
「ジュラシック・パーク」は1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の大ヒット作品です。
CG技術とアニマトロニクスと呼ばれるSFXをふんだんに使い、恐竜を現代に蘇らせた革命的な作品として知られています。
恐竜映画といえば「ジュラシック・パーク」と言われるほど、代名詞的な存在として語られる本作の魅力を、トリビアや考察を交えながらお伝えしていきます。
ジュラシック・パーク(1993年)
恐竜の研究家として名を馳せるグラント博士とサトラー博士は、研究のスポンサーであるハモンドから「新しいテーマパークを作るので視察して欲しい」と頼まれる。
そのテーマパークとは、恐竜のDNAを取り出して現代に恐竜を復活させた「ジュラシック・パーク」だった。
ハモンドの孫であるティムとレックスが到着すると、本格的にパークのツアーが開始され、全自動で動く電気自動車でパーク内を巡回する一行。
だが島のスタッフであるネドリーは、恐竜の胚を外部に持ち出す取引をしており、それを実行するために島のセキュリティーを解除してしまう。
電気自動車は動かなくなり、恐竜たちが閉じ込められているパドックに流れる高圧電流も停止。恐竜たちを制止するものは無くなってしまった。
恐竜が解き放たれたパークの中で、ティラノサウルスやヴェロキラプトルたちが人間を襲い始める…。
ジュラシック・パーク(ネタバレ・解説)
革命的なCG表現をしたことで、映画業界に衝撃を与えた「ジュラシック・パーク」はその後の作品に大きな影響を及ぼしました。
その後の映画の作り方の概念を変えてしまった本作のトリビアをお伝えしていきます。
ジョーズが画面に登場
スピルバーグ監督の代表作である「ジョーズ」が劇中でちょっとだけ登場するイースター・エッグがあります。
エンジニアのネドリーが給与を上げてもらうべく交渉しているシーンですが、モニターをよく見てみると「ジョーズ」が映し出されているのです。
動物の恐怖モノということで扱われたのかもしれませんが、ちょっと笑えるポイントといえます。
ティラノサウルスが窓ガラスを突き破るシーンはアクシデント
劇中でティラノサウルスが天井の窓ガラスを突き破って襲ってくるシーンがありますが、ここは本来ティラノサウルスが覗き込む程度の予定でした。
撮影中にティラノサウルスの模型が操作ミスで窓ガラスを突き破ってしまい、そのシーンを活用することでスリリングなシーンとなったのです。
スピルバーグ監督の子役の決め方が独特
ティムとレックスは恐竜に襲われるシーンで大声で叫び、パニックになります。
この感情表現が子役の決め手になるとスピルバーグ監督は考え、オーディションのビデオテープは叫び声を上げているシーンを送ってもらったそうです。
しかもそれを自宅のソファーで寝ていた妻であるケイト・キャプショーの横で、音量を下げつつも観ていたとのこと。
レックスを演じたアリアナ・リチャーズが役をゲットしたのは、彼女の叫び声が流れた瞬間、キャプショーが飛び起きて子供部屋に安否の確認を確認したほどリアルだったからだそうです。
いかに迫真の演技をしていたかを伺わせるエピソードですね。
映画「シャイニング」へのオマージュ
ティムとレックスがヴェロキラプトルに追われてキッチンに隠れるシーンは、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画「シャイニング」のオマージュです。
狂乱した父親から身を隠すため、息子がキッチンに入る「シャイニング」の展開を知っていると、クスリと笑えます。
ちなみにキューブリックはスピルバーグ監督と特に親交が深く、二人で協力して1本の作品を企画するほどでした。
「ジュラシック・パーク」でティムを演じたジョゼフ・マゼロを主演に映画を撮るべくカメラテストをしたこともあったのです。
このことからキューブリック監督は「ジュラシック・パーク」のオマージュシーンを知っている可能性が高いですが、どのような感想を持ったのか気になります。

