鍵泥棒のメソッド(ネタバレ・考察)

「鍵泥棒のメソッド」は2012年9月15日に公開されました。

監督は「運命じゃない人」「アフタースクール」などの代表作をもつ内田けんじで、出演者は堺雅人、香川照之、広末涼子といった豪華メンバーが名を連ねました。

香川照之演じる凄腕の殺し屋が記憶喪失になり、堺雅人演じる売れない役者と人生が入れ替わる事で、二人を中心に様々な騒動が巻き起こるコメディー映画です。

今回は「鍵泥棒のメソッド」から映画のネタバレ・考察、あらすじや作品にまつわる小話を紹介していきたいと思います!!

鍵泥棒のメソッド(2012年)

35歳で定職にも就かず、おんぼろアパート暮らしの桜井武史(堺雅人)。

凄腕の殺し屋“コンドウ”と呼ばれる山崎信一郎(香川照之)とひょんな事から銭湯で一緒になるのであった。

山崎の分厚い財布をチラ見する桜井。

そしてここで大事件が起きる。

転がってきた石鹸で、山崎が足を滑らせ頭を強打し失神してしまったのだ。

その時偶然、桜井の元に山崎のロッカーの鍵が飛んできて、桜井は出来心から自分の鍵と山崎の鍵を摩り替えてしまう。

後日、入院している山崎の元を訪れた桜井は驚愕の事実を知る事となる。

何と山崎は頭を強打した事で、記憶喪失になっており、得られた情報から自分を桜井だと思い込んでいたのだ…!!

鍵泥棒のメソッド(ネタバレ・考察)

「鍵泥棒のメソッド」は非常に脚本が練り込まれている魅力的な映画です。

今作品にはどんな小話があるのでしょう?

各賞総なめの映画!!

「鍵泥棒のメソッド」は第36回日本アカデミー賞で最優秀脚本賞、優秀主演男優賞、優秀助演男優賞、優秀助演女優賞に輝くなど脚本・出演者共に素晴らしい功績を収めました。

特に内田けんじ監督の手掛けた脚本はその面白さが高く評価され、第55回ブルーリボン賞、第37回報知映画賞、第86回キネマ旬報ベスト・テン、等数々の賞を総なめにした経緯を持ちます。

また今作品は日本だけでなく、海外でも高く評価され、第15回上海国際映画祭、第32回ハワイ国際映画祭でも作品賞を受賞するなど、輝かしい偉業を成し遂げました。

この作品では役者さんの演技も、もちろん素晴らしいですが、何より内田けんじワールドとも呼べる作品の世界観が観客を魅了するのです。

「鍵泥棒のメソッド」では内田けんじ監督が得意とする大どんでん返しはありませんが、非常にストーリーがわかりやすく、作品の世界に自然と引き込まれる仕上がりになっています。

すごい!色々な賞を受賞しているのですね!
内田けんじ監督のすごいところは、様々なエピソードの伏線の回収の仕方にあります。
サンフランシスコ州立大学芸術学部映画科で映画の基礎を学んだ凄い経歴を持つ人なのです!!

あの名探偵ともコラボ!!

「鍵泥棒のメソッド」は日本のアニメ界で有名なあの名探偵ともコラボしています。

そう!その探偵とはずばり名探偵コナンです!!

「名探偵コナン 江戸川コナン失踪事件~史上最悪の2日間~」の脚本は内田けんじ監督が担当しました。

それだけでなく、ゲスト声優として山崎役の香川照之と香苗役の広末涼子が出演しています。

本作品で起こる事件に「鍵泥棒のメソッド」の後年が絡んだストーリーとなっており、山崎と香苗の所有する車や、桜井のアパートなどもアニメの中に登場するのだとか。

「鍵泥棒のメソッド」も「名探偵コナン」も大好き!という方には限りなく嬉しいコラボとなっています。

台詞の少なさから、堺雅人の声の出演は見送りとなりましたが、夫婦となった山崎と香苗の姿が見られますよ!!

他国でもリメイクされた作品!!

「鍵泥棒のメソッド」は2016年に韓国でリメイクされ、ユ・へジンが主役を務めました。

邦題は「LUCK-KEY/ラッキー」といい、第15回フィレンツェ韓国映画祭で観客賞を受賞するなど、他国でもその面白さが認められたのです。

また、アンディ・ラウ主演で中国版も製作され、話題を集めました。

やはり、面白い作品というのは国境を越え、観ている人の心を動かすものなのですね!!

桜井と山崎の入れ替わりから見えるものとは?

銭湯での事故後、桜井は山崎として、山崎は桜井としての人生を生きていく事になります。

特に記憶喪失の山崎は、自分の記憶を取り戻す為に四苦八苦しながらも桜井としての人生を歩んでいました。

この二人の入れ替わりから見える、今作品のメッセージとは一体何なのでしょう?

