「カメラを止めるな!」は監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾作品になります。
予算300万円という非常に低予算で製作された映画ながら、SNS等の口コミでその面白さが話題になり、第42回日本アカデミー賞8部門で優秀賞受賞を果たす他、海外でも多数の賞を受賞しました。
2018年の邦画興行収入ランキング7位(31.2億円)という快挙を遂げ、監督・上田慎一郎にとって初の劇場長編作品となった映画です。
数々のミラクルを巻き起こした「カメラを止めるな!」からネタバレ・考察、あらすじや作品の裏話等をたっぷり紹介していきたいと思います!!
カメラを止めるな!(2017年)
とある自主映画の撮影隊が山奥にある廃墟で、ゾンビ映画の撮影をしていた。
監督の日暮隆之(濱津隆之)は女優・松本逢花(秋山ゆずき)の迫真の演技になかなかOKを出さず、撮影は難航を極め、42テイク目を迎えていたのであった。
そんな中、メイク担当の日暮晴美(しゅはまはるみ)が松本と相手役の俳優・神谷和明(長屋和彰)と談話をしていると、外で何やら怪しい動きが。
何と、そこに現れたのは本物のゾンビと化した撮影隊の面々であった!
逃げ惑う3人を執拗に追いかけるゾンビ達。その様子を大興奮した様子で撮影する監督。
彼・彼女らの運命は果たしてどうなる…!?そして撮影の行方とは…!?
そこには驚きの展開が待っていたのであった…!!
カメラを止めるな!(ネタバレ・考察)
「カメ止め」の愛称で呼ばれ、数々の著名人からも大絶賛を受けた「カメラを止めるな!」。
この作品はどう作られ何故こんなにもヒット作となったのか?
その裏側に迫っていきたいと思います!!
苦労人!?上田慎一郎監督の過去
高校生の頃から演劇や映像に興味を持ち、主に映像を撮っていたという上田慎一郎監督。
ハリウッドを目指して英語の専門学校にも通っていたという過去も持ちます。しかし学校に馴染む事ができず退学という結果になるのでした。
そして20歳の時に映画から少し離れ、ヒッチハイクなどをして上京をします。
そんな中、詐欺に遭ったり、SF小説を自費出版した事で借金まみれになってしまうというピンチを経験するのでした。
一時期、ホームレス生活を経験するなど、波乱万丈な人生をおくってきた上田監督。
そんな経験が今回の映画にも生きているのでしょうか!?
「カメラを止めるな!」という映画は役者さんにとっても、上田監督にとっても素晴らしいサクセスストーリーとなったのです!
「カメ止め」は「ラヂオの時間」の影響を受けている
「ラヂオの時間」はコメディーの巨匠・三谷幸喜が監督を務めた映画です。
「カメラを止めるな!」で冒頭の部分が37分間ワンカットという手法がとられているように、“ワンカット撮影”というのは「ラヂオの時間」でも使われている手法なのです!
この“ワンカット撮影”の他にクセの強い登場人物が出てくるなど、三谷幸喜の作品に影響を受けている事は上田監督自身も認めています。
上田監督は三谷幸喜作品の「ショウ・マスト・ゴーオン」や「ラヂオの時間」を、映画界の巨匠・タランティーノが作ったらどうなるか?という主旨の事がやりたかったのだそうです!
上田慎一郎監督の次回作にも期待ですね!!
ただのゾンビ映画にとどまらない作品
「カメラを止めるな!」の良さは何といっても37分ワンカットのゾンビ映画が終わった後にあります。
驚きの後に更に驚き!のような手法が満載のこの作品。
“ゾンビ”という恐怖の後で、笑いと感動に満ち溢れたグッとくる感情がくるのは何故なのでしょう?
その秘密に迫ります!!
宝探しのような感動
「カメラを止めるな!」の魅力の一つとして監督・キャスト共にこの映画が公開されるまで全く無名の存在だった、というところにあります。
この作品に出演した事で、後の仕事に繋がったという役者さんが多々いるというところもこの作品の凄さです。
低予算映画で、全く無名の出演者でもこんなにも光り輝けるという部分に、観客は驚きと感動を覚えたといえます。
そこがこの「カメラを止めるな!」という作品に共感できる一つのポイントなのです。
勿論、作品内容の面白さが一番の注目ポイントではありますが、この作品は一つのシンデレラ・ストーリーのようにも思えます。
全く無名の存在だった人達がこの映画によって、スポットライトを浴びるようになった、そこに観客は宝探しのような感動を覚えたのです。
それぞれの映画への情熱
この作品は時に「素で言っているのではないか!?」というような台詞が飛び出すのも面白さを増している一つの理由です。
特に、濱津隆之演じる日暮監督が女優に「本物をくれよ!」とすごむシーンは「これはアドリブ!?」とも思える要素が詰まっています。
日暮監督は普段は温厚で優しい性格の持ち主です。
その監督が役者に対して「これは俺の映画だ!」と感情をむき出しにするシーンは、この日暮隆之という一人の人間の感情の爆発シーンといえます。
普段は“安い・早い・そこそこ”をモットーとする日暮監督。
しかし、この37分間ワンカット映画を撮る事で、自分の本来の映画への情熱を思い出すのです。
そして、そんな日暮監督につられる様に、周りの人間も作品を良いものにしようと、本気度を高めていきます。
作品を通じて伝わってくる事とは?
