「ソラニン」は漫画家・浅野いにお原作の同名映画で、宮崎あおいと高良健吾がW主演を務めました。
監督は恋愛映画の巨匠として名高い三木孝浩で、バンドや音楽を絡めながら、若者の青春時代の葛藤や苦悩を描いた感動作です。
作品内で、宮崎あおいがギターとその歌声を披露した事でも話題になったこの映画「ソラニン」。
今回は映画「ソラニン」から作品のネタバレ・考察、あらすじや映画の裏話を紹介していきたいと思います!!
ソラニン(2010年)
OL二年目で会社を辞めた井上芽衣子(宮崎あおい)と音楽の夢を諦められないフリーターの種田成男(高良健吾)。
不確かな未来に不安を感じながらも、二人は東京の片隅で身を寄せ合いひっそりと暮らしていた。
自身の才能を“平凡”という種田に、芽衣子は中途半端でなく、本気でバンド活動をやってほしいと自分の想いをぶつける。
その言葉に反応した種田は、「ソラニン」という曲を作り、バンド仲間のビリー(桐谷健太)、加藤(近藤洋一)と共にレコード会社にデモCDを送る。
しかしその結果は散々なものであった。
そして種田は芽衣子に「ちょっと出かけてくる」と言い残し、それきり連絡が途絶えてしまうのであった…。
ソラニン(ネタバレ・考察)
映画には必ずといっていいほど面白いエピソードが詰まっているものです。
映画「ソラニン」にはどんなエピソードが隠れているのでしょうか?
そこを探っていきましょう。
「ソラニン」というタイトルの秘密
「ソラニン」というこの不思議なタイトル。何ぞや?と思いますよね。
実は「ソラニン」とはじゃがいもの芽の毒の事なのです。
原作者である漫画家・浅野いにおが当時付き合っていた彼女の勘違いからこの不思議なタイトルは生まれました。
人気バンド“ASIAN KUNG-FU GENERATION”の新しいアルバムのタイトルが「ソラニン」だと彼女から聞いた浅野いにおですが、実際のタイトルは「ソルファ」でした。
その後、「ソラニン」の意味を調べた浅野いにおは語感が気に入ったのと、その意味を知り、漫画のタイトルを「ソラニン」にする事に決めたそうです。
彼女の可愛らしい勘違いから、名作「ソラニン」は生まれたのですね!!
浅野いにおは種田が嫌いだった!?
2017年に発売された「ソラニン新装版」のあとがきで浅野いにおは“種田が好きではなかった”と記しています。
作者が漫画の登場人物を好きではないというのは珍しい感じもしますよね。
嫌いな理由は種田の死の真相に隠されているのかもしれません。
種田の事故死は未来への“願掛け”で、赤信号をバイクで無事渡りきれたら芽衣子と明るい未来を生きていく、という主旨のものです。
主人公を死なせたという事で当時、浅野いにおは編集部から相当怒られたとの事。
しかしラストは最初から浅野いにおの頭の中で、はっきりと作りこまれていたのだそうです。
嫌いな理由ははっきりとは明言されていませんが、種田に共感できない、というところに作者の隠れた想いがあるのかもしれません。
しかし嫌いは好きの裏返しですから、作者にしかわからない種田への想いがあるのでしょうね。
サンボマスターのべーシストも出演!!
種田のバンド仲間でベース担当の加藤を演じるのは、何とあの!人気バンド・サンボマスターのベーシスト、近藤洋一です。
役者・初挑戦、しかも超重要な役なので、サンボマスターファンの人もそうでない人も見逃せません!!
種田のかけがえのないバンド仲間であり友人で、芽衣子の大切な友人・アイ(伊藤歩)の恋人でもあります。
“加藤の体型が原作に忠実であること”という浅野いにおの要望から加藤役の座を見事射止めました。
普段はおちゃらけており、可愛い女の子にも弱い加藤。
しかし楽器の演奏シーンではやはりプロ!見事、芽衣子やビリーを引っ張っている頼もしい存在です。
楽曲を手掛けたのは人気バンド・アジカン!!
作品内で重要となる楽曲「ソラニン」を手掛けたのは人気ロックバンド・ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。
「ソラニン」はこの映画の為に作られた楽曲で、原作者の浅野いにおが考えた歌詞にアジカンが曲をつけました。
また、映画のエンディングもアジカンが担当しており、タイトルは「ムスタング(mix for 芽衣子)」です。
劇中音楽はホリエアツシ(ストレイテナー)のソロプロジェクト・entが手がけており、まさに音楽ファンにはたまらない映画となっています。
そして、芽衣子達が楽曲「ソラニン」を披露する前に演奏している曲はSUPER BEAVERの「ささやかな」という楽曲です。
まさに音楽好きの為に作られた映画!といっても過言でないほどたくさんの音楽人達が集結したのが、この「ソラニン」という映画なのです。
種田が芽衣子の前から姿を消した真相
映画の終盤、芽衣子や皆の前から姿を消した種田。
その理由とは何だったのでしょう?
