映画リベリオン ネタバレ・考察

「リベリオン」は2002年公開のSFガンアクション映画です。

ガン=カタと呼ばれる東洋武術と科学的な要素を織り交ぜた独自の武術が登場し、アクションファンを魅了したカルト的人気を誇る作品になります。

男子のハートに響くアクションとドラマを織り込み、この作品以降のガンアクションに大きな影響を与えた本作について語っていきましょう。

リベリオン(2002年)

舞台は第三次世界大戦が勃発したあとの近未来。

感情を持つことが戦争につながると考えた国家リブリアでは、戦争を起こさないために国の政策として国民に感情を持つことを禁じていた。

感情を抑制する薬物の投与を義務付け、感情を生む芸術品や音楽、ゲームといった文化も徹底的に取り締まり、違反者は銃殺ないし火刑に処されるのであった。

国民の殆どは「戦争が起きないなら」と管理社会を受け入れていたが、人間らしさの剥奪と考えるレジスタンスもおり、隠れて文化的な嗜好品を集める者もいた。

薬物を投与しない感情違反者を取り締まる監視官は監視官はクラリックと呼ばれ、特殊な武術「ガン=カタ」による高い戦闘力と冷酷さでレジスタンスの恐怖の的となっていた。

第一級クラリックとして任務についていたプレストンは多忙を極める毎日の中で、残り1つの薬物を割ってしまい、不本意ながら薬の投与無しで任務につく。

そんな中、違反者の尋問や文化物の摘発中に感情を揺さぶられてしまったプレストンは、積極的に薬物の摂取を止め、リブリアのあり方について疑念を深めていく…。

リベリオン(ネタバレ・考察)

「リベリオン」は主演のクリスチャン・ベールがアクション俳優として進出することになったきっかけにもなる作品でした。

低予算ながら見ごたえのあるアクションシーンが満載の本作に秘められたトリビアを披露していきますので、御覧ください。

感情抑制薬は実際にあった

劇中に登場する感情抑制剤「プロジウム」は、もともとは国家の名前をとって「リブリウム」という名前になるはずでした。

映画のタイトルもそれにちなんで「リブリウム」と仮の名が付けられていましたが、実際にある抗不安薬の登録商標名に「リブリウム」というものがあったのです。

製薬会社からクレームが入り、名前の変更を余儀なくされます。

最終的に抗うつ薬であるプロザックとバリウムをあわせた名前でプロジウムという名前になったのです。

犬の鳴き声は専門家が吹き替え

感情を取り戻したプレストンが子犬を救うシーンがありますが、犬種はバーニーズ・マウンテン・ドッグになります。

この犬の鳴き声は本物ではなく、犬の鳴き真似を専門に行なう声優が鳴き声を当てているそうです。

人が真似してるとは思えないクオリティなので、犬の登場シーンに注目してみてください。

ワイヤーアクションは殆ど使われていない

本作の宣伝キャッチコピーは「マトリックスを超えた!」というものですが、「マトリックス」で多用されていたワイヤーアクションはほとんど使われていません。

宙返りするバイクのシーンもワイヤーではなく、トランポリンを使って撮影しているそうです。

コストがかかるワイヤーアクションを減らし、昔ながらの撮影技法でアクションを成立させました。

「マトリックス」を超えたかどうかは意見が分かれるところでしょうが、アクションのクオリティの高さは引けを取らないでしょう。

プレストンの妻が二人いる

劇中で感情違反で処刑されてしまったプレストンの妻ビビアナですが、判決を言い渡されるシーンと逮捕されるシーンで女優が違います。

判決を言い渡されるシーンではアレクサ・サマーが、逮捕されるシーンではマリア・ピア・カルツォーネが演じているのです。

なぜ違う女優になってしまったのかは不明ですが、スタッフロールでは「ビビアナ・プレストン」と「プレストンの妻」というように同一人物なのに別の役名が並びます。

ブラントは無免許運転?

