです。
これは舞台が真夏の昼間に差し掛かっており、真上に太陽があったため影がいらないと判断したからだといわれています。
また、映画を細かく観てみると、サツキやメイ以外の登場人物の影も途中からなくなっていることが判明しました。
よく観察すると違うと分かりますが、意味深なサンダルを池に浮かばせたり影の描写を途中でなくしてしまったことなどが都市伝説として語られる原因になったのでしょう。
この都市伝説に関してはスタジオジブリから公式に否定されるほどで、とても大きな反響があったことが分かります。
2人が母に見えなかった理由も…?
サツキとメイの二人が母に見えなかった理由も、作中の描写から考察ができます。
母に見えなかった理由は、母が振り向いた時にサツキとメイは既にネコバスに乗っていたためです。
実はネコバスに乗っている人は外から姿が見えないということが、作中の描写で判明していました。
また、母にあえて顔を見せなかった理由もあり、二人は母の体調が崩れたと聞いたため心配して顔を見に行こうとしたのだと考えられます。
彼女たちは元気な母の姿を見ることさえできれば目的を果たせているので、直接会う必要はありません。
むしろ家から遠く離れた病院まで2人で来ていることがばれてしまった方が両親に心配をかけてしまうので、隠れて様子を見に行きこっそりと家に帰ったのです。
また、サツキとメイが生きて病院へ来ていたことの証拠も残されていました。
それはメイが持ってきたメッセージ入りのトウモロコシであり、もし彼女たちが死んでいたのであれば母にこれを届けることは不可能でしょう。
エンディングでは幸せな家族の姿が…?
また、都市伝説を否定するさらに大きな要素がエンディングで登場しています。
母の体調が良くなったのか、家に帰ってきたことが描写されているのです。
父や母、メイやサツキの4人で仲良く団らんする描写もあり、幸せそうに暮らすハッピーエンドで心の温まる物語として締めくくられています。
ただし母の顔が映画よりも若く見えるため、過去を回想しているだけではないかと深読みして考察する人がいました。
つまりエンディングはサツキやメイ、母が元気であった過去の描写であり、今とは違うのではないかと考察したそうです。
描写されている情報をどう考察していくかは、非常に面白い物だといえます。


「となりのトトロ」を彩る優しい登場人物たち
映画「となりのトトロ」が高く評価される理由の一つは、登場人物たちの優しさを丁寧に描いて表現しているところにあります。
登場人物たちによって生み出される優しい世界が全編に渡って描かれているからこそ、子供から大人まで心に響く感動を「となりのトトロ」は届けてくれるのです。
そんな彼らの言葉や行動から見えてくる優しさについてを紹介していきます。
カンタ
サツキによくちょっかいをかける生意気な少年カンタは、実は都会から来たサツキのことが気になっていただけでした。
そのためそっけない態度を取りながらも、困っているサツキたちに傘を貸してくれたり、メイ探しを手伝ってくれます。
思春期の少年らしい行動で微笑ましいですね。
となりに住むおばあちゃん
サツキとメイが暮らす家の管理は、このおばあちゃんがずっとやってくれていました。
また、サツキとメイのことを本当の孫のようにかわいがってくれて、しっかりと面倒をみてくれる人です。
実はカンタのおばあちゃんで、いたずら好きな孫であるカンタのことをよく叱っています。
村人たち
サツキが迷子になったメイを探す時には、たくさんの村人たちがメイが居ないか探すことを手伝ってくれました。
つい最近村にやってきたサツキたちにも親身になって手助けをしてくれる、とても優しい人たちです。
大トトロ
トトロは人間ではありませんが、彼(彼女)もまた優しい心の持ち主です。
トトロは落ちてきたメイのことを大きなお腹で助け、その後にメイが行ういたずらにも優しく応えてくれます。
また、メイが迷子になった時もトトロはネコバスを呼びよせ、サツキがメイを見つける大きな助けになりました。
もしトトロが居なかったら本当の大事件になっていたかもしれません。
まとめ
広い世代に根強い人気を誇る名作アニメ映画「となりのトトロ」についての紹介でした。
トトロたちをはじめとする不思議な生き物たちのかわいらしい姿に、心を奪われた方も多いでしょう。
またサツキとメイ、その他の登場人物たちによって描かれる優しい世界も魅力的で心が癒やされていく作品です。
心温まる雰囲気の作品やかわいいキャラクターなどが好きな方に、映画「となりのトトロ」はおすすめの作品といえます。