その時の種田の心情やその真相について考察していきます。
未来について考えていた
種田は芽衣子や皆と距離を置く事で、これから先、どういう未来を描いていくか考えていたのです。
種田の失踪の真相は、前に務めていたデザイン会社でまた雇ってもらえるよう、社長に頭を下げ、徹夜で働いていたというものでした。
それはすなわち、音楽の夢を諦めるという事でもあったのです。
種田はデザイン会社でまた働く事で、安定した道を選び、芽衣子との結婚も考えていたのかもしれません。
種田は大人になりきれていない大人のようにも感じます。
自分自身でも種田はそれに気付いているのです。
しかし未来について種田なりに真剣に向き合おうとしていました。
夢を諦める苦渋の決断
デザイン会社でまた再び働く、音楽は趣味でやっていくという事は、種田にとって夢を諦めるという苦渋の決断でした。
人間にとって、夢を諦めるという事はたやすい事ではありません。
しかし種田はこれがベストの決断なのだと必死に自分に言い聞かせていたのです。
芽衣子との幸せと自分の夢、その狭間で種田は大きく揺れ動いていました。
自分の決断はこれで良かったのか、種田は常に自分に問いかけていたのです。
幸せとは何か自問自答していた
幸せの定義とは何か?それは人それぞれ違うと思います。
種田にとっての幸せとは芽衣子と幸せになる事なのか?音楽の夢を諦める事なのか?
自分にとっての幸せとは何なのか、種田は常に自問自答していたのです。
前にも記述したように、赤信号を渡りきれたら芽衣子と明るい未来を歩んでいくという“願掛け”につながってくるのがここです。
種田は赤信号を無事には渡りきれませんでした。
しかしこれは、芽衣子と別々の道を歩んだ方が種田は幸せになれる、という事ではないのです。
「家に帰ろう」という種田の台詞が全てを物語っています。
種田はここで我に返り、芽衣子の存在を改めて愛しいと思いました。
携帯電話の充電が切れ、芽衣子に「愛してる」の言葉を言えなかった事が種田の唯一の後悔だといえます。
タイトルに込められた深い意味
前に記述しましたが、「ソラニン」とはじゃがいもの芽の毒の事です。
しかしそれだけでなく、このタイトルにはとても深い意味が込められています。
「体の中に毒がたまっていく」という芽衣子の台詞が作中でありますが、ここがポイントなのです。
生きるとは時に、体の中に毒がたまっていくような事なのかもしれません。
大人になると、理不尽な事も厄介な事もたくさん経験します。しかし、それを笑顔で交わさなければいけない時も多々あります。
それが毒となり、体の中にどんどん蓄積されていくのです。
「ソラニン」とはイコール“大人になる事”を表しているのではないでしょうか。
「ソラニン」は若者の葛藤や悩みを描いた作品なので、そう解釈するとまた物語の違った側面が見えてきます。
種田と芽衣子の見えない絆
物語の終盤で、芽衣子はギターを猛練習し、種田が残した歌「ソラニン」をライブハウスで熱唱します。
ビリーと加藤が最初の練習の時に、ギターをチューニングする芽衣子の後姿を種田の後姿と重ねるシーンは印象的です。
それだけ、種田と芽衣子は似ているという意味合いの表現なのでしょう。
種田がいなくなっても、その意志や生きた証は芽衣子や皆の中で生き続けるのです。
そして、種田が亡くなり自暴自棄になった芽衣子を救ってくれたのが「ソラニン」という歌といえます。
「ソラニン」は種田が最後に残してくれた芽衣子へのとびきりのプレゼントなのです。
「ソラニン」のおすすめポイント
「ソラニン」という作品のみどころは、何といっても圧巻のライブシーンでしょう。
ギターもドラムもベースも、全て出演者本人達が演奏しているのは見逃せないポイントです。
荒削りな部分もありますが、そこがまた映画に深みを持たせていて、非常に感動する事間違いなし!!
宮崎あおいの真っ直ぐな歌声は、純粋に心に響きます。
青春時代の真っ只中にいる人、青春時代は通り過ぎてしまったけれど、あの頃のワクワクやドキドキ感を思い出したい人、必見です!!
そして、映画だけでなく原作の漫画も非常にいいので、未読の人にはかなりおすすめとなっています。
「ソラニン新装版」では10年後の芽衣子達の姿も描かれているので、それも見逃せないポイントです。
映画も堪能し、浅野いにおの世界観にもぜひ触れてみてください!
まとめ
以上、映画「ソラニン」のネタバレ・考察、あらすじ・小話をご紹介してきましたが、如何でしたでしょうか!?
かけがえのない青春時代の思い出や出来事を思い出させてくれる「ソラニン」というこの作品。
たくさんの淡い想いが詰まった感動作です。
友人、恋人、家族、たくさんの繋がりの中で人は生きています。
今日は優しい涙を流したいな…とそんな気分の時は「ソラニン」を観て癒やされましょう!!
観終わった後に無性に大切な人に会いたくなる、そんな作品となっています。