
「スーサイド・スクワッド」は2016年に公開されたアクション映画で、DCコミックスの世界観を共有する作品群「DCエクステンデッド・ユニバース」(DCEU)の中の1作です。
バットマンやスーパーマンといったヒーローの敵であるスーパーヴィランたちが結集し、世界の危機に立ち向かうストーリーラインが注目されました。
特にDCEUの中で最も有名なヴィランであるジョーカーと、そのパートナーであるハーレイ・クインが描かれるということもあり期待が集まったのです。
結果的に観客からは賛否両論が起きる結果になったのですが、興行収入的にはかなり健闘しました。
2021年に続編が出る予定の「スーサイド・スクワッド」について、知識や情報を補完しながらおすすめしていきます。


スーサイド・スクワッド(2016年)
「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」でスーパーマンが死亡した数カ月後。
米国政府の高官アマンダ・ウォラーは新たなるメタ・ヒューマン(超人)が現れたときの対抗策として、死刑や終身刑に処されている凶悪な犯罪者を構成員とした部隊を結成する。
タスクフォースXと名付けられた部隊は減刑や恩赦を報酬に任務を受けるが、反乱や逃亡した場合はナノ爆弾で首を吹き飛ばされるうえに危険な現場に送り込まれるため「スーサイド・スクワッド」(自殺部隊)と呼ばれることになる。
ウォラーは考古学者のジューン・ムーン博士を部隊の1人として選ぶ。ムーンは魔女の女神エンチャントレスに取り憑かれているが、ウォラーはエンチャントレスの心臓を管理して彼女を脅迫し、支配していた。
支配されることを拒んだエンチャントレスは市民を怪物の群れに変えてミッドウェイ・シティを占拠し、世界を破壊する装置を作り上げようとしていた。
ミッドウェイで孤立したウォラーはテロ攻撃だと報告、自分の救出であるということは伏せて、要人救出のためにスーサイド・スクワッドを向かわせる。
一方、ハーレイ・クインの恋人であるジョーカーは、ありとあらゆる手段を使ってハーレイ・クイン奪還を目論む…。
スーサイド・スクワッド(ネタバレ・考察)
DCEUの1つとして、他のDC作品と世界観を共有する「スーサイド・スクワッド」は、コミックスファンに対しての目配せが随所にあります。
映画に関わることから出演者にちなんだ小ネタまでトリビアを網羅していきましょう。
ハーレイ・クインの特徴的なコスチュームは私物箱に
スーサイド・スクワッド出動の際に刑務所から移送され、集合地点に到着したハーレイ・クインは私物箱から赤と黒のコスチュームを見つけて喜びます。
これはアニメ版「バットマン」で有名になったハーレイ・クインの衣装なのです。
ジョーカーが部屋にいるときも、置いてあるマネキンにこのコスチュームを着せているので、彼もお気に入りのよう。
ちなみにハーレクインという言葉はフランス語での道化師を表す「アルルカン」の英語読みであり、それにちなんでの道化師コスチュームと思われます。
ハーレイ・クインはハーレクインがお好き?
ハーレクインは世界中で出版されている女性向け大衆恋愛小説の出版社で、ハーレクインロマンスというジャンルがあるほどです。
多くの女性に支持されているジャンルですが、ハーレイ・クインもエスプレッソを飲みながらハーレクイン小説を読んでいるシーンがあります。
ここで読んでいるのはアメリカのロマンス小説家であるモリー・オキーフの「Between the Sheets」なのですが、内容はかなり過激なものになっているのです。
刑務所内で刺激が少ない時間を過ごしているハーレイにとっては、ジョーカーを思い出しながらロマンス気分に浸れる貴重なアイテムなのでしょう。
バットマンの相棒を殺したのはハーレイかも
映画冒頭でスーサイド・スクワッドのメンバーたちが紹介されるシーンが入りますが、ハーレイの紹介映像に入るテロップに「ロビンを殺した共犯者」とあります。
「おそらく彼女がジェイソン・トッドを殺害した」という説明も入るのですが、ジェイソン・トッドとはロビンの本名です。
このことからジョーカーとハーレイ・クインは一般市民やギャングだけでなく、ヒーローをも殺しているということがわかります。
一方で監督のデヴィッド・エアーはジョーカーがロビンを殺し、その報復としてジョーカーは歯を折られアーカム・アサイラムに入れられたとコメントしました。
監督の発言はDCコミックスのコアなファンから相違点が指摘されているため、今後公開されるDCEU作品で辻褄を合わせてくるのかもしれません。

