君の膵臓をたべたいネタバレ解説

「君の膵臓を食べたい」は小説家・住野よるの同名小説を実写映画化したもので2020年、注目の若手俳優・浜辺美波北村匠海がW主演を務めました。

メガホンを執ったのは「黒崎くんの言いなりになんてならない」や「君と100回目の恋」で監督を務めた新進気鋭の映画監督・月川翔です。

膵臓の病気で余命宣告をされた女子高生と、彼女に何かと振り回される同級生の“僕”の心の交流を描いた感動作となっています。

今回は「君の膵臓をたべたい」からネタバレ・考察、あらすじ・映画の裏話など一気に紹介していきたいと思います!!

君の膵臓をたべたい(2017)

母校の教師として働く、志賀春樹(小栗旬)は自分は教師に向いていないと思い、机の引き出しにいつでも出せるように退職届をしのばせていた。

ある日、学校の図書館閉鎖が決まり、春樹は司書の資格を持っている事や、高校時代に図書委員だった事をきっかけに、図書館の蔵書整理を頼まれる。

春樹が図書館に向かうと、大人しく他の生徒とあまり関わりを持たない栗山(森下大地)という生徒がいた。

高校時代の自分と似ている栗山と話すうちに、春樹はクラスメイトだった、とある一人の少女との思い出を振り返るのであった。

その少女とは山内桜良(浜辺美波)で、彼女は膵臓の病気を患っており余命いくばくもない状態だった。

“共病文庫”という桜良の闘病日記を拾った事をきっかけに、春樹と桜良は急激に親しくなっていくが…。

君の膵臓をたべたい(ネタバレ・考察)

「君の膵臓をたべたい」は泣ける映画の代表作といってもいいでしょう。

劇中の中で用いられる、数々の名言にも心打たれる作品です。

作品内の名言をいくつかご紹介していきたいと思います。

「私も君も、一日の価値は一緒だよ」

春樹と同じ、図書委員に立候補した桜良。その時の図書室での会話の一つです。

この台詞は桜良が春樹に投げかけた言葉なのですが、膵臓の病気である桜良が言うと、一層深みのある言葉に感じます

病気でもそうではなくても、一日の価値はみな同じです。

楽しく過ごすのも、悲しい気持ちで過ごすのも、全て自分次第といえます。

そして、人間はいつ死ぬかなど誰にもわかりません

元気だった人が突然、事故や事件に巻き込まれて命を落とす事もゼロではないのです。

なので、一日一日を悔いなく大切に過ごす事が大事なのですね。

明日が来るのが当たり前…という発想は必ずではないと、この映画から学びました。
そうですね。非常にメッセージ性の強い、考えさせられる言葉ですね。

「偶然でもない、流されてもいない。私達はみんな、自分で選んでここに来たの」

桜良の元彼である学級委員長と春樹が、揉めた時に桜良が春樹に言った言葉です。

人生は選択の連続といえます。

それは誰に強制されるわけでもなく、全部自分自身で選んできた事なのだと桜良は言いたいのです。

人は特に間違った選択をしてしまった時に、他人のせいにしがちです

しかし、人生の選択はみな自分自身が決めたものであって、責任の所在も全ては自分にあります。

それが自分の人生に責任を持つ、という事に繋がってくるのではないでしょうか。

自分の人生に責任を持つとは…?
間違った選択でも、それは自分が決定した事。人のせいにしてはいけない、という深い意味があるのです。

「好きなのに嫌い、楽しいのに鬱陶しい。そういうまどろっこしさが、人との関わりが、私が生きてるって証明だと思う」

「君にとって生きるって何?」と春樹が桜良に問いかけた時の桜良の言葉です。

人間は一人では生きていけません。

そしてどんな人でも誰かと何らかの形で繋がりながら生きています。

人との関わりの中に生きる証明を見出せる桜良は、非常に聡明な人物だといえるでしょう。

この台詞は本当に意味が深いです。

まどろっこしい感情があっても、それでも人は人を求めて生きていく

余命いくばくもない桜良だからこそ、言える台詞ではないでしょうか。

この桜良の言葉と発想はすごいなあと感じました。
桜良は非常に頭のいい人物だという事もこの言葉から垣間見えますね。

「お門違いなのは分かっているんです。でもごめんなさい。もう泣いていいですか」

桜良が亡くなって一ヶ月後、“共病文庫”を読んで想いが溢れた春樹が、桜良の母親の前で号泣するシーンの台詞です。

この時の、北村匠海演じる春樹の涙は本当に美しいです。

美しいという表現は少し変かもしれませんが、もらい泣きしてしまう程、彼の“泣き”の演技は素晴らしいといえます。

桜良を失って、一ヶ月間“無”の状態だった春樹がやっと本来の人間らしさを取り戻した瞬間の涙なのでしょう。

「あなたのおかげで、あの子はしっかり生きることができた」という桜良の母親の言葉にも涙する事間違いなしです。

桜良と春樹はお互いに見えない絆でしっかりと結ばれていたのですね。

「君は嫌がるかもしれないけど、私はやっぱり君の膵臓を食べたい」

この作品内で、この台詞に勝る台詞は存在しないといっても過言ではありません。

春樹と桜良の間に恋愛感情はあったのか?そこは謎ですが、二人がお互いの事を尊敬し合っていたのは事実です

昔の人は、どこか悪いところがあると、他の動物のその部分を食べる事で病気が治ると信じていました。

しかし、この映画内に登場する「君の膵臓をたべたい」という台詞は、ただ悪い部分を治したいという意味ではありません

“君の中で生き続けたい”とか、性格が真逆の二人なので“私はあなたになりたい”という深い深い意味が込められているのです。

桜良の病気が繋げた不思議な縁。

桜良は春樹に、春樹は桜良に“あなたのようになりたい”とお互いに憧れていたのです。

春樹と桜良の間に恋愛感情はあったのか?