人生を生かすも殺すも自分次第という事

山崎はとても勤勉な人間です。

桜井として生きる彼は演技の本をたくさん読んだり、役者として成功できるように小さな事でもコツコツと努力し必死に頑張ります。

そして自分がどういう人間なのかという事をノートにたくさんメモしたりと、そこから非常に真面目な人間だという事がわかるのです。

一方の桜井は何をしても冴えない人間といえます。

山崎のお金を使い込んだり、高い洋服を買ったりと、山崎の記憶が戻らない事をいい事に、やりたい放題です。

ここから見えてくるものは、どんな状況においても、自分の人生を生かすのも殺すのも自分のやりかた次第でどうにでもなるという事といえます。

ずばっと言ってしまえば、山崎はいいお手本で、桜井は悪いお手本です。

どんなに環境が変わっても本人次第で人生は良くも悪くも変わります。

自分自身の努力なくして、満足のいく人生などおくれるはずがないのです。

幸せの定義

山崎は病院の前でたまたま香苗と出会い、親しい関係となっていきます。

香苗の結婚相手の条件である「健康で努力家」という面も満たしており、同じ時間を過ごすにつれ、二人は結婚を意識する仲となっていくのです。

一方の桜井は借りていたお金を返しに元カノの家を訪れますが、彼女にはもう結婚を決めた相手がいました。

桜井は彼女を心底愛していたので、それを知り、車の中で号泣します。

ここから見えてくるものは、たとえお金がたくさんあったとしても、そんなものは幸せの定義のほんの一部分にしかすぎない、という事です。

確かにお金はあるに越した事はないです。

しかし、山崎は貧乏でも香苗というステキなパートナーと巡り会えました。

一方の桜井は、お金はあっても一人ぼっちです。

要するに、人生において大事なのはその人の“人間性”なのです。

それが山崎と桜井の人生の明暗を分けました。

逆境に置かれても、そこでどのくらいの力を発揮できるか。記憶喪失の山崎の頑張りを見れば桜井とのその差は一目瞭然です。

ジーンズにシャツを入れているスタイルの香川さんがとっても可愛らしいですよね!
そうですね。ここにキュンとくる女性は多いのではないでしょうか?

記憶の戻った山崎を香苗が選んだ理由とは?

山崎は、とあるクラシック音楽を聴いた事をきっかけに、全ての記憶を取り戻します。

超がつくお穣様である香苗が、本来の山崎の姿を知っても彼を選んだ理由とは一体何だったのでしょう?

山崎が任務遂行の時に流れていた曲とそのクラシック音楽が偶然にも同じだった事で、山崎は記憶を取り戻したのです。
因みにベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番という曲となっています。

臆病な自分から脱したかった

山崎の本業は実は殺し屋ではなく、法に触れることはしないただの便利屋だったのです。

映画の冒頭で男性を刺殺したのも全て演技で、刺された男性こそが山崎の依頼人であり、血は全て血糊でした。

とはいっても、山崎は裏家業の人間です。香苗とは正反対の世界で生きる人間ともいえます。

しかし、香苗はそんな山崎を選ぶのです。

今作品の終盤での香苗の台詞にもあるように、香苗は本当の気持ちに蓋をせず、臆病な自分とさよならをしたかったといえます。

山崎の立ち振る舞いは違っても「健康で努力家」という山崎の性格が変わるわけではありません。

そして二人には共有できるたくさんの楽しい思い出もあります。

香苗は山崎と過ごした時間を“無”にはしたくなかったのです。

山崎を心底好きになっている自分に気付いた

今まで恋愛という恋愛をした事のない香苗。

しかし、山崎と時間を共有するうちに、香苗の心は山崎でいっぱいになっていたのです。

それは山崎のノートを見た時、確証に変わりました。

山崎が何が好きで何が嫌いかなどを書き記していた大切なノートに、二重丸で囲んだ“水嶋香苗”という文字を発見したのです。

その時、車の警報音が鳴りました。

香苗への想いをどうしても捨てきれなかった山崎が車で、香苗の乗用車の元へ突っ込んで来たのです。

そして二人は車を降りて抱きあい、物語は幕を閉じます。

車の警報音は二人が恋に落ちた合図です。

「30代を過ぎると、胸がキューンとする事がなくなる」という香苗の姉は言いました。

しかし、二人はその言葉とは真逆に見事に恋に落ちたのです。

因みに、堺雅人演じる桜井にも恋の予感がおとずれるのですよね~!
エンディングの最後の最後までお見逃しなく!!

「鍵泥棒のメソッド」おすすめポイント

「鍵泥棒のメソッド」は笑って泣ける映画という言葉がぴったりの映画といえます。

そんな今作品のおすすめ部分は、桜井と元カノの仲睦まじい写真を車の中で山崎がたまたま見つけ、その写真を見つめるところです。

おそらく、山崎は香苗に気持ちはあったものの、自分には高嶺の花過ぎると思い、一旦は香苗の元を去ったといえます。

しかし、桜井の写真を見て香苗への気持ちが抑えられなくなったのです。

この作品のいいところは、言葉を使わずにその人物の表情や小道具だけで登場人物の気持ちを表しているところといえます。

じっと写真を見つめる山崎の表情は、思わずグッとくるものがあってとても切ない気持ちになるのです。

車の警報音を使った表現も、本当にお見事!という言葉がぴったりで、内田けんじ監督の力量の凄さを感じられる一場面といえます。

まとめ

以上、「鍵泥棒のメソッド」から映画のネタバレ・考察、あらすじや作品にまつわる小話を紹介してきましたが、如何でしたでしょうか!?

この映画は、本当に何度観ても面白い作品です。

そして二役を演じ分ける、香川照之の演技が特に際立っていて、本当に素晴らしいとしか言いようがありません!

内田けんじ監督の作品はどれも本当に面白いので、「鍵泥棒のメソッド」と合わせて「運命じゃない人」「アフタースクール」などもぜひ観賞してみてください!!

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