映画スノーロワイヤル ネタバレ・考察

映画「スノー・ロワイヤル」は2019年にアメリカで上映されたアクション映画です。

監督はハンス・ペテル・モランド、主演は「シンドラーのリスト」で主役を演じたリーアム・ニーソンが務めています。

除雪業を生業とする男性が、何者かに息子を殺された事から復讐に走り、犯人達を根絶やしにしようと奮闘する物語です。

この映画は一見ある男の復讐を追った物語ですが、勘違いが重なって予想外の方向に…!?

そんな映画「スノー・ロワイヤル」について、ネタバレや考察を交えながら紹介をしていきます。

スノー・ロワイヤル(2019)

ネルズ・コックスマンはウィンターリゾートで除雪業を営む男性で、町から名誉市民として表彰されるほどの働きぶりを見せる人物であった。

彼は妻と息子の3人で幸福な生活を送っていたが、息子が何者かに殺された事件がきっかけで、その生活は一変してしまう。

彼は仇を討つ為に独自に捜査を行い、息子を殺したのがギャングである事を知り、ネルズは彼らを根絶やしにする事を決意する。

まず彼は手始めにギャングの部下を暗殺し、復讐を少しずつ進めていく。

しかしギャングはネルズの襲撃を別のマフィアの攻撃と勘違いしてしまい、遂には二つの組織が敵対する事に。

ネルズの復讐によって始まった物語は、マフィアやギャング・警察をも巻き込んだ大騒動へと発展する…。

スノー・ロワイヤル(ネタバレ・考察)