友達でも恋人でもない不思議な関係である春樹と桜良。

この作品内には「好き」や「愛してる」などといった色恋じみた台詞は一切出てきません

果たして二人の間に恋愛感情というものは存在したのでしょうか?

春樹の場合

春樹の場合は多少、桜良に淡い恋心のような感情を抱いていた可能性も考えられます。

春樹が桜良に「君にとって僕は…」と言いかけて「君にとって生きるってどういう事?」と質問を変えるシーンがあります。

春樹はその時、桜良に自分への本心を確かめたかったのでしょう。

しかし、それを聞いてしまったら、二人の関係性が壊れてしまう、咄嗟にそう判断して話題を変えたといえます。

「好き」などという簡単な感情ではなく、もっと深い深い絆で二人は結ばれていました

そこは誰も入る事のできない二人だけの領域だったのです。

桜良の場合

桜良は飄々とした性格なので、本心を読み取るのが難しい部分もあります。

しかし、桜良が春樹に尊敬の念を抱いていたのは事実です。

周りに流されず、クラスでも孤独を好んでいた春樹ですが、その姿は桜良の目には“強い”という風に映っていました。

そして、桜良は自らを“弱い”と形容しています。

性格も行動も正反対の二人だからこそ、惹かれあった面もあるのでしょう。

桜良はずっと春樹に憧れ、春樹のようになりたかったのです。

「好き」という言葉以上のものが二人の間にはあったのですね。
そうですね。敢えてその台詞を使わないというところがこの映画の一つの良さでもありますね。

作品中の「星の王子さま」の役割

「星の王子さま」はサン・テグジュペリが残した児童文学の名作です。

「君の膵臓をたべたい」の中で桜良が大好きな本として出てきます。

「星の王子さま」はこの映画内でどのような役割を担っているのでしょうか

春樹と桜良をつなぐ大切な架け橋

「大切なものは目には見えない」という台詞は「星の王子さま」の中で特に有名な言葉です。

これは春樹と桜良の関係性を表している最も重要なキーワードといえるでしょう。

春樹と桜良の関係性も、お互いがお互いをとても大切に思っていますが、それは決して目に見える繋がりではありません

しかし二人は他人にはわからない深い絆でつながれています。

「星の王子さま」はそんな二人の象徴であるといえるのではないでしょうか。

春樹と桜良をつなぐ、大事な架け橋の役割を担っているのです。

飛行士である“僕”は春樹と似ている

「星の王子さま」は飛行士である“僕”がサハラ砂漠に不時着する場面から始まります。

この“僕”と春樹は性格が非常に似ているのです。

心からわかり合える人に出会えないまま生きてきた、という点が春樹とそっくりだといえます。

「星の王子さま」は“僕”が“王子さま”との出会いによりかけがえのないものを見つけていく物語です。

春樹は自分の方から他人を遠ざけてきた面もありますが、飛行士の“僕”が春樹であるならば、“王子さま”は桜良であるといえます。

春樹にとって桜良は救世主のような存在だったのです。

「星の王子さま」をもう一度読み返したくなりました!
この映画内で非常に重要なキーワードとなるので、読んだ事のない方は必読の本ともいえますね。

タイトルに込められた深い意味

前にも記述したように、「君の膵臓をたべたい」というタイトルは、決して“自分の体の悪い部分を治したい”という意味だけではありません

インパクトのある作品名なので、初めて聞いた時にギョッとした方も多いのではないでしょうか。

「君の膵臓をたべたい」というこのタイトルの意味は“最大の愛の告白”ともとれます。

「好き」とか「愛してる」の言葉の代わりに、この言葉が存在するのです。

その証拠に春樹は桜良に、桜良は春樹に、この言葉を伝えるシーンがあります。

「君の膵臓をたべたい」というこの言葉は二人にとって最大級の誉め言葉であり、最大の愛情表現であったといえます

タイトルを聞いた時は確かにびっくりしました!!
作品のラストがこの言葉で締めくくられるという部分も非常に泣けるポイントですね。

「君の膵臓をたべたい」おすすめポイント

随所に、泣けるポイントは散りばめられていますが、春樹が桜良の母親の前で号泣するシーンは、この映画の一番のみどころといえます。

このシーンは今まで人に興味を持たなかった春樹の感情の解放シーンなのです。

そして、桜良の死因が病気で亡くなるのではなく、通り魔に殺害されて亡くなるという部分も、この映画のメッセージ性の強い部分ではないでしょうか。

人はいつどうやって命を落とすかなどわかりません。

だからこそ人に感謝を忘れず、一日一日を大切に生きねばという強いメッセージが桜良の死の理由には込められているのです。

まとめ

以上、「君の膵臓をたべたい」のネタバレ・考察、あらすじや作中の名言を紹介してきましたが、如何でしたでしょうか!?

この映画の12年後の世界は、実は原作には存在しないオリジナルの部分です。

その他、原作とは異なる部分が多々あるので、原作の小説と映画、違いを楽しみながら作品の世界観に浸る事をおすすめします。

また、アニメ映画版「君の膵臓をたべたい」もありますので、そちらもお見逃しなく!!

「キミスイ」の略称で一種の社会現象を巻き起こした感動作「君の膵臓をたべたい」。

原作、アニメ、映画とそれぞれの違いを味わいながら、この作品の良さを堪能してみて下さい!!

関連記事