プレストンはパートナーであるパートリッジを自らの手で射殺したため、新しいパートナーに配属されたブラントがプレストンを車で迎えに来ます。

実はブラントを演じているテイ・ティグスは撮影の時点で免許を持っていなかったそうです。

セット内の撮影だったこともあり、無免許運転でも大丈夫だったとのこと。

スムーズに運転している様をみると、かなり練習したのではないでしょうか。

プレストンの殺害人数は118人

「リベリオン」の作中で殺される人の合計は236人で、そのうちプレストンが殺したのはちょうど半分の118人です。

これは海外サイト「Movie Body Counts」に記されているスコアで、1作品の中で殺した数の中ではかなり上位にはいっています。

キルカウントの多さで知られているガンアクション映画「ジョン・ウィック:チャプター2」でのキルカウントが128人というのを考えると、なかなかの記録といえるでしょう。

ちなみに1作品の中で個人の殺害人数最多記録は、「子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎」の拝一刀(若山富三郎)が達成した150人です。

やっぱり殺人を描いている作品は死者数が多いんですか?
ハリウッドで一番人が死ぬ映画は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で、空中戦により8万人が死亡するので、そうとも限らないようです。

「リベリオン」の世界観のもとになった作品たち

徹底した管理社会を描き、感情的なコンテンツを規制し国民が相互監視をする世界を舞台にしており、ディストピア映画としても観るべき点がある本作。

作品の登場人物や監督のコメンタリーから発想のベースになった作品を導き出し、解説していきます。

華氏451度

小説家レイ・ブラッドベリの作品で、映画化もされたディストピア小説です。

この世界では本の所持が禁止されており、所有が発覚した場合はファイアマンと呼ばれる焚書官が本を燃やし、所持者は逮捕されます。

「リベリオン」では本だけでなく音楽や絵画、ゲームなど文化的なものはすべて規制されており、発見された違反物はすべて燃やされるなど共通項が見られるのです。

このように「華氏451度」の世界を下敷きにして拡大した世界になっているのがわかります。

1984年

ジョージ・オーウェルが1949年に刊行したディストピアをテーマに用いたSF小説です。

一党独裁の社会体制、ビッグ・ブラザーと呼ばれる社会を指導するアイコンの存在は「リベリオン」におけるテトラグラマトン党とファーザーの関係に似ています。

街頭のモニターなどで常にファーザーが市民に呼びかけ教育している様は、「1984年」からの引用でしょう。

また「リベリオン」のヒロインとなるオブライエンの名前は、「1984年」に登場する主人公を裏切らせる官僚のオブライエンから取られていると考察できるのです。

ガン=カタを始めとする格闘術について

「リベリオン」の中で登場する武術、ガン=カタは執行官であるクラリックが修得する戦闘技術として無類の強さを発揮します。

多くのファンを生むことになったガン=カタが、いかにして生まれたのかを解説していきましょう。

ガン=カタの生みの親であるカート・ウィマー

ガン=カタを生み出したのは、「リベリオン」の監督であるカート・ウィマーです。

「リベリオン」を撮影するにあたって、低予算の中で説得力のある銃撃戦を演じるために、自宅の庭で思いついたのがガン=カタだったとのこと。

今までの銃撃戦は敵の銃弾を躱すために建物の陰に隠れるなどの回避動作が必要でした。相手が多人数であれば劣勢に立たされることもあります。

ですがウィマーは「ヒーローは最後に勝つのはわかっているのだから、圧倒的に強くないといけない」という美学を持っていました。

敵の弾が当たらない理由付けをした上で強いキャラを作り、さらにカメラワーク映えするアクションを追求した結果ガン=カタにたどり着いたのです。

ガン=カタをより武術的にしたジム・ヴィッカース

拳銃と東洋武術を取り入れたガン=カタを映画の中で完成させたのは、アクション・コーディネーターであるジム・ヴィッカースです。

カート・ウィマーはどちらかというと流れるような動作でのアクションをイメージしていましたが、ヴィッカースは「リベリオン」の中で空手の型のようなメリハリのある動きにアレンジしました。