映画「スノー・ロワイヤル」は、ネルズの復讐を描いたシリアスな映画かと思いきや、ギャグ映画に使われる要素がいくつも取り入れられている作品です。

これらの要素を理解する事で、より映画を楽しんで見る事が出来るので、紹介をしていきます。

始まりは復讐を決意する重苦しい物語

物語の始まりは、ネルズの息子、カイルがギャングに殺される事によって訪れます。

ネルズは悲しみに包まれて、一時は自殺をしようとする程でした。

ただ自殺の直前、カイルを殺した真犯人の事を教えられた事で、ネルズは復讐に全力を注ぐ様になります。

この様に映画の序盤は非常にシリアスな展開で、非常に重苦しい空気が漂っている映画です。

しかし、シリアスな雰囲気のまま映画が進むのかと思いきや、徐々に違和感が現れ始めます。

天丼を使ったシュールな笑い

ネルズは息子を殺した犯人を捜していき、殺人の実行犯や指示を行ったギャング達を3人殺害しました。

また、死体は遺体を川に沈める事で魚に食べてもらい、証拠を残さない様に処理をする用意周到さです。

しかし、この場面を何故か3回も同じアングルで繰り返し描写しており、観客にシュールな笑いを届けてきます。

これはお笑い用語で「天丼」と言われる物で、同じギャグやボケを繰り返し使う事で笑いを取る手法です。

また、よく見るとネルズは2人目を運ぶ辺りから疲れてきており、映画の主人公なのにやけに人間味のある姿に思わずクスリと来てしまうでしょう。

盛大に話がかみ合わない物語

この映画は勘違いから始まり、その勘違いの結果として街を巻き込んだマフィアとギャングの一大騒動にまで発展した物語です。

実はネルズの息子が殺されたのは、ギャング側の手違いであり、ギャングの輸送していた麻薬を横領した人と間違われて殺されました。

復讐の為にネルズはギャングの部下を殺害していきますが、ボスは部下の殺害がネルズの仕業とは気づかず、別のマフィアの仕業だと勘違いして全面戦争になってしまいます。

その復讐を行う為に動いているネルズの裏で、この様な大きな騒ぎにまで発展している事を、彼は最後まで知る事はありません。

子供を殺された親の復讐のはずが、勘違いの連鎖によって街全体を巻き込み、スケールが大きくなっていく物語が見どころの一つになっています。

斬新な死の描写方法

この映画は復讐物の為、主人公が目的を達成するまでの過程で何人もの死人が出てしまいます。

そして死人が出ると、なんと画面が突如暗転し、死亡した人の名前とあだ名が字幕で現れるのです。

この字幕によって、あの人は今死んだのかと分かる様になり、まともに出番が無い人物や凄いあだ名の人物なども発見する事が出来ます。

人の死は本来重苦しい印象を与える物ですが、この映画ではその重苦しさを緩和する為にこの様な描写がされているのです。

また、エンディングでは、スタッフロールが登場順では無く、死亡順で流れてくるという斬新な手法がとられています。

今までしっかりと見てきた人ほど、思わず笑ってしまうかもしれないですね。

登場人物たちは至って真面目

この映画の登場人物達は真剣に、自分たちの成し遂げたい事に向かって動いています。

ネルズは息子の復讐の為、ギャングとマフィアは部下と息子の敵討ちの為と、それぞれの目的に向かって行動をしていました。

しかし真面目に動く登場人物達とは裏腹に、誰も話が噛み合ってないという事に気付かないまま物語は進み、最後には街を巻き込んだ全面戦争になってしまいます。

そして物語が噛み合ってない事に気付けるのは、この映画を見ている人達だけです。

矛盾に気付く事が出来る立場だからこそ、この映画をギャグ要素の多い物だと感じる事が出来ます。

曲者揃いの登場人物たち

映画「スノー・ロワイヤル」に登場する人達は、シリアスなはずの物語を思わず笑いに変えてしまう様なクセの強い人物ばかりです。

彼らについて詳しく知っておくと、映画をより面白く見れるかもしれません。

健康第一な麻薬王、バイキング

悪名高いギャングの長、バイキングは若くして街の麻薬売買を取り仕切る超大物です。

商売敵や小言を言った部下を容赦なく殺害する等といった情容赦ない性格をしています。

そんな非情な人間性とは裏腹に、実は健康オタクで超ヘルシー志向な食生活を送るというギャップを持ち合わせているのです。

鶏肉とブロッコリーといったストイックな食生活を自身だけでなく息子にも強要する為、息子からもあまりよく思われていません。

そして彼は「果物とコカインで育った」と豪語する程の健康的?な生活をしています。

バイキングの息子、ライアン

ライアンはギャングの長であるバイキングの一人息子です。

学校ではギャングの息子と虐められたり、家族との仲も良くないという非常に厳しい人生を送っています。

しかし、ギャングの一人息子とは思えないほど、まっすぐに賢く成長をした少年です。

彼はネルズに誘拐されますが、自身に危害を加える気は無いと分かった為、ネルズに対して軽口を叩き、寝れないから本を読んで貰う等の行動に出ました。

誘拐犯であるはずのネルズとライアンの緊張感の無いやり取りには、思わず本当の親子なのではと疑ってしまうほどです。

そんな誘拐犯に懐いている様子のライアンは、ストックホルム症候群なのではと考えられます。

絵に描いたようなマフィア、ホワイトブル

ホワイトブルはこの街に古くから根付くマフィアのボスであり、いかにもマフィアという見た目をした人物です。

元々はバイキング達とは協定を結んでいましたが、彼らの勘違いによって自身の息子が殺された為、敵討ちの為にバイキングとの戦いに赴きました。

非常に冷酷な人物に見えますが、息子思いな性格だったり、全てが終わった後にネルズを殺害しようとしますが、地域に貢献する姿を見て取りやめるなど意外と優しい一面を持つ人です。

ただし年をとっているからか、殺害を取りやめた後に銃を置いて助手席でぐっすりと寝てしまうという、少しうっかりな性格でもあったりします。

実はネルズ・バイキング・ホワイトブルの3人には共通点があり、それは全員が息子の復讐の為に行動をしている事です。

子供の事を思う親は強い、そう感じる事が出来る映画になっています。

凸凹警察コンビ

この映画の四つ目の勢力として登場するのが警察です。

しかし、登場する二人の警察官コンビ、アヤとギップもまた癖の強い面々でした。

アヤは新人の女性警官で、平和ボケしたこの街で何か大きな事件が無いかと待ちわびている好戦的な人物です。

実際にギャングの抗争が始まった時には、彼女のテンションはとても上がっていました。

また、年配のおじさん警官であるギップは、長年この街に勤めているせいか完全に平和ボケしていて、事の重大さを理解していません。

更にアヤに対して繰り返しセクハラをするなど、どうしようもない人物として描かれています。

本当に個性溢れるやばいヤツらばかりですね。
紹介した人以外にも、個性的な人達がまだまだいるから、そこに注目して映画を見るのも面白いですよ。

ネルズは本当に模範市民?