くそったれパーク
映画の終盤で生存者たちがパークから脱出する際に乗っているジープですが、「JURASSIC PARK」のロゴが泥で汚れて「UR ASS PARK」(お前はクソ公園だ)になっています。
パークに訪れたゲストの総意を代表したメッセージといえるでしょう。
映画のあり方を革命的に変えてしまった「ジュラシック・パーク」
それまでゴーモーションやアニマトロニクスで表現されていた「架空の生命」をコンピューター・グラフィックスで描き出し、多くの観客と映画関係者を驚かせた本作。
映画中で使われたCGのシーンはわずか6分間ですが、その効果は絶大でした。
今では当たり前のように使われているCGによるキャラクター描写を始めとした「ジュラシック・パーク」の偉業について触れていきます。
ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」に復帰するきっかけに
「スター・ウォーズ」シリーズを監督しているジョージ・ルーカスは、エピソード1~3の構想を持っていましたが、90年代の映像技術では表現できないと考えシリーズから身を引いていました。
しかし親友のスピルバーグが作り上げた「ジュラシック・パーク」を観たルーカスはその映像技術に衝撃を受け、復帰を決意したのです。
1997年には「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」の技術的に断念せざるを得なかったシーンをCGで追加した「特別編」をリリースしており、1999年公開のエピソード1に先駆けて最新技術を使いこなしています。
CGによって絶滅したアニメーター?
「ジュラシック・パーク」では絶滅した恐竜を実際に動かすために、高度な視覚効果技術が求められたため、3人のプロフェッショナルが招聘されたのです。
そのうちの一人がストップモーション・アニメの第一人者であるフィル・ティペットで、彼は「スター・ウォーズ」などの特殊視覚効果を担当していました。
最初はティペットの技術で恐竜を動かす予定でしたが、ILM(ルーカス・フィルム配下の特殊撮影チーム)のデニス・ミューレンが作成したCGの出来栄えが素晴らしかったため、ティペットは降板となったのです。
このときティペットが呟いた「私は絶滅だ」というセリフは、映画内でも使われています。
しかし普通のCGでは恐竜の動作に個性を出せなかったため再び招聘され、恐竜の動きを監修しつつスタッフに動きを教えてまわりました。
結果的に、アカデミー賞で特殊視覚効果賞を受賞する運びとなったのです。
アニマトロニクスも健在
アニマトロニクスとは、動物を実在するかのようにロボットで作成し、操演させる技術のことで、この技術も「ジュラシック・パーク」で活用されています。
大小さまざまな恐竜のモデルが作られましたが、スピルバーグ監督が最もこだわったのがティラノサウルスの造形です。
SFXスタッフのスタン・ウィンストンは全長6メートル、重さ6トンの巨大なティラノサウルスのモデルを作成し、油圧式で動くように設計しました。
普通のスタジオの床では動作の反作用で床が壊れてしまうため、深さ1.8メートルのコンクリート床を持つ水中撮影用ステージにボルトで固定され、周囲にセットを組んで撮影が行われたのです。
雨の中で動くティラノサウルスは本当にリアルで、観るものに衝撃を与えました。
「ジュラシック・パーク」で絶大な効果があることが認められ、その後のSF映画などではアニマトロニクスが進歩し、リアルな生き物を感じさせる作品が増えたのです。


CGは恐竜だけじゃない
クライマックスでレックスが天井にぶら下がって落ちそうになるシーンがありますが、ここはスタント・ダブルを使って撮影しています。
ぶら下がるシーンを撮影しておき、レックスを演じているアリアナ・リチャーズの顔をCGでスタントの顔と入れ替えるという技術を使っているのです。
映画関係者はこのシーンの効果をひと目で見抜き、その後よく使われる手法として定着しました。
リアルさを保ったままCGで補完するというスピルバーグ監督の功績は、その後の「ジュラシック・パーク」シリーズ以外にも大きな影響を与えたのです。
「ジュラシック・パーク」に込められたメッセージ
スピルバーグ監督は映画を構成する上で本作にいくつかのメッセージを込めています。
驚きや恐怖だけではない「ジュラシック・パーク」の伝えたかったことをピックアップしていきましょう。
人類が見たこともないものと触れ合える
パークを設立したハモンドは、まやかしではなく本物の「ジュラシック・パーク」を作って、多くの人に見てもらいたかったと語ります。
実際に恐竜を鑑賞できるパークがあれば、行きたいと思う人は多いでしょう。パークのコンセプトそのものは素晴らしいです。
このセリフはアニマトロニクスや特殊効果で映画を作ってきたスタッフの代弁でもあります。映画の中とはいえ、スピルバーグ監督は恐竜を本当に蘇らせてしまったのです。
ハモンドは科学を濫用して恐竜を復活させてしまいますが、その純粋な気持ちからか悪人としては描かれていません。
技術が進化しても触れてはいけないこともある
博士たちは実際に生きている恐竜を見て感動しますが、6500年前に生きていた生命を現代に復活させてよいのか、環境は適切なのかという疑問を提示します。
恐竜という大自然の生んだ未知の存在を管理できるという驕りに対して警告するのです。
雌しかいないはずのパークの中で、卵が孵化しているのを発見するシーンが描かれていることからも、生命を甘く見てはいけないというメッセージが織り込まれています。
スタッフは優遇したほうが良い?
島を丸ごとパークとして管理し、セキュリティを設定していますが、その管理を担当している技術者はネドリー1人でした。
エンジニアが1人で島のセキュリティを管理しているのは最新技術を持っている施設とはいえ運営の苦労は大変でしょう。
実際、ネドリーは待遇に不満を持ち、ライバル会社に恐竜の胚を売りつける産業スパイで大儲けしようとします。
人格に問題がありましたが、エンジニアとして評価してもらえればパークでの危機は防げたのかもしれません。
このことからは仕事仲間には人格が求められることと、待遇はケチってはいけないということを痛烈に感じます。


まとめ
夢の世界を映像で再現し、観るものを圧倒した「ジュラシック・パーク」は映像革命として、本作以前と本作以降に映像の作り方が分けられる作品となりました。
科学技術の濫用に対しての警告や自然への敬意を持つべきというメッセージも込められていますが、難しいことを考えずに楽しめる映画としておすすめできます。
主人公となるティラノサウルスの暴れっぷりや、狡猾なヴェロキラプトルのもたらす恐怖などがスリリングに描かれ、制作陣の徹底したリサーチと想像力の高さに感心するのです。
スピルバーグ映画のなかで一番売れたということもありますが、20年以上前にこのクオリティで映画を作ったという事実にびっくりする作品ですので、一度は観ておきましょう。