最終的にはヴィッカースの案が取り入れられ、武術としてのニュアンスが強いガン=カタが披露されることになったのです。

冒頭のクレリックたちがガン=カタのトレーニングに励むシーンはカート・ウィマー自らが演じ、究極の格闘術であるガン=カタをより魅力的に見せています。

もちろん劇中でクリスチャン・ベール演じるプレストンのアクションも切れ味抜群で、トップのクラリックが無敵の存在であることを雄弁に語っているのです。

剣術も取り入れているガン=カタ

銃だけでなく刀術も取り入れているガン=カタは、プレストンとブラントの稽古シーンでも見られますが、日本の剣道を取り入れているように見られます。

ですが剣術での格闘シーンでは、プレストンは順手ではなく、逆手に剣を持って戦うのです。

これは監督のコメンタリーによると、勝新太郎の映画である「座頭市」の影響とのこと。

訓練所のシーンは木刀で実際に立ち回りを演じたらしいですよ!
ブラントとプレストンが本気で殴り合ったため、小道具の木刀が何本も折れたらしいです。

登場人物の感情の揺れ幅

プレストンはプロジウムを服用しているときは全く感情をあらわにしませんが、服用をやめてからは無表情を装いながらも端々に感情が芽生えてくるのです。

この微妙な変化をプレストン役のクリスチャン・ベールは実にうまく演じ分けており、感情を持つことの素晴らしさを訴えかけてきます。

一方で高官のデュポンやブラントはプロジウムを服用していないのか、感情を持つことを禁止されているリブリア国民の中では表情が豊かです。

この疑問をもとに、登場人物の感情の変化について考察していきます。

デュポンはもともとプロジウムを服用していない

すでに死去し、アイコンとして利用されるだけのファーザーに成り代わって国を治めていたデュポンは、プロジウムを服用せず国を意のままに操っていたようです。

クライマックスでデュポンは命乞いをし、感情もある人間を殺すのかとプレストンに訴えかけます。

ですが権力者として、国民の命を感情がある上で迫害し命を奪ってきたことは、プレストンにとって許せるものではありません。

リブリアを自由の国にするべく、独裁者であるデュポンは射殺されました。

プロジウムは戦争を防ぐ薬ではなく、国民を管理するための薬だったのでしょう。

ブラントもプロジウムを服用していない?

禁止されていた詩集を読み、感情を取り戻してしまっていたパートリッジは相棒プレストンによって処理されてしまい、その後釜に来たのがブラントです。

登場シーンの多くで笑顔を見せるシーンが有り、プロジウムを服用するシーンがないことからも感情を持っているかのように見えます。

デュポンの差し金でプレストンの監視に付いていたことを考えても、彼もプロジウムを服用せず、その上で国家に服従しているのではないでしょうか。

剣術の稽古場では互角に見えたブラントですが、実戦では迷いを断ち切ったプレストンの前にあっさりと破れます。

嘘発見器でプレストンの感情が表れなくなった理由

ファーザーに謁見するときに嘘発見器にかけられ、ブラントやデュポンの罠にはめられたとわかったときのプレストンは感情が明確に表れ、動揺します。

ですがある一点を境に感情の振れ幅がなくなり、そこから反撃を開始するのです。

これはプレストンが強い覚悟を決め、精神を集中させることで感情の揺れが無くなったと考えられます。

ブラントやデュポンを倒し、決起した市民の姿を見て最後にプレストンは微笑むのですが、クライマックスの戦闘シーンで集中していた表情との対比になり、素晴らしいエンディングへとつながるのです。

プロジウムの処方を止めて、朝焼けの空を見て感動するシーンと併せて感情のメリハリを見せる名演技ですね。

まとめ

革命的なガン・アクションを発明し、その後の映画に影響を与えた「リベリオン」は何度観てもかっこいいです。

カート・ウィマーはその後「ウルトラヴァイオレット」という作品で、よりバージョンアップさせたガン=カタを披露しています。

「リベリオン」が気に入った方は、併せて観ても良いのではないでしょうか。

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