この映画のキャッチコピーは「模範市民、キレる!」という物で、模範的と表彰されるほどの地域貢献してきた一般市民のネルズが、事件をきっかけにキレて復讐を始める物語です。

しかし、模範的な市民というには様々な疑問が浮かび上がってきます。

ネルズの異様な戦闘力

ネルズは一般市民と言うには、明らかに強すぎです。

銃の扱いに優れており、一方的に相手を仕留めるなど、確実にギャング達よりも強いと思われます。

彼が銃がうまいのは、ネルズは雪山での狩猟が趣味であり、銃の扱いに非常に慣れていた為です。

しかしそれらを置いておいても、死体処理の手際が良すぎる等の、彼の過去を疑いたくなる描写がいくつか残されています。

殺人に対する躊躇が無い

また、ネルズは自身が行っている殺人に対する躊躇が微塵も無い様に見えます。

相手が復讐相手のギャングとはいえ、複数人の殺人に加え死体を隠ぺいするのは明らかに一般市民がやる事では無いです。

その躊躇の無さには、本当に模範的な市民だったのか、今までに殺人をやった事が無いか等を疑問に思ってしまいます。

一般人とは思えない肝の据わり方

ネルズはあまりにも肝が据わり過ぎている、恐ろしい胆力の持ち主です。

ギャングの長、バイキングの息子を自身の車で誘拐するという大胆すぎる作戦は、普通の人ではまず実行しようとは思えないでしょう。

他にも銃を突きつけられても全く動じる事無く除雪車を運転し続けるなど、明らかに普通の人ではない精神力の持ち主です。

彼の兄が元ギャングの殺し屋だったという事もあり、彼もそちら側の人間だったのかと疑いたくなってしまいます。

リーアム・ニーソンと息子が親子で出演!

この映画はリーアム・ニーソンが演じるネルズの息子役として、彼の実の息子であるマイケル・ニーソンが登場しています。

俳優でもあるマイケルとリーアムが共演する映画は、実は「スノー・ロワイヤル」が初めてです。

多くの映画で家族を助ける・復讐をする為に行動してきたリーアムが、遂に自身の息子の敵を取る時が来ました。

余談ですが、ネルズの息子役としてマイケルが推薦された時、リーアムは自身の息子だからという理由で選ばないで欲しいと監督に告げています。

その為、息子役はオーディションで演者が決められる事になり、それに参加したマイケルは演技力をいかんなく発揮して、自身の手でこの役を勝ち取りました。

監督が過去に撮った映画のセルフリメイク作品

映画「スノー・ロワイヤル」はハンス監督が2014年に監督を自ら行った映画「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」のリメイク作品となっています。

昔人気であった映画を長い年月を経てリメイクされる事は、映画界でも良く起こる出来事だと言えます。

しかし監督も同じで、ストーリーもあまり変化の無いリメイクがあまり期間を開けずに行われるのはとても珍しいです。

リメイク後の映画にはハリウッドが関わっている為、ハリウッドがこの映画に目をつけてリメイクを行ったのかもしれません。

また、復讐の為に戦う父親をよく演じていたリーアム・ニーソンに、この作品を演じて貰いたくなった為映画のリメイクを行ったと考える事も出来ます。

まとめ

シリアスな復讐劇の中にギャグ要素を混ぜ込んで作られた、映画「スノー・ロワイヤル」は如何がでしたでしょうか。

リーアム・ニーソンが何回も演じてきた「復讐をする父親」という要素を、いつもと一風変わった雰囲気で届ける事に成功した作品です。

また、除雪車を使ったド派手なアクションや、個性豊かな登場人物達も見どころになっているので、是非ご覧になってください。

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