映画マイ・フェア・レディ

「マイ・フェア・レディ」は1964年に公開されたアメリカのミュージカル映画です。

「ローマの休日」のオードリー・ヘップバーンと、演技が高く評価されていたレックス・ハリソンが共演し、アカデミー賞8部門を受賞した傑作中の傑作です。

ラブ・コメ映画の古典といわれているこの映画のネタバレ・考察、あらすじなど一気に紹介していきたいと思います!!

マイ・フェア・レディ(1964年)

19世紀、イギリスが最も豊かだった時代、言語学が専門のヒギンズ教授(レックス・ハリソン)は、粗野で下品な言葉遣い(コックニー訛り)の花売り娘イライザ(オードリー・ヘップバーン)をレディに仕立て上げられるかどうか、友人のピカリング大佐と賭けをすることになる。

ヒギンズ教授の邸宅で話し方の特訓が始まるが、イライザは「h音」を発音する事ができなかったり、「エイ」を「アイ」と言ってしまったりと難題ばかり。

なんとかできるようになって、上流階級の社交場であるアスコット競馬場に行ってみるが、自分が賭けた出走馬がレースで後れを取るのを見て「ケツを振ったらんかーい!(Move your bloomin’ arse!)」と叫んでしまう。

ダンスパーティーで、トランシルヴァニア公国の王子のパートナーになり、完璧なレディぶりを発揮したイライザに、ヒギンズ教授はどんどん惹かれていくのだが…。

マイ・フェア・レディ(ネタバレ・考察)

本を頭に乗せておどけるイライザ出典 : latimes.com

本作には面白い裏話や作品にまつわるトリビアなども満載です。

まだ視聴していない方も、観た事のある方も楽しめるマイ・フェア・レディの魅力をご紹介していきます。

オードリー・ヘップバーンの魅力満載の映画

イライザ役は、当初オードリーではありませんでした。

配給元ワーナー・ブラザースの社長ジャック・ワーナーは、マイ・フェア・レディ舞台版のヒロイン役であるジュリー・アンドリュースにスクリーン・テストを持ちかけました。

しかしジュリーは、自分がイライザ役をうまくやれるのは当然だと、スクリーン・テストに応じませんでした。

そこで、ワーナー社長は「尼僧物語」で莫大な収益をあげたオードリーにスクリーン・テストをやらないかと声を掛けたのです。

それでオードリーがヒロイン役に抜擢されたのですね!
オードリーは少女のように愛らしく魅力的で、彼女を観ているだけで幸せな気分になってきますね。

「マイ・フェア・レディ」タイトルの意味

タイトル「My Fair Lady」の意味として、3つの説があります。

  1. 「私の美しい令嬢」という意味
  2. ロンドンの地区名「メイフェア(Mayfair)」を、訛って読むと「マイフェア」になる
  3. 童謡集マザーグースの有名な歌「ロンドン橋が落ちた」の歌詞がタイトルになった

London Bridge is falling down
Falling down, falling down
London Bridge is falling down
My fair lady

どの説が正しいのかは定かではありませんが、誰かに話したくなるトリビアとしてご紹介しておきます。

珠玉の歌の数々

この映画の魅力は、親しみやすく憶えやすいメロディの歌にあるともいえます。

映画を観ているあなたのテンションが上がる事まちがいなしです。

  • 「今に見てろ(Just You Wait)」…ヒギンズ教授の特訓でクタクタになったイライザの歌
  • 「スペインの雨 (The Rain in Spain)」…発音がマスターできたイライザたちの喜びの歌
  • 「踊り明かそう (I Could Have Danced All Night)」…教授への愛を自覚したイライザの歌

華やかな衣装はセシル・ビートン

登場人物たちが身に着けた1,086着の衣装は、ブロードウェイやハリウッドで活躍したセシル・ビートンがデザインしました。

特に、アスコット競馬場のシーンは、黒と白のモノトーンの衣装の紳士淑女がエレガントで、衣装を見るだけでもオススメです。

オードリーは公私ともに服はジバンシィと決めていましたが、セシル・ビートンには、「あなたがデザインした衣装を着たら、自分を美しいと思えました。ありがとう」と感謝の言葉を贈りました。

イライザの父親役は見もの

イライザの父親の名前ドゥーリトルは、「do little=少ししか動かない=怠け者」という意味です。

「運が良けりゃオコボレに与れる」と歌うドゥーリトルは、普段、働かず、娘イライザから「カツアゲ」して生活をしています。

この映画の後半部分に、ドゥーリトルが再婚する事になり、庶民が集まる酒場で、皆で笑って肩を叩き合いながら踊って歌う「時間通りに教会へ」のシーンがあります。

お金はなくても、人生を楽しみ、愛し愛されるイギリスの労働者階級のパワーを感じる事ができます。

フレディを演じた俳優はあの人

アスコット競馬場でイライザを見初めたフレディを演じたのは、NHKテレビで放送された「イギリス・グラナダTVシリーズ、シャーロック・ホームズの冒険(1985年~放送)」のホームズ役を演じたジェレミー・ブレット(1933年~1995年)です。