久々にアカデミー賞を獲得したアメコミ映画
「スーサイド・スクワッド」は、「ダークナイト」(2008年)以来、アカデミー賞を受賞した久々のヒーロー映画で、DCEU作品の中では最初の受賞作です。
本作が獲得したのはメイクアップ&ヘアスタイリング賞で、登場キャラクターたちのメイクの素晴らしさを讃えての受賞になりました。
ハーレイ・クインやジョーカーのヘアスタイルとメイクだけでなく、キラー・クロックの造形なども受賞の一因になっています。
ちなみにハーレイ・クインとジョーカーのメイクは、どちらも3時間を費やしてタトゥーや髪型をセットしているのです。
スタッフとキャストおそろいの入れ墨を入れた
ハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビーとデッドショットを演じたウィル・スミスの提案で、キャストや監督に「スクワッド」の入れ墨が入れられることになりました。
餌食になったのはデヴィッド・エアー監督、リック・フラッグを演じたジョエル・キナマン、そしてカタナを演じた日系アメリカ人女優の福原かれんです。
入れ墨は提案者2名の手によって彫られましたが、奥さんがタトゥーアーティストのウィル・スミスは下手なタトゥーを入れてしまったことを後悔しているそうです。
「スーサイド・スクワッド」の最大の魅力であるハーレイ・クインの役作り
「スーサイド・スクワッド」の主役であるハーレイ・クインは、イカれた頭とキュートな容姿だけでなく、度胸一つで拳銃とバットを使い大暴れする魅力的なキャラです。
予告編のビジュアルだけで世界中のアメコミファンに期待をもたせ、スピンオフまで作られるようになったハーレイ・クインについて語っていきましょう。
マーゴット・ロビーの役作り
劇中のほとんどのアクションシーンは、マーゴット・ロビー本人が演じています。
彼女は「スーサイド・スクワッド」の撮影が始まる6ヶ月前にトレーニングを開始し、役作りに励みました。
トレーニングは体操、ボクシング、武器トレーニング、サーカスなど多岐にわたります。
さらにキャラクターを掘り下げるためにハーレイ・クインが出ているコミックスをすべて読破し、ハーレイ・クインというキャラクターを自分の中に取り込んでいったのです。
水中シーンが多いのは特訓のおかげ?
マーゴット・ロビーは水中で息を長く止めているトレーニングにも励み、5分間の無呼吸状態が可能なまでになりました。
バットモービルとのカーチェイスで水中に飛び込んでしまうシーンも、ハーレイ・クインは助けに来たバットマンをあざ笑うように反撃します。
またエースケミカル工場でジョーカーに試されたハーレイは化学薬品のタンクに飛び込み、ジョーカーと同じ姿になるのです。
これらのシーンは呼吸を止める特訓の成果を活かしてハーレイ・クインのキャラクターを際立たせることに成功しています。
映画版のジョーカーはハーレイ・クインが大好き
ハーレイ・クインはジョーカーの恋人ですが、アニメやコミックスではジョーカーを溺愛しているハーレイをジョーカーがうざがっているシーンが多いです。
「スーサイド・スクワッド」のジョーカーは自分の所有物に対する執着もしくは愛情なのか、ハーレイを取り返すべく暗躍します。
序盤でハーレイの居場所を掴んだジョーカーが、自分の周囲に並べた武器や刃物の中心で笑い声を上げるシーンがありますが、そこにはなぜか赤ちゃん用の衣服も…。
ハーレイ・クインを取り返したあと、彼女との子作りも考えているかと思うと、映画でのジョーカーがいかにハーレイを愛しているかが分かります。


画面に織り込まれたDCユニバースの広がり
「アベンジャーズ」などで成功したマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に対抗するべく生み出されたDCEUでは、DCコミックスの作品群がつながっているというサインを見せてくれます。
「スーサイド・スクワッド」で登場するDCコミックス作品と、映画化されるであろう作品への伏線をチェックしていきます。
バットマン登場
デッドショットとハーレイ・クインはバットマン(ベン・アフレック)の手によって逮捕され、刑務所に入れられます。
バットマンですらこの映画では脇役なのでちょっとしか出番はありませんが、「バットマン vs スーパーマン」の後日譚となっているためベン・アフレックが続投しているのです。
物語の最後に、ウォラーがブルース・ウェイン(バットマン)と密会しメタ・ヒューマンのリストを渡しているのは、エンチャントレスを逃してしまった失態で自分の地位が脅かされないようにするためです。
このリストを元にバットマンはチームを結成するためメタ・ヒューマンたちとコンタクトを取り、ヒーローチームの映画「ジャスティス・リーグ」(2017年)へと繋がります。
キャプテン・ブーメランとフラッシュ
強盗のキャプテン・ブーメランがダイヤを盗んだときに登場したのはヒーローのフラッシュです。
フラッシュはDCコミックスが1940年代の頃に生み出した超スピードで移動するヒーローで、後のヒーロー軍団「ジャスティス・リーグ」のメンバーでもあります。
キャプテン・ブーメランは「フラッシュ」のヴィランなのでフラッシュが捕まえるのは当たり前に思えますが、違うヒーローを同じ作品に出すことで「DCEUの話なんですよ」というメッセージを伝えています。
ウオッチメンが登場するかも?
デッドショットが街で子供服を見かけ、娘を思い出すシーンでは、ショーウィンドウに大きなスマイルマークが飾られています。
これはDCコミックスの「ウォッチメン」に登場するヒーロー、コメディアンのトレードマークで、コメディアンの血がついたスマイルマークが作品のアイコンになっているのです。
これによって今後「ウォッチメン」のDCEU登場が近いことを匂わせています。
前作の「バットマンVSスーパーマン」でも「ウォッチメンを監視するのは誰だ?」というラテン語で壁に書かれており、いつどのように登場するのか楽しみです。
まとめ
マーベル・シネマティック・ユニバースの「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」シリーズを監督し、絶賛されたジェームズ・ガンが「スーサイド・スクワッド」の続編を撮影し2021年8月に公開されることが決定しています。
ジェームズ・ガンは一度マーベルと契約が切れた時期があり、そのタイミングでライバルのDCからのオファーで監督することが決まりました。
ハーレイ・クインとキャプテン・ブーメラン、リック・フラッグは続投が決定していますが、ガン監督は「誰が死んでもおかしくない」と宣言しており、どんな結末になるか楽しみです。
日本での公開は未定ですが、楽しい映画になるのは間違いないので、予習として「スーサイド・スクワッド」をご覧になってはいかがでしょうか。