「ターミナル」は2004年に公開されたアメリカ映画です。
主演にトム・ハンクスを迎え、監督は「E.T」「ジュラシックパーク」などで知られる映画界の巨匠・スティーヴン・スピルバーグが務めました。
母国で起きた突然のアクシデントにより出入国を禁じられた男性が、空港で暮らす間に様々な人々と出会い心を通わせていく、笑いあり、涙ありのヒューマンドラマです。
映画「ターミナル」より作品のネタバレ・考察、あらすじや物語に関する小話を、作品の魅力余す事なくご紹介していきたいと思います!!
ターミナル(2004年)
ビクター(トム・ハンクス)は、祖国のクラコウジアから、ある約束を果たすためにアメリカのJFK国際空港へと降り立つ。
しかしそんな彼に、突然の不運な出来事が起きるのであった。
クラコウジアでクーデターが勃発し、事実上祖国が消滅してしまったのだ。
パスポートが無効になってしまった為、帰国する事も、アメリカに入国する事も禁じられた彼は空港内で途方に暮れる。
行き場を失ったビクターは空港内で生活を始める事になるが…。
ターミナル(ネタバレ・考察)
映画の数だけ、そこに面白いトリビア的な要素は存在します。
感動のヒューマンドラマ「ターミナル」にはどんな面白い小話があるのでしょう?
トム・ハンクスのすごいアドリブ!!
トム・ハンクスが劇中で話す“クラコウジア語”と呼ばれる言語は全て、トム・ハンクスによるアドリブなのだそうです!
元々、この世界には“クラコウジア”という国は存在しません。
“クラコウジア”も“クラコウジア語”も全てこの物語の為に作られた架空のものなのです!
英語でもない、日本語でもない不思議な言語を話すトム・ハンクス。
これが全てアドリブだとは、やはりトム・ハンクスはすごい技量を持った俳優さんですね!!
撮影のセットもすごい!!
映画の舞台となったJFK国際空港。
実際の空港はテロ警戒のために撮影許可が下りませんでした。
そこでスティーヴン・スピルバーグ監督がとった行動は、“巨大コンテナにセットを作る”という何ともすごいものでした。
カリフォルニア州のパームデール地域空港の巨大な格納庫に空港のセットが作られ、ほとんどの撮影はそこで行われたそうです。
その他に、カナダのモントリオール・ミラベル国際空港やロサンゼルスやニューヨークなども撮影舞台となりました。
なかったから作ってしまおう!というスピルバーグ監督の判断はやはり大物監督ならではですね!
物語の内容も素晴らしいですが、時間とお金、何より巨大コンテナにセットを作り出したスタッフの方の労力には拍手を贈りたいものです!!
主人公・ビクターにはモデルとなった人物がいる!?
巨大空港の中で、あらゆる知恵を尽くして逞しく生きる主人公のビクター。
ビクターには実はモデルとなった人物がいます。
マーハン・カリミ・ナセリというイラン人難民で、1988年にフランスのシャルル・ド・ゴール空港でパスポートと難民証明書を盗まれ、空港から出られなくなったとの事です。
実はこのエピソードは「ターミナル」よりも前に「パリ空港の人々」という映画にもなっています。
モデルになった人物は何と!18年も空港に閉じ込められてしまったそうです。
「ターミナル」はマーハンが書いていた日記の映画化権を取得し、それを元に製作されました。
ビクターが周りの人物に与えた影響
最初は邪魔者扱いされていたビクターですが、次第に周りの人々の心を動かしていきます。
ビクターが周りの人に与えた影響とは何だったのでしょう?
そこを考察していきます。
どんな状況でもめげない力
ビクターは屈強な精神の持ち主です。
約9ヶ月も空港内に閉じ込められたら、多くの人はその状況に絶望したり、半狂乱になってしまうのではないでしょうか。
しかしビクターは空港内の改装中の部屋で、椅子を壊してベッド代わりにしたり、英語の本を買って勉強したりと逆境に負けない力を持っています。
いわばとても“ポジティブ”なのです。
カートを集めるとお金が得られる事を知り、カート集めをして小銭を手に入れ、そのお金で食糧を手に入れたりします。
極めつけには空港内でペンキ塗りの仕事を手に入れたりと、非常に運の強い持ち主です。
その運はビクター自身が引き寄せているものであり、運を力に変えているといえます。
どんな状況でもめげないビクターの力は、次第に周囲の人の心をも動かしていくのです。
誠実な心
税関国境警備局のディクソンは、何かとビクターを目の敵にしていました。
ビクターが空港内で何か問題を起こしたら、自分の昇進に関わるからです。
そこでディクソンはビクターをわざとアメリカに不法入国させ、祖国に強制送還するという作戦を立てました。
12時に警備員が持ち場を離れ、5分間そこから見張りがいなくなるという事を伝え、ビクターを試します。
ディクソンはとにかく早くビクターを空港内から追い出したかったのです。
しかし、ビクターはその作戦には引っかからず「自分はここに残る」と言い放ちます。
ドアを一枚出てしまえば、自分は念願のアメリカに行ける。
しかしビクターはせこい手を使って自分の願いを叶えたくはなかったのです。
もしかしたら、ディクソンの悪巧みにも気付いていたのかもしれません。
このシーンはビクターの誠実さが顕著にわかる部分でした。
その誠実さが周りの人の心に刺さり、ビクターの運命を大きく変えていく事となるのです。
弱い人を守る心
ある時、空港内でナイフを持った男が暴れる事件が起きます。
彼は病気である父親の為に薬をアメリカ国内に持ち込もうとしていたのですが、適切な書類がない為に、それは不可能とされていたのです。
通訳を頼まれたビクターは「ヤギにあげる薬だ」と機転を利かせ嘘をつきます。
動物に与える薬は原則として特別な書類が要らないからです。
ディクソン達はビクターが嘘をついていると責めますが、最終的には薬を持ち込んだ男本人がヤギの薬であると言った為に騒動は収まります。
男はビクターに感謝の意を述べその場を去るのでした。
この時のビクターの行動が空港内で話題になり、彼は英雄のような存在となるのです。
ここでもビクターの、人に対する優しさや思いやり、誠実さが顕著に示されています。
ビクターは結局嘘をついた事にはなりますが、これは人を傷つけない為の優しい嘘です。
ビクターの行動は人を守る為のとても勇気ある行動だった、ともいえます。
アメリアが元彼を選んだ理由とは?