観終った後に、「いい映画だった!」と素直に思えるこの作品。
「カメラを止めるな!」という映画を通して観客に伝わってくるメッセージとは一体何なのでしょう?
父親と娘の絆
普段は特段、仲が良いわけでもなく口を聞く事も少ない日暮監督とその娘・真央。
しかし同じ映画を撮り終えることで、その絆は強固なものになります。
真央が日暮監督の台本の終わりのページに貼ってある肩車の写真を笑顔で見せるシーン。
このシーンに台詞はありません。
しかし、このシーンが“二人は最後に心の底から分かり合えたのだな”と動きだけでみせる最重要なシーンとなっているのです。
最後の最後で、親子はかけがえのない絆を取り戻したといえます。
登場人物の皆が主役
この「カメラを止めるな!」という作品においてまず一番にいえる良点は、登場人物一人一人にドラマがあるという事です。
誰一人とも欠けてしまったら、この映画は成り立つ事は不可能といえます。
登場人物一人一人の裏側にちゃんとエピソードがあって、その人の人物像がハッキリしている。
出演者全員が主役になれるというところが、この映画が大ヒットした一つの要素といえます。
チームの団結心
最後のピラミッドのシーンは、「はい、カット!」の声がで出るまで観客としてハラハラドキドキとするものがありました。
しかし、37分ワンカット撮影が成功した事で、日暮監督を始めとするこのチームの団結心はより強固なものになりました。
予想外のアクシデント一つ一つが、チームの絆をより深めていったのです。
それはスタッフ役の登場人物、役者役の登場人物、全てにいえる事で、全ての危機的状況を皆で協力して乗り越えた事で、かけがえのない一致団結心が生まれたのでしょう。
「カメラを止めるな!」の中毒性
何度観ても「面白い!」と思える作品「カメラを止めるな!」。
その中毒性とはどこにあるのでしょう?
そして、おすすめポイントも合わせてご紹介していきたいと思います!!
映画撮影の裏側が見られる貴重な作品
「カメラを止めるな!」は前半の37分ワンカット撮影のゾンビ映画の、その撮影に挑んだ人々に光をあてた映画です。
その苦労が後半で描かれているわけですが、“映画ってこんな風に撮ってるんだ!”という驚きと貴重さが垣間見られる作品となっています。
これから映画業界で仕事をしていきたい!と思っている人はお手本としてぜひ観るべき作品なのではないでしょうか。
そして見逃さないでほしいのはエンドロールです!!
ここには「カメラを止めるな!」を本当に撮影した人達の映像が映し出されるので、ここは注目ポイントと呼べるでしょう。
撮影している人を撮影する、という何とも面白い構造がとられたこの映画、今までにこんな邦画はあったのでしょうか!?
その斬新さが、この映画の面白いポイントなのです。
ゾンビシーンでも笑ってしまう
二度三度とリピートして観ると、前半のこのシーンは後半のこの部分に繋がってるのね、という事がわかってきて更に楽しく観る事ができます。
そうすると、前半のゾンビが出てくるシーンでさえ、笑いに変わるので、初めて観た時とはまた違う衝撃があるのです。
ゾンビに襲われるシーンで、登場人物が逃げ惑っているのにそこでさえ笑いに変わってしまう。
そうなったあなたはもう「カメラを止めるな!」の中毒者です。
台詞にも中毒性が!
メイク役で日暮監督の妻である晴美の「ぽんっ!」という台詞は一つの笑いポイントです。
護身術を趣味としている晴美が背後から不審者に襲われた際、「ぽんっ!」という掛け声と共に手を振り払うというこのシーン。
いたる所で聞ける台詞なので、この「ぽんっ!」にも注目してもらうとより一層映画の内容が楽しめます。
様々に練られた伏線
この作品の一番のすごい所は様々に練られた伏線が最後に一気に回収されるという部分にあります。
リピートして観ると本当にこの作品は伏線回収が凄いな!と感動さえ覚えます。
そして一度観ただけではわからない発見が二度目三度目でわかってくるので、そうなるともうあなたは「カメ止め」マニアです!!
まとめ
以上、「カメラを止めるな!」のネタバレ・考察、あらすじから裏話まで紹介してきましたが如何でしたでしょうか!?
この作品の魅力はとにかく観てほしい!観れば魅力が全てわかる!というところにあります。
ミニシアター系の映画館わずか2館から始まり、口コミで全国規模の映画館へと上映展開していった「カメラを止めるな!」。
こういうサクセスストーリーもあるのだと思わせてくれる映画です。
著名人も絶賛のこの映画。観て損はない映画です!!