大勢いるホームズ役者の中で最高のホームズと評判でした。

フレディを演じた若かりし頃はイケメン、ホームズ役を演じた晩年もイケメン、颯爽とした演技で、見応えのある俳優でした。

ラストシーンの意味とは

真剣に勉強するイライザとヒギンズ教授出典 : moviemarket.com

ヒギンズ教授の話し方や行儀作法のレッスンを受け、どんどんレディになっていくイライザに、観ている人はワクワクするでしょう。

レディの教養をマスターしたイライザとヒギンズ教授の二人の仲は、どうなるのでしょう。

「レディ」を越えて進歩していくイライザ

イライザはヒギンズ教授に言います。

レディと花売り娘との差は、どう振る舞うかにあるのではありません。どう扱われるかです。私は、あなたにとってずっと花売り娘でした。なぜなら、あなたはずっと私を花売り娘として扱ってきたからです」

ここに、イライザをレディに仕立てようとしたヒギンズ教授の思惑よりはるかに上を行くイライザの姿が見てとれますね。
イライザはもともと「レディ以上」になる資質を持っていた類まれな女性だったのです。

エンディングの「照れ」

「どうして女は変なんだ?男は最高、女はダメ。独身は最高、結婚はダメ。イライザもダメ」と歌っていたヒギンズ教授は、映画のラストで、自分がイライザ無しではやっていけない事を自覚します。

映画では、ヒギンズ教授を見限って出て行ったイライザが、考え直して彼の元に戻ってきた時、教授は嬉しい気持ちを隠すように帽子を深くかぶり直します。

こういう時は、帽子でごまかさないで、ヒギンズ教授にはイライザに「本当は君が必要なんだ」とハッキリ言ってほしいと思うのですが…。
帽子を深くかぶり直してイライザに会えた喜びを隠すのは「照れ隠し」だよ。男とはそういうものですよ。

原作では悲恋のエンディングになっていた

この映画の原作は、アイルランドのノーベル文学賞受賞者、ジョージ・バーナード・ショーが、自分が彫刻した理想の女性像を愛してしまう、ギリシャ神話を基に書いた戯曲「ピグマリオン」です。

原作では、イライザは、傲慢なヒギンズ教授と別れて、教授の恋敵フレディと結婚するエンディングになっています。

この映画は、ヒギンズ教授が「僕のスリッパはどこ?」とイライザに聞くセリフで終わるのですが、原作は、イライザを、ヒギンズ教授のスリッパの世話をするだけの女性としてではなく、自立した人間として書いた、その当時では非常に革新的なストーリーだったのです。

しかし、当時のハリウッドでよく上映されていたような甘いハッピーエンドの映画のほうが大衆に受けやすいとみてこのような結末になったのでしょう。

階級による言語の問題

イギリスビッグベンと風景
イギリスでは、階級によって発音や遣う言葉が違います。

そしてそれが、差別に繋がるという問題が常に生じています。

労働者階級への言語による差別

例えば、「Hello」を上流階級の人が「ヘロウ」と発音するのに、労働者階級の人は「アロウ」と発音したり、「think」の発音が「シィンク」と「フィンク」に分かれたりします。

2017年のある法律事務所の調査によると、イギリスの雇用主の80%が採用面接の際「発音やアクセントに基づいて、労働者階級出身の人物に対し差別的な決定を下す」事を認めています。

労働者階級の町といわれるリヴァプール、東ロンドン(コックニー)、エセックス、バーミンガム出身者の人が特に採用を避けられるという結果が出ました。

得られるはずのチャンスも出自によって得られなくなるというわけです。

そのため、労働者階級の人々は、エリート部門の人よりも、平均して年間6,800ポンド(約90万円)、約17%少ない収入にとどまっています。

バーナード・ショーも「イギリス人が口を開けば、間違いなく他のイギリス人の軽蔑をかう事になる」と記していますね。
この映画は、現代でもなお階級社会の文化が色濃く残るイギリス社会を皮肉ったコメディなのです。

「マイ・フェア・レディ」ゆかりの品が高額で落札!!

ドレス姿のイライザとヒギンズ教授出典 : 100audreyhepburn.com

劇中、イライザのアスコット競馬場デビューシーンでオードリーが着用した黒と白のリボンが付いたドレスが2011年アメリカで競売にかけられました。

本作品の象徴ともいえるこの優美なドレスは、最終的に450万ドル(約4億9千万円)で落札されました。

また、「スペインの雨」「踊り明かそう」を歌った時に着用していた白いブラウスは、2万5,000ドル(約270万円)で落札されています。

そして、オードリーが実際に使用した「マイ・フェア・レディ」の台本は、2017年のロンドン「クリスティーズ」のオークションで20万ポンド(約3,120万円)で落札されました。

いずれも落札者は公表されていません。

「マイ・フェア・レディ」は不朽の名作として、美しいオードリー・ヘップバーンの圧倒的な魅力と共に今も世界中の人々の称賛を集めています。

まとめ

花売り娘イライザと、女性を愛したことがなかったヒギンズ教授は、紆余曲折を経て結ばれ、めでたしめでたしとなりました。

魅力的なイライザがヒギンズ教授の頑なな心を溶かしていく様子は、観ていて幸せな気分になること請け合いです。

この記事を読んで、「マイ・フェア・レディ」をまた観たいと思って頂けたら嬉しいです。

まだ観ていない方も、今でもファンのココロを掴んで離さないこの傑作をぜひともご覧ください!!

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