一時はビクターと結ばれるのかと思われた客室乗務員のアメリア。
不倫で悩んでいた彼女ですが、最後はやはりビクターではなく不倫相手の方を選びます。
アメリアの気持ちを読み解いていきましょう。
自分の問題にビクターを巻き込みたくなかった
ビクターはザ・いい人という言葉がぴったりなくらい、本当にいい人物です。
アメリアはおそらく自分の人生にビクターを巻き込みたくなかったのでしょう。
自分は“不倫”という行動で汚れていると感じていたのかもしれません。
ビクターにはもっといい人がいると思ったのではないでしょうか。
アメリアは、ビクターに幸せになってほしかったのです。
祖国での戦争が終結し、喜ぶビクター。
彼の優しさに触れ、隣にいるべき人物は自分ではないとアメリアは感じたのです。
アメリアにとってビクターは大切な友人となった
ビクターに、アメリアは1日だけアメリカに入国できる特別なビザを渡します。
アメリアの不倫相手であった男性にはコネがあり、緊急ビザを手に入れる事ができたのです。
ビクターはアメリアにとって、恋人にはなれないけれども、大切な友人に成りえたといえます。
彼の純粋な心に触れ、自分も本当に好きな人への気持ちを大切にしようと考えたのでしょう。
一旦、不倫相手と別れたアメリアですが、やはり自分に必要なのはビクターではなく不倫相手の彼だと気付いたのです。
本当の気持ちに気付かせてくれたのは、何者でもなくビクターだったのです。
ビザを用意するというアメリアの行動は、ビクターにとって最大のサプライズであり、辛い時に言葉をかけてくれたビクターへの恩返しだったといえます。
ラストのその後は?
ビクターは亡き父親の念願だった、ジャズ・プレイヤーのサインを貰い、帰路につきます。
父親の果たせなかった夢をビクターは見事叶えたのです。
ラストのその後「家に帰るんだ」という言葉通り、ビクターは祖国であるクラコウジアへ帰るのでしょう。
ビクターの長い長い旅路はやっと終わりを迎えるのです。
約9ヶ月の旅の中でビクターはかけがえのないものを手に入れました。
アメリアとは結ばれる事はありませんでしたが、友達やビクターを慕うたくさんの仲間ができたのです。
これは全てビクターの誠実な性格がそうさせたのでしょう。
彼の人柄の良さがたくさんの人の心を動かしたのです。
ビクターはクラコウジアで今回の長旅の事を家族や友人に話し聞かせ、彼の長旅は本当の意味で幕を閉じるといえます。
「ターミナル」おすすめポイント
この「ターミナル」という映画のおすすめポイントは、何といっても主演のトム・ハンクスの迫真の演技です。
ビクターのような役をやらせたら、右に出る人物はいないのではないかと思うくらい、彼の演技には心動かされます。
そしてこの映画の一番の魅力は、感動だけで終わらず、要所に笑いが散りばめられているところです。
涙だけではなく、時にくすっと笑えるシーンがあるのがこの映画の最大の魅力といえます。
それがこの作品を重たい話で終わらせないポイントとなっているのです。
ロマンスあり、涙あり、笑いあり、友情ありのたくさんの魅力が詰まった映画がこの「ターミナル」という映画の良さといえます。
まとめ
以上、映画「ターミナル」のネタバレ・考察、あらすじや物語に関する小話を紹介してきましたが如何でしたでしょうか!?
約9ヶ月も空港に閉じ込められたら、あなただったらどうしますか?
そんな事を想像しながら観ていくと、この作品はもっともっと楽しめる要素に溢れているといえます。
スティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスのゴールデンコンビがタッグを組んでいるという事で、それだけでも見応えある映画です。
観賞後、不思議な爽快感と清々しさに包まれる作品となっています。
ぜひ大切な人と、お家シネマで楽しんでください!!